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第二章「信じる者、欺く者」
冬の訪れ
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ヨハンとレオヴィクの話を聞いて部屋を飛び出した後、ヨハンが庭まで迎えに来た。
その時に、言いたいことはあったが、結局何も言えなかった。
ヨハンも特に何も話さなかったから、無言のまま部屋に戻る。
戻る途中で、レオヴィクに何か言った方がいいだろうかと考えたが、部屋に入った時、レオヴィクはすでにいなかった。
「レオヴィク様は、本日の事があって、再び作戦会議をするため、戻られましたよ」
俺の疑問をくみ取ってヨハンが声をかけてくれる。
そしてそのまま言葉を続ける。
「リオ様。私めのためにお心を痛めていただき、ありがとうございます」
ヨハンの事を、俺は静かに聞く。
「これからも、ノエルと仲良くしていただけると、この老いぼれは幸せでございます」
どうしてここでノエルの話をするのだろうか。
そう疑問に思いながらも、聞き返すような感情はわいてこない。
「きっと、これからの道行き、ノエルはレオ様のよき友として、お傍にいることでしょう」
ノエルは友達だ。それはこれからも変わらない。
しかし傍にいるかどうかはわからない。
なぜなら自分はレオヴィクの駒であり、駒は使い終わった後は無残にも捨てられるんだ。
捨てられた後のことなど、想像に難しくない。
「そして、レオヴィク様を信じてあげてください。こんな言葉、今は聞きたくないやもしれませんが……」
信じる。それは今となっては少し難しい話だ。
庭で話した後であれば、特に何も疑問に思わず、レオヴィクを信じて、そしてレオヴィクのために動こうとさえ思っていた。
それが今はでは、本当にいい事なのかと、自分の行動と、レオヴィクの行動すべてに疑問を抱いてしまう。
俺はだた、利用される、それでいいはずなのに。
「では、本日はここで失礼いたします。どうぞ、今日はゆっくり休まれてください」
俺は結局、ヨハンには一言も言葉を返さず、ヨハンもその事については何も言わず、部屋を後にした。
二人がいなくなった部屋は、冬の訪れもあってから、いつも以上に寒く感じた。
ーーー
あれから、また数日経ち、特に部屋に誰か不審な人が訪ねてくることも、レオヴィクが部屋に来ることはなかった。
ヨハンは今までと変わらず、俺に文字を教えに来てくれる。
最近では、文字を書くことも教わりだして、今まで以上に勉強に熱中することはできた。
しかし、あの一件以来、ヨハンとどう接したらいいかわからず、必要最低限の会話しかしなくなってしまった。
メイドとは元々会話らしい会話はなかったので、一番楽な存在はメイドかもしれない。
そして、ノエルだ。
ノエルは、数日前に起きた出来事を知らない。
当日は風邪をこじらせるかもしれないからと、部屋から出ることをヨハンから禁止されていて、その風邪も治ったことで、今日は久しぶりに庭の仕事をするために、こちらに来ていた。
その姿を窓から見つける。
すると、ノエルは以前言ったように、大きく手を振り、こちらに気づいてもらおうと声を上げていないのにも関わらず、こちらまで声が伝わってくるような、そんな雰囲気で大きく口をパクパクさせていた。
その姿にくすっと笑ってしまい、それを見てたヨハンが「おや」と俺が見ていた窓の方を見て、パタリと本を閉じる。
「では、今日のお勉強はここまでといたしますね。リオ様、お外に出られる際は必ず羽織をお召くださいませ」
「うん、わかった」
小さく返事をして、部屋から出ていくヨハンを見送る。
そして、足音もしなくなったことを確認しゆっくりと扉をあけ、廊下の左右を確認し部屋から出る。
そのまま少し早足で庭までむかい、両手を擦りながら「はぁー」と息を吐くノエルの姿を見つける。
「リオ!!」
俺に気づいたノエルが、俺の名前を呼ぶ。
久しぶりに会ったはずなのに、そんな気がしなくで、でも名前を呼んでくれたことがうれしくて、さらに足を速く動かしてしまう。
「うわ!」
そして、勢いのままノエルに衝突して、鍛えてなどいないノエルはそのままリオとともに地面に倒れた。
「いったた……。リオ、大丈夫?」
飛び込んだのはこちらなのだから、大丈夫かどうかは、こちらが確認しなければいけないことなのに、ノエルは俺の体に怪我がないか確認をしてくる。
そんな姿にまた、ふっと笑いがこぼれてしまう。
「もう!リオ!危ないことはしたらだめだよ!体は大事にしなきゃ!」
「そういうお前だって、体が弱いってヨハンから聞いたぞ。もう体調は大丈夫なのか?」
よいしょ、とノエルに覆いかぶさっていた体をどけ、隣に座る。
その行動を見て、ノエルも俺の隣に座った。
「大丈夫だよ!お爺ちゃんはいつも大げさなんだ!お母さんたちが病気で死んじゃったのもあって、僕が少しでも風邪をひいてしまうと、すぐに「ベッドに入っておきなさい!」って怒られちゃうんだー」
「病気……」
「うん、僕のお父さんとお母さんは病気で死んでしまったって、お爺ちゃんから物心ついたときに教えてもらったんだ」
「そうか、悪い。辛いことを思い出させちゃって」
「そんなそんな!大丈夫だよ!まだ僕も小さい頃の話だし。それに、今はお爺ちゃんもいるから全然平気!」
「お前は、……。強いんだな」
「ふふ、リオったら、今日はどうしちゃったの、なんか、すごく照れちゃうよ」
ノエルはへへへと笑いながら、両手をこすり合わせる。
だんだんと冷たくなってきていた風は、いよいよ冬の本格的な到来を伝えている。
それにしても、部屋はあんなに寒かったのに、この庭、どうしてこんなに暖かく感じるんだろう
その時に、言いたいことはあったが、結局何も言えなかった。
ヨハンも特に何も話さなかったから、無言のまま部屋に戻る。
戻る途中で、レオヴィクに何か言った方がいいだろうかと考えたが、部屋に入った時、レオヴィクはすでにいなかった。
「レオヴィク様は、本日の事があって、再び作戦会議をするため、戻られましたよ」
俺の疑問をくみ取ってヨハンが声をかけてくれる。
そしてそのまま言葉を続ける。
「リオ様。私めのためにお心を痛めていただき、ありがとうございます」
ヨハンの事を、俺は静かに聞く。
「これからも、ノエルと仲良くしていただけると、この老いぼれは幸せでございます」
どうしてここでノエルの話をするのだろうか。
そう疑問に思いながらも、聞き返すような感情はわいてこない。
「きっと、これからの道行き、ノエルはレオ様のよき友として、お傍にいることでしょう」
ノエルは友達だ。それはこれからも変わらない。
しかし傍にいるかどうかはわからない。
なぜなら自分はレオヴィクの駒であり、駒は使い終わった後は無残にも捨てられるんだ。
捨てられた後のことなど、想像に難しくない。
「そして、レオヴィク様を信じてあげてください。こんな言葉、今は聞きたくないやもしれませんが……」
信じる。それは今となっては少し難しい話だ。
庭で話した後であれば、特に何も疑問に思わず、レオヴィクを信じて、そしてレオヴィクのために動こうとさえ思っていた。
それが今はでは、本当にいい事なのかと、自分の行動と、レオヴィクの行動すべてに疑問を抱いてしまう。
俺はだた、利用される、それでいいはずなのに。
「では、本日はここで失礼いたします。どうぞ、今日はゆっくり休まれてください」
俺は結局、ヨハンには一言も言葉を返さず、ヨハンもその事については何も言わず、部屋を後にした。
二人がいなくなった部屋は、冬の訪れもあってから、いつも以上に寒く感じた。
ーーー
あれから、また数日経ち、特に部屋に誰か不審な人が訪ねてくることも、レオヴィクが部屋に来ることはなかった。
ヨハンは今までと変わらず、俺に文字を教えに来てくれる。
最近では、文字を書くことも教わりだして、今まで以上に勉強に熱中することはできた。
しかし、あの一件以来、ヨハンとどう接したらいいかわからず、必要最低限の会話しかしなくなってしまった。
メイドとは元々会話らしい会話はなかったので、一番楽な存在はメイドかもしれない。
そして、ノエルだ。
ノエルは、数日前に起きた出来事を知らない。
当日は風邪をこじらせるかもしれないからと、部屋から出ることをヨハンから禁止されていて、その風邪も治ったことで、今日は久しぶりに庭の仕事をするために、こちらに来ていた。
その姿を窓から見つける。
すると、ノエルは以前言ったように、大きく手を振り、こちらに気づいてもらおうと声を上げていないのにも関わらず、こちらまで声が伝わってくるような、そんな雰囲気で大きく口をパクパクさせていた。
その姿にくすっと笑ってしまい、それを見てたヨハンが「おや」と俺が見ていた窓の方を見て、パタリと本を閉じる。
「では、今日のお勉強はここまでといたしますね。リオ様、お外に出られる際は必ず羽織をお召くださいませ」
「うん、わかった」
小さく返事をして、部屋から出ていくヨハンを見送る。
そして、足音もしなくなったことを確認しゆっくりと扉をあけ、廊下の左右を確認し部屋から出る。
そのまま少し早足で庭までむかい、両手を擦りながら「はぁー」と息を吐くノエルの姿を見つける。
「リオ!!」
俺に気づいたノエルが、俺の名前を呼ぶ。
久しぶりに会ったはずなのに、そんな気がしなくで、でも名前を呼んでくれたことがうれしくて、さらに足を速く動かしてしまう。
「うわ!」
そして、勢いのままノエルに衝突して、鍛えてなどいないノエルはそのままリオとともに地面に倒れた。
「いったた……。リオ、大丈夫?」
飛び込んだのはこちらなのだから、大丈夫かどうかは、こちらが確認しなければいけないことなのに、ノエルは俺の体に怪我がないか確認をしてくる。
そんな姿にまた、ふっと笑いがこぼれてしまう。
「もう!リオ!危ないことはしたらだめだよ!体は大事にしなきゃ!」
「そういうお前だって、体が弱いってヨハンから聞いたぞ。もう体調は大丈夫なのか?」
よいしょ、とノエルに覆いかぶさっていた体をどけ、隣に座る。
その行動を見て、ノエルも俺の隣に座った。
「大丈夫だよ!お爺ちゃんはいつも大げさなんだ!お母さんたちが病気で死んじゃったのもあって、僕が少しでも風邪をひいてしまうと、すぐに「ベッドに入っておきなさい!」って怒られちゃうんだー」
「病気……」
「うん、僕のお父さんとお母さんは病気で死んでしまったって、お爺ちゃんから物心ついたときに教えてもらったんだ」
「そうか、悪い。辛いことを思い出させちゃって」
「そんなそんな!大丈夫だよ!まだ僕も小さい頃の話だし。それに、今はお爺ちゃんもいるから全然平気!」
「お前は、……。強いんだな」
「ふふ、リオったら、今日はどうしちゃったの、なんか、すごく照れちゃうよ」
ノエルはへへへと笑いながら、両手をこすり合わせる。
だんだんと冷たくなってきていた風は、いよいよ冬の本格的な到来を伝えている。
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