琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

文字の大きさ
40 / 101
第二章「信じる者、欺く者」

冬の訪れ

しおりを挟む
ヨハンとレオヴィクの話を聞いて部屋を飛び出した後、ヨハンが庭まで迎えに来た。
その時に、言いたいことはあったが、結局何も言えなかった。
ヨハンも特に何も話さなかったから、無言のまま部屋に戻る。
戻る途中で、レオヴィクに何か言った方がいいだろうかと考えたが、部屋に入った時、レオヴィクはすでにいなかった。

「レオヴィク様は、本日の事があって、再び作戦会議をするため、戻られましたよ」

俺の疑問をくみ取ってヨハンが声をかけてくれる。
そしてそのまま言葉を続ける。

「リオ様。私めのためにお心を痛めていただき、ありがとうございます」

ヨハンの事を、俺は静かに聞く。

「これからも、ノエルと仲良くしていただけると、この老いぼれは幸せでございます」

どうしてここでノエルの話をするのだろうか。
そう疑問に思いながらも、聞き返すような感情はわいてこない。

「きっと、これからの道行き、ノエルはレオ様のよき友として、お傍にいることでしょう」

ノエルは友達だ。それはこれからも変わらない。
しかし傍にいるかどうかはわからない。
なぜなら自分はレオヴィクの駒であり、駒は使い終わった後は無残にも捨てられるんだ。
捨てられた後のことなど、想像に難しくない。

「そして、レオヴィク様を信じてあげてください。こんな言葉、今は聞きたくないやもしれませんが……」

信じる。それは今となっては少し難しい話だ。
庭で話した後であれば、特に何も疑問に思わず、レオヴィクを信じて、そしてレオヴィクのために動こうとさえ思っていた。
それが今はでは、本当にいい事なのかと、自分の行動と、レオヴィクの行動すべてに疑問を抱いてしまう。
俺はだた、利用される、それでいいはずなのに。

「では、本日はここで失礼いたします。どうぞ、今日はゆっくり休まれてください」

俺は結局、ヨハンには一言も言葉を返さず、ヨハンもその事については何も言わず、部屋を後にした。

二人がいなくなった部屋は、冬の訪れもあってから、いつも以上に寒く感じた。



ーーー


あれから、また数日経ち、特に部屋に誰か不審な人が訪ねてくることも、レオヴィクが部屋に来ることはなかった。
ヨハンは今までと変わらず、俺に文字を教えに来てくれる。
最近では、文字を書くことも教わりだして、今まで以上に勉強に熱中することはできた。
しかし、あの一件以来、ヨハンとどう接したらいいかわからず、必要最低限の会話しかしなくなってしまった。
メイドとは元々会話らしい会話はなかったので、一番楽な存在はメイドかもしれない。

そして、ノエルだ。
ノエルは、数日前に起きた出来事を知らない。
当日は風邪をこじらせるかもしれないからと、部屋から出ることをヨハンから禁止されていて、その風邪も治ったことで、今日は久しぶりに庭の仕事をするために、こちらに来ていた。
その姿を窓から見つける。
すると、ノエルは以前言ったように、大きく手を振り、こちらに気づいてもらおうと声を上げていないのにも関わらず、こちらまで声が伝わってくるような、そんな雰囲気で大きく口をパクパクさせていた。

その姿にくすっと笑ってしまい、それを見てたヨハンが「おや」と俺が見ていた窓の方を見て、パタリと本を閉じる。

「では、今日のお勉強はここまでといたしますね。リオ様、お外に出られる際は必ず羽織をお召くださいませ」

「うん、わかった」

小さく返事をして、部屋から出ていくヨハンを見送る。
そして、足音もしなくなったことを確認しゆっくりと扉をあけ、廊下の左右を確認し部屋から出る。
そのまま少し早足で庭までむかい、両手を擦りながら「はぁー」と息を吐くノエルの姿を見つける。

「リオ!!」

俺に気づいたノエルが、俺の名前を呼ぶ。
久しぶりに会ったはずなのに、そんな気がしなくで、でも名前を呼んでくれたことがうれしくて、さらに足を速く動かしてしまう。

「うわ!」

そして、勢いのままノエルに衝突して、鍛えてなどいないノエルはそのままリオとともに地面に倒れた。

「いったた……。リオ、大丈夫?」

飛び込んだのはこちらなのだから、大丈夫かどうかは、こちらが確認しなければいけないことなのに、ノエルは俺の体に怪我がないか確認をしてくる。
そんな姿にまた、ふっと笑いがこぼれてしまう。

「もう!リオ!危ないことはしたらだめだよ!体は大事にしなきゃ!」

「そういうお前だって、体が弱いってヨハンから聞いたぞ。もう体調は大丈夫なのか?」

よいしょ、とノエルに覆いかぶさっていた体をどけ、隣に座る。
その行動を見て、ノエルも俺の隣に座った。

「大丈夫だよ!お爺ちゃんはいつも大げさなんだ!お母さんたちが病気で死んじゃったのもあって、僕が少しでも風邪をひいてしまうと、すぐに「ベッドに入っておきなさい!」って怒られちゃうんだー」

「病気……」

「うん、僕のお父さんとお母さんは病気で死んでしまったって、お爺ちゃんから物心ついたときに教えてもらったんだ」

「そうか、悪い。辛いことを思い出させちゃって」

「そんなそんな!大丈夫だよ!まだ僕も小さい頃の話だし。それに、今はお爺ちゃんもいるから全然平気!」

「お前は、……。強いんだな」

「ふふ、リオったら、今日はどうしちゃったの、なんか、すごく照れちゃうよ」

ノエルはへへへと笑いながら、両手をこすり合わせる。
だんだんと冷たくなってきていた風は、いよいよ冬の本格的な到来を伝えている。
それにしても、部屋はあんなに寒かったのに、この庭、どうしてこんなに暖かく感じるんだろう
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷酷なミューズ

キザキ ケイ
BL
画家を夢見て都会へやってきた青年シムは、「体液が絵の具に変わる」という特殊な体質を生かし、貧乏暮らしながらも毎日絵を描いて過ごしている。 誰かに知られれば気持ち悪いと言われ、絵を売ることもできなくなる。そう考えるシムは体質を誰にも明かさなかった。 しかしある日、シムの絵を見出した画商・ブレイズに体質のことがばれてしまい、二人の関係は大きく変化していく。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

処理中です...