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第二章「信じる者、欺く者」
結びなおされた心 ーレオヴィク視点ー
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ノエルの話を聞き、俺は思わず身震いをしてしまった。
ノーバイデン教団が厄介な宗教団体という事はわかっていたが、まさかここまで手をだしているとは思わなかった。
今までアレンと、ヨハンと共もにいろいろな作戦を考えていたが、その作戦が通用しないのではないかと思わざるをえなかった。
そして、ヨハンは話しているノエルを思いっきり抱きしめている。
その行動にノエルもまた涙を流し、小さいけれども嗚咽がこちらまで聞こえてきた。
恐らくノエルは、軽い洗脳状態にあったのだろう。
しかも、洗脳状態とは言え、ノエルの願いが叶うかもしれないという希望から、自身の気持ちも相まって簡単な洗脳でもノーバイデン教のやつの思うままになってしまったのだろう。
俺もヨハンも、ノエルになんと言葉をかければいいのかわからず、黙っていた。
すると、嗚咽が少しおさまってきて、再びノエルが話を始める。
「ぼ、ぼく、リオを連れて行かなきゃって、合わせなきゃってなっちゃったんだ……。それで今日、あの抜け穴から外に、出ることを、あの人につた、えて。そしたら、あの人はそこに立ってて、でもそこに立ってた男の人が、前にリオと一緒にいるときに出会った、、ノーバイデン教の人だってわかって、怖くなって、それでーー」
「まて、お前たちはノーバイデン教のやつと既にあっていたのか?」
俺は、思わずノエルの言葉を遮ってしまう。
しかし、これに関しては聞いておかなければいけないことだった。
俺はリオからそんな話は聞いていないし、ヨハンの方を見れば、ヨハンも全く知らないというように、こちらを見ていた。
「う、うん、実は少し前に、あの抜け穴から市街地に遊びに、行ったことが、あって…ーー」
その帰り道でノーバイデン教のやつに出会ったと、当時の様子をノエルは話してくれたが、先ほどまで感じていた苛立ちが再び沸々と沸き上がってくる。
もうこの際、抜け穴から外に出ていたという事はいいだろう。いや、𠮟るべきところではあるのだが。
それよりもだ。
どうして、リオは言わなかったのか。
どうして、リオは俺に相談をしてくれなかったのか。
相談をするような仲では、ないという事なのだろう。
では、ヨハンにすら話していないのはなぜだ、と考えたところで答えはすぐに出た。
ヨハンを囮に使ったあの日から、少しばかりほどけていたと思っていたリオの心の紐が、またきつく結ばれてしまったからだ。
それを突き付けられ、俺は、どうにも息がしづらいような、心の痛くなるような、そんな感情に押しつぶされそうになった。
「ノエル、すまない。続けてくれ」
俺は、ノエルの話を遮っていたという事を思い出し、再び話してもらおうとノエルに伝える。
ノエルは「はい」と一回頷くと、話を続けてくれた。
「ノーバイデン教の人っていうことが分かったから、僕はリオに来たらいけないことを伝えようと思ったんだけど、その人……ゼリウスって人が僕の肩を思いっきり掴んで、そしてすごい不気味な笑顔で僕の事を見てきて、僕、……。僕何も、話せなくなっちゃって、」
齢14の子供だ。大人の男から、悪意のある笑顔を向けられれば、誰だって口を開くことはできなくなる。
それはノエルのせいでも何でもない。
ヨハンも同じことを思ったのだろう「大丈夫」と背中をゆっくり撫でていた。
「そしたら、リオがこっちに来ちゃって、それで、ゼリウスは、僕を、……」
そこまで話すとノエルは「うっ」と口元を抑え、そして自身の心臓あたりを見る。
その部分は、不自然に服だけが穴の開いている場所だった。
そうして察した。おそらく、ノーバイデン教ーー名をゼリウスという男に刺されたのだと。
しかし、なぜか。今のノエルの体には傷の一つもついていない。ただ、服が不自然に破れているだけなのだ。
これと同じようなことが、以前もあった。
ヨハンの怪我が治っていたあの日。あの日も、ヨハンはリオと共にいたのだ。
「僕、あの後から何が起きたかわからなくて、気付いたらレオヴィク様に助けてもらっていて…、そして、リオが、、いなくなってて……」
「ありがとうノエル。たくさんお話をしてくれて。いったん休みなさい。よく頑張ったね」
ヨハンがノエルにそういうと、ノエルは再びヨハンに抱き着く。
「レオヴィク様、おそらくリオ様はノーバイデン教の元におります。しかし、そうなると我々では簡単に手を出すことが……」
「あぁそうだな。ひとまずこの事をアレンにも伝えて、早急にリオの居場所を突き止めなければならない」
俺は、ぎゅっと拳を握り、そしてその拳を自身の太ももにドスンと落とす。
痛みはあるものの、こんな痛み、ノエルやリオに比べたらと考えたところで、俺は一つの仮説を立てた。
ヨハンもノエルも怪我を負っていたというのに、それは綺麗になっている。
そして共通点はリオのみ。
「リオの、首飾り……か?」
俺がポツリと呟く。するとノエルが再び口を開いた。
「そういえば…、僕、刺された、あと、夢の中?あれは死後の世界なのかな」
ノエルはぼそりと呟きながら言葉を続けていく。
「そこで炎みたいなものに包まれて、すごく暖かい気持ちになったんだ……。あれは何だったんだろう」
ノエルの言葉を聞き、俺はハッとした。
急いで調べなおさなければいけないことがあると感じ、俺はヨハンに「すまない」と一言告げると、ヨハンは「えぇ承知しております」と返答が来たため、勢いよく立ち上がり、そして部屋を出て自分の屋敷まで走った。
ノーバイデン教団が厄介な宗教団体という事はわかっていたが、まさかここまで手をだしているとは思わなかった。
今までアレンと、ヨハンと共もにいろいろな作戦を考えていたが、その作戦が通用しないのではないかと思わざるをえなかった。
そして、ヨハンは話しているノエルを思いっきり抱きしめている。
その行動にノエルもまた涙を流し、小さいけれども嗚咽がこちらまで聞こえてきた。
恐らくノエルは、軽い洗脳状態にあったのだろう。
しかも、洗脳状態とは言え、ノエルの願いが叶うかもしれないという希望から、自身の気持ちも相まって簡単な洗脳でもノーバイデン教のやつの思うままになってしまったのだろう。
俺もヨハンも、ノエルになんと言葉をかければいいのかわからず、黙っていた。
すると、嗚咽が少しおさまってきて、再びノエルが話を始める。
「ぼ、ぼく、リオを連れて行かなきゃって、合わせなきゃってなっちゃったんだ……。それで今日、あの抜け穴から外に、出ることを、あの人につた、えて。そしたら、あの人はそこに立ってて、でもそこに立ってた男の人が、前にリオと一緒にいるときに出会った、、ノーバイデン教の人だってわかって、怖くなって、それでーー」
「まて、お前たちはノーバイデン教のやつと既にあっていたのか?」
俺は、思わずノエルの言葉を遮ってしまう。
しかし、これに関しては聞いておかなければいけないことだった。
俺はリオからそんな話は聞いていないし、ヨハンの方を見れば、ヨハンも全く知らないというように、こちらを見ていた。
「う、うん、実は少し前に、あの抜け穴から市街地に遊びに、行ったことが、あって…ーー」
その帰り道でノーバイデン教のやつに出会ったと、当時の様子をノエルは話してくれたが、先ほどまで感じていた苛立ちが再び沸々と沸き上がってくる。
もうこの際、抜け穴から外に出ていたという事はいいだろう。いや、𠮟るべきところではあるのだが。
それよりもだ。
どうして、リオは言わなかったのか。
どうして、リオは俺に相談をしてくれなかったのか。
相談をするような仲では、ないという事なのだろう。
では、ヨハンにすら話していないのはなぜだ、と考えたところで答えはすぐに出た。
ヨハンを囮に使ったあの日から、少しばかりほどけていたと思っていたリオの心の紐が、またきつく結ばれてしまったからだ。
それを突き付けられ、俺は、どうにも息がしづらいような、心の痛くなるような、そんな感情に押しつぶされそうになった。
「ノエル、すまない。続けてくれ」
俺は、ノエルの話を遮っていたという事を思い出し、再び話してもらおうとノエルに伝える。
ノエルは「はい」と一回頷くと、話を続けてくれた。
「ノーバイデン教の人っていうことが分かったから、僕はリオに来たらいけないことを伝えようと思ったんだけど、その人……ゼリウスって人が僕の肩を思いっきり掴んで、そしてすごい不気味な笑顔で僕の事を見てきて、僕、……。僕何も、話せなくなっちゃって、」
齢14の子供だ。大人の男から、悪意のある笑顔を向けられれば、誰だって口を開くことはできなくなる。
それはノエルのせいでも何でもない。
ヨハンも同じことを思ったのだろう「大丈夫」と背中をゆっくり撫でていた。
「そしたら、リオがこっちに来ちゃって、それで、ゼリウスは、僕を、……」
そこまで話すとノエルは「うっ」と口元を抑え、そして自身の心臓あたりを見る。
その部分は、不自然に服だけが穴の開いている場所だった。
そうして察した。おそらく、ノーバイデン教ーー名をゼリウスという男に刺されたのだと。
しかし、なぜか。今のノエルの体には傷の一つもついていない。ただ、服が不自然に破れているだけなのだ。
これと同じようなことが、以前もあった。
ヨハンの怪我が治っていたあの日。あの日も、ヨハンはリオと共にいたのだ。
「僕、あの後から何が起きたかわからなくて、気付いたらレオヴィク様に助けてもらっていて…、そして、リオが、、いなくなってて……」
「ありがとうノエル。たくさんお話をしてくれて。いったん休みなさい。よく頑張ったね」
ヨハンがノエルにそういうと、ノエルは再びヨハンに抱き着く。
「レオヴィク様、おそらくリオ様はノーバイデン教の元におります。しかし、そうなると我々では簡単に手を出すことが……」
「あぁそうだな。ひとまずこの事をアレンにも伝えて、早急にリオの居場所を突き止めなければならない」
俺は、ぎゅっと拳を握り、そしてその拳を自身の太ももにドスンと落とす。
痛みはあるものの、こんな痛み、ノエルやリオに比べたらと考えたところで、俺は一つの仮説を立てた。
ヨハンもノエルも怪我を負っていたというのに、それは綺麗になっている。
そして共通点はリオのみ。
「リオの、首飾り……か?」
俺がポツリと呟く。するとノエルが再び口を開いた。
「そういえば…、僕、刺された、あと、夢の中?あれは死後の世界なのかな」
ノエルはぼそりと呟きながら言葉を続けていく。
「そこで炎みたいなものに包まれて、すごく暖かい気持ちになったんだ……。あれは何だったんだろう」
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