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第二章「信じる者、欺く者」
玉座に座る神 ーレオヴィク視点ー
しおりを挟むついにその日がやってきた。
今まで、ほどんどの人間が近寄ることのなかった玉座への大扉の前。
俺が率いる騎士団、総勢50名を後ろから見る。
これでも、元々は100人くらいいたのだが、廃れていく街に、この国を離れていくものも多く、気付けば半分に減っていた。
だからこそ、この少ない団員でアンブラリア王家を取り戻すという事は非常に困難を極めた。
琥珀の首飾りを見つけた時に、こちらに運が回ってきたと思っていたが、その首飾りも今は手元にない。
そしてリオもいない。
ノーバイデン教団のやつらがリオの本当の存在に気づいていた場合は、本当に今のこの状況。
アレンの言葉を借りるのであれば「やばい」というやつだ。
しかし、今日の今日までノーバイデン教団はリオの存在を完全に秘匿し、今日の式典は周りを見るに騎士団しかいない。
「正せ!」
俺が団員の横を通り、玉座の大扉前に到着したときに、前列の団員が口を開く。
団員が俺の姿を見て、そして右手の拳を握り、胸の前を持っていくと「ドン」と一度大きくたたく。
今日は全員が軍服を着ているため、少しばかり硬く鈍い音が大扉前に響いた。
「直れ」
団員たちは胸の前の拳をおろし、そして全員がこちらに注目する。
普段の訓練では感じられない空気感に、やはりこいつらはちゃんと騎士なのだなと再確認する。
「今日はノーバイデン教団からの招待により、式典に参列することとなった。民の参列はない。俺たち騎士団と、ノーバイデン教団のみだ。あいつらの思惑はわからん。しかし、気を抜かないよう、必ず俺の指示に従え」
団員達は、私の言葉を聞き終わった後に、右足を軽くあげ、そして「バン!」と地面に足を下す。
50人の足音に少しばかり城が揺れた気がしたが、これはこれで牽制になるだろうと、今から向かう予定の玉座へと体を向ける。
目の前に聳える大扉。騎士団となってから、そして騎士団長になってからも俺はこの扉の向こうを見たことがない。
だからこそ、柄にもなく緊張してしまうが、初めての場所だから緊張をしているのか。
いや、きっとそれだけではないだろう。
リオがいるかもしれない。その気持ちも混ざり合い、今までになく手に汗をかいてしまう。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。
俺も一度右足を軽く上げ、そして地面に自分の足を思いっきり落とす。
一人では先ほどの音にはかなわないが、自分の気持ちを落ち着かせ、そして高ぶらせることはできる。
「行くぞ」
その言葉に後ろの騎士団が動いてくる気配を感じ、俺は大扉に両手を伸ばし、二つの扉を押し込むように前へ進む。
すると、ギギギときしむ音が聞こえながら扉が開いていった。
扉はゆっくりと内側に開いていき、だんだんと軽くなって最後は扉の重さに自分で内側に開いた。
目の前に広がる光景は、今まで見たこともないような場所だった。
「これ、は」
大きく開いた扉の先、そこは赤い絨毯が敷き詰められ、柱には大きなろうそくが何本も立っている。
全ての蠟燭に火がついているが、その火ではこの玉座を照らすほどの明かりにはなりえない。
天井を見れば、大きなシャンデリアが吊り下げられており、そのシャンデリアのみでこの玉座を照らしていた。
明かりは決して明るくはない、まるで琥珀色のような淡い金色の光だった。
赤い絨毯から玉座まで伸びる道に、白いローブでフードを目深にかぶり、首元に教団の首飾りを付けた信徒たちが両端に並び、全員が両膝をつき胸元で両手を握って俯いている。
まるで祈りを捧げているかのような。
その信徒たちをたどり、その先。赤い、大きな玉座がある。
絨毯とは違う赤。少し鈍い色の赤だった。
その玉座に座っている人物を目にして、思わず声を漏らしてしまう。
「リ、オ…」
騎士団も玉座の異様な雰囲気を感じ取り、俺が動かなくなった後も何も言わずに全員がそこに立っている。
すると、玉座を見ていた俺の視界に一人の男が入ってくる。
「レオヴィク騎士団長、よく来てくださいました。神はあなた方を歓迎いたします」
「神、だと?」
俺の前にいる信徒の顔は見えない。しかし同じようにローブと首飾りを付けている。
「さぁさぁ、あちらへ。騎士団の皆様の位置はあちらになります」
そう言って信徒は俺たちが行くべき場所を手で指し示す。
そこを見れば、並んでいる右側の信徒たちの後ろ側。玉座からは一番遠い位置だった。
「式典が始まりますゆえ、お急ぎください」
目の前に立つ信徒から視線を逸らし、後ろの玉座をもう一度見ようとするが、その視線を遮るように信徒も体を動かす。
「チィッ」
俺は、舌打ちをした後、騎士団に伝える。
「全員、俺についてこい」
後ろから聞こえてくる大きな、足踏み一つ。その音を聞いて信徒たちが「ヒッ」「こ、これだから騎士団は…」など、悪態をついている声が聞こえてきたが、俺たちは無視をして指定の場所に移動する。
移動しているときに横目で玉座を見る。
見間違いではなかった、信徒たちと同じ白いローブを着て首元には琥珀の首飾り、そして頭には草で編まれたような頭飾りがついていた。
そして、その視線は一度もこちらに向かず、ただ自分の足元を見ている。
全く感情がないかのようにピクリとも動かない。
「お集りの皆様、お待たせいたしました。これより、神の顕現を祝う式典を執り行います」
リオの隣、急に現れたようにも見えた男が大きな声を出す。
しかし、周りの信徒とは違う雰囲気があり、フードも被ってはいない。
「アモン、神官」
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