琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

決意と覚悟 ーレオヴィク視点ー

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冬真っただ中の市街地。
時刻もそろそろ太陽が沈むころで、寒さが一層体に突き刺さる。
しかし、この寒さの中でも屋台は通常営業だ。
なぜなら、それしか稼ぐ方法がないから。
アンブラリア王家がこの世を去り、アンブラリア王国は衰退の一途を辿っている。
だんだん貧しくなる街に、城だけが異様な豪華さを醸し出している。

人の足が速い市街地を歩き、目当ての屋台の前で止まる。

「らっしゃい!牛串、何本かね」

「久しぶりだな、テーラー」

俺は、屋台の男に声をかける。
犯罪組織の元ボス、テーラーは俺の声を聞き、目を見開いて固まる。

「テーラーさん!大丈夫ですよー!別に捕縛しに来たわけじゃないですから」

アレンの言葉に、テーラーの肩から少しだけ力が抜ける。

「ど、どんな御用で…、」

「あぁ。少し話がしたい。時間を作れるか」

俺は努めて冷静にテーラーに話しかける。
近づきつつある真実に、はやる気持ちを必死に抑える。

「あ、はい。大丈夫です。今日はもう牛串も売れなさそうなんで、店じまいとしますよ」

テーラーは慣れた手つきで、店じまいを初めて隣の屋台の店主にも「今日は帰るよ」と声をかける。
そして、片付けが終わったことを俺たちに伝えると、「私の家でいいですか」と聞き、俺たちは頷いて、テーラーの後をついていく。

少し歩くと、同じような家が複数軒ならなんだ通りにつき、そのうちの一軒に入っていく。

「狭いですが、どうぞおかけください」

テーラーは俺たちにそう言い、キッチンへと消えていく。
家の中は質素なもので、かけろと言われた場所も、木から掘り出したままの椅子だった。
しかし、それに関して何かを言いに来たわけではない。
俺たちは何も言わずに椅子に座る。

「大したもんは出せずすみません、こちらお口に会えばいいのですが…」

そういって、テーラーはマグカップを二つ持ってきてくれた。
どちらも湯気が立っており、中をのぞけばミルクが多めの紅茶だった。

「すみません、紅茶も高級品なもんで、そんなに多くは使えず…」

テーラーは何度もすみませんと謝るものの、これは市民たちが悪いわけではないのだ。

「いや、むしろすまない。ここまでさせてしまって」

俺はテーラーに言うと、「いえいえそんな、」と小さく言葉をつぶやく。

「来て早々申し訳ない、早速本題に入ってもいいか」

早く聞き出したい気持ちが前に出てしまい、思わずせかすような口調で話してしまう。
しかし、テーラーは気にすることもなく「リオの、ことですか」と質問を返す。

「あぁ、察しの通りリオについて聞きたいことがあって、こちらに来た」

「そろそろ来る頃かとは思っていたんです」

「そろそろ?」

テーラーは、俺たちにマグカップを渡した後に、自分のマグカップも持ってきていた。
両手でマグカップを口元に持っていき、そして一口飲む。
ふぅと息を吐きながらマグカップを机の上におくと、俺たちを見て覚悟を決めた顔で話し出す。

「最近ノーバイデン教団の信徒たちがここをうろつき始めました。前までは姿すら見なかったのですが。でも、やつらが動き出したという事は、おそらく、リオは……」

ここまで話したテーラーを見て、俺とアレンは確信した。
テーラーはリオについて重要な何かを知っていると。
そう感じた俺たちは、今までの起きたことを全てテーラーに話すことにした。

「なるほど。やはりアモン神官は動いたのですね」

テーラーは俺の話を聞いて驚くこともなく、また一口、マグカップから飲み物を飲む。
ことり、とマグカップが机に置かれる音が鮮明に聞こえたかと思うと、テーラーが席を立つ。

「しばらくお待ちください」

そうして、アレンと共に無言のままテーラーがもどるのを待つ。
すると、テーラーは一冊の本と、丸められ紐で止められている紙を携えて戻ってきた。

「お二人には、これを使いながらお話させていただきたいのですが、一つ確認させてください」

「なんだ」

テーラーは持っていたものを机の上に置き、再び椅子に座る。
すると、力強い目つきでこちらを見て問いかける。

「お二人は何があってもリオを守ってくれますか」

テーラーの質問に、俺もアレンも言葉をなくす。
今更聞かれたところでyes以外の答えは見つからない。
しかし、それをテーラーから聞かれるとは思わず、驚いてしまった。

「お二人がリオを絶対に守っていただけるというのであれば、私はすべての真実をお話しましょう」

俺とアレンは目を見合わせる。
言葉を交わす必要もない。

リオとはスラムでの捕縛の際に初めてあった。
最初は琥珀の首飾りを付けている子どもとして、ただの利用対象だった。
しかし、次第にリオの過去や、リオの仕草、リオの言葉に自分の感情が動く事があった。
ノーバイデン教団に連れ去られたと知った時は腸が煮えくり返るかと思うくらいの激情を覚えた。
そして自覚する。
俺は、リオをただの利用対象としてはもう見ていないという事を。
ひとりの加護対象として、彼を守りたいと考えていたという事を。

「我が命に代えて、必ずリオをお守りいたします」

「団長の名のもとに、同じくリオ君をお守りすることを誓います」

「ありがとうございます」

どうしてか、テーラーに敬語でリオへのを守ることを宣言しなければいけないと感じてしまった。
それまでに、今目の前にいるテーラーは、ただの犯罪組織の元ボスではなく、庶民らしからぬ雰囲気を感じたのだ。

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