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最終章「繋ぐ者、託される者」
語られる真実 ーレオヴィク視点ー
しおりを挟む「ありがとうございます。貴方たちにリオを託してよかった」
テーラーはそう言うと、机に置いた丸められた紙を手に取る。
そして紐をゆっくりとほどき、紙を机の上に開いていく。
それは家系図のようなものだった。
「これは、我がアルテミア家の家系図です」
「アルテミア家、……?」
俺はその家名に聞き覚えがなかった。
「ご存じなくとも無理はございません。この国の貴族ではないのですから。隣の国、ハマ王国の貴族名でございます」
ハマ王国、砂漠に覆われた、こことは気候が全く違う国。
祖父の手記にもハマ国の事については記載があった。
あいさつ回りで訪れた国の一つで、最後の国だったはずだ。
ハマ王国は雨があまり降らず、そのことで昔はアンブラリア王国からも多くの支援を行っていた。
しかし、アンブラリア王家が処刑後、全ての交易がなくなり、それ以来ハマ王国の現状を知る術は我々にはなかった。
「こちらのお名前は、ご存じですか」
テーラーが家系図の書かれた紙のある場所を指さす。
そこに書かれていた名前は
「マルセリナ……、アンブラリア」
「え、この名前って、今日だんちょーが言ってた処刑を免れた唯一の生き残り…、」
「はい。この方は、アンブラリア王家三代目国王、セヴァリウス国王の四女、マルセリナ様ございます」
「…」
困惑が隠せずに家系図を凝視してしまう。
今まで探しても探しても出てこなかったアンブラリア王家、唯一の生き残りである王女殿下の名前。
いくら考えても答えは湧いて出てこない。
アレンも戸惑っているのか、視線が家系図と俺を何度も行き来している。
「マルセリナ様は処刑の逃れた後、従者と共にハマ王国へとこられました。そして、わがアルテミア家と婚姻関係を持ち、アンブラリア王家の血筋を絶やさないようお力添えさせていただきました」
何とも信じがたい話ではあるが、確実に国外に逃げられていることは想定済みであった。
しかし、アンブラリア王家の血筋を絶やさないようにと、隣国の貴族が協力してくれているとは思わず、俺は疑いの目でテーラーを見てしまう。
「疑いたくなる気持ちもわかります。順を追ってお話いたしますので、しばらく私の昔話にお付き合いください」
そう言って、テーラーは話を始める。
「私の祖父がハマ王国の宰相としてお仕えしている時、アンブラリア王国、三代目国王セヴァリウス王が我が国にやってきました。その時に祖父はアンブラリア国王の案内係を拝命しておりました」
テーラーの話によれば、アルテミア家は代々、王家の宰相として仕えていた。
セヴァリウス王が滞在中、テーラーの祖父は、俺の祖父、エルドリクと行動を共にしていたらしい。
「エルドリク様は、それはそれは優秀な騎士だったと、祖父から話を聞きました。そして、セヴァリウス国王はハマ王国の市街地を回るといい、祖父とエルドリク様で共に回ったのですが、その日の夜、祖父の元に、国王だけが来れました」
「国王だけでか?」
「はい。祖父も最初は驚いたようですが、国王の話を聞いて、何と慈悲深いお人だと感心し、国王のある願いを聞いたそうです」
「ある願い、とは」
「ハマ王国で苦しんでいる民を助けたい、と」
今でこそ、アンブラリア王家の話はこの国ではできないが、よその国で、このようにアンブラリア王家の話が聞けるとは思っておらず、思わず顔がほころびかける。
しかし、民を助けたいとはいったいどういう事なのだろうか。
「当時のハマ王国は、日照りが続き水不足でした。そのため、市街地では病気になるものも多く、また食事もろくに取れず、そのまま死んでしまうものも多くおりました。それをセヴァリウス国王は目の当たりにしたのでしょう」
まるで、今のアンブラリア王国のようだ、と思った。
城だけが豪華になっていくこの様は、ハマ王国とは違うだろうが。
「どう助けるのか、祖父に話してどうにかなる事なのか、と祖父も思ったそうですが、その話をしているときのセヴァリウス国王は、とてもまっすぐな目をしていたと聞いております」
俺もアレンも、テーラーの話を黙って聞く。
「その目を信じ、祖父はどのように助けるのか聞いたところ、琥珀の力を使うと仰ったそうです」
「琥珀の力!?」
俺は思わず、声を出してしまう。
今まさに調べなければならない事柄でもあったため、思わぬ情報に口を挟まずにはいられなかった。
「えぇ。何でも王家の血筋を持った者のみが使うことができる、琥珀の力があると」
「団長、もしかして」
「あぁおそらくな」
俺とはアレンは視線を合わせることなく、互いの考えていることを肯定する。
「その様子ですと、実際に目の当たりにしたのですね」
「あぁ。ノーバイデン教団のやつらの手によってな」
「それは……ーー」
テーラーは言葉を失う。おそらく、どういうことが起きたのかを察したのだろう。
「そうですね、お二人が考えておられる事となんら相違はないと思いますが、琥珀の力を使って、傷ついた民たちを癒すのだと仰ったそうです」
やはり、と全てが繋がりかける。
まだ断片的ではあるものの、リオの血筋、琥珀の首飾り、治癒の力。
ノーバイデン教団が神と言っているのも頷ける気がしたが、到底許される行為ではなかった。
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