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最終章「繋ぐ者、託される者」
希望の光 ーレオヴィク視点ー
しおりを挟む「セヴァリウス国王は、祖父に実際にその力をお見せしたそうです。自身の指に少し傷をつけ、その傷を琥珀の灯火でもって治癒したと、聞いております」
まさに、自分たちが目にした光景だった。
琥珀の首飾りからあふれ出た灯火が傷を治癒していく。
本や、手記に書かれている内容そのものでもある。
「それを見て、祖父はセヴァリウス国王のために、その夜、城から共に市街地へむかい、国王が満足するまで同行したそうです」
「満足、するまで」
俺は、不安を覚える。
宝石と妖精の本や、手記、そしてこの間の式典での一幕。
ある仮説が、真実となってしまう。
「はい。セヴァリウス国王が倒れるギリギリまで、その御業を続けたそうです」
「それは、国王の生命力、を…」
俺は自分で立てた仮設を真実にしたくなかった。
もしそうであれば、今ノーバイデン教団にいるリオは非常に危険な状態なのだ。
「はい。セヴァリウス国王は、琥珀の力を使用するとき、必ず自身の生命力を使用しなければならない、と」
やはりそうであった。
琥珀の力は非常に素晴らしいものではあるが、それと引き換えにやはり代償はあるのだ。
ノーバイデン教団での胸糞悪い式典で、祭壇にいた男はほとんど、その命は終わりに近づいていた。
そんな男の傷を治してしまったのだ。
そして、その時に飛び出たたくさんの灯火。きっとあれがリオの生命力なのだ。
そう結論づけ、俺は拳を握る。
「しかし、セヴァリウス国王はそんなに多くは消費しないといっていたそうです」
「多くは?」
「はい、死者を蘇生するとなれば話は別ですが、病気や、ちょっとした怪我であれば複数人を治癒することができると。そして、その日しっかり休息を取れば問題はないと、そう言っていたそうです」
「蘇生は、別の話、なのか」
「あ、はい。祖父曰く、死者の蘇生はほぼ自分の生命力を分け与えることになるらしく。簡単に言うと、自分の寿命でもって相手を生き返らせるといっていたそうです。なので、基本的にはそこまではしてはいけないと、王家では伝えられているようです」
俺とアレンは息をのむ。
リオは一度やっているのだ、完全な蘇生を。
ノエルは心臓を貫かれていた。
そしてノエルの話からも、一度命は離れていたように思う。
そのノエルをリオは生き返らせ、そして怪我まで直している。
一刻の猶予も許さない状態であるという事が、改めてわかった。
「リオは、まさか」
俺たちが黙り込み、そしてアレンに至っては青ざめているような表情をしていることから、テーラーも察したようで、三人で冷汗をかき、そして無言の時間が訪れる。
最初に口を開いたのはテーラーだった。
「では急ぎましょう。今、リオはノーバイデン教団にいるのでしょう」
「あぁそうだ」
「であれば、早く連れ戻さなければ。ノーバイデン教団について私はそこまで知識はありませんが、リオがいていい場所ではないという事はわかります」
テーラーの言葉に、俺もアレンも無言でうなずく。
そしてテーラーは話を続ける。
「では、私の昔話も残り少しです。これを聞いていただいた後は、リオ奪還のお話をさせてください」
「な、何か考えがあるのか」
「はい。でもまずは、疑問を全て晴らしましょう」
そう言って、テーラーは話を進めていく。
国王が、ハマ王国の民を癒したことを、アルテミア家はハマ王国の国王にも伝えなかったという。
なんでもアルテミア家にも、病に倒れた子どもがおり、その子どもも治癒の力で元気になったとか。
そのお礼として、アルテミア家はハマ王国からではあるが、何かあった時には必ず助けになると、セヴァリウス国王と話をした。
そうして、起こったのがアンブラリア王国の暴動。
騒ぎを聞きつけ、テーラーの叔父にあたる、当時のアルテミア家の次期当主が、国境近くまで来ており、そのまま従者と共に逃亡してきた、当時10歳のマルセリナ様と、ハマ王国に逃げ延びたとこの事。
その後、王家の血筋が絶えてはいけないと、次期当主の息子と15歳になったマルセリナ様は婚姻関係を結び、一人の娘を出産。
娘の名をカリスタという。
そしてカリスタ様は、のちにアルテミア家を出て、アンブラリア王国から来ていたという商人、ボイルと結婚。
いずれはアンブラリア王国に戻り、王家を復活させなければいけないという事で、あえて娘のカリスタにはアンブラリア王家の事は伝えず、好きなように暮らすことを許容していたとのこと。
「私の叔父、同時のアルテミア家当主はマルセリナ様と、のちに王家再臨のため暗躍するつもりだったのですが…」
「ノーバイデン教団か?」
「いえ、さすがに、ノーバイデン教団も他国には手出しできなかったようで」
はははと笑いながら、テーラーは話を続ける。
「元々、マルセリナ様が秘匿されていた理由は病弱だったからなのです。娘、カリスタ様をお産みになってから病状はどんどん悪化し、25歳という若さでお亡くなりになってしまいました」
「なるほど、それでカリスタ様は王家の事を知らぬまま、アンブラリア王国の商人と結婚し、そしてリオを出産した、と。しかしなぜリオはスラムにいたんだ」
「実は、そこに関しては私も分からないのです、カリスタ様を探すよう命が下り、私はあえてスラムに行き、そしてそこでリオを見つけたのです。すぐにわかりました。琥珀の首飾りと、マルセリナ様の瞳の色と同じ、翡翠色。当時はとても濁ってしまっていましたがね……」
「そうか、まだつながらない部分もあるが、テーラーのおかげでいろいろと話がまとまりそうだ」
「いえいえ、私の話を聞いてくださりありがとうございます。さて」
そう言うとテーラーがパンと手を叩く。
「ここからはリオの奪還のお話になるのですが、少し私に案がございます」
「ひとまず聞かせてもらおう」
「はい、実は………」
テーラーの奪還案を聞き、今はそれしかないと、アレンと話す。
まずはリオを、取り戻す。それが最優先事項だ。
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