琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

お披露目式典

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天気は快晴。久しぶりに出た外のまぶしさに目を細める。
俺は足首についていた枷を外され、重みのないままの足で廊下を進む。
服装は、ぱっと見変わっていないようにも思うが、布が少し硬いので新品なのだろうという事は想像できる。
頭には草のようなもので作られた冠を付けており、まるで神話に出てくる神そのもののような。
とはいえ、神話というものは読んだことがないから、想像の範疇でしかないのだけど。

後ろにはタロルがいる。
ピタリとくっついて歩いていて、時々足を踏みそうになるけど、今はこの近さも心地よく感じるから特に何も言わない。
そして前にはノーバイデン教団の信徒が4人、2列に並び、その一番前にはアモンがいる。
アモンを先頭に廊下を進むと、見たことのある景色に変わった。

琥珀の首飾りを通してみた、セヴァリウス王お披露目のバルコニーだ。
まさかの場所に、運命的なものを感じるが、今回は王様のお披露目ではない。
神と言われた少年の嘘のお披露目式典だ。

タロルが心配そうにこちらを覗く。
俺は「大丈夫だよ」と一言言って正面を見据える。
バルコニーにアモンが出る。
すると、ざわざわと民衆のこえが聞こえてくる。

記憶で見た時は、大歓声の中でセヴァリウス王が手を振っていたが、今回はそうもいかないだろう。

「お待たせいたしました。皆様についにお見せすることができます」

アモンが両手を広げて、民衆に語り掛けるように話し始める。

「このアンブラリア王国は、愚王の行いから衰退の一歩を辿り、今では民たちの生活も苦しいものとなってしまいました。しかし、それも今日まで。」

民衆のざわめきは収まらない。
ここからでは距離が遠いため、どういったことを口々に話しているかは想像もできない。

「長らく空席だった王座をついに埋めるときが来たのです」

アモンが言い放った言葉にざわめきが大きくなり、こちらまで少し届きだす。

「空席だって?」
「王はいるんじゃなかったのか」
「疑わしいと思ってたのよ」
「でも王がいるからこの国でまだ生活できているのでは」

各々に口にする内容は違うけれども、皆思っているの事は一緒だ

『王座が空席という事は知らなかった』

この街では昔から、王家に関することを口にしてはいけないと、何となく暗黙のルールとして存在していた。
それがいつ、どこから、誰の口からそういったことを言われたかはわからないが、皆が一様にそのように考えていた。
だから、王座が本当は空席なのではないかという審議すらも誰とも行えず、暴動の後に王となりうる器の人物が代わりに座っていると、そう思い込んでいた。

「民衆の皆々様には、今日まで真実をお伝え出来なかった事、心苦しく思いますが、今日!本当の王……いいえ、神がこの場に顕現したことを皆様にお知らせいたします!」

その言葉を皮切りに、アモンの後ろにいた信徒たちが後ろを振り返り、そしてこちらを向いて頭を下げる。
まるで、どうぞ前へお進みください、とでもいうように。

俺は、一度タロルの方を見た後、タロルがコクリと頷いたことを確認し、前へと進む。
一歩ずつ進むその足は、足枷が外れているはずなのにとても重たくて、バルコニーまでの距離も遠く感じた。

「今から皆様にその姿をお見せいただく、我らの神。リオ様でございます」

その言葉のタイミングで俺はバルコニーにでる。
そして、バルコニーから覗く民衆の様子に絶句した。
琥珀の記憶で見たあのきらびやかな景色など微塵もなく、誰もが疑いの目でこちらを見て、誰もが声を上げずに黙ってこちらを見ていた。

あまりのいたたまれない雰囲気にゴクリとつばを飲み込む。

「ご安心ください。リオ様は間違いなく我々の神であらせられます。では、神のという証拠を今から皆様にお見せいたしましょう」

来た。
そう思ったときに、アモンが俺の方をみて「よいですか?」と小声で聞いてくる。
俺は「うん」と頷き、アモンの隣まで進む。

「我々の神は、記憶と癒しの神。癒しとは人類にとって必要不可欠な存在である。その癒しを、このリオ様は与えてくださるのです」

アモンは俺の方を向き、そしてアモン自身の腕を白いローブからさらす。
そして、アモンの傍に控えていた信徒がアモンへ剣を差し出す。

なんだか…見たことがある光景だ。

俺はふとそう思った。
なんでだろう。こんな風景、見たことはないし、琥珀の記憶でも見たことがない。
真っ黒な視界、急に広がる赤い視界、琥珀の光……。
しき、てん?

そんなことを考えて思考を巡らせている時だった、
アモンに剣を渡した信徒がこちらを見る。

ゼリウスだ。

ノエルを刺した張本人。
どうして今の今まで忘れていたのだろうか。
ノエルが刺されたのは、俺と一緒にいたからという感情が先行していて、ゼリウスの事を完全に忘れていた。
いや、記憶から消されていたのか?

俺が目を見開きゼリウスを見たことで、ゼリウスは何かを思い出したのだろうと察したようだった。
そして俺に向かって一言。

「あの子どもは無事ですか?」

俺は思わずアモンが持っていた剣を奪い取り、そしてゼリウスに向けた。

「リ、リオ様!?」

アモンが驚き、俺を止めようとする。
同じようにタロルも俺を止めようと、俺の傍まで走ってくる。

「ゼリウス!貴様!」

俺は、ゼリウスの歪な笑顔を見て、より感情が高ぶる。
しかし、今ここでゼリウスを刺してしまっては、レオヴィク達の計画に何か支障が出るかもしれない。
そう考えるのに、体はいう事を聞かずに、ゼリウスに向けた剣を振り上げてしまう。

「ゼ、ゼリウス、お前、何をいったのだ!」

アモンも焦っていた。まさか一番近くにいたはずの存在であるゼリウスが、アモンの考えでは追い付かないような行動をしていたから。

「私は何もしておりませんよ。だた、子どもは無事かと、そう尋ねただけです」

タロルに体を掴まれ、振り上げた剣は下せずにいる。
しかし、その光景を民衆は見ている。

先ほどまで静かにこちらを見ていた民衆も、再びざわざわと騒めきだし、悲鳴を上げる声や、恐れる声などが聞こえてきた。

同じくゼリウスもこの光景を見て、そして笑っていた。
次に口を開いた時、全員が絶句することになる。

「アモン神官も詰めが甘いですね。この子どもを本当に神だと信じておられるのですか?」

「え、どういう」

アモンが俺を見る。
俺もゼリウスが何を言い出すのかわからず、思わず上がりきっていた感情が抑えられ、剣をおろしてしまう。

「この子どもこそが、王家の末裔だというのに」

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