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最終章「繋ぐ者、託される者」
信徒の裏切り
しおりを挟む「え」
俺は思わず声を出す、それはアモンも同じようで、俺を見てその後ゼリウスを見て、そしてゼリウスの方に完全に体を向け、ゼリウスの胸倉をつかむ。
「ゼリウス!何を戯けたこと!この方が王家の末裔!?そんな事あるわけがないだろう!」
「どうしてそう思われるのですか?」
ゼリウスは努めて冷静にアモンに聞き返す。
「どうして、って……そんなもの、琥珀の力を使えたからに決まっているだろうが!」
アモンは語気を強くしてゼリウスに怒鳴りつける。
いつも俺に接しているときは、どちらかというと優しそうな雰囲気であったのに。
もちろん不気味な違和感はぬぐえなかったが。
そんなアモンを見てゼリウスがくっくっくっと喉で笑う。
「琥珀の力を使えるのは王家のものだけですよ」
ゼリウスが言う。
俺すらも驚いて、完全に戦意を喪失してしまった。
持っていた剣が手からはなれ、カランカランと音を立ててバルコニーに落ちる。
民衆にはこちらの声が聞こえていないから、何が起きているのかわからないようで、騒めきはどんどん大きくなる。
大きくなっているはずなのに、俺には全くその声は聞こえてこない。
俺が、王家の、末裔?
「アモン神官があまりにもこの子の事を信じておられたので、いつお伝えしようか、このゼリウス非常に悩みました」
やれやれと、両掌を上に向けた状態で首を左右に振る。
その行動にアモンの感情が爆発する。
「ゼリウス!お前!自分が何をやったのかわかっているのか!私にこのような仕打ち!ただで済むと思っているのか!」
「アモン神官、何をおっしゃっているのですか。お立場が危ういのはあなたですよ?」
「なんだ、と」
アモン神官がゼリウスの言葉にたじろぐ。
それを好機と見たゼリウスが立ち上がり、そして俺の落とした剣を拾う。
「アモン神官が民衆の前で、神として紹介したのは王家の末裔。まぁ民衆にはまだそのことは伝わっていないでしょうが…」
手に持っている剣を、自分の利き腕である右手に持ち替え、そして剣先を俺に向ける。
「民衆の位置からでは、紹介した彼が剣を振りかざし、アモン神官に切りかかっているように見えたでしょうね」
「なっ!」
アモンは民衆の方を見る。
恐怖の表情、疑心の表情、怒りの表情、それぞれの表情を浮かべる民衆がいるが、誰一人として喜ばしい表情を浮かべているものはいなかった。
「アモン神官を害そうとしたその彼、彼を民衆の前で消してしまえば事はうまく運ぶかもしれませんねぇ?」
ゼリウスは俺に向けていた剣をおろし、そしてその剣をアモン神官に渡す。
アモン神官は「しかし、神が…」と小さく呟き、剣先は下を向いたままだ。
「アモン神官。神はおりません。元々琥珀の力を使っていたのも、ただの人間です。琥珀の妖精に選ばれた。それが先代アンブラリア王国国王。ノーバイデン教団からの裏切りで王家に琥珀を渡したわけではありません。張本人が琥珀を持ち出し、そして世界を変えようと王になったのです」
アモンは信じられないと、ゼリウスから視線をそらし、そして俺を見る。
そのまま視線は下に下がっていき、そして俺の首から下がっている琥珀の首飾りを見る。
「う、嘘だ、神は…か、かみは…」
アモン神官の視線がきょろきょろと動き、次第に定まらなくなる。
そして、そんなアモン神官をゼリウスは後ろから抱き留め、そして、頭を、撫でる。
「アモン神官、今、目の前にいるのは神ではりません」
もう片方の手でアモンの視線を隠す。
「神はまだ顕現していません。目の前の彼は、神を語る偽りの者。そして、憎き王家の生き残りです」
「おうけの、いきの、こり」
アモンが緩く口を開き、ゼリウスの言葉を繰り返す。
「そうです。だから…ーー」
ゼリウスがこちらを見る。
そして、ニコリと笑顔を見せたかと思うと、どんどん口角が上がっていき、歪な笑みとなった。
「殺しましょう」
そしてその一言を聞いたアモンは。ピクリとも動かなくなった。
ゼリウスがその状況をみて、ゆっくりとアモンの頭と目に置かれた手を外す。
アモンが目を開いたとき、俺を見る。
そして、俺の姿を認識した瞬間に瞳孔が開く。
「!?」
恐怖から声を出したくても、のどが張り付いて音すら出なかった。
俺は一歩後ずさる。
真後ろにいたタロルにぶつかるかもしれないとおもったが、タロルはそのまま俺の横を通り前に出る。
「タ、タロル、まって、前に、出ないで」
俺はタロルを守ると誓った。俺の最後まで、俺の傍にいてと。
だからタロルに前に出られては困るのだ。
俺はタロルよりも前に出ようと、すくむ足を叱責し、太ももを叩いて一歩踏み出す。
しかしタロルがそれを許さなかった。
俺を完全に後ろに隠し、そしてこれ以上前に出ないように、片手で俺の体を後ろに押し込む。
「タ、タロル!!」
俺は叫ぶが、タロルはピクリとも動かない。
こちらを見て頷くこともしない。
「はっ!友情ごっこですか!アモン神官、きっとタロルも王家の仲間です。一緒に殺してしましょう」
ゼリウスがアモンにいうと、アモンは剣を構える。
その構えは一度も剣を触ったことのない人間だとすぐわかるような、無様な立ち姿だった。
しかしだからこそ、どこから、どのタイミング剣が向かってくるのかわからず、誰も動けないでいた。
「リオ、守るのがへたくそでごめんな」
タロルから声が聞こえる。
「タロル?」
俺はまた、レオヴィクの時のように別のところか声が聞こえてくるやつかと思った。
なぜならこの声もまた聞き覚えのある声だから。
「リオ、走れ」
その声をきっかけに、タロルがアモンの方へと向かっていく。
そしてその体に剣が突き付けられる。
背中に見える剣の切っ先に、完全に体に刺さってしまっていることを理解する。
そして突き刺さった瞬間に、今まで目深にかぶっていたフードが外れ、タロルの後頭部が露になる。
ゆっくりと、まるでここの時間だけがゆっくり進んでいるかのように、タロルがこちらを振り向く。
見たくないと思ってしまった。
だって、この声は、
そして振り返った人物と目が合う。痛みに顔をゆがめる、その男の姿を、俺は知らないはずがなかった。
「ボスーーーーーーーー!!」
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