琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

誓う言葉

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「リオ、それでねーー」

「遅くなった」

ノエルと話をしていると、広間の扉が開く。
ヨハンも途中で席を外すと広間から出て行ったが、今広間の扉を開けたレオヴィクの後ろにいた。

「もう戻ってきちゃった…」

ノエルがしゅんと、悲しそうな顔をする。
時々思うのだが、ノエルには犬の耳としっぽがついているような気がする。
今は、耳もしっぽも悲しそうに垂れているのがなんとなく見える。

「悪いな、ノエル。もう一度だけ席を外してくれ」

「あ、あの…」

レオヴィクに言われ、またノエルはすぐに返事をして広間から出ていくかと思ったが、違うようだった。

「どうした」

ノエルがレオヴィクに対して何かを言おうとしている。

「ぼ、僕もここに、いちゃ、いけない、ですか?」

恐る恐るといった感じでレオヴィクに聞くノエル。
レオヴィクとヨハンは、少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐに表情を元に戻し、そしてノエルと視線を合わせるようにレオヴィクがノエルの前に膝をついた。

「ノエルはリオの大切な友達だ。だから俺はノエルの事も守りたい。そのためにはこの話を全て知ってしまうと、危険な目に合わせてしまう。それを避けたいんだ」

「でも、リオは……」

「安心しろ。リオの事は何があっても俺が守る」

レオヴィクの言葉に、今度は俺が驚いた顔をしてしまった。
俺に向けて直接言われた言葉ではないが、あの夜、俺に同じように言ってくれたレオヴィクを思い出す。

「リオの事を守るためにも、危険は少しでも排除したい。わかってくれるか」

ノエルはレオヴィクに言われ、まだ納得はいってなさそうだがコクリと頷いた。

「ありがとうノエル」

レオヴィクがノエルの頭をなで、そしてノエルは俺に「後でね」といって、広間を出ていく。
その姿を全員で見送り、そしてヨハンとレオヴィクは先ほどのように、俺の隣に座る。
右側にレオヴィク、左側にヨハン。
どこを向いたらいいかわからずきょろきょろしていると、レオヴィクに名前を呼ばれる。

「リオ、お前が俺たちを信じていなくても、今はそれでもいい」

俺は、無言でレオヴィクを見る。

「だが、これだけは誓わせてくれ」

そう言うと、レオヴィクはソファから降りて、俺の前に跪く。
先ほどノエルも同じ事をしていたなと思うが、先ほどのノエルとは違い、跪くとレオヴィクとの視線がいつも以上に近くなる。
そうして、レオヴィクは俺の持つ琥珀の首飾りにそっと触れる

「レオヴィク・カストルの名において、私はリオ様をお守りすることを誓います」

そういった後、レオヴィクの手は琥珀から移動し、そのまま今度は俺の頬に触れる。

「今のは騎士団長としての誓いだ。そしてこれは俺の誓い。俺がお前を守る。どんな脅威からもお前を守ってみせる」

レオヴィクはいつもの口調で、俺に伝える。
触れられた頬の暖かさは、初めてではないような気がした。

「俺はお前の盾となり剣となる。お前に害をなすものは、どんなことであっても許さない」

ブラウンの瞳が俺を射抜く。
思わずドキリと心臓が大きく跳ねた。
恥ずかしさから、視線を逸らす。

「俺にお前を守らせてくれ」

俺の頬に触れているレオヴィク手が、親指だけ動き俺の口の近くを撫でる。
くすぐったいような感覚がして、顏ごと逸らしそうになるが、気付けば両手で顔を抑えられ、視界からレオヴィクを消すことができなくなった。

「リオ」

何も答えない俺に、レオヴィクが名前を呼ぶ。
俺は、思わず後ろに頭を下げる。
それでもレオヴィクはついてくるから、口を開いた。

「わっわかった!わかったから!ち、近い!」

そう言うと、レオヴィクは満足したのか、俺から手を離し、また隣に座った。

「わかってくれたならいい」

「レオヴィク様…」

ヨハンは「やれやれ」と顔を横にふっているが、広間からでた後、二人は一体どんな話をしていたというのだろうか。

「さて、では本題に入ろう」

俺だけが取り残されているような気がするが、頬に集まった熱さを逃がすために手で顔を仰ぎつつ、レオヴィクの話を聞いた。

「まずは、お披露目式典のやり直しだ」

「やり直し?」

「あぁ。今回のお披露目式典は、ノーバイデン教団が神の顕現を知らしめるために行った式典だ」

「神……」

そこまで言われて俺は思い出す。
自分が、神と呼ばれていたことを。
今となれば、何ともおかしな話ではあるが、アレンの崇拝ぶりから、本当にそうなのではと思ってしまうときもあった。
しかし、俺は王家の血筋を引く者。だからこそあの力を使うことができたのだろう。

「お前は、神ではなく、アンブラリア王家の人間だ。しかし、アンブラリア王国の人間は王家の事をよく思っていない。だからこそ、今回のノーバイデン教団が行った式典を利用して、本当はあいつらがやっていたことがおかしいのだと、リオの言葉で伝えるんだ」

先の式典は、お披露目どころの騒ぎではなかった。
ゼリウスがアモンを裏切ったことで、アモンは剣を握り、そして民衆が見える場所で、テーラーを…。

「おそらくあの式典の一部始終を見ていた民衆は、ノーバイデン教団の事をよく思ってはいないだろう。とはいえ、先ほど神としてお披露目されかけていたリオをすぐには信じない。そこでだーー」

「俺が琥珀の力を使う」

俺は、レオヴィクが言わんとしていることを理解し、レオヴィクに言わせるよりも自分で言った方がいいと思い、言葉を遮った。

「お前には辛いことかもしれないが、今はその力が唯一の方法なんだ」

レオヴィクは俺の頭に手を置く。
大きな少し硬めの手は、アモンとも、テーラーとも、ヨハンとも違った。

「俺がここにいる意味を、俺は自分で示すよ」

「リオ…」

レオヴィクが、何か言いたそうな顔をするが、俺は琥珀の首飾りを掴み、レオヴィクから顔を逸らす。

俺がここに存在する意味。

レオヴィクが俺を守る理由。

信じたくないわけではないんだ。ごめん、レオヴィク。
俺は心の中でそう呟く。
その時、琥珀の首飾りが少しだけ暖かくなったような気がして、掴んでいた首飾りを握りしめた。


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