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最終章「繋ぐ者、託される者」
行方不明
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まだまだ混乱渦巻くアンブラリア王国にある城、アンブラリア城のてっぺんに掲げられていた赤い旗が取り外された。
それはノーバイデン教団を表す旗だったためだ。
あの後、アモン神官は騎士団に捕縛され、そして、信徒たちも同じように捕縛された。
最終的にノーバイデン教団を裏切ったゼリウスの姿を見つけることはできず、不安は残ったままだ。
そして、テーラーの消息も分からないままだった。
騎士団がバルコニーに乗り込んで、重傷を負ったテーラーを保護しようと、アレンが先陣を切って動いたらしいが、血だらけの剣を握ったまま、呆然としているアモンと、慌てふためく信徒しかいなかったと報告があったらしい。
その事をレオヴィクから聞いた俺は、今、目の前のレオヴィクに深々と頭を下げられている。
「リオ、ごめん。テーラーをすぐに見つけることが出なくて」
まさかレオヴィクにそんなことを言われるとは思っていなくて、驚き後ろに後ずさるが、俺のすぐ後ろには、テーラーの事を報告しに来たアレンがいたため、ぶつかってしまう。
アレンは「おとと」と言いながら、俺の肩を掴んで支えてくれるが、眩暈すらもしてきそうな光景だ。
「だーんちょー。極端すぎてリオ君が驚いてますよ」
アレンが俺の肩を支えたままレオヴィクに言う。
「アレン、近いぞ」
そんな言葉を完全に無視して、レオヴィクはアレンになぜか怒っている。
「いやいや、近いって…ねぇ?」
アレンは俺の顔を覗き込むように、後ろから見てくるが「ねぇ」と言われても同意しかねるというか、これは何に同意をすればいいのかもわからない。
「とにかくリオから離れろ」
「だんちょー。自分の感情優先しすぎなんじゃないですかー?」
「とにかくお前は黙ってろ」
そう言いながら、レオヴィクは俺の手を引き、そのままレオヴィクの硬い胸板にダイブする形になる。
アレンの言う、極端に関してはわからないが、レオヴィクから「必ず守る」と誓われて以来、俺に対する態度が急激に変わってしまった。
今までは、駒として必要最低限の接触しかしてこなかったのに、気が付けば毎日のように、俺はレオヴィクに会っている。
というより、レオヴィクが常に傍にいるといった状況だ。
これに関して、ノエルすらも「どうしたの、急に」と俺に聞いてくるが「さぁ」としか答えられず、しいて言えることとしては、俺が王家の者だからだろう。
俺がここで死んでしまっては、レオヴィクの悲願は、今後一生達成されることがないかもしれない。
そう考えたら、レオヴィクがここまで過保護になるのも頷ける気がする。
「テーラーに関しては、騎士団で行方を追っている。相当な傷を負っていることは把握しているからこそ、早く見つけなければな」
レオヴィクは、胸元にダイブした俺の肩を抱いたまま言う。
俺は、顔を思いっきり上にあげてレオヴィクの顔を見る。
すると、「ん?」と柔らかい表情でこちらを見てくるものだから、思わず俺は視線逸らしてしまう。
何なんだ。なんで急にこんな柔らかい雰囲気になるんだ。今まで通りでいいだろう……。
「テーラーの行方はある程度目星をつけているのだが、いかんせん、ゼリウスの所在も分からない状態という事もあり、捜査が難航してしまっている。あいつがいつ邪魔をしてくるかわからない上に、あいつの目的すらも分からないからな」
「そうなんですよねー。ゼリウスは教団を裏切って何がしたかったんでしょう。てっきり、リオ君を利用するの思ったら、リオ君を殺そうとしてましたし」
アレンの言葉に、俺の肩を抱くレオヴィクの手に力が入る。ギギギと少しだけ肩に食い込む手に「いて」と声をあげれば「す、すまない」と急に肩から手を離し、今度はレオヴィクが後ろに下がる。
「とにかく、式典の準備は整っているからすぐにでも行える。明日の昼に再び民衆を集めて、リオのお披露目式典を執り行う」
ノーバイデン教団が式典をしてから実に2日の出来事だった。
もう少し時間がかかるかもと思ってはいたが、テーラーがいないという事実と、自分が王家の人間という真実に、頭の中はぐるぐると混乱していて、気付けば2日たっていたという状況だ。
あの日から、俺はレオヴィクの屋敷で過ごしていて、レオヴィクが準備してくれていた、俺の部屋にいる。
大きなベッドもあったが、部屋の隅にも布団が丸めて置いており、おそらく俺のためなんだろうなと、ベッドではなく、丸めている布団で今も寝ているが、不思議と寂しさもなく、今通りの安心感があった。
「リオ、明日の式典のためにも今日は早めに休んでおけ。できるならベッドで寝てもらいたいが、リオの好きなところで寝るといい」
「わかった」
俺は、そう言ってレオヴィクから離れ、アレンの横を通り、レオヴィクの部屋を後にする。
パタリと閉じた部屋の扉を背に、琥珀の首飾りを持ち、琥珀の部分を見る。
炎のような揺らめきは、今もなおゆらゆらと揺れ、見ているだけで気持ちが落ち着いてくるような気がした。
「テーラーは無事なのかな」
本当なら、俺も探しに行きたい。
けれど、俺は今ここを出るわけにはいかない。
俺がここを出ることによって、レオヴィクやアレン、ヨハンやノエルに心配をかけてしまうことはわかっている。
とはいえ、焦る気持ちは湧いて出てくるわけで。
そんな感情を抑えるためにも、俺はたびたび琥珀を見つめ、そして揺らぎに心を落ち着かせる。
琥珀も、俺の気持ちに反応するように、ほんのりと暖かくなる。
「明日は、よろしくな」
俺は琥珀にそう挨拶をして、自分の部屋へと戻る。
それはノーバイデン教団を表す旗だったためだ。
あの後、アモン神官は騎士団に捕縛され、そして、信徒たちも同じように捕縛された。
最終的にノーバイデン教団を裏切ったゼリウスの姿を見つけることはできず、不安は残ったままだ。
そして、テーラーの消息も分からないままだった。
騎士団がバルコニーに乗り込んで、重傷を負ったテーラーを保護しようと、アレンが先陣を切って動いたらしいが、血だらけの剣を握ったまま、呆然としているアモンと、慌てふためく信徒しかいなかったと報告があったらしい。
その事をレオヴィクから聞いた俺は、今、目の前のレオヴィクに深々と頭を下げられている。
「リオ、ごめん。テーラーをすぐに見つけることが出なくて」
まさかレオヴィクにそんなことを言われるとは思っていなくて、驚き後ろに後ずさるが、俺のすぐ後ろには、テーラーの事を報告しに来たアレンがいたため、ぶつかってしまう。
アレンは「おとと」と言いながら、俺の肩を掴んで支えてくれるが、眩暈すらもしてきそうな光景だ。
「だーんちょー。極端すぎてリオ君が驚いてますよ」
アレンが俺の肩を支えたままレオヴィクに言う。
「アレン、近いぞ」
そんな言葉を完全に無視して、レオヴィクはアレンになぜか怒っている。
「いやいや、近いって…ねぇ?」
アレンは俺の顔を覗き込むように、後ろから見てくるが「ねぇ」と言われても同意しかねるというか、これは何に同意をすればいいのかもわからない。
「とにかくリオから離れろ」
「だんちょー。自分の感情優先しすぎなんじゃないですかー?」
「とにかくお前は黙ってろ」
そう言いながら、レオヴィクは俺の手を引き、そのままレオヴィクの硬い胸板にダイブする形になる。
アレンの言う、極端に関してはわからないが、レオヴィクから「必ず守る」と誓われて以来、俺に対する態度が急激に変わってしまった。
今までは、駒として必要最低限の接触しかしてこなかったのに、気が付けば毎日のように、俺はレオヴィクに会っている。
というより、レオヴィクが常に傍にいるといった状況だ。
これに関して、ノエルすらも「どうしたの、急に」と俺に聞いてくるが「さぁ」としか答えられず、しいて言えることとしては、俺が王家の者だからだろう。
俺がここで死んでしまっては、レオヴィクの悲願は、今後一生達成されることがないかもしれない。
そう考えたら、レオヴィクがここまで過保護になるのも頷ける気がする。
「テーラーに関しては、騎士団で行方を追っている。相当な傷を負っていることは把握しているからこそ、早く見つけなければな」
レオヴィクは、胸元にダイブした俺の肩を抱いたまま言う。
俺は、顔を思いっきり上にあげてレオヴィクの顔を見る。
すると、「ん?」と柔らかい表情でこちらを見てくるものだから、思わず俺は視線逸らしてしまう。
何なんだ。なんで急にこんな柔らかい雰囲気になるんだ。今まで通りでいいだろう……。
「テーラーの行方はある程度目星をつけているのだが、いかんせん、ゼリウスの所在も分からない状態という事もあり、捜査が難航してしまっている。あいつがいつ邪魔をしてくるかわからない上に、あいつの目的すらも分からないからな」
「そうなんですよねー。ゼリウスは教団を裏切って何がしたかったんでしょう。てっきり、リオ君を利用するの思ったら、リオ君を殺そうとしてましたし」
アレンの言葉に、俺の肩を抱くレオヴィクの手に力が入る。ギギギと少しだけ肩に食い込む手に「いて」と声をあげれば「す、すまない」と急に肩から手を離し、今度はレオヴィクが後ろに下がる。
「とにかく、式典の準備は整っているからすぐにでも行える。明日の昼に再び民衆を集めて、リオのお披露目式典を執り行う」
ノーバイデン教団が式典をしてから実に2日の出来事だった。
もう少し時間がかかるかもと思ってはいたが、テーラーがいないという事実と、自分が王家の人間という真実に、頭の中はぐるぐると混乱していて、気付けば2日たっていたという状況だ。
あの日から、俺はレオヴィクの屋敷で過ごしていて、レオヴィクが準備してくれていた、俺の部屋にいる。
大きなベッドもあったが、部屋の隅にも布団が丸めて置いており、おそらく俺のためなんだろうなと、ベッドではなく、丸めている布団で今も寝ているが、不思議と寂しさもなく、今通りの安心感があった。
「リオ、明日の式典のためにも今日は早めに休んでおけ。できるならベッドで寝てもらいたいが、リオの好きなところで寝るといい」
「わかった」
俺は、そう言ってレオヴィクから離れ、アレンの横を通り、レオヴィクの部屋を後にする。
パタリと閉じた部屋の扉を背に、琥珀の首飾りを持ち、琥珀の部分を見る。
炎のような揺らめきは、今もなおゆらゆらと揺れ、見ているだけで気持ちが落ち着いてくるような気がした。
「テーラーは無事なのかな」
本当なら、俺も探しに行きたい。
けれど、俺は今ここを出るわけにはいかない。
俺がここを出ることによって、レオヴィクやアレン、ヨハンやノエルに心配をかけてしまうことはわかっている。
とはいえ、焦る気持ちは湧いて出てくるわけで。
そんな感情を抑えるためにも、俺はたびたび琥珀を見つめ、そして揺らぎに心を落ち着かせる。
琥珀も、俺の気持ちに反応するように、ほんのりと暖かくなる。
「明日は、よろしくな」
俺は琥珀にそう挨拶をして、自分の部屋へと戻る。
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