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最終章「繋ぐ者、託される者」
二度目の式典
しおりを挟む天気は快晴。一度目の式典を彷彿とさせるくらい、同じような天候に少しだけ身震いをしてしまう。
けれど、前と違うのは、後ろにいるのがテーラーではなくアレンだという事。
そしてバルコニーに立っているのは、甲冑に身を包み、腰に剣を携え、胸を張って立つレオヴィクだという事。
いつも姿勢が良く、立ち姿も様になっているが、今日は一段と……かっこいいなと思った。
俺もあれくらい身長が伸びるかなと思ったが、この年までスラムで過ごして、栄養もちゃんと摂れてなかったから、望みは薄いのかも、なんて自分で考えて落胆した。
その様子を見ていたアレンが、俺の肩をポンポンと二回たたく。
「だーいじょうぶですよ。今日は俺もいますし、なんてったってアンブラリア王国の最強騎士団長、レオヴィク様がいるんですからねー」
俺が、式典に向けて緊張していると思ったのか、アレンが元気づけてくれる。
「ありがとう、アレン」
その気持ちは素直に受け取ることにした。
俺の言葉に対して、アレンは親指をぐっと立ち上げて「どういたしまして」とニコリと笑う。
ふわりと風が吹く。
季節は冬。
つめたい風が頬を撫でる。
その冷たさに呼応するように、胸元の首飾りが暖かくなる。
「ふぅ」
と、一息吐く。その息は少しだけ、白くなっているような気がした。
「二度目の式典にお集まりいただき、感謝する。先の式典では皆に不安な思いをさせてしまったことを、ここで謝罪する」
なんの合図もなくレオヴィクが話し始めると、ざわざわとしていた民衆は静かになった。
普段から市街地で警備をしている騎士団への信頼の表れだろうか。
「先の式典にて、ノーバイデン教団は神の顕現として、一人の少年を皆の前にお披露目したが、神の顕現はこの国ではありえない。なぜなら、我らは神を崇拝してはいない」
この国は神というものを崇拝しない。
元々は王を崇拝し、王を信頼し、王を讃えていた。
しかし、それがノーバイデン教団の思惑により崩れ去り、そして王は悪だと刷り込まれた。
そこで、ノーバイデン教団は神というものを民衆に刷り込むつもりだったらしいが、結局民衆は神も、王も信頼しなかった。
廃れていく自分が暮らした街で、信じられるのは自分だけだった。
そうやって生きてきたからこそ、ノーバイデン教団は完全なる支配ができず、俺という人間を使い、神を崇拝させ、この国の全てを支配するはずだった。
「我々は何も崇拝はしない。信じる者は自分自身。しかし、この廃れていくアンブラリア王国は見ていたくない。きっと皆がそう思っているはずだ。だからこそ、今ここで一つになり、再びこの国をよきものにしていきたいと思っている」
レオヴィクの言葉に民衆は耳を傾けるものの、すぐに「はい、わかりました」とならないことは想定済みだった。
レオヴィクへ向ける視線は疑心が多かった。
バルコニーに立たずとも、雰囲気でそれは伝わってくる。
俺は、そんな民衆の前に立ち、そして王家の人間であることを伝え、琥珀の力を使うことができるのだろうか。
そう考えると、急に怖くなった。
俺は、震える手を隠すように、琥珀の首飾りを力いっぱい握りしめた。
「皆の憂いをすぐに晴らすことができないことは承知している。だからこ、我々は神ではなく、このアンブラリア王国を作った、アンブラリア王家の者に、再び皆を導いてもらおうと思っている」
レオヴィクがそう言うと、こちらを見て、そして手を伸ばしてくる。
いよいよ俺の出番だ。
導く…、俺が民衆を、俺は、王家の人間だから。
王家の人間で、レオヴィクの悲願のために必要な人間で、俺は、…俺は。
一歩前に進もうと思ったのに、全く足が動かない。
「リオ君?」
アレンが不思議そうに俺を見る。
レオヴィクも俺が動かないところを見て、バルコニーから俺の元に歩いてくる。
「どうした、リオ、大丈夫か」
俺は「大丈夫」とただ一言いいたかった。言いたかったのに、口も全く動かない。
「リオ、リオ!」
レオヴィクが何度も俺の名前を呼ぶ。
しかし、その声はどんどん遠くなっていき、次第に視界も狭まっていく。
「アレン!」
レオヴィクがアレンの名前を呼ぶと、俺はアレンに抱えられ、そのままバルコニーとは逆の方向に連れていかれた。
遠くの方でレオヴィクの声がする。
「アンブラリア王家の……彼は、琥珀の……力で…」
次第に聞き取れなくなるレオヴィクの声と、暗くなる視界の中、俺はまた違う声が聞こえた気がした。
『リオセル……ごめんね、リオセル…』
この声は…一体誰なんだろう。女の、ひ…と。
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