琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

邂逅と覚悟

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気持ちを伝えて、守るべきもの、向かうべき道が見えた気がして心が少し軽くなった。
俺は、レオヴィクとアレンにありがとうと伝え、そして再び歩き出す。

民衆のほとんどが城に集まっているため、レオヴィクの屋敷から城までは、人とすれ違うことはなかった。
そのまま早足でレオヴィクに案内されながら、城の裏側から入り、そしてバルコニーまで戻ってきた。

俺は一度だけ、バルコニーの前で足を止め深呼吸する。
後ろにはアレンとレオヴィクがいる。
レオヴィクが俺の腰に手をあて、そして「大丈夫だ」と一言、俺に伝えてくれる。

俺は「よし」と小さな小さな覚悟を決めてバルコニーまで進んだ。
一歩づつ進めば、次第に体が太陽に照らされていく。
その光が、まるで琥珀の光のようで身近に感じた。

バルコニーの端まで行き、そこから下を見下ろす。
老若男女、たくさんの人がそこにはいた。
アンブラリア王国は廃れてしまい、人が少なくなったと思われていたが、故郷を離れたくない者も多いのだろう。
皆が、バルコニーに立つ一人の少年を見て、疑いのまなざしを向け、そしてざわざわと口々に話をする。

びくりと肩が震える。
何ていえばいいのか、何と声をかければいいのか、俺は迷う。

「リオ、お前の言葉でいい。お前の想いを伝えればいい」

すぐ後ろにレオヴィクとアレン。
二人は傍でに俺を守ってくれている。
そして民衆の中にも見知った顔がいた。
ヨハンとノエルだ。
二人はレオヴィクの屋敷を出た後、下から応援していると言い、途中で別れたのだ。

俺がヨハンとノエルの姿を見つけると、二人もこちらに気づいたようで、にこりと笑い、ノエルは小さく手を振っていた。

その行動に、少しだけ緊張の糸がほぐれ、ふぅと深呼吸をした

俺の言葉で、俺の思いで。

レオヴィクの言葉を反芻し、俺はバルコニーの下にいるアンブラリア王国の民たちを見る。

「長きにわたり玉座を空席にしていたことを、ここに謝罪する。我が名は、四代目国王、リオセル・アンブラリア」

そうして、俺は言葉を続ける。

「我がアンブラリア王国は、過去ノーバイデン教団の手によって、全てを無に葬り去れれた。でも、私の祖母が生き延び、そして母から私へと命を繋ぎ、そして託された。私はその思いを継ぎ、新たにこのアンブラリア王国作り上げていきたいと思っている」

齢15歳ほどの少年の話を民衆が聞いてくれるものか。
そう思う気持ちは消えない。しかし、ここで何も言わなければ、停滞どころではなく確実に後退する。

「わた、…俺は!この国で生まれ、そして10歳からスラムで暮らしていた。あそこは本当にひどいところだった。そのスラムが今広がりつつある。みんな心配だと思うし、みんな不安だと思う。そして、それはスラムに住む人たちも同じ。だから全てをよくしていきたい」

王のような話し方を、いつもの自分の話し方に戻す。これだけで幾分か気持ちが楽になったように感じる。

「全てを一気に叶えることは無理だと思う。それに、俺一人では絶対に無理だ。だから…、だから、俺に力を貸してほしい!みんなで、アンブラリア王国を取り戻したい」

俺はまだ、頼りになる王とは言えない。
あの琥珀の記憶で見たセヴァリウス王のように、民たちから信頼される王ではない。
だったら、みんなと同じ立場で、みんなと同じ気持ちで進めばいいのではないか。
みんな家族。この国にいる民、全員が俺の家族だ。

「さすがにそれは、都合よすぎるんじゃないんですかねー?」

俺の言葉を聞いた民衆側から声が聞こえた。
先ほどまで光り輝いていた太陽が、雲に隠れリオに影を落とす。

その声は、聞き覚えのある声で、俺は声がした方を見る。
そこにはゼリウスと、フードを被った男がいた。
ゼリウスは少し後ろにいる男のフードを取る。
そしてそこにいたのは、テーラーだった。

何となく、テーラーがゼリウスと一緒にいること、そしてこの民衆の中に紛れ込んでいることはわかっていた。
琥珀の力なのかと聞かれれば、実際のところはわからないが、あの小さな光が、そう教えてくれたような気がした。

「ゼリウス、お前の願いはなんだ」

俺は、ゼリウスへの感情を抑え、そして静かに問う。
民衆は喋り終わった俺から、ゼリウスへ視線を移す。
テーラーは苦しそうな顔をしている。
おそらく、怪我は完治していないのだろう。

「私の願い、ですか?」

ゼリウスは「ふむ」と考える仕草を見せた後に、すぐにこちらを見た。
そして、声高らかに言う。

「この国の崩壊ですよ!!」

ゼリウスの思惑だけがずっとわからなかった。
アモン神官を裏切り、ノーバイデン教団の頂点に立つのかと思いきや、それもまた思惑とは違う。
では何なのか。
どれだけ考えてもゼリウスの思惑に行きつくことができなかったが、その思惑は、その願いは、想像もしていないものだった。

「国の、崩壊?」

「えぇそうです!私に流れる、王家の血が!この国を壊せと言っているんです!」

「王家の、血?」

ゼリウスの言葉が全く理解できなくて、俺はただただ、ゼリウスの言葉を反芻するだけになってしまった。

「リオ君、いえ、リオセル。私はあなたに流れる先代国王、カスティアン・アンブラリアの弟の血が流れているんですよ。だから、まぁ言ってしまえば、親戚、ですかね?」

そう言って笑うゼリウスの顔は、今まで見た中で一番恐ろしく、一番悲しいものだった。


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