琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

二人の兄弟

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記憶は兄弟の子供時代から始まり、気が付けば二人は青年まで成長していた。
しかし、兄のカスティアンは背が高く体格のいい青年に。
弟のゼレディアンは小柄でひ弱な青年に成長していた。
ゼレディアンの首には粗削りのままの琥珀がぶら下がっている。

子どものころのようにベッドで寝たきりではなくなったが、琥珀を手放すと倒れてしまうことは、今まで変わらないようだった。

「ゼレディアン!戻ったぞ!」

部屋で本を読んでいたゼレディアンに、兄のカスティアンが声をかける。
手には、五冊ほどの本が抱えられていた。

「兄さん、僕まだ読み終わってないのに」

「いいじゃないか、いくらあったって!これが読み終わるまで、お前はくたばったらダメなんだからな!」

カスティアンはそう言いながら、ゼレディアンの机にもっていた本をドンドンとおいていく。

「もう、兄さんったら…っごほ!ごほっ……」

「大丈夫かゼレディアン!」

せき込む弟に、兄が駆け寄る。
弟は「大丈夫だよ」と言いながら、首元にある琥珀を握りしめる。

「お前、もしかして今日、五人以上に癒しの力を使ったのか」

兄が弟を見る。
弟は視線を逸らす。

「一日五人までだとあれほどいってるだろ!」

「で、でも仕方なかったんだ!子どもの熱がさがらなくて、五人目に力を使った後に母親が駆け込んできて…」

「だからって、お前は力をつかいすぎたら!」

「わかってる!わかってるよ、兄さん。大丈夫だから」

弟はそう言って、兄をなだめる。
琥珀の力、治癒の力は自身の生命力を使い、相手の治癒を行う。
使いすぎればその分使ったものの命を削ることと同義。
だから、この力はを使えるものは、昔から短命だった。

「俺にも妖精が見えるのに、力が使えない。なんでなんだ」

「それは兄さんが乱暴だからじゃない?」

「なんだとー!」

二人は、冗談を言い合いながらも、兄は弟の容態を確認し、ベッドへ寝かせる。

「俺が変わってやれればいいのに」

「その気持ちだけで十分だよ」

兄弟は、そういいながら、次の日も、その次の日も同じように地下にいる人間を治癒しながら生活していた。
しかしその生活もいつかは終わりを告げるときがくる。
一族で、力を使えるのが弟だけだったはずが、いつの間にか弟の使える力が少なく、そして兄が治癒の力を使えるようになっていた。

「な、なんで」

「ぼくが、そろそろ、……っごほ。しに、そうだから、かな」

はははと笑う弟は既に、肉が落ち頬がこけ、手足は骨と皮だけのやせ細った姿になっていた。

「なんで、なんでお前だったんだ!」

「ふふ、兄さんが、らんぼう、だから、じゃない?」

弟はこんな時でも冗談を言う。
しかし、兄は思った。
弟は肌身離さず琥珀を身につけていたと言うのに、どうしてか弟が長くないことを悟ってしまう。
だったら、いっそのこと弟を連れて、見たことのない地上を見せたいと。

兄は計画をたて、一族には内緒で琥珀と弟を連れて地上に繋がる道を進んだ。
弟は兄の背中で、短い呼吸を繰り返す。

「に、いさん。どこに、いくの?」

「地上だ。お前一回も見れてないからな。俺が連れて行ってやる」

「ち、じょうかぁ、うれしい、な。どんなと、ころなんだ、ろう」

「そんないいところでもないぞ。盗みとか犯罪が沢山だ」

「へぇー。もしか、したら、地下より……っ危険、かも、…ね」

か細い声は次第に消えていくような声になる。

「そうかも。ゼレディアン、もう少しだから、もう少し頑張れ」

「う、ん、にいさ、んありが、とう……ぼ、ぼく。にいさんの、おとう、とでよか、った」

兄は急いだ。
弟の命が尽きかけている事を察して、兄は急いだ。
どういうわけか、琥珀の力は弟を癒すことはしなかった。
まるで使い終わったいらない道具のように。
兄は、弟に話しかけるのをやめ地上に出る道をただひたすら走った。

「ゼレディアン!出たぞ!地上だ!ここが地上だ!」

「……。そら、があおい、……ね」

弟の最後の言葉だった。
兄は弟を地面におろし、そして首に着けていた首飾りを取る。
その時、琥珀の中から追憶の妖精が出てきて兄に言う。

「琥珀、地上に持ち出しちゃったのね。もう地下には戻れないわよ」

「え?」

「私は地下で生まれて、地下で暮らしていく定めだったの。だから私の力を使える人は地上に出ないように、体力を少しづつ削ってたわけ。でも…まさかあなたが無理やり地上に出すとは思わなかったわ」

追憶の妖精がそう言うと、ふわふわと弟の傍に行く。

「ゼレディアン、今までありがとう、あなたの優しさに触れて、人間も悪くないって思えたわ。私、あなたのお兄さんのために、地上で頑張るわね」

追憶の妖精曰く、作られたのは人間のエゴだったという。
見つかった追憶の妖精は、琥珀に閉じ込められ、そして、人間のために力を使うよう、奴隷契約をさせられていた。
しかし、それを弟のゼレディアンが破棄し、代わりにゼレディアンの生命力を分け与えていたという。
今まで力を使えていた人たちもここまで衰弱することはなかったから、どうしてだろうと思っていたが、まさか弟のやさしさで妖精を助け、そして自分が死んでいったという。

「追憶の妖精よ。お前は弟を殺したんだな」

「そう言うことになってしまうわね。でもゼレディアンは言っていたわ。僕が死んでしまったら、絶対に地下には戻らずに、兄と地上に出て、自由に暮らしてって」

「ゼレディ…アン」

「だから、カスティアン、一緒に国を作りましょう。争いのない、平和な、家族を大事にする国を」

そう言って、追憶の妖精と兄の協力の元、アンブラリア王国出来上がり、初代国王カスティアン・アンブラリアが誕生した。

しかし、地下ではそのことを知らない一族が、カスティアンが一族を捨てたと風潮、次第にそれは呪いになってゼリウスまで引き継がれてしまった。

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