堕ちた神

セティ

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『今年も旱魃だ』
『作物も全て枯れてしまった』
『このままでは我らは飢え苦しみながら死んでしまう』
『何処かに雨を降らす神はいないのか』
 雨を司る神、プルーヴォが生まれたのはそんな言葉からであった。数年続いた日照りに悩んでいた国の、多くの人間の願いが神を生んだのだ。
 プルーヴォは人々のためにすぐさま神の力を使って雨を降らした。しかし純粋な神ではない、それも生まれたばかりの神であるプルーヴォが使える神の力は少なく、雨を降らせることができたのはたった数時間のことであった。それでも人々は喜び、神に感謝を伝えた。人々の純粋な感謝や願いの心によってプルーヴォの力は増幅され、より長く、より頻繁に雨を降らせることができるようになった。
 人々はプルーヴォが降らせる雨のおかげで僅かな食料を増やすことができ、飢えることもなくなった。その後人々は神殿を建て、プルーヴォを祀った。



 それから数十年後、プルーヴォへの信仰は形骸化していた。神殿ができた当初は誰もが神に感謝の意を伝え、神への畏敬の念を持っていた。プルーヴォは信仰心より得た力で適度な雨を降らし、人々の生活を豊かにした。

 人々はそれに慣れてしまったのだ。

 適度に降る雨に気分が滅入ると不満を抱き、豊かな作物を当然のものとして感謝の心を忘れた。
 人々の願いから生まれた神であるプルーヴォは、人々に願われなければ力を持てない。信仰心が薄れたことによりプルーヴォの神としての力は弱くなった。
 それでもプルーヴォは人々のために雨を降らした。時には身を削りながらも。
 やがてプルーヴォの力に限界がきた。適度に降らせていた雨は疎らになり、豊かな作物は幾許か減った。人々はそれが降水の減少が原因だとすぐに悟った。

 人々はプルーヴォに降水を願うことは無かった。

 雨が降らないのはプルーヴォがさぼっている所為だと憤ったのだ。人々は神殿を壊し、プルーヴォの依代とされていた大きな木を切り倒した。幾度もその木に傷をつけ、切り刻み、燃やして灰にした。そして最後にはその灰を近くの湖へ投げ捨てた。
 忽ち湖は濁り、黒く染まった。湖の底から響いた声を聞いた者はいなかった。
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