堕ちた神

セティ

文字の大きさ
3 / 6

3

しおりを挟む
 プルーヴォが投げ捨てられた湖は、彼が雨を降らせたことでできた湖であった。湖に満ちている水は過去に彼が神の力で降らせた雨だ。その湖はプルーヴォの領域でもあったのだ。
 湖の水には全盛期の頃の力が残っていた。プルーヴォはその力を取り込み、力を蓄えた。

 プルーヴォはもう、人のために力を使うことはしなかった。



 一方、プルーヴォを捨てた人々は日照りに苦しんでいた。プルーヴォを捨てたその日から雨が降らなくなったのだ。
 しばらく経って誰かがぽつりと呟いた。
「雨の神を捨てたのは間違いだったのだろうか」
 その声を皮切りにプルーヴォへの仕打ちを後悔する者達が現れた。その者達はそれを実行した人々に恨みを投げつけた。プルーヴォが捨てられた時、自分達がプルーヴォを捨てることに賛成していたことを棚に上げて。




 プルーヴォの神殿が再建された。人々はこれでプルーヴォが戻ってくると信じていた。そして以前のように雨を降らしてくれるものだと思い込んでいた。しかしプルーヴォは戻ってこない。
 少しして依代となった木の灰が湖に沈んでいるため、動けないんだと決めつけた人々が湖を訪れた。人々は湖を見て固まった。

 その時になって初めて、人々は湖が黒く染まっていることに気づいたのだ。

 黒く染まった湖を見た人々はプルーヴォが怒っているのだと判断し、プルーヴォを捨てた者達を捕らえて湖に連れてきた。彼らはプルーヴォの怒りを鎮める生贄にされたのだ。
 遅れて現れた国王がそのうちの一人を湖に蹴り落とした。プルーヴォに与えられた最初の贄だった。プルーヴォは上方から沈んでくる贄を見つけると、その腕を掴んで引き寄せる。己が掴んでいる物が人間だと気がついたプルーヴォは眉間に皺を寄せた。すぐにまた湖に何かが入り込んだ気配を感じたプルーヴォは見上げ、目を見開く。幾人もの生贄達が湖に沈められていく姿がプルーヴォの目に入ったのだ。
 久方ぶりに動かした唇は、意外にもその心をはっきりと紡いだ。
「……あぁ、人間とは何故こうも愚かなのだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...