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自称薬師と全裸騎士団長

5 容疑者A

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「何故見つからないんだ」

 ウィンターはここ数週間で野性的な顔つきになったと言われると思わず言った相手を睨みつけた。

 ――何も知らない癖に。

 自分が知らない所で全裸の絵画を売られてみろ、同じことをするだろうと思ったが口に出せなかった。伯爵家に帰ると領主の父が見合いの話をしてきたので疲れていると返事をして部屋に籠った。誰も近くに来ないように指示をして、王室で使用する防音魔法を10倍掛けると思いっきり叫んだ。

「~~なんで、仮性包茎の事しっているんだよぉぉっぉぉおおお」

 ウィンターはベットの上で足をバタバタ動かすと恥ずかしさで悶えていた。
 あの絵を見て間違いなく自分だと気がついたとき怒りと同時に羞恥快感絶望が全身に駆け巡って、今すぐ身体中の血をかき集めて精子を吐き出したかった。
 リスケベ―夫妻に聞き込みをした後、すぐに市場に向かった。言われた場所には何もない。次の日の出店のために何かを置き残すことがあるのに。

 嬉しい事じゃないのに口角が上がり顔の表情が変わっていくことが感じられた。

(誰かが監視していたのか、くっそ、そういう子好きなんだよな…………♡)

 幼い時から優秀なウィンターは伯爵家の嫡男として沢山の女性たちと出会って来た。熱烈な愛情は自身の身体か伯爵の地位目当て。何事もそつなく完璧にこなしてしまう彼にとって物足りない日々。

「あなたに感情はないの?」

 学生の時に言われた言葉に腸が煮えくり返ったが、何時ものように受け流すことに徹した。ああ、誰でもいいから身体の隅々まで調べつくしてウィンターを責めて欲しい。ウィンターは垂れ目の優しい顔をしているので、よく愚痴を聞かされて愚痴を吐くように言われることがあった。

 彼は何も感じなかった。
 ありきたりな日々を過ごして退屈なまま年を取る。

 隣国であった魅了の魔法騒動のようなことがある方が良かったのだ。

 彼は自慰をしたことが少なかった。夢精することもない。熱が昂った時に仕方なく扱くだけだった。そんな彼が自宅に帰って眠ると朝起きると夢精していた。

 完璧な彼は夢の中でいやらしいポーズをするように指示された。拒否すると平手でお尻を叩かれて両足を持つように言われた。嫌々見せたくないところを見せた。妄想の相手はいつも知らない何処かにいる人だ。

「犯されてしまった…………。」

 誰かの所有物になり、まるで何かに満たされる感覚。この気持ちは何なのか分からないけれど、ウィンターは生きがいを感じた瞬間だった。
 自身の白濁を掃除している時、幸福に満たされていた。

「坊ちゃま、私共で掃除させていただきますので」
「いいんだ、その、あれだから」

 すぐに理解した乳母が掃除道具を持ってくると洗ったものを籠に入れておくように言って外に出て行った。騎士団の遠征の時、騎士団長でもマントの洗濯位したことがある。だから慣れているのだが、カピカピになった精子が取れにくいと初めて知った。

 洗浄魔法を覚えようと思って本屋に向かった。

 ♢

「でさ、仮性包茎の絵画で一発で金貨80枚の大儲けよ」

 ウィンターは一人の男の発言に耳を傾けた。普段は足を踏み入れない酒場に入って絵画の情報を聞こうと思った矢先だった。

「すいません、その話を詳しく聞きたいのですが一杯ご馳走させていただいてもよろしいでしょうか?」

 エールが4人分届けられると

「いや~、貧乏絵師がいたから声をかけてそいつの絵と欲しい画材と交換したんだよ。画材は絵師になりたかったけれど諦めた人と物々交換したんだよ。以来の品で塗らないといけない部分があるって言って目の前で塗り始めたんだが、顔を隠しているけれど格好いいんだよ。価値があるってすぐに分かったね。何枚か試し塗りをしていて、複製されたものがあったから失敗したって言われているそっちを貰って隣国で売りつけたんだよ。」
「ウルの伝手で変態侯爵に売りつけられて正解だったよな。恋人に似ているからって言って即金で支払ってくれたしな」
「「「仮性包茎に乾杯!」」」

 げらげら笑っている彼らの顔をしっかり覚えたウィンターは絶対に絵師を見つける事を心に決めた。魔道具店が並ぶ通りを歩くと生活魔法の本屋に入って本を探す。

 沢山の本が並べられているので有名な著者ではなく、学生が書いたと思われる魔導書を探すことにした。昔の洗浄魔法よりも今の洗浄魔法の方が効果的でやり方も違う。

 セックス魔法、性行為魔法【初級ソフトタッチ編】、洗浄魔法――。

 見つけることが出来たウィンターが戸棚に手を伸ばした時だった。

「「あっ…………。」」

 一人の少女とウィンターは目が合った。金髪なのに腰の方に近づくほどピンク色の髪の毛になっている子だった。今どきの少女なので童貞のウィンターには近づきにくい見た目だった。
 何処かで見たことがある見た目だったが会う人間が多い彼の記憶から消されてしまっていた。

「どうぞ」
「すまない、仕事で必要な物なんだ」

 ウィンターは何時もなら女性に譲るのだが何故かこの時は譲らなかった。何だか分からないが譲ってはいけないと思ってしまったからだ。

 短い会話が終わり少女の動向を観察していた。本を数冊選んで購入するとそのまま外に出て行った。洗浄魔法の本を購入して外に出ると路地裏にいた少女が本を燃やしていた。
 貴重で高い本を燃やすことが不思議で見ていると燃えてしまった後、購入した本の魔法を使えるようになっていた。

 ウィンターはこの時思い出していた。前騎士団長が遠征時に話していた言葉を。

「スキルを一瞬で覚える時たくさんの方法があるが燃やすことでスキルを手に入れる人もいる。大抵は――」



 異世界人か転生者だと
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