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イラッシャイマセ
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五月も終わりに差し掛かった。そりゃあ、息を吸って吐いているだけで時間は過ぎるのだから、五月だっていつかは終わる。分かってはいるのだ。五月は終わるし、六月は来る。ただ実際に日付を見ると息がつまった。挙句、帰ってきた紙ペラの数字が出そろってしまって、冗談でもなんでもなくそろそろ溺れ死にそうだ。今年一度目の定期テストも無事、平均の周りをウロウロするに留まったらしい。たったの紙ペラ一枚で、ああこんなにも、息がしづらい。
誰に咎められたわけでもない。むしろ、少し褒められもした。ただ保証のない「このまま頑張れば一月までには」というフレーズを浴びるほど聞いて気が滅入ったというだけの話だ。
「いや、一年間ずっとこのままは無理だろ。」
喘ぐようにこぼして重いリュックを背負いなおす。冷静に考えて、一週間後のテストに備えて勉強するのとは全く話が違うだろう。何か月先の話だと思っているのだ。
あぁ、得意教科なし、苦手教科なし、地頭なし、モチベーションなし。先週、帰宅後四時間は固かった学習時間は、ここ三日一時間机に向かえばいいほう。―そらみたことか、既に「このまま頑張れ」ていない。テストに追われなきゃ、なけなしの危機感は寝転がってポテチでも食っているらしい。どうせ家に帰ったってろくなことをしないのは分かっていた。だからこんな阿保みたいな大荷物を学校から振り回してきたのだ。来たのだが。見事に行きつけのカフェはどこも満席だった。
どこでもいい。涼しい所があればいいのだが。きょろきょろと歩きながら家へ向かうが、毎日歩いている道にそうそう新しい店など出ないことは知っている。どうせ家の前にスーパーがあるから、最悪そこのフードコートでいいだろう。ついでに夕食をとってしまえ。
まだ五月だというのにじわりと暑く、ついつい早足になったのが悪かった。間抜けな声を上げてふらついた瞬間、握っていたスマートフォンが吹っ飛んでいく。美しい放物線を描きやがりながら、ガキャリ。道脇の店のドアに当たって落ちた。まぁ、悪いことは続くものだ。仕方ない。声にもならない呻き声をあげながら、拾いにいく。店前に立って初めて、ここも喫茶店であることに気が付いた。見覚えのない店だ。ちょうどいいからここに入ってしまおうとスマートフォンをポケットに突っ込んで、ドアを押し開ける。
「おや、いらっしゃいませ。」
顔を上げた男性以外、店内に客も店員もいない。日本人顔なのに薄桃色の髪をした、色白の美丈夫だった。まだ二十代半ば程に見える。眼鏡族という点では、私のお仲間だ。
「あの、中で勉強しても平気ですか。長居してしまうかもしれないのですが。」
まぁ一人しかいないのだから、きっと彼がここのマスターだろう。店の奥に入りながら彼に声をかける。
「お気になさらず。お客さん自体珍しいですから。」
人の良さそうな笑顔でマスターが返した。いや、それは店としてまずいのではないか。内心突っ込みながらマスターの前のカウンターに座り、隣の席にドサリとリュックを投げた。客がいないなら、まぁいいだろう。
「勉強するんでしたら、ブレンドコーヒーがおすすめですよ。一杯三百円、お代わり自由。」
「じゃあ、それで。」
四時頃に店に入ったのだが、七時を回るまで店にいても本当に他に客が来なかった。結局私しか人が居なかったのが良かったのか、かかっていた曲が良かったのか、コーヒーが口に合ったのか分からないが、ともかく今までなかったほど集中できたことは確かだ。むしろ三百円しか払わなかったのが申し訳ないくらいに思う。
それに集中が切れるたびに諮ったようにお代わりをくれる店はここしか知らない。これは毎日通うことになりそうだ、なんて思いながらドアを押し開けた。
「また、何時でもいらっしゃい。」
微笑むマスターに会釈して、店を出る。外は相変わらず、じめじめと暑かった。
誰に咎められたわけでもない。むしろ、少し褒められもした。ただ保証のない「このまま頑張れば一月までには」というフレーズを浴びるほど聞いて気が滅入ったというだけの話だ。
「いや、一年間ずっとこのままは無理だろ。」
喘ぐようにこぼして重いリュックを背負いなおす。冷静に考えて、一週間後のテストに備えて勉強するのとは全く話が違うだろう。何か月先の話だと思っているのだ。
あぁ、得意教科なし、苦手教科なし、地頭なし、モチベーションなし。先週、帰宅後四時間は固かった学習時間は、ここ三日一時間机に向かえばいいほう。―そらみたことか、既に「このまま頑張れ」ていない。テストに追われなきゃ、なけなしの危機感は寝転がってポテチでも食っているらしい。どうせ家に帰ったってろくなことをしないのは分かっていた。だからこんな阿保みたいな大荷物を学校から振り回してきたのだ。来たのだが。見事に行きつけのカフェはどこも満席だった。
どこでもいい。涼しい所があればいいのだが。きょろきょろと歩きながら家へ向かうが、毎日歩いている道にそうそう新しい店など出ないことは知っている。どうせ家の前にスーパーがあるから、最悪そこのフードコートでいいだろう。ついでに夕食をとってしまえ。
まだ五月だというのにじわりと暑く、ついつい早足になったのが悪かった。間抜けな声を上げてふらついた瞬間、握っていたスマートフォンが吹っ飛んでいく。美しい放物線を描きやがりながら、ガキャリ。道脇の店のドアに当たって落ちた。まぁ、悪いことは続くものだ。仕方ない。声にもならない呻き声をあげながら、拾いにいく。店前に立って初めて、ここも喫茶店であることに気が付いた。見覚えのない店だ。ちょうどいいからここに入ってしまおうとスマートフォンをポケットに突っ込んで、ドアを押し開ける。
「おや、いらっしゃいませ。」
顔を上げた男性以外、店内に客も店員もいない。日本人顔なのに薄桃色の髪をした、色白の美丈夫だった。まだ二十代半ば程に見える。眼鏡族という点では、私のお仲間だ。
「あの、中で勉強しても平気ですか。長居してしまうかもしれないのですが。」
まぁ一人しかいないのだから、きっと彼がここのマスターだろう。店の奥に入りながら彼に声をかける。
「お気になさらず。お客さん自体珍しいですから。」
人の良さそうな笑顔でマスターが返した。いや、それは店としてまずいのではないか。内心突っ込みながらマスターの前のカウンターに座り、隣の席にドサリとリュックを投げた。客がいないなら、まぁいいだろう。
「勉強するんでしたら、ブレンドコーヒーがおすすめですよ。一杯三百円、お代わり自由。」
「じゃあ、それで。」
四時頃に店に入ったのだが、七時を回るまで店にいても本当に他に客が来なかった。結局私しか人が居なかったのが良かったのか、かかっていた曲が良かったのか、コーヒーが口に合ったのか分からないが、ともかく今までなかったほど集中できたことは確かだ。むしろ三百円しか払わなかったのが申し訳ないくらいに思う。
それに集中が切れるたびに諮ったようにお代わりをくれる店はここしか知らない。これは毎日通うことになりそうだ、なんて思いながらドアを押し開けた。
「また、何時でもいらっしゃい。」
微笑むマスターに会釈して、店を出る。外は相変わらず、じめじめと暑かった。
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