毒にも薬にもならぬ短編保管倉庫

黒い白クマ

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またな、と言えないこの世界で進め

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この文章はフィクションです。実在の人物、土地、あとなんかもろもろの固有名詞とは一切の関係はありません。これオレかなぁとか思ったとしたら気の迷いなので頭を壁に叩きつけといてください。……なんてな。

***

――けたたましくアラームが鳴っている。

逆さまのカレンダーを見て、しまったなぁとゆっくり瞬きをする。本日1/11。成人の日。

坂井玲、新成人。どこに出しても恥ずかしい立派な立派なプー太郎である。

や、正しくは大学2年。肩書きはある。収入は、ない。あったけどバイトが著しく減らされたのでお陰様で、ほぼ、ない。この間のバイトが3ヶ月ぶりのシフトだった。

転生ガチャで当たりを引いたらしく両親は健在かつそれなりの収入持ちだ。お陰様で今日も仕送りがあって飯が食える。なんてことだ、社会に1ミリも貢献していないのに社会から貰うだけ貰ってのうのうと健康体をキープしている。

既に二十歳は二十歳だったのだが、本日付で大人として世間に放流されることになる、と思っていいだろう。

いやぁ、どうすんだ、こんなもんに大人の商品タグをつけて市場に並べるなんて。正気か。やめとけ。中身は世間の5歳の方がクールだぞ多分。

腹筋がないので半身がベッドから落ちたこの状態からリカバリーすることが出来ない。仕方ないので諦めて全身で落ちる。ドシャンだかガシャンだかデカい音が鳴って、両方の壁からドンと音がした。今日も両隣のお兄さん方は元気らしい。そりゃ良かったと思いながらアラームを止めた。

立ち上がればやっと景色が正しい向きで視界に入る。改めてカレンダーをみて、肺に溜まった空気を思い切り吐き出した。

梱包しておいた文庫本を引っ掴んで、鞄に放り込む。あとは鍵、それからなんだ、眼鏡か。スマホ、それから財布。

着替えて、メイク……まぁいい、どうせマスクだ。気張って会うような相手でもない。顔を洗って髪だけとかして、あとは上着を着りゃ出られるだろう。

14:00。あと30分後に家を出なくてはいけない。昨日の深夜4時くらいにワカメスープを飲んでから何も食ってないことに気がつくが、寝こけていただけなので別に腹も空かなかった。ちょっと唸ってから、棚に置いた食パンを掴んで魚焼きグリルにぶち込み、コップに水を入れてから電子レンジにかける。

飯を食わなくなったら終わりだと誰に言われたんだったか。寝る、食う、これだけはやらなきゃ死ぬと。これが億劫になった時点でおかしいと。もう忘れた。

だいたい、寝るのも食うのもずっと前から億劫だ。寝付くのに8時間かかるような、腹が減ろうが料理の手間がだるくて一食抜くような人間だぞ。1度寝付いたら起きられないが、1度起きたら寝られない。慣性の法則ってやつ。寝るも食うも生きるも、全部全部惰性でここまで大きくなった。

レンジから出したマグに粉スープをぶち込む。お湯を沸かすよりレンジのほうが早い。だいたい、やかんもケトルも俺しか住まないこの家には無いのだ。焦げ臭さにグリルの火を止めて、角の焦げた食パンをキッチンに立ったまま齧る。無造作にちぎってマグカップに突っ込んで、それで粉スープを混ぜた。洗い物は少ない方がいい。

「相変わらず死にそうな面してらァ。」

2年ぶりに会った友人の第一声はそれだった。マスクをしていてもよく通る声は、先日送り付けられたオンライン公演で聞いたマイク越しの声と同じだった。感慨もクソもない、このあいだ聞いた声だ。

「髪染めたのか?ヤンキーに見えるぞ。」

目を細めて肩を揺らす吉野に、思い切り眉を寄せる。自分も染めた後、鏡を見て治安が悪ぃなと思っていたので言い返す言葉もない。セルフで染めると加減が分からないのだ。金髪でマスクの俺に1発で話しかけてきたことにも驚くが。

「っせぇ吉野。サークルどうなった?」
「さぁ。なぁなぁになってるからな、今は。この間送ったやつが生涯最後の劇かもな。」
「あれがぁ?災難だな。」
「ほんとだよ、ひでぇ脚本だった。」

会うのは二年ぶりでも、会話は昨日のLINEの続きだ。大学から「合宿・公演・遠征・試合」禁止のお達しが来たのはどの大学も同じらしい。なんのサークルにも入っていない俺には関係の無い話だが、演劇サークルに入っている吉野は当事者だ。大学のサークルが潰れるかも。高校演劇部の同期からそんな話を聞くことは、なにも吉野が初めてではない。

「そういや先月後藤にあったよ。」
「まじで?会って何話すの?」
「高校ん時の、日本史の悪口ばっか言ってたわ。覚えてない?あのー、若いやつ。」
「知らねぇよ俺世界史だもん。」
「先月は覚えてたのになー。」

ガワだけ大きくなった二十歳同士の会話も、高校の頃と何一つ変わらない。近況なんて報告しなくてもTwitter見りゃ分かる。分かるだろうことも話す。まるで昼休みと同じ、思いついたことを適当に口に出す。

「あぁそうだ、野間口だ。」
「野間口なんて居たっけ?社会科は清水しか覚えてねぇや。」
「清水、あぁ生徒指導のやつ?」

街に人は案外多い。別に会わずとも郵送で済ませられる用事をわざわざ会って済ませている時点で、人のことは言えないが。

「後藤なぁ、部活でしか話さなかったし。」
「まぁね。私も演劇部なかったら後藤と友達になんなかったよ。」
「後藤今何してんの?」
「知らねぇ。大学には入れたらしいよ。」
「まぁ、生きてるならそれでいいよ。」
「高校の同期とか、別に死んでてもわかんねーもんね。」
「あは、確かに。」

高校を出てからも付き合いがある奴なんて片手で足りる。交わって、離れて。付き合いが続く奴なんて、そういない。

「坂井は成人式行かなくてよかったの?」
「あるんだっけそもそも。」
「あるある、確か。なんか郵便来ただろ、入場券みたいな。」
「そーだっけ?まぁ最初から行く気無かったわ。わざわざありがたァい長話聞くために遠出する気なんて十年前からない。」

カフェに入って、珈琲を頼む。払ってから見た電子マネーの残高が1桁で、Sサイズにして良かったなと胸の内でボヤいた。Mなら足りなかった。こういうのをちゃんと把握していないことを実感する度に、己の生活する気の無さに苦笑いが浮かぶ。

「本いくらだっけ?忘れっから今渡せよ。」
「あぁうん。千円。高くてわりぃね。」
「しゃあねぇだろ。」
「これでも印刷費の方が高くてマイナスよ。」
「自費出版じゃ高くなるわな。」

梱包した文庫本を渡せば、裸の千円が寄越される。それをそのまま財布に突っ込んだ。人生で初めて刷った本を渡す1人目だったのだが、情緒もへったくれもねぇ。緩衝材に包まれた本をくるくると回して、意外とちゃんとしてんのね、と吉野が感心したように呟いた。

「そりゃ印刷所に頼んでっからな。」
「印刷所すげぇ。……やーだね、坂井もさぁ、頑張っちゃってさぁ。置いていかれんのよ、また私は。」
「あ?」
「やぁ、なんもしてねぇまま2020終わったねぇと思って。」

あんたは本出したし、後藤は大学に受かったし。手元の珈琲をかき混ぜながらボヤいた吉野に、はぁと気の抜けた返事を投げる。俺の本は身内込みで10冊くらいしか売れてない一次創作同人誌だし、そもそも浪人していない時点で吉野は後藤に羨ましがられる側のはずだが。

まぁ、うん。隣の芝はいつだって青い。

吉野はサークルで舞台に立ち続けていたから俺から見れば羨ましいし、そもそもめちゃくちゃ頭のいい大学に行っているので世間では勝ち組である。それでも、未来は不確定。自分以外が自分より上手く生きてるように見えるのは覚えのある感情である。

「みんなすげぇよな。斉藤とかさ、なんかバンド組んだろ。」
「え、知らん。待って斉藤って誰?」
「高三の時坂井と同じクラスだったろ。」

吉野が呆れて肩を震わせるのに、覚えてねぇなぁとマスクをずらしてストローをくわえた。本当に、日本史の野間口先生も、同級生の斉藤も覚えてない。案外そんなもんだ、2年も経てば。

「バンド組んだん博多じゃなかった?博多は1人で活動してんだっけ?」
「博多って?」
「軽音のボーカル。背ぇちっちぇさ……あ、待って、伸びたんだっけ?」

博多が同じクラスだったのは確か1年の時だ。3年の時の身長はいまいち記憶にない。同じ校舎にいても、クラスが違えばそんなもの。全くもって周囲に関心が無いのが丸わかりで我ながら笑えてしまう。

「分かんねぇな。」
「クラス一緒じゃねぇとさ、高一とかで更新止まってんだよな。卒業する時どんな面だったか分かんねぇや……ああほら、これ博多。」

サブスクの画面を開いて吉野に見せる。変な芸名、と吉野は目を細めて呟いた。

「じゃあ近藤が雑誌乗ったの知ってる?」

昨日聞いたばかりの話を思い出して尋ねる。案の定知らん、と吉野が首を横に振った。

「え、何で?」
「写真写真、なんか賞とったらしいんだよ。あいつ写真部じゃなったのにな。」
「雑誌の名前後でLINEして。」
「おん。」

誰から聞いたんだったか。まぁ、Twitterでも開きゃ分かるだろうと思ったが回線が遅くてTwitterが開かない。面倒になってメモ帳に近藤、雑誌、吉野、LINE、と書き込んでスマホを下ろした。

「そういやさ、これ小島だよな?」

Twitterの画面を開いて吉野がこちらに見せてくる。SNOWか何かで補正された写真に、首を傾げた。まぁ、似てるといえば同級生に似ている。

「……こんなに加工されちまうと誰か分かんねぇな。」
「や、絶対そうだって。この写真なら分かる?」
「あ、あー……確かに。それっぽい。」
「アイドルしてんだって。高校出てからすぐデビューしたっぽいよ。こないだ偶然見つけてさぁ。」
「あれ、小島って受験してなかったっけ。」
「知らねぇけど。」

吉野がマスクの片耳を外してコーヒーカップを傾ける。寒色系のリップが見えて、少しぎょっとした。なんとなく指摘する気も起きず、自分もマスクを持ち上げてストローをくわえる。

ホットとアイス。同じ珈琲でも、2年前も必ずこの並びだった。俺はアイスしか飲まないし、吉野はホットしか飲まない。

「やっぱ俺らの高校変なやつ多いなぁ。鹿野とかモデルしてるだろ。」
「あぁ、うん。漫画家もいるしな。」
「え、誰?」
「浜辺。目指してるだけだっけ?や、私もよく知らないけど。」

浜辺って誰だっけ。聞こうかとも思ったけどやめた。多分、金輪際会わないだろうし。

「あぁそう……同窓会とかあったら面白そうだ。そういや同窓会から何の連絡もねぇな。」
「入ったの?1000円払うのだるくて入ってねぇわ。」

成人式に合わせて集まりをするようなことを言っていたような、言っていなかったような。まぁ成人式も場所によっちゃなくなるくらいだから、流れたのかもしれない。入会費の1000円を払ったのは俺じゃなくて親だし、まぁ、あってもどうせ行かないような気はした。

「そういや宮崎元気なの?仲良かったよね。」
「あー、あいつね。看護行ったからさ、実習がどうとか騒いでたな……」
「医療系は大変だろーな。」
「ま、死なば諸共っつーか……何かしら対策がたつだろ、医療系目指す奴は沢山いるんだし。」
「不要不急と違って?」
「そう。」
「はー、ほらな。私らばっか置いていかれんのよ。どうしたもんか。」

不服そうに溜息をついた吉野に黙って肩を竦めてみせる。いつだって「一般的に推奨される職業」に興味関心を持って歩むやつを羨む気持ちがある。いつだって「一般的に推奨されない職業」に臆せず飛び込むやつを羨む気持ちがある。

将来の夢はなんですか。この質問に胸を張って答えられた日は、いつだ?なり方もなった先もよく分からない職に憧れて、ただそこを目指す勇気はなく、なんとなく、なんとなく、二十年。

「ま、2020年は溶けた感じあるよな。」

当たり障りのない相槌を打つ。またストローをくわえて、味が薄くなってきたことに眉を寄せた。まぁ、Sサイズだからな。大した量はない。

「オンライン授業のせいで成績下がったしな。課題は増えたし。」
「マジ?俺は好きだけどね、オンライン。2時間電車乗るのだるかったし。つか出席率上がったからか成績上がったよ。」

オンライン、対面よりも好きだけど。でも、まぁ、一日にいっぺんはノーパソのモニターを叩き割りたくなる。出来ればこの手に持っているスマートフォンを投げて両方ぶち壊れたりなんかすると100点満点。

画面、画面、画面で疲れる。あと機械に弱い教授は多いわ、タイムラグで会話が成立しにくいわ。でも、プラマイプラスでオンラインの方がマシ。こればかりは個人の感性だろう。

「いいなぁ。暗記が得意だったからさぁ、テストの方が良かったのよ。レポートは何書いてもBだし。」
「あー、吉野のところもレポート試験増えたんだ。」

そういえばこいつは高校の頃もやたらとテストの点が良かった。何をどうひっくりかえしても暗記が全く出来なかった俺としては、様式を守ってレポートを書けばSだAだが貰えるレポート試験はテストの数倍ありがたいが。

まぁ、それもこれも、隣の芝だ。

こいつは暗記が出来る。俺はレポートが書ける。努力だかの問題じゃない、脳のポテンシャルの問題だ。生まれ持った差。

「就活どうしようねぇ。」

何気なく呟く。久方ぶりにあった友人とまでこんな気の滅入る話をしたくないが、そろそろ3年になる身としてはどうしたってふと考えてしまう話題だった。

バイトすら、探せないのだ。バイトの面接が苦手だった。正しくいえば、結果の通知を待つのが苦手だった。落ちましたと教えてくれればいいものを、不合格者には連絡が無い。鳴らない電話を待つのが苦手だった。

もっと言ってしまえば、人が、苦手だ。団体行動が下手で、空気を読むのが下手で。自分に対する怒鳴り声じゃなくても、大声を聞くだけで心が擦切れる。学校ですら自分を騙し騙し通ってきたのに、金を貰って責任の元に人と接するなんて。そんな環境で生きていけない自信しかない。……就労するビジョンが、全くもって、描けなかった。それでも、就労しなければ生きていけない。

どちらにしても、生きていけない。あぁなんて世界。クソッタレ。

「坂井、就活すんの?」
「小説でおまんまが食えるとは思ってねぇよ。」
「脚本書けよ。」
「小説より望み薄だろ。誰が使うんだ、このご時世。」

高校の演劇部では確かに俺が脚本担当だった。昔書いた脚本はずっとインターネットに乗せてあるし、今も無償で貸し出してる。でも、「脚本使います」の報告メールからの「公演中止になりました」コンボを数回見ただけで正直萎えた。新しく書いたとて、今、誰が使う。

ついでに言うなら、使って頂こうが中止になろうが俺には一銭も入らん。今千円と交換した同人誌と同じだ。一銭にもならん。時間と金が減るだけ。だから脚本は辞めた。

でも何故か、小説は書いてしまう。多分、脚本よりはまだ見る人がいるから。楽しいのか?知らん。もう分からん。でも書いてしまう。自己顕示欲と承認欲求と、あとは誰にも言えないイカれた思想の排出欲。欲と欲と欲のキメラみたいな執筆欲。

「私が読むから書け。」
「暴君か?吉野こそどうすんだよ、このあと。」
「役者で食う気はなかったけど、演劇業界に就職するつもりだったからさぁ。どーしましょうね。」

役者で食う気無かったのか。俺が見るから役者やれよ。言えるか。こいつに払う給料なんて持ち合わせてないのに、言えるかよ。辞めちゃうのかもったいないなんて、そんなん養えるやつだけが言えるセリフだろうが。

こいつの演技は好きだ。で、こいつは俺の脚本が好きだ、多分。でもお互い、だから何が出来ることもない。

「趣味でもいいから続けたかったけど、無理かもなぁ。」
「あんたも演劇やめるってんなら、俺が続けようがねぇわな。」

隣の芝はいつだって青い。自分で選択したくせに、吉野が羨ましい気持ちもあった。で、多分吉野も俺が羨ましい。

サークルに入らなかった事を、時々後悔する。舞台に立てたのに、立たなかった。金が時間がと言っているうちに、気がついたら立ちようがなくなっている。せめて2019年1年を、なんていう阿呆くさい後悔は尽きない。でも、サークルに入るほうを選んだ吉野も今目の前で後悔しているわけで。

人生は一度きり。一度は数に入らないと言ったのは誰だっけ。チェコ生まれのなんとかとかいう作家が、人生が何度もあれば並べて比較できるが、そう出来ない以上最善なんかないって書いていた気がする。

あの時ああしていれば。馬鹿め、そうしていたらもっと酷いことになっていたかもしれないのに。並べて比較して結論が出せない以上、振り返ったところで無駄だ。一見役立つ経験則も、全く同じシチュエーションが来ない限り役には立たぬ。

俺らは多分、幾つになっても赤ん坊だ。何も知らない赤子。死ぬ間際の人間とて、一度も死んだことはないんだから。

練習のない一発録り。失敗しないやつの方が、狂ってる。

「もうそろそろ解散するか。あんまり、長く喋らんほうがいいだろ。」

返事を聞く前に席をたてば、それもそうだな、と吉野が珈琲を飲み干した。カップに残った青色に、あぁやっぱ見間違いじゃなかったな、と瞬いた。

「あれ、坂井ピアス開けたの?」
「ん?あぁ、うん。」

そういえば穴を開けたのは大学に入ってからか。すっかり体に馴染んでいたことを改めて指摘されて、あぁ、そうだ、2年ぶりに会ったんだったと間抜けな感想が過った。

「へぇ、意外。絶対開けないと思ってたわ。」
「まァ、2年あったからな。変わるわな。」

お前も俺も。肩を竦めて荷物を持ち上げた。

***

ここ最近、時折こうやって懐かしい友人と会う。会わないか、と俺から持ちかけているのだ。先が見通せないものだから、なんとなく、会えるうちに会っておこうと思った。会って話すのは最低限。1時間くらいで、解散する。なるべく食事は避ける。それでも、少しでも、会っておく。

あまり人と会うのは好きじゃなかったはずだ。今だってやたら疲れている。なのに、声をかけてしまう。死に支度でもしているんだろうか。自分の事だが、よく分からない。

「坂井だよね?」
「……どなたで?」

突然後ろでした声に、振り返る。見覚えのない姿に、首を傾げた。

「あは、忘れられたかぁ。君の副担任だった山崎だよ。高三の時の。3-Cの坂井でしょ?」

しばらく考え込む。高三の副担任。高三の副担任は誰だったかな。確か新卒の若い奴、とようやく映像が検索できて、目の前の人間にもう一度意識を戻した。目元しか見えない。怪訝な顔をする俺に、相手がマスクをずらした。それで漸く記憶と一致する。

「……ザッキィ!?マジ!?えホントだ、やば老けたなぁザッキー!」
「しっつれいな奴だな、相変わらず。」
「何してんだ、スーツで。休日出勤か?高校はリモートじゃねぇんだっけ?」

あまりにも予想外の再会に言葉を重ねる。うるせぇうるせぇと笑った山崎先生にまた記憶が蘇る。懐かしい。進路でめちゃくちゃ喧嘩した、数学科のザッキーに違いなかった。

「敬語を使いなさいよまず、二十歳でしょ坂井も。」
「や、なんか今更敬語ってのも気持ち悪いかな?みたいな?」
「まぁね、それもそうか。どっか座る?てか時間ある?」
「あるけど……ザッキーこそ今から帰りますって感じじゃねぇの。」

手に持ったスーパーの袋を指させば、まぁね、とザッキーがそれをちょっと持ち上げた。そういえばザッキーはこの駅が最寄りだと話していた気がする。2年前に聞いたことで、あまり自信はないが。

「こんなご時世だしベンチとかで少し話していくくらいにする?」
「あぁ、うん。それがいいと思います。」
「あっは、やっぱ敬語だと変な感じだね。」
「んだよ、希望に沿ってやったのに。」

そのまま連れ立って歩いて、川辺の方に降りた。ベンチは見当たらなかったので、柵に寄りかかる。気にせずに地面にリュックを放れば、変わってねぇの、と笑いながらザッキーも買い物袋を置いた。

「もう誕生日過ぎてる?ビール飲める?」
「飲める飲める。何?奢り?」
「うん、1本あげる。え、1本で酔う?」
「や、割と強い方。」

買い物袋から缶ビールを1本出して、ザッキーがそれをこちらに放った。寒空の下で飲む温度じゃねぇな、と思いながら冷えた缶を握る。もう一本取り出して開けたのを見て、俺もプルタブを引いた。

「すんげぇ変な感じ。友達じゃん。」
「あはは、まぁいうて5つしか違わないから。」
「マジ?」
「君ら18の時に僕新卒で23よ。」
「今25?」
「うん。」

それもそうか。片耳のゴムを外して、ビールを流し込む。付けたり外したりめんどくせぇなと思っていた動きも板についた。顎マスクすると不衛生らしいが、これもいいんだか悪いんだかである。

「そっかぁ、たいして変わんねぇのか。」
「そーよ。」

隣で同じように缶を傾けるザッキーを仰ぎ見た。2年前はそうは言ったって大人に見えたものである。今となっては「同世代」で括られる。不思議な感覚だった。

「あ、ザッキーさ、結局年賀状くれなかっただろ。」
「年賀状?」
「ほらぁ、卒業の時にさぁ、ザッキーに餞別渡したの覚えてねぇ?もう何あげたか忘れたけどさぁ。」

手紙に年賀状寄越せって書いたろ、とボヤいて、柵に体重をかける。しばらく唸っていたザッキーが、あぁ、と控えめに声を上げた。

「美味しかったよ、あれ。クッキー。」
「そりゃ良かった。」
「年賀状もね、うん書いてあった書いてあった。あれさ、住所分かんねぇなと思って。手紙に住所は書いてなかったじゃん。」
「その手紙が入ってた封筒に書いてたんだよ。」
「あぁ~そっちかぁ。」

ごめんごめんと笑う声が些か先程よりも芯に欠けていて、おや、と仰ぎ見た。顔が赤い。

「や、ザッキー弱くね?」
「うん、弱い。ていうか、さっきまでもちょっと呑んでたし。」
「この時間にぃ?」
「部活の子、ほら、新建と博多と会ってたんだよ。店閉まる時間も早いから、夕方にね。」
「あれ、ザッキー軽音だっけ?」
「うん、今も軽音部の顧問だよ。」

同窓会無くなっちゃったでしょ、だから成人式の後30分だけね。そう言って、こちらを見て目を細めた。なるほど、だからスーツで。

「ホントは後輩達とも会いたかっただろうけど、26期の子だけで。それなら僕入れて3人しかいないし。」
「新建って3年の時Cだったよな。あいつ今何してんの?」
「君と同じ大学生。」
「ふぅん、専校いくのやめたんだ。」

新建、久々に名前を聞いて、あぁよく話したのになぁと缶に目線を落とした。隣の席になってからは本当によく話した。連絡先も進路も知らなかったけれど。まぁ、そんなものなのである。

「悩んだみたいだけどね。坂井はどう?大学順調?」
「まずまず。満員電車で五回ぶっ倒れたから、オンライン万歳って感じ。」
「あは、いいなぁ。僕は相変わらず満員電車に揉まれてるよ。1回オンライン挟まったんだけどね、あれはあれで地獄。」
「教員側は大変だろうなぁ。」

そういえばなんでザッキーは教員になったんだろうか。ふとそんなことが気になって、なんとなく聞きにくくて、ただまたマスクを外してビールを流し込んだ。

「ていうか5回も倒れてんの?電車で?」
「そう、気がついたら意識ぶっ飛んでんの。人混みアレルギーだと思ってる。」
「難儀だね、それ。」
「まぁ、医者に聞いてみたけど自律神経の問題?らしくて、そうそう直しようもないみたいだから……いいネタだと思って開き直るわな。」
「ネタ?」
「そ、物書き志望はねぇ、どんな失敗してもネタになるからいーんだよ。」

くつくつと笑う。少しだけ、酔いが回り始めていた。

「テストで3点とっても、教室で気がついたら財布から3000円スられても、今後もしも就活コケても、ブラック企業にあたっても……あぁそう、せんせぇから年賀状来なくても、全部全部ネタになりますから。そこから脚本が1本かけるから、おっけー。」

あ、今脚本って言ったな、俺。咄嗟に出た自分の言葉にまた笑う。ザッキーと話しているから演劇部だった頃を脳が思い出したのか、それともその実まだ脚本の方が好きなのか。

「ん、ふふ、それは良かった。そーいやあったな、盗難騒ぎ。」
「俺のはかわいーほうだよ、3000だもん。万札いかれた人もいたし。」
「あぁー、諭吉誘拐事件。」
「未解決事件よ。」

ヤンキー高ではなかったが、あまりお上品な学校でもなかった。購買でスり騒ぎが起きたこともある。そんなことも思い出、なんだから、人間の脳味噌の美化作用は凄まじい。

「全部の失敗が糧になるのはいいね。」
「それが全部じゃねーのよ。1個だけ役立たねぇ失敗、あるよ。」
「何?」

だいぶ暗くなってきた。ビルの明かりを見つめながら、吐き出すように、答える。

「……最終的に物書きになれなかった、は役に立たないの。一生かけて確かめるしかねぇけどね。」
「坂井ならなれるよ。」

本当に、弾んだ声でザッキーがそう言うから。高三になったばかりの頃、最後の部活の公演を見た時に、これ坂井が書いた話なのかいと尋ねてきた時と同じように、弾んだ声で言うものだから。

「なぁ坂井、今度は本屋で買わせろよ。」

別れ際に、吉野がそう言って笑ったのを思い出す。

なぁどうして。どうして、そんな、酷いことを。震える声で、笑った。笑わないと、泣きそうだった。

「どうだか。そもそもどうやってなるかも知らねぇよ。」
「ググッてみれば?」
「なんて?」
「小説家、なりかた?」
「っふふ、マジ?出てくんの?」

小説家に、なりたいんだろうか。それとも脚本家?書くことが気がついたら全ての中心に居座っていて、ただ書き続けたくて。物書きになりたいとずっと答え続けてきた。なり方、なんてビジョンを描いたことなんてなかった。

なれやしないさ、と、どこかで。

ビールを持っていない方の手をポケットから引っ張り出す。小説家、なりかた。常ならば絶対に打ち込まない文字を、言われるままに入力する。数ページ斜め読んで、あぁ、昔俺検索したことあるな、と思った。昔、っていつだろう。それこそ、小学校とかじゃなかろうか。

「……まぁ、早い話、賞を取れってさ。」
「送ったことあんの?」
「脚本ならあるけど。小説……あー、なんかサイトの賞とか?は、あるよ。」
「もっと出さなきゃなんじゃないの、知らんけど。」
「そーかもね、知らんけど。」

調べたことがあった。だから、きっと応募するようになった。

バイトの面接が苦手だった。脚本の賞への応募が苦手だった。ああいうのって、合格しなければ返事は来ない。来ない返事を待って、待つ時間が、嫌いで。来ねぇだろうな、と思っている自分が、嫌いで。書かなくなったわけじゃないのにだんだん応募しなくなっていることに、自分で気がついていた。

「誰かに反対されてるの?」
「どうだか。親に働けとは言われるよ、今バイトが減っててさ。新しいところ探すか、インターンするかすればって……でも、興味がわかないっつったら、じゃあしょうがないね、って。」

しょうがないね、か。思わずポカンとした。怒れよ、そこは。そうか、怒って欲しかったのだ。バカ言ってないで現実を見ろと言ってくれるのを、どこかで待っていた。

誰も、進むべき道を教えてくれなかった。
誰も、強要しなかった。

なんてことだ。ここに来るまで、アアセイ、コウセイ、フツウハコウダ……ここに来て、突然、ほら貴方の好きになさいな、なんて、そんな。

放っておいてはくれないのに、どうするの、と掻き乱すだけ掻き乱してからパッと手を話した親に、俺はただただポカンとした。同時に、ポカンとしている自分に絶望した。

「反対されてないなら、いいじゃない。賞、沢山応募してさ。うん、じゃあ坂井が直木賞取ったら年賀状出すよ。」
「直木賞、って……てか、ザッキー俺の住所知らねぇだろ。」
「知ってるよ、封筒見ればいいんでしょ?取っといてるもん。」
「引っ越したわ。それ実家の住所。」
「んふ、じゃあファンレターで出せばいいじゃん。」

元々細い目を瞑るようにして、ザッキーが笑った。冗談じゃないことくらい分かる。本気で、ザッキーは、その未来を可能性のひとつとして数えているのだ。

「……無茶な。」
「えー、本気だよ。それにほら、まだ二十代でしょ、僕ら。適度に正気捨てていかないと、勿体なくない?」

――正気なんてとうの昔に捨てたわ。

咄嗟に、叫びそうになる。

正気やったらな、今から有り金使い果たして遊んだ後飛び降りて死ぬわ。生きると死ぬとで生物回っとるんや、なんで苦しんでまでどうせ死ぬっちゅーのに延命せなあかんのや。正気なんてとうの昔に捨てたわ、全人類誰も正気じゃねぇよ。苦しみながら生きてんだぜ、正気じゃ、ない。

じゃあ、なんで生きてるんだ?何がしたいんだ?ウン千ウン万ウン百万回と自分で問うてきた。生きたくなんてないわと思ったこともあった。真剣に死に方を考えた。それでも、それでも。なんで生きてるかって、そんなん、決まってる。

クソダボ、まだネタがあるからじゃ。

結局そこに、行き着いてしまうのだ。書きたいんだ、困ったことに。

「ギリまでやるだけやってから卑屈になろうぜ、坂井。」
「安定職に言われても説得力ねぇーの。」
「あはは、確かに。僕別にやりたいことも無く気がついたら教師だったからなぁ。」
「マジ?」
「うん。だからやりたいことあんの、羨ましいんだよね。応援したくなるの。」

あぁ、そら見ろ。隣の芝生は青いんだ。俺はザッキーが羨ましいし、ザッキーは俺が羨ましい。

「な、坂井。出来るって、お前が褒めなきゃ誰がお前を褒めるんだよ。」

ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜられる。酔っぱらいが笑う。その手を振り払って、思わず大声でヤケになって叫んだ。

「うるせー!お前が褒めろよじゃあ!ほら!頑張ってるねって!」
「頑張ってるね!」
「心が籠ってない!」
「あっはっは!」

酔いが回る。頬が濡れる。

成功している同世代を見ると、いつだって嬉しくて悔しくて泣きそうになってしまうんだ。デビューしたてのスポーツ選手は軒並み年下で。アイドルだとか俳優だとかにも年下が山ほどいて。

昨日見たニュースが頭をよぎった。なんかの賞の史上最年少、とかなんとか。

何が史上最年少じゃボケ。お前ら最高齢でも褒めるやろがい。何が10代文壇デビューじゃ。物心ついた頃から書いてても成功せんもんは成功しないんじゃ。

この歳でも出来るのか、と希望を見出すより先に、嫉妬心が湧く。羨ましい?馬鹿言え、彼らの努力を俺は知らない。それでも、どうしても。

なぁ友よ。なんで頑張るんだよ。お前らが歌手になってみたりモデルになってみたり漫画家目指してみたり写真家として雑誌に載ったりアイドルになったりすっから、俺もやる気になっちゃうじゃん。畜生俺もやってやらぁって思っちまうだろ。

なぁ友よ。なんで頑張るんだよ。それじゃ食って行けねぇぞって、誰か言わなかったか?

誰よりも俺が差別してることくらい、ウン十年前から知っているよ。会社勤め以外を右から左までひっくるめて「アウトサイダー」と呼んでいるのは他でもない俺だよ。見下してんだ、稼げやしねぇって、分かってる!分かってるさ!

でも駄目だった。「アウトサイダー」じゃない方に目を向けた奴らが羨ましい。「アウトサイダー」に進むことを恐れない奴らが羨ましい。端から端まで、羨ましい。そう思う自分が嫌で俺ばっか生きるのが下手くそな気がして。

普通普通普通普通って。

流されるままに自分の偏差値のちょうどいい高校に行って、ちょうどいい大学に行って、俺が思う"レール"から外れる方法を知らないままこの歳になったんだよ。

だって、なぁ。俺、俺さぁ。ずっといい子だったんだぜ。ずっと、ずっとさ、いい子、だった。

なぁ吉野よ。なぁザッキーよ。どうして、どうして待ってるねって言うんだよ。お前、俺が路頭に迷ったらどうすんだよ。お前なら出来るって、何の根拠だよ。お前一人が俺の書くものが好きでも、俺は食ってけねぇんだよ。なぁ親よ。興味が無いなら仕方ないねって、それで就活しなきゃ2年後の俺をどうする気だよ。死ななきゃいいよってさぁ。金がなきゃ死ぬんだよ。

なぁ。レポートにSがついて返ってきた時よりも、クソ小さい大会で脚本賞取った時の方が、嬉しかったよ。バイトのシフトが三ヶ月ぶりに入って金が貰えた時よりも、本受け取る為にわざわざ吉野が会いに来たことの方が嬉しかったよ。

どうしてくれんだよ。お前には出来ないって言うの、俺しかいねぇのよ。俺しか、俺の事養えないのよ。現実をさ、教えろよ。お前には出来ないって言うの、俺と、今までの賞の届かない合格通知しか、いねぇのよ。出来ないって、誰も、言わねぇの。恵まれてんの?恵まれてんのかな、俺。

揃いも揃って、社交辞令か知らんけど、お前なら出来るって、さぁ。

"レール"から出たあと俺がどうするかなんて知らないくせに、みんなして背中を押すなよ。

押されて嬉しくなっちゃう俺も俺だよ、バーカ。

「な、坂井。待ってるから。」
「っせぇ安定職。ぜってぇ年賀状出せよ、直木じゃなくてもテレビで俺見たら出せよな。」
「泣いてんの?」
「泣いてねぇーよ酔っぱらい!」

ギャンと吠えてから、そっぽを向いて残りのビールを流し込んだ。

「さすがにさみぃし、帰る。」
「そうだね、もう30分くらい話してるのか。」

一方的に宣言して、リュックを拾った。振り返って、ザッキーに見えるように空の缶を掲げる。

「これ、ごちそーさん。」
「ん。あ、そーだ連絡先教えてよ、今度またゆっくり話そ。」
「生徒ナンパすると職失うぜ。」
「ナンパじゃないしもう生徒じゃないでしょ。」

声を上げて笑うザッキーに、つられて笑い声が出た。大人しくLINEのQRコードを差し出せば、ザッキーから随分と可愛らしいスタンプが飛んでくる。らしくて、また笑い声が出た。

「じゃあ、また連絡するわ。」
「ぜってぇLINE来ねぇだろ。」
「あはは、なに、年賀状根に持ってんの?」

ちゃんと送るって、と酔っぱらいが笑う。

「じゃあ、いつ会えるかわかんないけど、またな坂井。」

またな、と。言いかけて飲み込む。そういえば、吉野にも言えなかったな。またな、という保証のない再会への意気込み。そんなものよりは、明日のLINEの約束の方が有意義に思えて。

「じゃあな、ザッキー。元気してろよな。」

手を振るかつての恩師の背中をしばし眺めてから、元来た道を戻る。

突然の再会の残したもの。"小説家 なりかた"なんていう不毛な検索履歴と、2年ぶりに会った教師の連絡先と、アルミ缶。あと、よく分からない高揚感。

とりあえず明日の講義の宿題やらねぇとなのよ、と宙に浮いた心を無理やり地面に引き寄せる。

それでも、なぁ。

あんたらが無責任に背中を押すんなら、俺も駄々こねてないで考えなきゃな。押された先のことか、振り切って逃げた先のことか、考えなきゃいけねぇってことはよく分かったよ。

坂井、お前何がしたいんだよ。

ここ数年、ずっと頭の真ん中にいた問い。ずっと答えずに転がしていた問い。

坂井、お前何がしたいんだよ。

舞台に立てば良かった、と今の俺は2年前の俺に対して思う。2年後の俺は、今の俺に何を思う?

人生にセーブポイントはないし、選択の結果を並べて比較なんて出来ない。最善なんかない。あの時ああしていればと思っても、ああしていたとしたらという結果は知りえない。もっと酷いことになっていたかもしれない。人生全部、練習のない一発録り。

失敗してなんぼなら、なぁ俺、何がしたい?

相変わらず答えらしい答えがないけれど、その問いがようやく明日の講義の課題と同じ位置に並んだ気がした。

舞台にゃ立てない、小説は10冊しか売れない、課題は終わらん、ノーパソの画面で目は疲れる、別れ際にまたねすら言えないこの世界で。

振り返ったとて無駄ならば、この世界で、さぁ前を向いて進め。
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