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第一章 醜いあひるの子
35 寂しい気持ち
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ジュリアは、祖母のグローリアとアンブローシア伯爵夫人から、熱血指導をされる。
「ジュリア、もう少し背筋を伸ばしなさい。そんな猫背では、年をとったら海老のような腰になりますよ」
田舎の年よりのおばあちゃんとは違う、グローリアのしゃんとした姿を見ると、ジュリアも背筋を伸ばす。
「そんなに重そうに、ティーカップを持つと、優雅に見えないわ」
今までは、ジュリアが萎縮してはと、アンブローシアは言いたい事の半分も口にしてなかったのだ。
ミリアムとシルビアは、気の毒だと同情はしたが、アンブローシア伯爵夫人とグローリア伯爵夫人に逆らうだなんて、髪の毛一本分も思わなかった。
ただ、二人はジュリアをイオニア王国に連れて帰った時に、伯爵令嬢として恥をかかないように、急いでマナーのチェックをしているのだと察して溜め息を押し殺す。厳しい伯爵夫人達の目の前で、溜め息なんかついたら、若いのに何事ですか? と注意されるのがわかりきっているからだ。
「やっぱり、ジュリアはイオニア王国に行くの?」
お茶会を終えて、二階の勉強部屋でシルビアとジュリアとミリアム先生は、ホッと一息つく。
「それは……どうなのかしら? 何も聞いていなかったけど、そう言えば、これからはずっと一緒だとお祖母様が仰っていたわ」
相変わらず、のんびりしているジュリアに、ミリアムは大丈夫なのだろうかと心配する。
「きちんと聞かないといけませんよ。もし、イオニア王国に行くのなら、ゲチスバーグの家族とも滅多には会えなくなるでしょうし……」
ジュリアは考えてもなかったと狼狽えるので、ミリアムはグローリア伯爵夫人に尋ねてみなさいと勧める。
「あんなジュリアが、内乱がおこっているイオニア王国に行くだなんて心配だわ。そりゃあ、実のお祖父様やお祖母様と一緒に暮らした方が良いのかもしれないけど、どこかぼんやりしているから、流れ矢に当たりそうですもの」
「まさか、流れ矢なんか飛んでくるような場所には行きませんよ……多分……」
ジュリアがグローリア伯爵夫人に尋ねに行った後に残された二人は、どうなるのだろうかと顔を見合わせた。
「まぁ、もちろんジュリアも一緒にゲチスバーモンドに帰るのですよ。何故、そんなことを聞くのか、わかりませんわ」
ころころと笑い飛ばされて、ジュリアはゲチスバーグの家族との別離に悲しくなったも勿論だが、仲良くなったシルビア、ミリアム先生、そして、一緒に精霊使いの修行をしたルーファス王子やセドリック様、サリンジャー師にも会えなくなると悲しくなった。
「みんなとお別れしなくては……」
ゲチスバーグの家を離れる時も、寂しかったが、働かなくてはいけないと覚悟を決めていた。
「まぁ、ジュリア、そんなに泣いては駄目ですよ。レディは感情を表すものではありません。でも、育った国から、見知らぬ祖国に行くのですから、不安になるのも仕方ないかも。貴方の侍女のルーシーを連れて行きましょうか?」
ルーシーはセドリック様の従者トーマスと仲良くしているから、ジュリアは無理だと思ったが、意外な返事に驚いた。
「ジュリア様について、ゲチスバーモンドに行くことにしたんですよ」
髪の毛をとかしながら、ルーシーは浮き浮きと報告する。
「でも、トーマスは? イオニア王国に行ったら、会えなくなるわよ? あっ、ちょっと痛いわ!」
乱暴にブラッシングしたのを、ルーシーは謝った。
「ふん! あんな誠実そうな顔をして、トーマスったら、料理助手のアンナに、味見をしてぇ、なんて言われて鼻の下を伸ばして、あ~んって食べさせて貰ってるのですよ。あんな男、こちらからお断りです! イオニア王国には、もっとハンサムがいると思いますもの」
ジュリアは一時的な感情で、外国へ行っても良いのかと確認する。
「ゲチスバーモンド伯爵夫人が、帰国したくなったら、旅費もちゃんとあげると約束して下さいましたもの。ジュリア様が、ゲチスバーモンド伯爵家に馴染むまでは、お側を離れませんわ。それに、外国へ旅に出るなんて、こんな機会でもなければ、一生体験できませんもの」
しっかりしているルーシーなら、きっと何処でも大丈夫だと笑った。
「ルーシーが一緒に来てくれると、凄く心強いわ。だって、私が農家育ちで、何も知らないとわかっているもの」
自分の不安を感じとったお祖母様が、気心の知れた侍女のルーシーを連れて行く手配をさっさとしたのを見て、領主夫人として目配りするのに慣れていると感じた。
『私を育ててくれた両親にも、手厚い御礼をして下さったわ。これからの老後を、安泰に過ごせるでしょう』
両親と会えなくなるのは寂しいが、ヘレナに働きに出た時から覚悟は決めていた。普通に屋敷でメイドをしていても、ゲチスバーグの両親とはそうそう会えるものではないのだ。
シルビアやミリアム先生とは、何回もお別れ会をする予定を立てた。
『ルーファス王子には、お別れの挨拶など気軽にできないかも……でも、サリンジャー師には、せめて挨拶ぐらいはしたいわ。それに、セドリック様にも……』
陽気で気さくなルーファス王子や、優しくて穏やかなサリンジャー師、そして真面目な堅物のセドリック様を思い浮かべて、一緒に精霊使いの修行した日々は戻らないのだと、溜め息をついた。
「ジュリア、もう少し背筋を伸ばしなさい。そんな猫背では、年をとったら海老のような腰になりますよ」
田舎の年よりのおばあちゃんとは違う、グローリアのしゃんとした姿を見ると、ジュリアも背筋を伸ばす。
「そんなに重そうに、ティーカップを持つと、優雅に見えないわ」
今までは、ジュリアが萎縮してはと、アンブローシアは言いたい事の半分も口にしてなかったのだ。
ミリアムとシルビアは、気の毒だと同情はしたが、アンブローシア伯爵夫人とグローリア伯爵夫人に逆らうだなんて、髪の毛一本分も思わなかった。
ただ、二人はジュリアをイオニア王国に連れて帰った時に、伯爵令嬢として恥をかかないように、急いでマナーのチェックをしているのだと察して溜め息を押し殺す。厳しい伯爵夫人達の目の前で、溜め息なんかついたら、若いのに何事ですか? と注意されるのがわかりきっているからだ。
「やっぱり、ジュリアはイオニア王国に行くの?」
お茶会を終えて、二階の勉強部屋でシルビアとジュリアとミリアム先生は、ホッと一息つく。
「それは……どうなのかしら? 何も聞いていなかったけど、そう言えば、これからはずっと一緒だとお祖母様が仰っていたわ」
相変わらず、のんびりしているジュリアに、ミリアムは大丈夫なのだろうかと心配する。
「きちんと聞かないといけませんよ。もし、イオニア王国に行くのなら、ゲチスバーグの家族とも滅多には会えなくなるでしょうし……」
ジュリアは考えてもなかったと狼狽えるので、ミリアムはグローリア伯爵夫人に尋ねてみなさいと勧める。
「あんなジュリアが、内乱がおこっているイオニア王国に行くだなんて心配だわ。そりゃあ、実のお祖父様やお祖母様と一緒に暮らした方が良いのかもしれないけど、どこかぼんやりしているから、流れ矢に当たりそうですもの」
「まさか、流れ矢なんか飛んでくるような場所には行きませんよ……多分……」
ジュリアがグローリア伯爵夫人に尋ねに行った後に残された二人は、どうなるのだろうかと顔を見合わせた。
「まぁ、もちろんジュリアも一緒にゲチスバーモンドに帰るのですよ。何故、そんなことを聞くのか、わかりませんわ」
ころころと笑い飛ばされて、ジュリアはゲチスバーグの家族との別離に悲しくなったも勿論だが、仲良くなったシルビア、ミリアム先生、そして、一緒に精霊使いの修行をしたルーファス王子やセドリック様、サリンジャー師にも会えなくなると悲しくなった。
「みんなとお別れしなくては……」
ゲチスバーグの家を離れる時も、寂しかったが、働かなくてはいけないと覚悟を決めていた。
「まぁ、ジュリア、そんなに泣いては駄目ですよ。レディは感情を表すものではありません。でも、育った国から、見知らぬ祖国に行くのですから、不安になるのも仕方ないかも。貴方の侍女のルーシーを連れて行きましょうか?」
ルーシーはセドリック様の従者トーマスと仲良くしているから、ジュリアは無理だと思ったが、意外な返事に驚いた。
「ジュリア様について、ゲチスバーモンドに行くことにしたんですよ」
髪の毛をとかしながら、ルーシーは浮き浮きと報告する。
「でも、トーマスは? イオニア王国に行ったら、会えなくなるわよ? あっ、ちょっと痛いわ!」
乱暴にブラッシングしたのを、ルーシーは謝った。
「ふん! あんな誠実そうな顔をして、トーマスったら、料理助手のアンナに、味見をしてぇ、なんて言われて鼻の下を伸ばして、あ~んって食べさせて貰ってるのですよ。あんな男、こちらからお断りです! イオニア王国には、もっとハンサムがいると思いますもの」
ジュリアは一時的な感情で、外国へ行っても良いのかと確認する。
「ゲチスバーモンド伯爵夫人が、帰国したくなったら、旅費もちゃんとあげると約束して下さいましたもの。ジュリア様が、ゲチスバーモンド伯爵家に馴染むまでは、お側を離れませんわ。それに、外国へ旅に出るなんて、こんな機会でもなければ、一生体験できませんもの」
しっかりしているルーシーなら、きっと何処でも大丈夫だと笑った。
「ルーシーが一緒に来てくれると、凄く心強いわ。だって、私が農家育ちで、何も知らないとわかっているもの」
自分の不安を感じとったお祖母様が、気心の知れた侍女のルーシーを連れて行く手配をさっさとしたのを見て、領主夫人として目配りするのに慣れていると感じた。
『私を育ててくれた両親にも、手厚い御礼をして下さったわ。これからの老後を、安泰に過ごせるでしょう』
両親と会えなくなるのは寂しいが、ヘレナに働きに出た時から覚悟は決めていた。普通に屋敷でメイドをしていても、ゲチスバーグの両親とはそうそう会えるものではないのだ。
シルビアやミリアム先生とは、何回もお別れ会をする予定を立てた。
『ルーファス王子には、お別れの挨拶など気軽にできないかも……でも、サリンジャー師には、せめて挨拶ぐらいはしたいわ。それに、セドリック様にも……』
陽気で気さくなルーファス王子や、優しくて穏やかなサリンジャー師、そして真面目な堅物のセドリック様を思い浮かべて、一緒に精霊使いの修行した日々は戻らないのだと、溜め息をついた。
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