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第三章 白鳥
8 ジュリアの社交界デビュー
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シェフィールドの秋は、王宮での舞踏会から始まる。この数年は内乱の為に社交界どころではなかったし、今でも北部はかなり貧しい生活を余儀なくされている人々もいる。しかし、いつまでも緊縮財政をおこなうのも、復興の為にはならないのだ。
「レオナルド、そんなに嫌そうな顔をするものではない」
「父上、なんだか市場で売りに出される羊の気分なのです。もう少し待ってはいけませんか?」
「お前には後継者を作る義務がある。まぁ、考え方を変えてみろ! 綺麗な令嬢を選り取りみどりなのだぞ」
誰もが羨む立場では無いかと嘯く父上に、レオナルド王子は言い返す。
「それなら、父上も新しい王妃をお迎えになっては如何ですか? 貴婦人方から熱い視線を送られているでしょう」
優雅にお茶を飲んでいたエドモンド王は、プッと吹き出した。
「私にはお前という立派な後取りがいるし、もうそんな気は無い。しかし、王宮には女主人が必要なのだ。いつまでも、ゲチスバーモンド伯爵夫人に頼る訳にもいくまい」
「ゲチスバーモンド伯爵といえば、ジュリアのデビューですね! それにしても、ルーファス王子が留学中なのが困ります。粗略には扱えませんが、なるべくジュリアとは接触させたくありません」
「それは、無論だが……隣国の王子を粗略に扱うわけにもいかないだろう」
「もしかして、今度の舞踏会でルーファス王子がジュリアのパートナーなのですか? 父上、ルキアス王国の大使に押し込まれましたね」
痛いところを突かれたエドモンド王は、兎に角、さっさと結婚しろ! と言い捨てて席を立った。レオナルド王子は、自分と言うより、将来の王妃になろうと必死の令嬢達とその両親を思い出し眉を顰める。
その頃、ゲチスバーモンド伯爵邸では、ジュリアが家庭教師のクーパー夫人から最終チェックを受けていた。
「ジュリア・ゲチスバーモンド伯爵令嬢と呼ばれたら、正式なお辞儀をするのですよ」
何百回も練習した王宮での作法をジュリアは、言われるままに繰り返す。
「もう、その辺で宜しいでしょう。エドモンド王は、ジュリアのお祖父様ですし、緊張しなくても良いですよ」
家庭教師の厳しい指導で、元々自信がないジュリアが萎縮してしまわないかと祖母のグローリアは心配する。家庭教師を下がらせた後で、これから社交界にデビューする孫娘にあれこれと話してきかす。
「ジュリア、貴女も社交界にデビューしたら、大人として扱われます。そう、結婚しても可笑しくないレディとして見られるのです。私は、貴女に幸せになって欲しいと心から願っています。だから、変な殿方に恋などしないでね」
「まだ、結婚なんて考えていませんわ」
恥ずかしそうに頬を染めるジュリアに、グローリアは社交界には品行の悪い男もいるので気をつけるようにと注意をする。
部屋に帰ったジュリアは、自分が社交界でやっていけるのか自信を無くして、侍女のルーシーに愚痴る。
「ねぇ、ルーシー……社交界デビューなんかしたくないわ」
「何を仰っているのです! ジュリア様のパートナーは、ルーファス王子なのですよ。そんな弱気な事を言っている暇などありません! お風呂に入り、ヘアーパックと、顔のマッサージをしませんと!」
張り切っている侍女のルーシーに、髪や顔にあれこれ塗りたくられているうちに、ジュリアの社交界デビューの用意は整った。デビュタント用の白いドレスを着たジュリアは、髪の毛をルーシーに結い上げて貰う。
「まぁ! とても綺麗にできましたね。これは、エドモンド王から貴女の母上であるエミリア姫のティアラを頂いたのです。この社交界デビューの日に相応しいと思います」
祖母のグローリアは、未だジュリアがメイド根性を心の奥底に残しているのに気づいていたので、巫女姫だったエミリアのティアラを飾ってやりながら、これで自信を持ってくれれば安心なのにと悩みが尽きない。プライドの低いジュリアが、言い寄ってくる男の言いなりになりそうで、不安なのだ。
「ルーファス王子がお迎えに来られるぞ……おお! ジュリア、何て綺麗なのだ!」
用意ができたか様子を見に来たゲチスバーモンド伯爵は、孫娘の清らかな美しさに喜ぶ。しかし、こんなに綺麗な孫娘を隣国の王子がエスコートするのかと、祖父として心配にもなる。
「ルーファス王子殿下がおいでになりました」
メイドが呼びに来たので、伯爵夫妻とジュリアは下のサロンへと降りる。
「おお、ジュリア! とても綺麗ですね」
レディに対する礼儀とは知ってはいるが、ルーファス王子に手にキスをされると、ジュリアはドキドキしてしまう。シルビアお嬢様のルーファス王子への気持ちを知っているので、好意を持つのに抵抗してはみるが、愉快そうに微笑む青い瞳には負けそうだ。
「ルーファス王子、わざわざお出迎えして頂いて、申し訳ないですわ」
ルキアス王国の大使館の馬車にエスコートして乗りながら、ジュリアが遠慮しているのを、ゲチスバーモンド伯爵夫妻は大丈夫だろうかと見送って、自分達も王宮へと向かう。
「レオナルド、そんなに嫌そうな顔をするものではない」
「父上、なんだか市場で売りに出される羊の気分なのです。もう少し待ってはいけませんか?」
「お前には後継者を作る義務がある。まぁ、考え方を変えてみろ! 綺麗な令嬢を選り取りみどりなのだぞ」
誰もが羨む立場では無いかと嘯く父上に、レオナルド王子は言い返す。
「それなら、父上も新しい王妃をお迎えになっては如何ですか? 貴婦人方から熱い視線を送られているでしょう」
優雅にお茶を飲んでいたエドモンド王は、プッと吹き出した。
「私にはお前という立派な後取りがいるし、もうそんな気は無い。しかし、王宮には女主人が必要なのだ。いつまでも、ゲチスバーモンド伯爵夫人に頼る訳にもいくまい」
「ゲチスバーモンド伯爵といえば、ジュリアのデビューですね! それにしても、ルーファス王子が留学中なのが困ります。粗略には扱えませんが、なるべくジュリアとは接触させたくありません」
「それは、無論だが……隣国の王子を粗略に扱うわけにもいかないだろう」
「もしかして、今度の舞踏会でルーファス王子がジュリアのパートナーなのですか? 父上、ルキアス王国の大使に押し込まれましたね」
痛いところを突かれたエドモンド王は、兎に角、さっさと結婚しろ! と言い捨てて席を立った。レオナルド王子は、自分と言うより、将来の王妃になろうと必死の令嬢達とその両親を思い出し眉を顰める。
その頃、ゲチスバーモンド伯爵邸では、ジュリアが家庭教師のクーパー夫人から最終チェックを受けていた。
「ジュリア・ゲチスバーモンド伯爵令嬢と呼ばれたら、正式なお辞儀をするのですよ」
何百回も練習した王宮での作法をジュリアは、言われるままに繰り返す。
「もう、その辺で宜しいでしょう。エドモンド王は、ジュリアのお祖父様ですし、緊張しなくても良いですよ」
家庭教師の厳しい指導で、元々自信がないジュリアが萎縮してしまわないかと祖母のグローリアは心配する。家庭教師を下がらせた後で、これから社交界にデビューする孫娘にあれこれと話してきかす。
「ジュリア、貴女も社交界にデビューしたら、大人として扱われます。そう、結婚しても可笑しくないレディとして見られるのです。私は、貴女に幸せになって欲しいと心から願っています。だから、変な殿方に恋などしないでね」
「まだ、結婚なんて考えていませんわ」
恥ずかしそうに頬を染めるジュリアに、グローリアは社交界には品行の悪い男もいるので気をつけるようにと注意をする。
部屋に帰ったジュリアは、自分が社交界でやっていけるのか自信を無くして、侍女のルーシーに愚痴る。
「ねぇ、ルーシー……社交界デビューなんかしたくないわ」
「何を仰っているのです! ジュリア様のパートナーは、ルーファス王子なのですよ。そんな弱気な事を言っている暇などありません! お風呂に入り、ヘアーパックと、顔のマッサージをしませんと!」
張り切っている侍女のルーシーに、髪や顔にあれこれ塗りたくられているうちに、ジュリアの社交界デビューの用意は整った。デビュタント用の白いドレスを着たジュリアは、髪の毛をルーシーに結い上げて貰う。
「まぁ! とても綺麗にできましたね。これは、エドモンド王から貴女の母上であるエミリア姫のティアラを頂いたのです。この社交界デビューの日に相応しいと思います」
祖母のグローリアは、未だジュリアがメイド根性を心の奥底に残しているのに気づいていたので、巫女姫だったエミリアのティアラを飾ってやりながら、これで自信を持ってくれれば安心なのにと悩みが尽きない。プライドの低いジュリアが、言い寄ってくる男の言いなりになりそうで、不安なのだ。
「ルーファス王子がお迎えに来られるぞ……おお! ジュリア、何て綺麗なのだ!」
用意ができたか様子を見に来たゲチスバーモンド伯爵は、孫娘の清らかな美しさに喜ぶ。しかし、こんなに綺麗な孫娘を隣国の王子がエスコートするのかと、祖父として心配にもなる。
「ルーファス王子殿下がおいでになりました」
メイドが呼びに来たので、伯爵夫妻とジュリアは下のサロンへと降りる。
「おお、ジュリア! とても綺麗ですね」
レディに対する礼儀とは知ってはいるが、ルーファス王子に手にキスをされると、ジュリアはドキドキしてしまう。シルビアお嬢様のルーファス王子への気持ちを知っているので、好意を持つのに抵抗してはみるが、愉快そうに微笑む青い瞳には負けそうだ。
「ルーファス王子、わざわざお出迎えして頂いて、申し訳ないですわ」
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