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第三章 白鳥
10 白鳥
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レオナルド王子は、父上が決めた北部の有力者の令嬢と舞踏会の口切りのダンスを始める。それと同時に今回の舞踏会で社交界にデビューする白いドレスを着た令嬢達が、リュミェールが虹を掛けた大広間にパートナーにエスコートされて舞い始める。
「このような舞踏会を見ると昔に戻ったような気持ちになる。ジュリアは、エミリアによく似てきた。この平和を守り抜かなくてはならないな」
エドモンド王は、側近のゲチスバーモンド伯爵に微笑む。
「そうですね。ジュリアは、この1年でとても綺麗になりました。祖父としては心配事が一つ増えましたがね」
二人の視線の先にいるジュリアは、エミリア姫のティアラを煌めかせ、ルーファス王子と優雅に踊っている。そのすらりとした姿はまるで白鳥のように優雅だと、舞踏会のあちらこちらで称賛の声があがる。
「エドモンド王の孫娘であり、緑蔭城の相続人、次代の巫女姫には貴族達が群がりそうですな」
折角の機会だからとルーファス王子と娘を踊らせたいと願う母親に囲まれている大使夫人に苦笑しながら、ルキアス王国の大使は誰とも踊らずに壁際でジュリアとルーファス王子のダンスを眺めているセドリックに話しかける。
「それだけではありませんよ。ジュリア嬢は、とても美しい令嬢ですから」
「おや? セドリック卿、普段は氷の貴公子と呼ばれている貴方にしては熱が入っていますね。ジュリア嬢とは縁の深い貴方ではありますが、ルーファス王子の妃候補だということをお忘れなく。さぁ、貴方も舞踏会を楽しみなさい」
イオニア王国の貴族だけでもライバルが多すぎるのに、元の雇い主のお坊っちゃままで参戦させたくないと大使は釘をさす。セドリックは、そのくらい留学する前から父上にしっかりと言い聞かされてきたと頷いたが、心がチクリと痛んだ。
『ジュリア……もうメイド服を着て、おどおどとしながら微笑む少女は何処にもいないのだな。煌めくティアラを頭に載せた、美しい白鳥になったのだ』
領地で過ごした夏の日を懐かしく感じたセドリックだったが、隣国のハンサムな貴公子にはイオニア王国の令嬢達もチェックを入れていた。
「あの、ルキアス王国から留学されているセドリック卿と家のイザベルが踊りたいと願っているのですが……」
呑気にルーファス王子とジュリアのダンスを見学していた大使は、愛想よくイオニア王国の貴族達の願いを引き受けたものだから、セドリックはその後ずっとよく知らない令嬢達とダンスする羽目になった。
「このままジュリアを独占していたいけど、他の方に睨まれてしまいますね」
「まぁ、それは私の台詞ですわ。ルーファス王子と踊りたいと願っている令嬢方に睨まれてしまいます」
ルーファスは、ジュリアの保護者であるゲチスバーモンド伯爵夫人の元にエスコートしながら、その場に集まっているイオニア王国の貴族達の多さにげんなりする。国にいる時から、次代の巫女姫を獲得するのは難しいとは聞いてはいたが、これほど露骨にライバル視されるとは思っていなかった。
「ルーファス王子、ジュリアと踊って下さり、ありがとうございます。きっと一生の思い出になると思いますわ」
隣国の王子と舞踏会で踊るのは輝かしい名誉ではあるが、グローリア夫人も自分との縁談を知っていて、このような牽制をしてきたのだとルーファスは、ジュリアを保護者に返しながら後ろ髪を引かれる気持ちになった。本来なら、大使夫人に一緒に踊って欲しいと依頼した令嬢達の相手をするべきだとわかってはいたが、このままジュリアをライバル達の手に渡す気にはならない。
「グローリア伯爵夫人、私はシェフィールドにはジュリアしか知り合いの令嬢がいません。どうか、もう少しジュリアと一緒に過ごさせて下さい」
「まぁ、でも大使夫人がお困りになりますわ。ジュリアがルーファス王子を独り占めにしたと、他の令嬢方に恨まれても困りますもの」
にこやかに笑うグローリア伯爵夫人には、未だ若いルーファス王子は太刀打ちできない。それに、次の曲の相手にジュリアはエスコートされてダンスフロアーへと去ってしまった。
大使夫人に紹介された綺麗な令嬢達とダンスをするが、王子という身分に憧れている視線にはうんざりしている。それは、レオナルド王子も同じようだと、ルーファス王子は気の毒に感じる。
「大使夫人、どうにかジュリアと二人になりたいのですが……」
ダンスの休憩の合間に、ルーファスは大使夫人に相談するが、今夜の舞踏会の華には蜜蜂ならぬ独身貴族が群れている。
「なかなか難しそうですわね……あっ、彼方にサリンジャー師がおられますわ。二人っきりにはなれませんが、ジュリア嬢と少人数で話すことはできそうです」
精霊使いの修行がらみの話がしたいわけではないが、それしかジュリアをあの熱心な求婚者の群れから連れ出す理由は見つからないとルーファスは頷いた。
「サリンジャー師が一緒なら、グローリア伯爵夫人もジュリアをバルコニーに出させてくれるでしょう。後は、サリンジャー師が気をきかせてくれたら良いのですが……まぁ、やってみます」
楽天的なルーファスだったが、サリンジャーは自国の巫女姫を外国に嫁がせる気は無かった。グローリア伯爵夫人から折角ジュリアを引き離したのに、バルコニーではサリンジャー師の監督の元で話し合うことになったのだ。
「このような舞踏会を見ると昔に戻ったような気持ちになる。ジュリアは、エミリアによく似てきた。この平和を守り抜かなくてはならないな」
エドモンド王は、側近のゲチスバーモンド伯爵に微笑む。
「そうですね。ジュリアは、この1年でとても綺麗になりました。祖父としては心配事が一つ増えましたがね」
二人の視線の先にいるジュリアは、エミリア姫のティアラを煌めかせ、ルーファス王子と優雅に踊っている。そのすらりとした姿はまるで白鳥のように優雅だと、舞踏会のあちらこちらで称賛の声があがる。
「エドモンド王の孫娘であり、緑蔭城の相続人、次代の巫女姫には貴族達が群がりそうですな」
折角の機会だからとルーファス王子と娘を踊らせたいと願う母親に囲まれている大使夫人に苦笑しながら、ルキアス王国の大使は誰とも踊らずに壁際でジュリアとルーファス王子のダンスを眺めているセドリックに話しかける。
「それだけではありませんよ。ジュリア嬢は、とても美しい令嬢ですから」
「おや? セドリック卿、普段は氷の貴公子と呼ばれている貴方にしては熱が入っていますね。ジュリア嬢とは縁の深い貴方ではありますが、ルーファス王子の妃候補だということをお忘れなく。さぁ、貴方も舞踏会を楽しみなさい」
イオニア王国の貴族だけでもライバルが多すぎるのに、元の雇い主のお坊っちゃままで参戦させたくないと大使は釘をさす。セドリックは、そのくらい留学する前から父上にしっかりと言い聞かされてきたと頷いたが、心がチクリと痛んだ。
『ジュリア……もうメイド服を着て、おどおどとしながら微笑む少女は何処にもいないのだな。煌めくティアラを頭に載せた、美しい白鳥になったのだ』
領地で過ごした夏の日を懐かしく感じたセドリックだったが、隣国のハンサムな貴公子にはイオニア王国の令嬢達もチェックを入れていた。
「あの、ルキアス王国から留学されているセドリック卿と家のイザベルが踊りたいと願っているのですが……」
呑気にルーファス王子とジュリアのダンスを見学していた大使は、愛想よくイオニア王国の貴族達の願いを引き受けたものだから、セドリックはその後ずっとよく知らない令嬢達とダンスする羽目になった。
「このままジュリアを独占していたいけど、他の方に睨まれてしまいますね」
「まぁ、それは私の台詞ですわ。ルーファス王子と踊りたいと願っている令嬢方に睨まれてしまいます」
ルーファスは、ジュリアの保護者であるゲチスバーモンド伯爵夫人の元にエスコートしながら、その場に集まっているイオニア王国の貴族達の多さにげんなりする。国にいる時から、次代の巫女姫を獲得するのは難しいとは聞いてはいたが、これほど露骨にライバル視されるとは思っていなかった。
「ルーファス王子、ジュリアと踊って下さり、ありがとうございます。きっと一生の思い出になると思いますわ」
隣国の王子と舞踏会で踊るのは輝かしい名誉ではあるが、グローリア夫人も自分との縁談を知っていて、このような牽制をしてきたのだとルーファスは、ジュリアを保護者に返しながら後ろ髪を引かれる気持ちになった。本来なら、大使夫人に一緒に踊って欲しいと依頼した令嬢達の相手をするべきだとわかってはいたが、このままジュリアをライバル達の手に渡す気にはならない。
「グローリア伯爵夫人、私はシェフィールドにはジュリアしか知り合いの令嬢がいません。どうか、もう少しジュリアと一緒に過ごさせて下さい」
「まぁ、でも大使夫人がお困りになりますわ。ジュリアがルーファス王子を独り占めにしたと、他の令嬢方に恨まれても困りますもの」
にこやかに笑うグローリア伯爵夫人には、未だ若いルーファス王子は太刀打ちできない。それに、次の曲の相手にジュリアはエスコートされてダンスフロアーへと去ってしまった。
大使夫人に紹介された綺麗な令嬢達とダンスをするが、王子という身分に憧れている視線にはうんざりしている。それは、レオナルド王子も同じようだと、ルーファス王子は気の毒に感じる。
「大使夫人、どうにかジュリアと二人になりたいのですが……」
ダンスの休憩の合間に、ルーファスは大使夫人に相談するが、今夜の舞踏会の華には蜜蜂ならぬ独身貴族が群れている。
「なかなか難しそうですわね……あっ、彼方にサリンジャー師がおられますわ。二人っきりにはなれませんが、ジュリア嬢と少人数で話すことはできそうです」
精霊使いの修行がらみの話がしたいわけではないが、それしかジュリアをあの熱心な求婚者の群れから連れ出す理由は見つからないとルーファスは頷いた。
「サリンジャー師が一緒なら、グローリア伯爵夫人もジュリアをバルコニーに出させてくれるでしょう。後は、サリンジャー師が気をきかせてくれたら良いのですが……まぁ、やってみます」
楽天的なルーファスだったが、サリンジャーは自国の巫女姫を外国に嫁がせる気は無かった。グローリア伯爵夫人から折角ジュリアを引き離したのに、バルコニーではサリンジャー師の監督の元で話し合うことになったのだ。
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