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第十章 結婚生活
9 アスランとミヤ
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ショウがサンズとヘッジ王国とローラン王国へ向かうのを、アスランは放置した。
「彼奴も、父親になるんだしなぁ」
「カリンに勝てるまで、禁止されていたのでしょう? 止めなくて、宜しいのですか?」
心配そうなミヤに、バッカスがついて行ったから大丈夫だろうと笑った。
「まさか、バッカス外務大臣と王宮に居たくないから、ショウをサンズと旅にだしたのでは無いでしょうね!」
馬鹿な! と笑いとばすアスランを、疑わしそうにミヤは睨みつける。
「それより、ショウには山ほど縁談が殺到しているみたいだな」
アスランの話を変えようとする意図に気づいて、ミヤは溜め息しか出ない。御自分はあれほど押し付けられた妻達を嫌がっておられたくせに、少しはショウを庇って下されば良いのにと睨み付ける。
王太子に娘や孫娘をと、重臣や大商人達から申し込みが後を絶たないのを、ミヤは苦労して保留にしている。
「まぁ、今いる許嫁や妻のうち、外国住まいが二人、第一夫人希望が二人と、後宮にずっといるのは三人だけだから楽勝じゃないか」
自分のことではないので、無責任な言葉を発するアスランにミヤはカチンときた。
「貴方の後宮にも、夫人が少ないのでは無いですか? まだ、メリルが卵を産むということは、王子や王女を増やせるということですわよね。ショウに申し込まれている何人かを、後宮に迎え入れましょうか?」
アスランは呑気に飲んでいたお茶を吹き出して、止めろ! と顔色を変える。ミヤもあと数年でエリカとパメラを嫁がせれば楽になるので、本気で言ったわけでは無いと、アスランは気づいて少しふてくされる。
「相変わらず、ミヤはショウに甘い。私には厳しいのに……」
ミヤは新しいお茶をいれてやりながら、好き勝手を許している自分がどれほど寛大かと笑う。
「それで、エリカやミミやメリッサとも会ってこられたのでしょう。エリカは、ウィリアム王子と仲良くしてましたか? ミミは、リューデンハイムの竜騎士修行についていけてるのでしょうか? メリッサは、そろそろパロマ大学を辞めなくてはいけないけど、どう考えているのやら……」
アスランに色々と質問するが、ミヤが満足するほどの詳しい様子は答えない。
「エリカは機嫌が良かったから、ウィリアムと上手くいってるのだろう。ミミは元気だったぞ。メリッサかぁ、相変わらずメルト兄上の娘とは思えない美女ぶりだったなぁ」
いい加減なコメントに、ミヤは何をしに三国を視察したのかと、額に青筋を立てる。
「ヘインズに旧帝国三国を案内していたのだ。娘や姪にも会ったが、皆は元気にしていたから問題ない」
ミヤは、男の人に結婚前のデリケートな乙女心を読み取って貰うのは無理だと、溜め息をついた。
「エリカは、外国の王子に嫁ぐのですよ。もう少し、父親として配慮が必要でしょう。ミミは、レティシィアの懐妊をどう受け止めてましたか? 焦った気持ちで騎竜訓練など受けては、事故など起こらないでしょうか? メリッサは、本当はもう少しパロマ大学で勉強したいのではないかしら? でも、12月に結婚するのなら、そろそろ帰国しなくてはいけないでしょ。何か悩んだ様子に、気づかれなかったのですか?」
アスランはカザリア王国では、フラナガンに押し付けられてエドアルド国王なんかに会ったので、メリッサどころではなかったと愚痴る。
「そもそも、ショウがエドアルド国王のターシュをさらって来たのに、なんで私が会わなくてはいけないのだ。恨み言を山ほど聞かされたが、ターシュは当分帰りそうに無いなぁ」
自分の愛鷹白雪とつがいにさせたのに白々しいと、ミヤに睨まれる。
「そろそろ雛達も、独り立ちできるでしょう。ターシュをエドアルド国王にお返ししては如何ですか?」
「ふん! 別にターシュを閉じ込めている訳じゃないぞ。それに、次の雛を育てなくてはいけないだろう」
あら、まぁ! と、ミヤは呆れる。
「エドアルド国王が、レイテに押し掛けて来なければ良いけど……」
せっかく新しくいれて貰ったお茶を、アスランは吹き出した。
「縁起でも無いことを言うな! あんな奴がぞろぞろ家臣を連れて訪問でもしたら、公式行事とか面倒くさいだろう。ターシュは雛達が巣立ったら、帰りたかったら帰るさ!」
東南諸島の男としては珍しく、アスランは宴会が嫌いだ。ミヤは、ショウも変な所が似ていると苦笑する。
「エリカが機嫌が良いのは、ウィリアムを気に入って、交際も順調だからかしら。ショウが帰りにユングフラウに寄ってくれれば、詳しくわかるのに……」
アスランは、さてなぁと笑った。
「ローラン王国でミーシャを押し付けられたら、ミミに合わせる顔がないと通過するのではないかな? ミミは怖いからなぁ」
ミヤは、ミーシャ? 何のことでしょうと、片眉をあげる。
「ミヤが知らないことなど、無いはずだ。ミーシャとの結婚に反対なのだろう? ローラン王国は一夫一妻制だからなぁ」
シラを切ったのを見透かされて、この人は! と腹を立てる。
「ミーシャ姫が、後宮でやっていけるとは思えません。噂では大人しい方だとか、ショウの妻達は……タイプが違いますわ」
自分の孫のララもいるので、肉食系とは表現しなかったが、一夫多妻制を勝ち抜くテクニックを幼い時から叩き込まれている王家の女と、後宮で争うのは無理だと首を横に振る。
「まぁ、ショウが考えるさ。何ならエスメラルダのように、現地妻にしても良いのだからな」
本当にいい加減なアスランに、ミヤはプチッと切れた。
「ゼリア王女は王位継承者ですから、結婚の時に子供のことは取り決めるのでしょう。国際的な問題ですから、私が口を挟むことではありませんわ。でも、エスメラルダやミーシャが産む王子や王女は……」
アスランにクスクス笑われて、ミヤは自分が勘違いしているのに気づく。
「ミヤ、お前は私の第一夫人だ。そんな面倒くさい問題は、ショウの第一夫人に任せておけば良いのだ。パメラも落ち着いているんだから、ショウが帰ってきたら旅に出よう!」
自分がいつまでもショウを子供扱いしているのに唖然として、ショウの王子や王女の育成は、ショウの第一夫人の仕事だと溜め息をつく。
「何だか年を取った気分になりましたわ。そうですわねぇ、孫が結婚したのですもの……」
「おい! 老け込むのはまだ早いぞ! エリカの結婚準備や、パメラに淑やかな振りをさせないとシーガルに嫌われるのだからな! それに、虹が何個もかかる大瀑布や、色とりどりの鳥が飛び交う島にも行ってないじゃないか」
ミヤは、本来はそんな旅行は、第二夫人を連れて行くものでしょうと笑う。
「アスラン様、お気持ちだけ受け取っておきますわ。それに、ショウの第一夫人を見つけなきゃいけませんもの、忙しくて旅行どころではありません!」
相変わらずショウに甘いと、アスランは腹を立てる。
「私なんかミヤを口説き落とすのに、どれほど苦労したか……それに、誰も第一夫人など世話してくれなかったぞ」
「それは、性格と日頃の行いの違いですわ。貴方の傲慢な振る舞いは、レイテで評判でしたもの」
後宮でアスランがミヤに糞味噌に言われて腐っていた頃、ショウはピップスとバッカス外務大臣とペリニョンを目指して飛んでいた。
「彼奴も、父親になるんだしなぁ」
「カリンに勝てるまで、禁止されていたのでしょう? 止めなくて、宜しいのですか?」
心配そうなミヤに、バッカスがついて行ったから大丈夫だろうと笑った。
「まさか、バッカス外務大臣と王宮に居たくないから、ショウをサンズと旅にだしたのでは無いでしょうね!」
馬鹿な! と笑いとばすアスランを、疑わしそうにミヤは睨みつける。
「それより、ショウには山ほど縁談が殺到しているみたいだな」
アスランの話を変えようとする意図に気づいて、ミヤは溜め息しか出ない。御自分はあれほど押し付けられた妻達を嫌がっておられたくせに、少しはショウを庇って下されば良いのにと睨み付ける。
王太子に娘や孫娘をと、重臣や大商人達から申し込みが後を絶たないのを、ミヤは苦労して保留にしている。
「まぁ、今いる許嫁や妻のうち、外国住まいが二人、第一夫人希望が二人と、後宮にずっといるのは三人だけだから楽勝じゃないか」
自分のことではないので、無責任な言葉を発するアスランにミヤはカチンときた。
「貴方の後宮にも、夫人が少ないのでは無いですか? まだ、メリルが卵を産むということは、王子や王女を増やせるということですわよね。ショウに申し込まれている何人かを、後宮に迎え入れましょうか?」
アスランは呑気に飲んでいたお茶を吹き出して、止めろ! と顔色を変える。ミヤもあと数年でエリカとパメラを嫁がせれば楽になるので、本気で言ったわけでは無いと、アスランは気づいて少しふてくされる。
「相変わらず、ミヤはショウに甘い。私には厳しいのに……」
ミヤは新しいお茶をいれてやりながら、好き勝手を許している自分がどれほど寛大かと笑う。
「それで、エリカやミミやメリッサとも会ってこられたのでしょう。エリカは、ウィリアム王子と仲良くしてましたか? ミミは、リューデンハイムの竜騎士修行についていけてるのでしょうか? メリッサは、そろそろパロマ大学を辞めなくてはいけないけど、どう考えているのやら……」
アスランに色々と質問するが、ミヤが満足するほどの詳しい様子は答えない。
「エリカは機嫌が良かったから、ウィリアムと上手くいってるのだろう。ミミは元気だったぞ。メリッサかぁ、相変わらずメルト兄上の娘とは思えない美女ぶりだったなぁ」
いい加減なコメントに、ミヤは何をしに三国を視察したのかと、額に青筋を立てる。
「ヘインズに旧帝国三国を案内していたのだ。娘や姪にも会ったが、皆は元気にしていたから問題ない」
ミヤは、男の人に結婚前のデリケートな乙女心を読み取って貰うのは無理だと、溜め息をついた。
「エリカは、外国の王子に嫁ぐのですよ。もう少し、父親として配慮が必要でしょう。ミミは、レティシィアの懐妊をどう受け止めてましたか? 焦った気持ちで騎竜訓練など受けては、事故など起こらないでしょうか? メリッサは、本当はもう少しパロマ大学で勉強したいのではないかしら? でも、12月に結婚するのなら、そろそろ帰国しなくてはいけないでしょ。何か悩んだ様子に、気づかれなかったのですか?」
アスランはカザリア王国では、フラナガンに押し付けられてエドアルド国王なんかに会ったので、メリッサどころではなかったと愚痴る。
「そもそも、ショウがエドアルド国王のターシュをさらって来たのに、なんで私が会わなくてはいけないのだ。恨み言を山ほど聞かされたが、ターシュは当分帰りそうに無いなぁ」
自分の愛鷹白雪とつがいにさせたのに白々しいと、ミヤに睨まれる。
「そろそろ雛達も、独り立ちできるでしょう。ターシュをエドアルド国王にお返ししては如何ですか?」
「ふん! 別にターシュを閉じ込めている訳じゃないぞ。それに、次の雛を育てなくてはいけないだろう」
あら、まぁ! と、ミヤは呆れる。
「エドアルド国王が、レイテに押し掛けて来なければ良いけど……」
せっかく新しくいれて貰ったお茶を、アスランは吹き出した。
「縁起でも無いことを言うな! あんな奴がぞろぞろ家臣を連れて訪問でもしたら、公式行事とか面倒くさいだろう。ターシュは雛達が巣立ったら、帰りたかったら帰るさ!」
東南諸島の男としては珍しく、アスランは宴会が嫌いだ。ミヤは、ショウも変な所が似ていると苦笑する。
「エリカが機嫌が良いのは、ウィリアムを気に入って、交際も順調だからかしら。ショウが帰りにユングフラウに寄ってくれれば、詳しくわかるのに……」
アスランは、さてなぁと笑った。
「ローラン王国でミーシャを押し付けられたら、ミミに合わせる顔がないと通過するのではないかな? ミミは怖いからなぁ」
ミヤは、ミーシャ? 何のことでしょうと、片眉をあげる。
「ミヤが知らないことなど、無いはずだ。ミーシャとの結婚に反対なのだろう? ローラン王国は一夫一妻制だからなぁ」
シラを切ったのを見透かされて、この人は! と腹を立てる。
「ミーシャ姫が、後宮でやっていけるとは思えません。噂では大人しい方だとか、ショウの妻達は……タイプが違いますわ」
自分の孫のララもいるので、肉食系とは表現しなかったが、一夫多妻制を勝ち抜くテクニックを幼い時から叩き込まれている王家の女と、後宮で争うのは無理だと首を横に振る。
「まぁ、ショウが考えるさ。何ならエスメラルダのように、現地妻にしても良いのだからな」
本当にいい加減なアスランに、ミヤはプチッと切れた。
「ゼリア王女は王位継承者ですから、結婚の時に子供のことは取り決めるのでしょう。国際的な問題ですから、私が口を挟むことではありませんわ。でも、エスメラルダやミーシャが産む王子や王女は……」
アスランにクスクス笑われて、ミヤは自分が勘違いしているのに気づく。
「ミヤ、お前は私の第一夫人だ。そんな面倒くさい問題は、ショウの第一夫人に任せておけば良いのだ。パメラも落ち着いているんだから、ショウが帰ってきたら旅に出よう!」
自分がいつまでもショウを子供扱いしているのに唖然として、ショウの王子や王女の育成は、ショウの第一夫人の仕事だと溜め息をつく。
「何だか年を取った気分になりましたわ。そうですわねぇ、孫が結婚したのですもの……」
「おい! 老け込むのはまだ早いぞ! エリカの結婚準備や、パメラに淑やかな振りをさせないとシーガルに嫌われるのだからな! それに、虹が何個もかかる大瀑布や、色とりどりの鳥が飛び交う島にも行ってないじゃないか」
ミヤは、本来はそんな旅行は、第二夫人を連れて行くものでしょうと笑う。
「アスラン様、お気持ちだけ受け取っておきますわ。それに、ショウの第一夫人を見つけなきゃいけませんもの、忙しくて旅行どころではありません!」
相変わらずショウに甘いと、アスランは腹を立てる。
「私なんかミヤを口説き落とすのに、どれほど苦労したか……それに、誰も第一夫人など世話してくれなかったぞ」
「それは、性格と日頃の行いの違いですわ。貴方の傲慢な振る舞いは、レイテで評判でしたもの」
後宮でアスランがミヤに糞味噌に言われて腐っていた頃、ショウはピップスとバッカス外務大臣とペリニョンを目指して飛んでいた。
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