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第15章 次代の王
13 出産ラッシュ!
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リリィは、エスメラルダがリュウ王子を産んだと聞いて喜んだが、嫉妬と不安に揺れるロジーナとララを宥めるのに苦労した。
レティシィアは、できたら第二子も女の子なら良いと思っていたが、満月の夜に産まれたのは第三王子だった。
「ユウト……優しい人、優れた人と言う意味なんだけど」
聞き慣れない名前と模様の様な文字を見せられたレティシィアは、ユウトと呟いた。この名前がこの赤ちゃんに相応しくなるようにと祈りを籠める。
「素敵な名前ですわ。人に優しくなるように育てます」
王家の姫であるロジーナが産んだカイト王子と、新大陸の巫女姫が産んだリュウ王子がいずれは後継者争いに巻き込まれるのは目に見えている。娼婦あがりの自分が産んだユウト王子が、後継者に選ばれる事はないと思っているが、兄王子を輔佐して欲しいと願った。
リリィは、誰が後継者に選ばれても良いように賢く育てなければと、王太子の第一夫人としての責任の重さに武者震いする。
ロジーナは、自分の王子のライバルになる王子の誕生に不安を覚えたが、つかまり立ちし始めたカイトを抱きしめると穏やかな気持ちになった。
「カイトほど可愛くて賢い王子は何処にもいまちぇんよ」
ショウによく似た可愛いカイトは、東南諸島の王に相応しいとロジーナは満足そうに微笑んだ。
「まぁ、レティシィア様も王子を産んだのですね……」
他の口から伝わるよりはと、リリィはお腹が大きくなっているララに、ユウト王子の誕生を告げた。
「ララ様、気持ちを安らかにお持ち下さいね」
リリィは精一杯慰めてみたが、こればかりは産まれてみないと王子かどうかわからない。王太子の後宮では、王子を産んだ妃が強い立場になるのだ。
「父上は男の子を望んでおられるけど、私はどちらでも良いわ」
お腹が大きくなってきたメリッサは、第一夫人を目指しているので、いずれは後宮から出ていく立場だ。さばさばと健康なら文句は言わないわと、エスメラルダやレティシィアが王子を産んだことを祝福した。
「レティシィア様の真珠の養殖を私も手伝いたいのですが、お腹が大きいうちは駄目ですわね。せめて、レイテ大学で真珠貝の生態の研究に参加したいですわ」
リリィは「お腹の中には王太子の赤ちゃんが居るのですよ! 誘拐の危険には曝せません」と叱っていたが、プッと吹き出した。
「ああ、ララがナーバスになっているのね。良いわ、私の説得を聞くかどうかはわからないけど、これも第一夫人になる修行の一つね。リリィ様ときたら、吹き出してしまわれるから、何をさせたいのかわかってしまいましたわ」
やはり、ロジーナとララの対決が一番の問題なのだと、リリィは溜め息をつく。
「どうか王子が産まれますように……」
リリィの願いも虚しく、ララは可愛い女の子を出産した。ララは、ショウの顔を見ることもできないほど落ち込んだ。
「ララ、こんなに可愛い赤ちゃんを産んでくれて、ありがとう」
慰めてくれるのは嬉しいが、ララは枕に顔を埋めたままだ。
「この子をユリアと名づけようと思うんだけど、ララはそれで良い?」
赤ちゃんの顔をはっきりと見ていなかったララは、やっと起きあがってショウが抱いている我が子を覗き込む。
「ほら、お母さんだよ」と手渡されると、王子でなかったことで拗ねていた自分を反省した。
「ごめんなさいね」と涙をこぼすララをショウは抱き締めた。
「私は女の子の方が可愛くて好きだよ」とふざけるショウに、ララは笑う。
「ねぇ、ユリアにも何か意味があるの?」
レイラには玲蘭と音と綺麗な漢字を当てたのを覚えていたララは、友里亜と教えて貰う。
「友だち、故郷、次の子。良い意味を沢山籠めてくれたのね」
ララは、上のレイラには旧帝国三国の王子との縁談がそのうち持ち込まれるだろうと覚悟していたので、故郷という意味を籠めてくれたショウに感謝する。
リリィは、ララが落ち着いてくれたのでホッとしたが、メリッサの出産がまだだと気を引き締めた。
メリッサは初めての出産だが、日頃から活動的な生活を送っているからか安産で、可愛い女の子を産んだ。祖父になるメルトは、ショウ王太子の能力を買っているので、孫王子に期待していたから、少し残念に思った。しかし、メリッサもショウも可愛い赤ちゃんに満足した。
「バイオレットと名づけたいんだけど良いかな? この子が産まれた朝の空が、とても綺麗な菫色だったから」
パロマ大学で真名を学んだメリッサは、とても綺麗な名前だと喜んだ。この小さな王女がカザリア王国のヘンリー王子と結ばれるかもしれないと、メリッサはショウが北帝国風の名前をつけたのに気づいた。
「メリッサには敵わないね」ショウは、ララから二人とも娘を取り上げて外国に嫁がせるのを避けた自分の意図を、名前だけで察したメリッサの賢さに感嘆した。
「まぁ、ではご褒美を貰わなくては! レイテ大学で真珠の母貝の生態を研究したいの」
魅惑的な金色の瞳で強請られて、ショウはめろめろになって承諾した。子育ては、乳母と女官達がついているし、リリィが責任をもって監督してくれる。
「やれやれ」リリィは、出産ラッシュは終わったが、これから子育てが大変だと溜め息をついた。
レティシィアは、できたら第二子も女の子なら良いと思っていたが、満月の夜に産まれたのは第三王子だった。
「ユウト……優しい人、優れた人と言う意味なんだけど」
聞き慣れない名前と模様の様な文字を見せられたレティシィアは、ユウトと呟いた。この名前がこの赤ちゃんに相応しくなるようにと祈りを籠める。
「素敵な名前ですわ。人に優しくなるように育てます」
王家の姫であるロジーナが産んだカイト王子と、新大陸の巫女姫が産んだリュウ王子がいずれは後継者争いに巻き込まれるのは目に見えている。娼婦あがりの自分が産んだユウト王子が、後継者に選ばれる事はないと思っているが、兄王子を輔佐して欲しいと願った。
リリィは、誰が後継者に選ばれても良いように賢く育てなければと、王太子の第一夫人としての責任の重さに武者震いする。
ロジーナは、自分の王子のライバルになる王子の誕生に不安を覚えたが、つかまり立ちし始めたカイトを抱きしめると穏やかな気持ちになった。
「カイトほど可愛くて賢い王子は何処にもいまちぇんよ」
ショウによく似た可愛いカイトは、東南諸島の王に相応しいとロジーナは満足そうに微笑んだ。
「まぁ、レティシィア様も王子を産んだのですね……」
他の口から伝わるよりはと、リリィはお腹が大きくなっているララに、ユウト王子の誕生を告げた。
「ララ様、気持ちを安らかにお持ち下さいね」
リリィは精一杯慰めてみたが、こればかりは産まれてみないと王子かどうかわからない。王太子の後宮では、王子を産んだ妃が強い立場になるのだ。
「父上は男の子を望んでおられるけど、私はどちらでも良いわ」
お腹が大きくなってきたメリッサは、第一夫人を目指しているので、いずれは後宮から出ていく立場だ。さばさばと健康なら文句は言わないわと、エスメラルダやレティシィアが王子を産んだことを祝福した。
「レティシィア様の真珠の養殖を私も手伝いたいのですが、お腹が大きいうちは駄目ですわね。せめて、レイテ大学で真珠貝の生態の研究に参加したいですわ」
リリィは「お腹の中には王太子の赤ちゃんが居るのですよ! 誘拐の危険には曝せません」と叱っていたが、プッと吹き出した。
「ああ、ララがナーバスになっているのね。良いわ、私の説得を聞くかどうかはわからないけど、これも第一夫人になる修行の一つね。リリィ様ときたら、吹き出してしまわれるから、何をさせたいのかわかってしまいましたわ」
やはり、ロジーナとララの対決が一番の問題なのだと、リリィは溜め息をつく。
「どうか王子が産まれますように……」
リリィの願いも虚しく、ララは可愛い女の子を出産した。ララは、ショウの顔を見ることもできないほど落ち込んだ。
「ララ、こんなに可愛い赤ちゃんを産んでくれて、ありがとう」
慰めてくれるのは嬉しいが、ララは枕に顔を埋めたままだ。
「この子をユリアと名づけようと思うんだけど、ララはそれで良い?」
赤ちゃんの顔をはっきりと見ていなかったララは、やっと起きあがってショウが抱いている我が子を覗き込む。
「ほら、お母さんだよ」と手渡されると、王子でなかったことで拗ねていた自分を反省した。
「ごめんなさいね」と涙をこぼすララをショウは抱き締めた。
「私は女の子の方が可愛くて好きだよ」とふざけるショウに、ララは笑う。
「ねぇ、ユリアにも何か意味があるの?」
レイラには玲蘭と音と綺麗な漢字を当てたのを覚えていたララは、友里亜と教えて貰う。
「友だち、故郷、次の子。良い意味を沢山籠めてくれたのね」
ララは、上のレイラには旧帝国三国の王子との縁談がそのうち持ち込まれるだろうと覚悟していたので、故郷という意味を籠めてくれたショウに感謝する。
リリィは、ララが落ち着いてくれたのでホッとしたが、メリッサの出産がまだだと気を引き締めた。
メリッサは初めての出産だが、日頃から活動的な生活を送っているからか安産で、可愛い女の子を産んだ。祖父になるメルトは、ショウ王太子の能力を買っているので、孫王子に期待していたから、少し残念に思った。しかし、メリッサもショウも可愛い赤ちゃんに満足した。
「バイオレットと名づけたいんだけど良いかな? この子が産まれた朝の空が、とても綺麗な菫色だったから」
パロマ大学で真名を学んだメリッサは、とても綺麗な名前だと喜んだ。この小さな王女がカザリア王国のヘンリー王子と結ばれるかもしれないと、メリッサはショウが北帝国風の名前をつけたのに気づいた。
「メリッサには敵わないね」ショウは、ララから二人とも娘を取り上げて外国に嫁がせるのを避けた自分の意図を、名前だけで察したメリッサの賢さに感嘆した。
「まぁ、ではご褒美を貰わなくては! レイテ大学で真珠の母貝の生態を研究したいの」
魅惑的な金色の瞳で強請られて、ショウはめろめろになって承諾した。子育ては、乳母と女官達がついているし、リリィが責任をもって監督してくれる。
「やれやれ」リリィは、出産ラッシュは終わったが、これから子育てが大変だと溜め息をついた。
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