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40 何か変
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「なぁ、鈴子先生と達雄先生って、ええ感じやなぁ」
おませな女の子達は、二人がお互いに好意を持っているのに気づいた。
「珠子ちゃん、鈴子先生は結婚しはるんやろか?」
小雪ちゃんの問いに、珠子ちゃんは腕を組む。泣き女も首斬り男も、古風というか、好意を持っているにもかかわらず、先に進みそうにないのだ。
「二人とも奥手やからなぁ。それに、恥ずかしがり屋やから、男子がアホなこと言ったりしたら、きっと駄目になるわ」
小雪ちゃんは、前の授業中にも九助くんが「鈴子先生、綺麗になったなぁ! 彼氏できたんちがうか?」とからかったのを思い出して眉を顰める。
「真っ赤になってはったもんなぁ。あれでは、すぐに他の男子にもバレてしまうわ」
二人は、他の女の子も巻き込んで『キューピッド作戦』を実行することにする。
「絶対に男子にアホなことを言わしたらあかんで! 指切りった!」
鈴子先生は、まさか自分の恋を女の子達が応援してくれているとは知らず、年度末のテストの点つけや、あゆみの作成に忙しくしていた。しかし、何となく教室の雰囲気がおかしいとは気づいていた。
「何か、心配ごとですか?」
手を止めて、ぼんやり宙を眺めている鈴子先生に、隣の2組のベテラン先生が声をかける。
「心配というか……近ごろ、男の子と女の子が何か変な感じなのです。今までは、仲が良かったのに、少し壁があるような……」
ベテラン先生は、上の学年になるにつれて、男子と女子は別れていきますと笑った。
「学年にもよりますね。仲の良い学年だと楽ですが、とても仲が悪い学年もありますよ。小学生の間は、女の子の方がおませさんだから、男の子は子どもに見えるのでしょう」
そう言われてみると、1年1組の女の子はしっかりしていると、鈴子先生も微笑む。この時は、そんなものかしら? と違和感をそのままにしてしまった。
小雪ちゃんは、男子に人気なので、二人をそっとしとこうね! と頼むと、全員が指切りげんまんした。それでも、うっかりひやかそうとすると、猫娘の爪とろくろ首がのびてくる。
一度など、九助くんが「あついのう~」とひやかしたら、小雪ちゃんのブリザード攻撃にあった。鈴子先生は、いつもはそんなことをしない小雪ちゃんに驚いたが、九助くんが「自分が悪いねん」と言うので、詳しい事情はわからなかった。
「何だかみんなが変なの」
放課後、鈴子先生は達雄先生に悩みを打ち明けた。達雄先生も雪女の小雪ちゃんが、ブリザード攻撃したと聞いて驚いた。
「小雪ちゃんは、何も理由もなしに、そのようなことをしないでござるよ。九助くんは、自分が悪いと言ったのでござるか? 九助くんは、小雪ちゃんを好いておるから、意地悪や、悪戯はしないでござろうが……」
二人は、級長の珠子ちゃんが、理由を知っているのではと思いつく。猫おばさんの家に事情を聞きに行く。
猫おばさんの家は、大阪のど真ん中にあるとは思えない程の立派な和風のお屋敷だ。代々、米問屋でお蔵の番をしていた猫が百年以上生きて、化け猫、いやこの呼び名は嫌がるので、猫娘? ちょっと無理があるので、猫おばさんになったのだ。
立派な座敷で、お茶をもてなされる。猫おばさんは、にやにやしながら、若い二人を眺めて話を聞いていた。
「あんさんらは、いつ結婚しますねん?」
やはり、日本家屋は落ち着くと、美味しそうにお茶を飲んでいた達雄先生は、ブブッと吹き出した。
「これは、ご無礼したでござる」
スーツのポケットから、手ぬぐいを出してお茶を拭こうとしたが、鈴子先生のハンカチを持った手と重なり、真っ赤になる。
「子どもらは、敏感だす。二人が仲が良いのも、気づいているんでっしゃろ。きっと男の子がはやし立ててワヤにせんように、女の子らが見張っとるんやと思いますで」
猫おばさんは、にっこりと笑うと仲人を引き受ける。気の早い猫おばさんは、日めくりを持ってきて吉日をさがしだす。
「あいや、待たれい! いや、お待ち下され……」
鈴子先生も真っ赤になっていたが、達雄先生が、待て! と言い出したので、自分の勘違いだったのかと真っ青になる。大きな目に涙の粒が盛り上がる。
達雄先生は、鈴子先生に向き直り、しっかりと目を見てプロポーズした。
「まだ、新米で鈴子先生を食べさせていく自信はないが、結婚して下さらぬか」
真っ赤になって、頭を下げる。泣き女の鈴子先生は、大泣きしだした。
「ああ~ん! 結婚します! でも、でも、こんなに泣き虫でも良いのかしら……」
猫おばさんは、二人きりにしてあげようと、座敷から下がった。二人は、よく話し合って、夏休みに結婚することを決めた。
「生徒も招待したいわ!」
「そうでござるなぁ、1年1組の生徒は恋のキューピッドでござるからなぁ」
小学生と話す機会が増えて、少しずつ新しい言葉が増えていったが、鈴子先生は「ござる」と言う達雄先生の昔かたぎが大好きだ。
「しあわせ……」と微笑む鈴子先生だが、やはり涙がこぼれてしまう。達雄先生は、そんな泣き虫の鈴子先生が愛しくてしかたがない。
おませな女の子達は、二人がお互いに好意を持っているのに気づいた。
「珠子ちゃん、鈴子先生は結婚しはるんやろか?」
小雪ちゃんの問いに、珠子ちゃんは腕を組む。泣き女も首斬り男も、古風というか、好意を持っているにもかかわらず、先に進みそうにないのだ。
「二人とも奥手やからなぁ。それに、恥ずかしがり屋やから、男子がアホなこと言ったりしたら、きっと駄目になるわ」
小雪ちゃんは、前の授業中にも九助くんが「鈴子先生、綺麗になったなぁ! 彼氏できたんちがうか?」とからかったのを思い出して眉を顰める。
「真っ赤になってはったもんなぁ。あれでは、すぐに他の男子にもバレてしまうわ」
二人は、他の女の子も巻き込んで『キューピッド作戦』を実行することにする。
「絶対に男子にアホなことを言わしたらあかんで! 指切りった!」
鈴子先生は、まさか自分の恋を女の子達が応援してくれているとは知らず、年度末のテストの点つけや、あゆみの作成に忙しくしていた。しかし、何となく教室の雰囲気がおかしいとは気づいていた。
「何か、心配ごとですか?」
手を止めて、ぼんやり宙を眺めている鈴子先生に、隣の2組のベテラン先生が声をかける。
「心配というか……近ごろ、男の子と女の子が何か変な感じなのです。今までは、仲が良かったのに、少し壁があるような……」
ベテラン先生は、上の学年になるにつれて、男子と女子は別れていきますと笑った。
「学年にもよりますね。仲の良い学年だと楽ですが、とても仲が悪い学年もありますよ。小学生の間は、女の子の方がおませさんだから、男の子は子どもに見えるのでしょう」
そう言われてみると、1年1組の女の子はしっかりしていると、鈴子先生も微笑む。この時は、そんなものかしら? と違和感をそのままにしてしまった。
小雪ちゃんは、男子に人気なので、二人をそっとしとこうね! と頼むと、全員が指切りげんまんした。それでも、うっかりひやかそうとすると、猫娘の爪とろくろ首がのびてくる。
一度など、九助くんが「あついのう~」とひやかしたら、小雪ちゃんのブリザード攻撃にあった。鈴子先生は、いつもはそんなことをしない小雪ちゃんに驚いたが、九助くんが「自分が悪いねん」と言うので、詳しい事情はわからなかった。
「何だかみんなが変なの」
放課後、鈴子先生は達雄先生に悩みを打ち明けた。達雄先生も雪女の小雪ちゃんが、ブリザード攻撃したと聞いて驚いた。
「小雪ちゃんは、何も理由もなしに、そのようなことをしないでござるよ。九助くんは、自分が悪いと言ったのでござるか? 九助くんは、小雪ちゃんを好いておるから、意地悪や、悪戯はしないでござろうが……」
二人は、級長の珠子ちゃんが、理由を知っているのではと思いつく。猫おばさんの家に事情を聞きに行く。
猫おばさんの家は、大阪のど真ん中にあるとは思えない程の立派な和風のお屋敷だ。代々、米問屋でお蔵の番をしていた猫が百年以上生きて、化け猫、いやこの呼び名は嫌がるので、猫娘? ちょっと無理があるので、猫おばさんになったのだ。
立派な座敷で、お茶をもてなされる。猫おばさんは、にやにやしながら、若い二人を眺めて話を聞いていた。
「あんさんらは、いつ結婚しますねん?」
やはり、日本家屋は落ち着くと、美味しそうにお茶を飲んでいた達雄先生は、ブブッと吹き出した。
「これは、ご無礼したでござる」
スーツのポケットから、手ぬぐいを出してお茶を拭こうとしたが、鈴子先生のハンカチを持った手と重なり、真っ赤になる。
「子どもらは、敏感だす。二人が仲が良いのも、気づいているんでっしゃろ。きっと男の子がはやし立ててワヤにせんように、女の子らが見張っとるんやと思いますで」
猫おばさんは、にっこりと笑うと仲人を引き受ける。気の早い猫おばさんは、日めくりを持ってきて吉日をさがしだす。
「あいや、待たれい! いや、お待ち下され……」
鈴子先生も真っ赤になっていたが、達雄先生が、待て! と言い出したので、自分の勘違いだったのかと真っ青になる。大きな目に涙の粒が盛り上がる。
達雄先生は、鈴子先生に向き直り、しっかりと目を見てプロポーズした。
「まだ、新米で鈴子先生を食べさせていく自信はないが、結婚して下さらぬか」
真っ赤になって、頭を下げる。泣き女の鈴子先生は、大泣きしだした。
「ああ~ん! 結婚します! でも、でも、こんなに泣き虫でも良いのかしら……」
猫おばさんは、二人きりにしてあげようと、座敷から下がった。二人は、よく話し合って、夏休みに結婚することを決めた。
「生徒も招待したいわ!」
「そうでござるなぁ、1年1組の生徒は恋のキューピッドでござるからなぁ」
小学生と話す機会が増えて、少しずつ新しい言葉が増えていったが、鈴子先生は「ござる」と言う達雄先生の昔かたぎが大好きだ。
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