42 / 42
42 二年生になったよ
しおりを挟む
月見ヶ丘小学校には、変わった先生がいる。優しい泣き虫の鈴子先生と、曲がったことは許さない達雄先生だ。毎年、1年1組には、少し訳ありの生徒が入学する。
桜の花が咲く四月、2年生になった珠子ちゃんと、小雪ちゃんは、夏休みの結婚式をあれこれ話し合いながら、一緒に始業式に向かう。
「なぁ? 泣き女と首斬り男の赤ちゃんは、どちらに似るんやろ?」
おませな女の子達は、頭をくっつけて話し合う。それを見ていた河童の九助くんは、雪女と河童の相性は良いのか? 悪いのか? と悩むのだった。
「俺は、猫娘とは相性は最悪なんやぁ……でも、珠子ちゃんが好きやねん」
忠吉くんの秘密の告白に、それは止めとけ! 死ぬで! と言いかけて、口を閉ざした。河童と雪女も、そんなに相性は良くなさそうなのだ。それでも、小雪ちゃんが好きなのは止められない。
「俺は緑ちゃんが好きやねん」
ゴンキツネの銀次郎くんは、ろくろ首の緑ちゃんとなら相性は悪くないとご機嫌だ。でも、緑ちゃんは、力持ちの大介くんに夢中なのにねぇと、九助くんと忠吉くんは肩をすくめた。
「別のクラスになっても、仲良くしような~」
だいだらぼっちの大介くんの言葉に、元1年1組のメンバー全員が頷く。2年生からは、人間の子どもと一緒に勉強するのだ。
「九助くん、プールで足を引っ張ったら、あかんで!」
妖怪の親でも大問題になったのだ。人間の親なら警察ざたになると、元級長の猫娘は注意する。
「わかってるよ~! あっ、銀次郎くん……尻尾でてるで! 気ぃつけなぁ、あかんで!」
銀次郎くんは、慌てて尻尾をしまった。そしたら、耳がピョコンと出てしまう。鼠男の忠吉くんが、とっさに自分の帽子で隠してやる。
「おおきに!」
元1年1組のメンバーは、これからは別々のクラスだけど、お互いに頑張ろうと円陣を組んだ。
「ほな、えいえいお~!」
珠子ちゃんが、音頭をとって、気勢をげる。
「元1年1組、えいえいお~!」
校門で出迎えていた校長先生は、賑やかに登校してくる生徒たちを笑いながら見ていた。
妖怪の子ども達を生徒として迎え入れるのには、他の小学校と違う苦労も多い。しかし、こうして成長していく子ども達を見ると、ぽんぽこ腹鼓を打ちたくなるほど嬉しくなるのだ。
「おはようございます!」
今日も賑やかな月見ヶ丘小学校の一日が始まる。
新しい1年1組では、妖怪の子どもがキラキラした目で泣き女の鈴子先生の話を聞いている。ピカピカの1年生が、人間の子ども達と一緒に勉強できるように、鈴子先生は一年間で色々と教えなくてはいけないのだ。
「祐一くん、ちゃんと席につかないといけませんよ」
子泣きジジィの祐一くんは、海入道の海斗君の背中にくっついている。もう、新米の泣き虫先生は卒業だ。ばりっと引き離して、席につかす。
「同属の泣き女なのに、厳しいなぁ」
ぼそっと祐一くんは愚痴っていたが、パッと背筋を伸ばして座りなおる。教室の窓から、首斬り男の達雄先生が見ていたのだ。
「もう、達雄先生は体育の授業をしてください」
廊下に顔を出して、鈴子先生は達雄先生を追い払う。
「なぁ、鈴子先生は達雄先生と結婚するんやて!」
ちっちゃなねずみ娘の小春ちゃんが、お兄ちゃんの忠吉くんから聞いた情報を、隣の席の狐火の常子ちゃんに教える。
「ええっ! 鈴子先生が結婚するの!」
興奮した常子ちゃんは、ポッと火を吐いた。
「常子ちゃん、教室で火を吐いたら駄目ですよ!」
「ごめんなさい!」叱られて慌てた常子ちゃんは、ポッポッポッと、狐火を吐く。
鈴子先生が慌てて教室の角に置いてある消火器を取りに行くと、海入道の海斗くんが指の先から水を出して消化していた。
達雄先生は、大丈夫かな? と少し不安になったが、田畑校長先生に任せておきなさいと叱られる。
「泣き女の鈴子先生は、すこし優しくて頼りないところもあるけど、子ども達への愛情はたっぷり持ってます。1年1組には、ややこしい訳ありの生徒が集まりますが、その分、皆で助け合ってうまくつきあっていきます」
そういえば、去年の1年1組も問題が多かったと、田畑校長先生はぽんぽこ腹を叩きながら、達雄先生と教室を後にした。
1年1組、妖怪学級からは、元気な子ども達の声が廊下にまで響いている。
桜の花が咲く四月、2年生になった珠子ちゃんと、小雪ちゃんは、夏休みの結婚式をあれこれ話し合いながら、一緒に始業式に向かう。
「なぁ? 泣き女と首斬り男の赤ちゃんは、どちらに似るんやろ?」
おませな女の子達は、頭をくっつけて話し合う。それを見ていた河童の九助くんは、雪女と河童の相性は良いのか? 悪いのか? と悩むのだった。
「俺は、猫娘とは相性は最悪なんやぁ……でも、珠子ちゃんが好きやねん」
忠吉くんの秘密の告白に、それは止めとけ! 死ぬで! と言いかけて、口を閉ざした。河童と雪女も、そんなに相性は良くなさそうなのだ。それでも、小雪ちゃんが好きなのは止められない。
「俺は緑ちゃんが好きやねん」
ゴンキツネの銀次郎くんは、ろくろ首の緑ちゃんとなら相性は悪くないとご機嫌だ。でも、緑ちゃんは、力持ちの大介くんに夢中なのにねぇと、九助くんと忠吉くんは肩をすくめた。
「別のクラスになっても、仲良くしような~」
だいだらぼっちの大介くんの言葉に、元1年1組のメンバー全員が頷く。2年生からは、人間の子どもと一緒に勉強するのだ。
「九助くん、プールで足を引っ張ったら、あかんで!」
妖怪の親でも大問題になったのだ。人間の親なら警察ざたになると、元級長の猫娘は注意する。
「わかってるよ~! あっ、銀次郎くん……尻尾でてるで! 気ぃつけなぁ、あかんで!」
銀次郎くんは、慌てて尻尾をしまった。そしたら、耳がピョコンと出てしまう。鼠男の忠吉くんが、とっさに自分の帽子で隠してやる。
「おおきに!」
元1年1組のメンバーは、これからは別々のクラスだけど、お互いに頑張ろうと円陣を組んだ。
「ほな、えいえいお~!」
珠子ちゃんが、音頭をとって、気勢をげる。
「元1年1組、えいえいお~!」
校門で出迎えていた校長先生は、賑やかに登校してくる生徒たちを笑いながら見ていた。
妖怪の子ども達を生徒として迎え入れるのには、他の小学校と違う苦労も多い。しかし、こうして成長していく子ども達を見ると、ぽんぽこ腹鼓を打ちたくなるほど嬉しくなるのだ。
「おはようございます!」
今日も賑やかな月見ヶ丘小学校の一日が始まる。
新しい1年1組では、妖怪の子どもがキラキラした目で泣き女の鈴子先生の話を聞いている。ピカピカの1年生が、人間の子ども達と一緒に勉強できるように、鈴子先生は一年間で色々と教えなくてはいけないのだ。
「祐一くん、ちゃんと席につかないといけませんよ」
子泣きジジィの祐一くんは、海入道の海斗君の背中にくっついている。もう、新米の泣き虫先生は卒業だ。ばりっと引き離して、席につかす。
「同属の泣き女なのに、厳しいなぁ」
ぼそっと祐一くんは愚痴っていたが、パッと背筋を伸ばして座りなおる。教室の窓から、首斬り男の達雄先生が見ていたのだ。
「もう、達雄先生は体育の授業をしてください」
廊下に顔を出して、鈴子先生は達雄先生を追い払う。
「なぁ、鈴子先生は達雄先生と結婚するんやて!」
ちっちゃなねずみ娘の小春ちゃんが、お兄ちゃんの忠吉くんから聞いた情報を、隣の席の狐火の常子ちゃんに教える。
「ええっ! 鈴子先生が結婚するの!」
興奮した常子ちゃんは、ポッと火を吐いた。
「常子ちゃん、教室で火を吐いたら駄目ですよ!」
「ごめんなさい!」叱られて慌てた常子ちゃんは、ポッポッポッと、狐火を吐く。
鈴子先生が慌てて教室の角に置いてある消火器を取りに行くと、海入道の海斗くんが指の先から水を出して消化していた。
達雄先生は、大丈夫かな? と少し不安になったが、田畑校長先生に任せておきなさいと叱られる。
「泣き女の鈴子先生は、すこし優しくて頼りないところもあるけど、子ども達への愛情はたっぷり持ってます。1年1組には、ややこしい訳ありの生徒が集まりますが、その分、皆で助け合ってうまくつきあっていきます」
そういえば、去年の1年1組も問題が多かったと、田畑校長先生はぽんぽこ腹を叩きながら、達雄先生と教室を後にした。
1年1組、妖怪学級からは、元気な子ども達の声が廊下にまで響いている。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる