41 / 76
第3章 異世界就職
アバト到着③
しおりを挟む
「おい! めっちゃくちゃ可愛いじゃねぇか‼ おぉん?
さてはニアン……彼女だな?
そうなんだろう。そうじゃないなら俺に紹介しろぉ‼
ふ、だがさすがの俺も、ダチの彼女に手を出すような趣味はねえ。
そんなことより、オメェにもようやく春が訪れてくれて俺はうれしいぜ‼
で? どこまで進んだんだ?」
予想外なセリフに、ナナの頭に『?』が浮かぶ。
たくさん浮かぶ。
バケツの無限収納でも収納できなくなるほど浮かぶ。
ニアンがナナに寄せる好意から、賢明な読者の方々はすでに察していただけているとは思うが、この世界では恋愛のスタート年齢が低い。
そもそも結婚適齢期が13~22歳ぐらいなのだ。
18歳前後の彼らにとって、12歳の少女は法的にも嗜好的にも、十分にドストライクゾーンである。
ロリコンと言うなかれ。
何を恥じらうこともなく、堂々と求愛すべき対象なのである。
それどころか、まだ幼いからと成長を待っていては、確実にライバルに奪われる。
「なっ⁉ おい、サイッ!
いきなり飛ばしたこと言うな!
そういうのは順序があるだろ!」
(かわいい、ニアン、かのじょ、……わたし?)
ニアンの慌てた声で我に返ったナナは、先ほどのサイの言葉を脳内で反芻し、徐々に赤くなっていった。
実はナナは恋愛には耐性がない。
兄の鉄壁のガードによって、ナナに群がる虫は徹底排除されていたのだ。
そのためその美貌にもかかわらず、ナナはこれまで異性から好意を伝えられたことが無かった。
ニアンを無視したサイが、耳まで真っ赤なナナに話しかけてくる。
「嬢ちゃん、こいつは異様に強い上に立派な立場もある。
おまけに……妙に紳士で見た目もいいときた。
つまりけっこう優良物件なんだ。
だから恨めしいほどよく女から言い寄られているんだが、女に興味が無いのか、取り付く島もなく全部断っていてな――」
「待てサイ。誤解されるようなことを言うな。
俺は女性に興味がないわけじゃない。
今まで俺に声をかけて来た女性の誰もが、俺の肩書だの外見だのが目的だと分かったから断っていたんだ!」
「へいへい、わかってんよ色男ぉ!
まあ理由はともかく、恋とか愛とかに極端なほど無縁な奴だったんだ。
そんな奴が嘘みたいに可愛い嬢ちゃんを、大事そうに連れ歩いてるときた!
そりゃあ、こいつにとって嬢ちゃんは普通の女の子じゃねぇんだろ。
いやぁ、俺も嬉しいぜ!
これからもニアンをよろしく頼んだぜ‼ 彼女さん」
突然の核爆弾投下に、ナナの文明的な思考能力は跡形もなく吹き飛んだ。
(ふぁ、かのじょさん……わたしが……)
しかしそこに救世主が現れる。
『か、彼女だとぉおおお⁉
まずは我に挨拶を通してからにせんかぁあああああ‼』
平常運転のアイマーである。
もちろんアイマーには、溺愛する娘に対して唐突に彼氏宣言をするような輩を許す度量は無い。
娘に頭で栽培されているくせに、厄介な父なのである。
アイマーのその言葉で『ハッ!』と我に返り、復活したナナ。
『ってまてまてええええい‼
危なかった! 納得しかけてた。
ありがとう、魔王! おかげで助かった。
とりあえず否定しないと!
サイさんの想像の中の私達がこれ以上大変なことになる前に‼
私はともかく、ニアンに申し訳ないもん!』
先ほどからニアンの抗議も虚しくまったく考えを変えないサイ。
でもさすがに初対面の自分の話くらいは聞いてくれるだろうと思い、ナナは勇気を振り絞って声を上げようとした。
「サイ、これ以上はやめてくれ。
そういうのは俺の口から告げたいんだ」
だがナナの言葉は口から出る直前、ニアンの発言が生み出した衝撃で押しとどめられた。
そして一方のサイは、目を丸くして呟いた。
「まさか……そんな……嘘だろ?
嘘だと言ってくれ」
次の瞬間、サイは頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。
ナナの耳にサイのつぶやきが届く。
「予想以上だ。
ここまでこいつが恋愛下手だったとは……見ただけでわかるほどに信頼も好意も寄せ合っておいて、まだ告白もしてねーのかよ!」
ニアンとサイのやりとりを聞いて、ナナの脳内は再び処理能力を失う。
(ふぁ、ニアンの中でも、そっちで、確定なんだぁ、かのじょ、わたしが……ふぁああ)
ナナは動揺したまま固まり、ニアンはナナをかばうように前に立ちふさがる。
そしてサイは頭を抱えて地面にしゃがみ込んでいる。
はたから見たら、何かの修羅場かと思えるような光景だろう。
「おい、サイ。どうした、大丈夫か?
それで、街に入りたいんだが、通っていいのか?」
ニアンがそう声をかけると、我に返ったサイは立ち上がる。
「……ああ、すまねえな。大丈夫だ。
オ・マ・エ・は、大丈夫じゃねーがな! あとで説教してやる!
嬢ちゃんもすまねえ。
だが俺が言ったことは忘れなくてもいいぞ。
ちょっと早まっちまった感はあるが……だいたいその通りなんだからな。
ほら、門は通ってくれ。
ニアンは急ぎの報告があるんだろ?
また話聞かせろよ?」
そしてサイは門まで2人を案内し、そのまま一切のチェックもなく街の中に迎え入れ、そこで手を振って別れた。
あっけなく街に入ることができたナナ。
しかし、街のセキュリティ的にはちょっと心配になるレベルである。
まぁ、ニアンと共にいたから大丈夫だと判断されたのかもしれないが。
街の中には人族が多いが、獣人やエルフもおり、多種多様な人々が行き交っている。
その様子にぼんやり目を奪われていたナナだったが、その思考の大半を埋めるのはニアンであった。
(なんなの? もぅ、異世界ドキドキ!)
……とはいえそれは、異世界でも元の世界でも共通の、普通の恋愛話である。
◇ ◇ ◇
さてはニアン……彼女だな?
そうなんだろう。そうじゃないなら俺に紹介しろぉ‼
ふ、だがさすがの俺も、ダチの彼女に手を出すような趣味はねえ。
そんなことより、オメェにもようやく春が訪れてくれて俺はうれしいぜ‼
で? どこまで進んだんだ?」
予想外なセリフに、ナナの頭に『?』が浮かぶ。
たくさん浮かぶ。
バケツの無限収納でも収納できなくなるほど浮かぶ。
ニアンがナナに寄せる好意から、賢明な読者の方々はすでに察していただけているとは思うが、この世界では恋愛のスタート年齢が低い。
そもそも結婚適齢期が13~22歳ぐらいなのだ。
18歳前後の彼らにとって、12歳の少女は法的にも嗜好的にも、十分にドストライクゾーンである。
ロリコンと言うなかれ。
何を恥じらうこともなく、堂々と求愛すべき対象なのである。
それどころか、まだ幼いからと成長を待っていては、確実にライバルに奪われる。
「なっ⁉ おい、サイッ!
いきなり飛ばしたこと言うな!
そういうのは順序があるだろ!」
(かわいい、ニアン、かのじょ、……わたし?)
ニアンの慌てた声で我に返ったナナは、先ほどのサイの言葉を脳内で反芻し、徐々に赤くなっていった。
実はナナは恋愛には耐性がない。
兄の鉄壁のガードによって、ナナに群がる虫は徹底排除されていたのだ。
そのためその美貌にもかかわらず、ナナはこれまで異性から好意を伝えられたことが無かった。
ニアンを無視したサイが、耳まで真っ赤なナナに話しかけてくる。
「嬢ちゃん、こいつは異様に強い上に立派な立場もある。
おまけに……妙に紳士で見た目もいいときた。
つまりけっこう優良物件なんだ。
だから恨めしいほどよく女から言い寄られているんだが、女に興味が無いのか、取り付く島もなく全部断っていてな――」
「待てサイ。誤解されるようなことを言うな。
俺は女性に興味がないわけじゃない。
今まで俺に声をかけて来た女性の誰もが、俺の肩書だの外見だのが目的だと分かったから断っていたんだ!」
「へいへい、わかってんよ色男ぉ!
まあ理由はともかく、恋とか愛とかに極端なほど無縁な奴だったんだ。
そんな奴が嘘みたいに可愛い嬢ちゃんを、大事そうに連れ歩いてるときた!
そりゃあ、こいつにとって嬢ちゃんは普通の女の子じゃねぇんだろ。
いやぁ、俺も嬉しいぜ!
これからもニアンをよろしく頼んだぜ‼ 彼女さん」
突然の核爆弾投下に、ナナの文明的な思考能力は跡形もなく吹き飛んだ。
(ふぁ、かのじょさん……わたしが……)
しかしそこに救世主が現れる。
『か、彼女だとぉおおお⁉
まずは我に挨拶を通してからにせんかぁあああああ‼』
平常運転のアイマーである。
もちろんアイマーには、溺愛する娘に対して唐突に彼氏宣言をするような輩を許す度量は無い。
娘に頭で栽培されているくせに、厄介な父なのである。
アイマーのその言葉で『ハッ!』と我に返り、復活したナナ。
『ってまてまてええええい‼
危なかった! 納得しかけてた。
ありがとう、魔王! おかげで助かった。
とりあえず否定しないと!
サイさんの想像の中の私達がこれ以上大変なことになる前に‼
私はともかく、ニアンに申し訳ないもん!』
先ほどからニアンの抗議も虚しくまったく考えを変えないサイ。
でもさすがに初対面の自分の話くらいは聞いてくれるだろうと思い、ナナは勇気を振り絞って声を上げようとした。
「サイ、これ以上はやめてくれ。
そういうのは俺の口から告げたいんだ」
だがナナの言葉は口から出る直前、ニアンの発言が生み出した衝撃で押しとどめられた。
そして一方のサイは、目を丸くして呟いた。
「まさか……そんな……嘘だろ?
嘘だと言ってくれ」
次の瞬間、サイは頭を抱えてしゃがみ込んでしまう。
ナナの耳にサイのつぶやきが届く。
「予想以上だ。
ここまでこいつが恋愛下手だったとは……見ただけでわかるほどに信頼も好意も寄せ合っておいて、まだ告白もしてねーのかよ!」
ニアンとサイのやりとりを聞いて、ナナの脳内は再び処理能力を失う。
(ふぁ、ニアンの中でも、そっちで、確定なんだぁ、かのじょ、わたしが……ふぁああ)
ナナは動揺したまま固まり、ニアンはナナをかばうように前に立ちふさがる。
そしてサイは頭を抱えて地面にしゃがみ込んでいる。
はたから見たら、何かの修羅場かと思えるような光景だろう。
「おい、サイ。どうした、大丈夫か?
それで、街に入りたいんだが、通っていいのか?」
ニアンがそう声をかけると、我に返ったサイは立ち上がる。
「……ああ、すまねえな。大丈夫だ。
オ・マ・エ・は、大丈夫じゃねーがな! あとで説教してやる!
嬢ちゃんもすまねえ。
だが俺が言ったことは忘れなくてもいいぞ。
ちょっと早まっちまった感はあるが……だいたいその通りなんだからな。
ほら、門は通ってくれ。
ニアンは急ぎの報告があるんだろ?
また話聞かせろよ?」
そしてサイは門まで2人を案内し、そのまま一切のチェックもなく街の中に迎え入れ、そこで手を振って別れた。
あっけなく街に入ることができたナナ。
しかし、街のセキュリティ的にはちょっと心配になるレベルである。
まぁ、ニアンと共にいたから大丈夫だと判断されたのかもしれないが。
街の中には人族が多いが、獣人やエルフもおり、多種多様な人々が行き交っている。
その様子にぼんやり目を奪われていたナナだったが、その思考の大半を埋めるのはニアンであった。
(なんなの? もぅ、異世界ドキドキ!)
……とはいえそれは、異世界でも元の世界でも共通の、普通の恋愛話である。
◇ ◇ ◇
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる