元々すごい私に異世界転生で強くてニューゲームなんて必要ない

緑兎

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早起きだね

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朝、あいにくの雨。
雨の日は普段より気を張らなくてはいけない。傘で視界が制限されているからである。これでは飛んでくるトラックも急に現れる通り魔も反応が遅くなってしまう。
まあ避けるけど。
雨の日なんて何回も経験しているしその度に起こる様々な事故も今まで難なく避けてきた。
このように余裕で生き延びられるので別に雨は降ってもらっても構わないが、事故が起きる時に服がビショビショになるのだけはどうしても許せない。これだけは本当にやめてほしい。今日も駅の階段で滑って(私を落とすために)ぶつかってきた人の傘で服が濡れた。休日の天気予報は晴れだったのでよかった。
…なんて事を考えるのに意識を奪われていたせいで肩にぽんと手を置かれるまで自分に接近している人間がいる事に気がつかなかった。
「あ、潮さん」
知り合いでよかった。これで知らない人だったら誘拐からのバッドエンドがあったかもしれない。まぁそういう人は肩なんてワンクッションしないのかな。
「凛音ちゃん。おはよう」
「おはよう…はやいね」
私はできるだけ巻き込まれる人を少なくするため、通勤通学ラッシュよりもっと前の時間に投稿しているのだ。それなのに居合わせるなんて。
「今日、なんか早く起きちゃってね。お家で時間を潰してもよかったんだけど、これ、新しい傘買ったの。だから早く使ってみたくって」
そう話す潮さんのにこやかな笑顔は少し抱いた不信感を吹き飛ばした。
「そうなんだ。かわいいね」
傘も、潮さんもね。
「でしょう?かわいいなーって思って買う予定なかったのに買っちゃったんだ」
えへへとはにかむ。かわいい。
「凛音ちゃん。明日、楽しみにしててね…わっ」
階段の上を歩いていた潮さんが足を滑らせて降ってくる。雨の日は階段滑りが多いなぁ!
今までに階段から降ってくる何十人もの人を受け止めてきた体で今回もしっかりと受け止める。
「大丈夫?雨の日は滑りやすいから危ないよね」
「ごっ、ごめんね。ありがとう、また助けてもらっちゃった。何回も…ドジだなぁ」
「大丈夫だよ。怪我はしてない?」
「うん。凛音ちゃんが助けてくれたから平気だよ。ありがとうね」
むしろ自分が巻き込んでいるので申し訳ない。朝から2回も手が下されるとは今日はピッチがはやいな。

そのまましばらく歩いたら学校に到着する。1限は違う授業を取っているので校内に入るなり潮さんとは別れた。
これで後は普段通り過ごせば他の人に被害が及ぶことはないだろう。
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