転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第8章 魔海の大行進編

第8章ー18

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 「けど、拙者は毎日皆と楽しく暮らしたいでござるよ」

 「マヒロ?」

 「来年も再来年も、十年後二十年後、百歳になっても皆と笑顔の絶えない日々を送りたいと拙者は思っておる。サダメもそう思わぬか?」

 「…」

 海を見つめながら自身の将来を語るマヒロ。その顔からはどこか哀愁を感じさせる。

 彼女の理想は机上の空論。どれだけ親しくなった所で時が経てば皆大人になっていき、仕事や色んな事情で会える機会も減り、中には恋人や家庭を持つ者も現れるだろう。

 そうなれば自ずと今の関係は少しずつ薄れていき、いずれ忘れてしまうかもしれない。かく言う自分も前世では学生の頃の友人とはほとんど連絡は取っていない。風の噂で結婚して子供もいるという話も聞くし、皆それぞれの道を謳歌している事だろう。つっても、自分は結婚どころか彼女だって一人も作らず、毎日ひたすら仕事して生きてるだけで、とても人生を謳歌してるとは言い難い人生だったけどな。

 自分の前世の話はともかく、この世界は来年どころか明日生き残れるかもどうか分からない程危険に満ちている世界だ。そんな世界で、皆揃ってキャンプしたりバーベキューしたりするなんてとてもじゃないけど現実味のない話だ。けれど、

 「…うん。そうだな」

 彼女の空論が叶えばいいなとは心から思っている。大人になろうが老人になろうが、皆とはいつまでも友人の間柄ではいたい。前世の自分では出来なかったからこそ余計にそう思ってしまう。

 自分は彼女の問いかけに微笑みながら肯定した。叶うといいな、その夢。

 「へいへいへーい! そこのお熱いカップルさん。これから僕達ともっとお熱い事しないか~い?」

 「ソ、ソンジさん?! いつのまに…って、これって…」

 ちょっとセンチメンタルな空気が流れかけそうになっていると、背後からソンジさんが茶化すように割って入ってきた。重くなるよりかはマシだけど、今の話聞かれたかもしれないと思うと若干気まずい。

 それはともかく、ソンジさんは両手に何かを持って自分達に見せつけて来た。

 「それはなんでござるか?」

 マヒロは知らないようだが、どう見ても花火セットにしか見えない。たしかこの世界の花火といえば打ち上げ花火一択ぐらいしかなかったと思うのだが、もしかして自家製か? マジか。まさか玩具花火まで作れてしまうとは。

 「夏の風物詩といえば花火は外せないだろ? 皆を呼んで今からプチ花火大会開幕じゃー!」

 その後、ソンジさんお手製の花火を皆で楽しみ、一日目は終了した。

 ―転生勇者が死ぬまで、残り3954日
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