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第7章 期末試験編
第7章ー69
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『アラガ、ミオ・チヤドール。二名の到達を確認。これにて、第六試合を終了と致します』
俺達がゴール地点に辿り着くと、試験終了のアナウンスが流れる。なんとか試験はクリア出来たようだな。
「はあ…はあ…、つ、疲れたー!」
ゴールした後、チヤドールは安心したかのように地べたにヘタレ込んでいた。だいぶ魔力と体力を消耗しているせいで息が上がっている様子。
「ふん。お前、やりゃあ出来るじゃねえか」
「はあ…はあ…、え?」
倒れるチヤドールに一声駆けると、奴は何故か目を丸くする。今の俺、変なことでも言ったか?
「あ、えっと。えへへ、ありがとう」
しかし、すぐに嬉しそうな表情を浮かべて礼を言いだす。大したこと言ったつもりはないのだが、何がそんなに嬉しいんだこいつは? 訳の分からん奴。
「そ、それにしても、よくあんな方法思いついたね」
「あん? ああ。別に褒められるようなことはしてない。あの作戦もお前ができるか次第だったしな」
軽い過呼吸を起こしながらも俺に話続けるチヤドール。こいつは嬉々として話しているが、正直あの作戦は上手くいく保証なんてなかった。五分五分、いや、成功する確率はそれより低かった。なにせ他人《ひと》の力を頼らなければならないし、概要もかなり無茶な作戦だ。上手くいくかはチヤドールの魔法の素質とオーヴェンに気づかれないことに掛かっていたからだ。
まずはチヤドールの風の防御魔法でオーヴェンの視界を遮らせる必要があった。しかし、一度破られている為、あれだけではそこまで時間は稼げなかった故、俺の氷魔法で補強。ついでに冷気で体温を奪う役割もになっていた。
その後、チヤドールの風魔法で地面を削り穴を掘らせた。俺の氷魔法でも出来ないことはないだろうが、奴の風魔法の方が掘削効率は高いと判断した。
しかし、奴にそれを出来るだけの技量と体力、魔力があるかは未知数だった。結果的に成功したものの、あれは一か八かだったな。
「まさか、私の風魔法をドリルとして使うなんてね。私にはその発想は思い浮かばなかったよ」
「風魔法は破壊力には欠けるが、切れ味には長けている。それを掘削機のように活かせればもしかして、と思っただけだ。魔法におけるイメージの明確化の応用だ」
「へー。イメージを具体的にするだけで、私にもあんな事出来るんだね。やっぱ、アラガは賢いよ」
「ふん。お前が馬鹿なだけだろ」
「ははは。そうかも」
「…」
疑問を投げかけてくる奴に皮肉交じりに返すが、俺の皮肉などものともせず笑顔を浮かべていた。さっきから馴れ馴れしく会話してくるが、俺は好きでこいつを助けてた訳じゃない。試験を突破する為に利用したに過ぎない。
「…そういえば、さっきの話だが…」
そこでふと、あの時の話を思い出し、今度はこっちから問いかけようとした。
のだが、
「スー、スー」
「…」
気が付けば奴は体力の限界を迎え、眠りについていた。
俺達がゴール地点に辿り着くと、試験終了のアナウンスが流れる。なんとか試験はクリア出来たようだな。
「はあ…はあ…、つ、疲れたー!」
ゴールした後、チヤドールは安心したかのように地べたにヘタレ込んでいた。だいぶ魔力と体力を消耗しているせいで息が上がっている様子。
「ふん。お前、やりゃあ出来るじゃねえか」
「はあ…はあ…、え?」
倒れるチヤドールに一声駆けると、奴は何故か目を丸くする。今の俺、変なことでも言ったか?
「あ、えっと。えへへ、ありがとう」
しかし、すぐに嬉しそうな表情を浮かべて礼を言いだす。大したこと言ったつもりはないのだが、何がそんなに嬉しいんだこいつは? 訳の分からん奴。
「そ、それにしても、よくあんな方法思いついたね」
「あん? ああ。別に褒められるようなことはしてない。あの作戦もお前ができるか次第だったしな」
軽い過呼吸を起こしながらも俺に話続けるチヤドール。こいつは嬉々として話しているが、正直あの作戦は上手くいく保証なんてなかった。五分五分、いや、成功する確率はそれより低かった。なにせ他人《ひと》の力を頼らなければならないし、概要もかなり無茶な作戦だ。上手くいくかはチヤドールの魔法の素質とオーヴェンに気づかれないことに掛かっていたからだ。
まずはチヤドールの風の防御魔法でオーヴェンの視界を遮らせる必要があった。しかし、一度破られている為、あれだけではそこまで時間は稼げなかった故、俺の氷魔法で補強。ついでに冷気で体温を奪う役割もになっていた。
その後、チヤドールの風魔法で地面を削り穴を掘らせた。俺の氷魔法でも出来ないことはないだろうが、奴の風魔法の方が掘削効率は高いと判断した。
しかし、奴にそれを出来るだけの技量と体力、魔力があるかは未知数だった。結果的に成功したものの、あれは一か八かだったな。
「まさか、私の風魔法をドリルとして使うなんてね。私にはその発想は思い浮かばなかったよ」
「風魔法は破壊力には欠けるが、切れ味には長けている。それを掘削機のように活かせればもしかして、と思っただけだ。魔法におけるイメージの明確化の応用だ」
「へー。イメージを具体的にするだけで、私にもあんな事出来るんだね。やっぱ、アラガは賢いよ」
「ふん。お前が馬鹿なだけだろ」
「ははは。そうかも」
「…」
疑問を投げかけてくる奴に皮肉交じりに返すが、俺の皮肉などものともせず笑顔を浮かべていた。さっきから馴れ馴れしく会話してくるが、俺は好きでこいつを助けてた訳じゃない。試験を突破する為に利用したに過ぎない。
「…そういえば、さっきの話だが…」
そこでふと、あの時の話を思い出し、今度はこっちから問いかけようとした。
のだが、
「スー、スー」
「…」
気が付けば奴は体力の限界を迎え、眠りについていた。
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