転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第7章 期末試験編

第7章ー70

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 「ちっ! 何のために俺が協力したと思ってやがる。ったく、この馬鹿女が!」

 風通しもそれほどよくないただの地面で眠り込むチヤドール。奴の醜態を見せつけられた俺は、居ても経っても居られず、チヤドールの肩を抱えて待機室に連れて行こうとしていた。まったく。なんで俺がこんなことをしなければならないんだ。放っておいてもいいかとも一瞬考えたが、風邪でも引かれて話の続きが聞けなくなるのは困る。クソ、後で覚えておけよ。

 「はっ! わざわざお仲間に肩を貸してあげるなんて、随分とお優しくなりましたなあ?!」

 「…オーヴェン」

 「先生を付けろよ、タコ助!」

 「タコ?」

 チヤドールを連れて行こうとしている最中、背後からオーヴェンが声を掛けてきた。驚いたな。あれだけ派手に動き回って体力をかなり消費している筈なのに、俺達がゴールしてから恐らく一分も経っていない。体力勝負も視野に入れてはいたが、そっちを選ばなくて正解だったな。

 にしてもこいつ、やけに高圧的な魔力を放ってきやがる。脅してるつもりか? いや、単純に怒り心頭なだけか。まあ、奴の性格を利用した上での作戦だったしな。一生徒の掌の上に転がされていい気分はしないだろうな。

 「おうおうおう?! さっきまで私を殺すとか言ってた奴が、いつの間にか眠れるお姫様の世話役とはなあ?! 一体どういう心境の変化だ、ああん? まさか、その女に惚れたのか?」

 「…馬鹿を言うな。俺は女になんざ興味はねえ」

 「あ、そう。じゃあ、お前に何があったんだ?」

 「…」

 オーヴェンは俺に対してやたら話しかけてくる。こいつといいチヤドールといい、女ってのはこうも人の心にズケズケ突っ込んで来る生き物なのか? 他の男連中は任務の時俺にビビって一言も話しかけてはこなかったぞ。どうもそういう輩は俺の苦手の類だ。

 しかし、奴の言う通り俺はそんな苦手な奴を助けてしまった。他人の事なんてどうでもよかった俺が、どういう訳か奴の話に興味を持ってしまった。

 それが何故なのかは分からない。最初はただただ不愉快で耳障りなノイズ音でしかなかったというのに。

 挙句の果て、俺の戦いにまで邪魔してきた相手だ。膝蹴りが出てしまう程ムカつく相手の筈なのに、気が付けば俺は奴の言葉に耳を傾け、問いかけ、そして協力して試験を乗り越えることになった。たしかに、傍からみれば俺の心境の変化に驚かざるを得まい。なにせ、俺自身ですら驚いているのだから。

 「…さあな」

 答えが見つからず、俺は一言だけ返してその場を去って行った。今は答えを出せそうにないが、いずれ理解出来る日が来るのだろうか。
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