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第3話
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---今日は1学期の最終日。授業は午前中で終わりだ。授業と言っても夏休みの宿題の説明と夏休みの間の注意事項の確認と、後は終業式だけだから先生達のダラダラとした長話を堪えきればようやく開放される。
---「じゃあみんな、夏休みの間、問題起こすなよー! 問題起こしても俺は知らねーからなー!」
一学期最後のSHRを担任の川藤の一言で終わりを迎えた。川藤の一言はほぼほぼ聞き流され生徒達はそれぞれ鞄を持って教室を出ていく。
「ねえ、明日どこ行く?」
「なあなあ、来週海行かね?」
「あー、ごめんその日部活だわ」
「っていうか、野球部って休みなくね? マジ鬼畜だろ?」
「いや休みはあるって。お盆と夏休みの最終日だけだけど」
「マジ?! 超ウケるー!?」
教室を出た後、各々夏休みの話題で盛り上がりながら帰宅したり部活に行ったりしていた。
そんな中、俺はマイペースに教科書を鞄に入れ、皆んなより少し遅れて教室を出た。
俺の夏休みの予定なんて普通の休日と大差ない。一日中家でゴロゴロするだけだ。別に友達がいない訳ではない。ただ一緒にどこかに遊びに行く程親しい人がいないだけだ。あくまで学校で話す程度の仲の奴しかいないのだ。もう一度言うが、決して友達がいない訳ではない。
それに夏休みは彼女が来るから他の連中と遊びに行く訳にはいかない。
「おう、なっちゃん! 今帰りか?」
とっとと帰宅しようとしていたその時、後ろから聡に声を掛けられた。
「…そういうお前は部活みたいだな聡」
「ったりめーだ! 甲子園に向けて猛練習しなきゃな!」
「県大会ならもう終わってるだろ。しかも一回戦で」
「馬鹿! 来年に向けてに決まってるだろうが!!」
「ハイハイ。来年は代打でも出してもらえるように頑張れよ」
「せめて『レギュラー入り』って言えよ!?」
「たった一年でそこまでいければ甲子園優勝出来るかもな」
「ヤーはどんだけ俺のこと下に見てるばーよ!?」
俺は聡とそんなやりとりを繰り広げていた。今更だがこういう馬鹿みたいなやりとりを出来る奴は聡以外にはいないかもしれない。ちなみに聡が言っていた『ヤー』とは『おまえ』という意味だ。
「そういや、夏海ちゃんって今年も来んの?」
「あ? ああ、来ると思うけど」
「いよっしっ!!」
すると聡は別の話題を持ちかけ俺に問いかけてきた。俺はその問いかけに素直に答えると聡は急にガッツポーズをとった。急にどうしたこいつ?
「なあ、夏海ちゃん、いつ来るって?」
「いやそこまでは。夏休み入ったら来ると思うけど」
そして聡は目を輝かせながら更に問いかけてくる。こいつ、なんか気持ち悪いな。
「なっちゃん、頼みがある!」
「イヤだ」
「即答!?」
聡の言動があまりにも気持ち悪くて俺は即答で拒否った。なんとなくこいつが言おうとしていることが理解出来たしな。
「どうせなつが来たら教えろって言いたいんだろ?」
「わかった上で断ったのかヤーは?!」
「当たり前だろ」
聡の言いたいことを理解していた俺は冷たくあしらってやった。しまった。そういえばこいつ、なつに惚れてるんだった。素直に答えなければよかったと今更ながらに俺は後悔していた。
「ほんのちょっと顔合わせるだけだって。な?」
「わかったわかった。わかったから離れろ、気持ち悪い」
必死に懇願してくる聡に俺は根負けしてしまった。そういえばこいつが野球を続けるキッカケになったのが、小さい頃、なつに「俺が夏海ちゃんを甲子園に連れてってあげる」などと馬鹿なことを本気で言ったのがキッカケだったっけ? まあなつの方は純粋に『甲子園に連れてってくれるんだ』程度にしか思っていなかったようだが。聡がカッコつけて告白しているとも知らずに。
ひょっとすると聡のやつ、まだあの頃の話を実現させようとしているのだろうか? 可能性としては少なからずありえるな。
「じゃあ頼んだぜ、なっちゃん!」
「ああ」
根負けしてつい約束してしまった俺は上機嫌な聡を見送った後、帰宅することにした。ハア、めんどくさい。
---「じゃあみんな、夏休みの間、問題起こすなよー! 問題起こしても俺は知らねーからなー!」
一学期最後のSHRを担任の川藤の一言で終わりを迎えた。川藤の一言はほぼほぼ聞き流され生徒達はそれぞれ鞄を持って教室を出ていく。
「ねえ、明日どこ行く?」
「なあなあ、来週海行かね?」
「あー、ごめんその日部活だわ」
「っていうか、野球部って休みなくね? マジ鬼畜だろ?」
「いや休みはあるって。お盆と夏休みの最終日だけだけど」
「マジ?! 超ウケるー!?」
教室を出た後、各々夏休みの話題で盛り上がりながら帰宅したり部活に行ったりしていた。
そんな中、俺はマイペースに教科書を鞄に入れ、皆んなより少し遅れて教室を出た。
俺の夏休みの予定なんて普通の休日と大差ない。一日中家でゴロゴロするだけだ。別に友達がいない訳ではない。ただ一緒にどこかに遊びに行く程親しい人がいないだけだ。あくまで学校で話す程度の仲の奴しかいないのだ。もう一度言うが、決して友達がいない訳ではない。
それに夏休みは彼女が来るから他の連中と遊びに行く訳にはいかない。
「おう、なっちゃん! 今帰りか?」
とっとと帰宅しようとしていたその時、後ろから聡に声を掛けられた。
「…そういうお前は部活みたいだな聡」
「ったりめーだ! 甲子園に向けて猛練習しなきゃな!」
「県大会ならもう終わってるだろ。しかも一回戦で」
「馬鹿! 来年に向けてに決まってるだろうが!!」
「ハイハイ。来年は代打でも出してもらえるように頑張れよ」
「せめて『レギュラー入り』って言えよ!?」
「たった一年でそこまでいければ甲子園優勝出来るかもな」
「ヤーはどんだけ俺のこと下に見てるばーよ!?」
俺は聡とそんなやりとりを繰り広げていた。今更だがこういう馬鹿みたいなやりとりを出来る奴は聡以外にはいないかもしれない。ちなみに聡が言っていた『ヤー』とは『おまえ』という意味だ。
「そういや、夏海ちゃんって今年も来んの?」
「あ? ああ、来ると思うけど」
「いよっしっ!!」
すると聡は別の話題を持ちかけ俺に問いかけてきた。俺はその問いかけに素直に答えると聡は急にガッツポーズをとった。急にどうしたこいつ?
「なあ、夏海ちゃん、いつ来るって?」
「いやそこまでは。夏休み入ったら来ると思うけど」
そして聡は目を輝かせながら更に問いかけてくる。こいつ、なんか気持ち悪いな。
「なっちゃん、頼みがある!」
「イヤだ」
「即答!?」
聡の言動があまりにも気持ち悪くて俺は即答で拒否った。なんとなくこいつが言おうとしていることが理解出来たしな。
「どうせなつが来たら教えろって言いたいんだろ?」
「わかった上で断ったのかヤーは?!」
「当たり前だろ」
聡の言いたいことを理解していた俺は冷たくあしらってやった。しまった。そういえばこいつ、なつに惚れてるんだった。素直に答えなければよかったと今更ながらに俺は後悔していた。
「ほんのちょっと顔合わせるだけだって。な?」
「わかったわかった。わかったから離れろ、気持ち悪い」
必死に懇願してくる聡に俺は根負けしてしまった。そういえばこいつが野球を続けるキッカケになったのが、小さい頃、なつに「俺が夏海ちゃんを甲子園に連れてってあげる」などと馬鹿なことを本気で言ったのがキッカケだったっけ? まあなつの方は純粋に『甲子園に連れてってくれるんだ』程度にしか思っていなかったようだが。聡がカッコつけて告白しているとも知らずに。
ひょっとすると聡のやつ、まだあの頃の話を実現させようとしているのだろうか? 可能性としては少なからずありえるな。
「じゃあ頼んだぜ、なっちゃん!」
「ああ」
根負けしてつい約束してしまった俺は上機嫌な聡を見送った後、帰宅することにした。ハア、めんどくさい。
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