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Episode8 聖遺物を求めて

第34話 手掛かり

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 エプールマウンテンで修行をしていたシュー達3人と中立地帯で合流した俺たちは、アルモの瞬間移動(テレポーテーション)の魔法で、アンティムの幽閉先を探るべく都市バルデワへと移動していた。

 街に入り住人から聞いた情報によれば、セレスタ国王がクレスの鎧を奪った(ことになっている)ため、ザパート連合公国は宣戦布告をされた状態となった。

 そして、公国の盟主でターパの領事アンティムが行方不明 (ということになっている)であるため、バルデワの領事ランデスが現在は公国軍の指揮を取っており、公国を侵略しようとしている(と見せかけた陽動作戦を行っている)セレスタ国王率いるセレスタ王国軍と対峙するため、ランデスは公国内の大半の兵を引き連れて中立地帯に向かっているとのことだった。

「…セレスタ王の作戦は、うまくいっているみたいね」

「セレスタ軍2万に対して、公国軍は2万5千らしいわ。セレスタ軍が劣勢ね…」

「そして、セレスタ軍2万のうち、千がワイギヤ教軍の将軍インドゥーラが率いる教軍兵だ。恐らく、この千は公国軍との戦いでは使い物にならないだろう」

「ランデスのクーデターをインドゥーラが手引しているのだとしたら、のらりくらりと何らかの理由をつけて、公国軍との戦闘は避けるでしょうね…」

「…ターパの領事アンティムさんを救い出せば、セレスタ軍の救援に向かえるよな?」

「そうですわね。そのためにも、アンティムさんの幽閉場所を突き止めて、助けて差し上げなくては!」

「アンティムさんの幽閉場所の情報は、領事の館にありそうだよな」

「ああ。故に、まずは私とリーサで館の状況を見てから、作戦を立てるのはどうだろうか?」

「レイスとリーサに任せれば、間違いないな」

「それじゃ、偵察お願いね」

「ああアルモ、任せてくれ」

「私とレイスに任せていただければ、問題ございませんわ。さぁ、行きましょう!」

 領事の館の偵察をレイスとリーサに任せた俺たちは、一先ずリーサの隠れ家で休息を取ることにした。



 その数時間後、隠れ家にはリーサだけが戻ってきた。

「ただ今戻りましたわ」

「リーサ。お帰りなさい。館の様子はどうだった?」

「確かに警備は手薄になっていましたわ。ですが、私とレイスだけではどうにもならない問題が発生しまして…」

「…というと?」

「館の内部をくまなく調べたましたが、アンティムさんの消息を掴むことはできませんでしたわ。ですが…」

「…ですが?」

「一カ所、ランデスが雇っているシティシーフが施したと思われる封印された壁がありまして…」

「…その、封印された壁の先に、何かがあるという訳ね」

「ええ。ところが、鍵を開けたり、術を解除するための術は、私は使えませんの」

「確かレイスも、そんな魔法は使えなかったはずだし、私とアコードも使うことはできないわ」

「はい、ですが…」

「…サリットの出番、って訳だ!!」

「シュー、それはどういうことなんだ?」

「サリットって、昔から手先が器用で、俺たちの服をアッという間に縫い繋げたり、常人なら投げるとどこに飛んでいくか分からない短曲剣(マインゴーシュ)を、狙い通り飛ばすことができたりしただろ?」

「…ああ、確かにそうだったな」

「だから、リーサでも扱うことができない『解除の術』に対して、私には素質があったみたいなの」

「そうなんですの。まさか、ランデスが雇っているシティシーフに、封印術を扱えるものがいるとは思わなかったもので、私とレイスで偵察に行ったのですが…」

「いいわリーサ。私をその場所まで案内して!」

「お願いいたしますわね」

「サリット、頼んだ!」

「気を付けて行って来てね」

「アコード、それにアルモ。ありがとう」

「俺も、途中まで一緒に行こう」

「頼むわ、シュー」

「それでは、行って参りますわね」

 こうして、俺とアルモ以外の3人は、隠れ家を後にした。


***


 リーサの隠れ家を後にした私たちは、公国兵に見つかることなく、無事に領事の館に到着していた。

 周辺に潜んで様子を見るというシューと入口で別れ、私とリーサは館の内部へと潜入した。

「…確かに、以前に比べて内部の警備が手薄になっているわね………ところで、レイスはどうしているの?」

「レイスは、私がサリット様を連れて来るまで、手分けして探した場所を再度調査するために、館に残ったのですわ…」

”サッサッ………”

「…言っているそばから、レイスですわね」

 そうリーサが言い終わるか否かのところで、物陰からレイスが姿を現した。

「レイス………状況はいかがなものですの?」

「…あの後、館をくまなく調べてみたが、やはり怪しいのはあの壁くらいだな」

「それにしても、レイスもリーサも、よくその壁に気付いたわね?」

 私の質問に対して、レイスがある一点を指さす。

 指をさされたその場所は館の外にある離れで、館の内部よりも警備兵が多いように見える。

「警備の数が、館(こっち)に比べて尋常じゃないだろう?故に、リーサに見てもらったんだ」

「なるほど…確かに、忍術を使う者には、忍術がかけられたものってわかるようになっているしね」

 レイスに説明した通り、忍術をかけられた物体には『気』が張り巡らされるため、忍者にはそれが筒抜けとなる。

 ただ、忍術を会得している者がこの世界で少数であることと、それを解除できる術を扱えるものがその中でも少数派であるため、封印術は忍術の中でも有効な術の一つであるとされている。

 だが、私のように解除の術を扱える忍者が味方の中に入れば、当然相手方の封印術の有効性は皆無に等しいものとなる。

「…で、どうするつもりですの!?」

「そうだな………館(こっち)の警備は手薄だし、小細工なしの強行突破が一番良いと思うが、二人は?」

「そうね。それに、小細工している時間もなさそうだし…」

「レイスがそういうなら、私は反対しませんわ」

「よし。二人とも、準備はいいな。それじゃ………突撃!!」

 こうして私たち3人は、封印術が施されているという離れに突撃したのだった。
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