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Episode8 聖遺物を求めて
第35話 怒りのリーサ
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「!!!お前達は何者だ!?」
「侵入者だ!!!」
”スタッ…”
”ヒュンヒュンヒュン”
”グサッ…カン…グサッ”
”バタン…バタン…”
封印術が施されている壁に向かい強行突破した私たち3人は、案の定、すぐに見張り兵に発見された。
だが、私とリーサの後方を一緒に走っていたサリットがジャンプし短曲剣(マインゴーシュ)を投げつけ、その壁の前にいた見張り兵2名を倒した。
”「…何か、後ろの方で音がしなかったか?」”
壁に到着した私たちの耳に入ったきたのは、離れの反対側にいると思しき見張り兵の声だった。
”「ランデス様がこの離れだけは厳重に守るようにおっしゃっておいでだった。すぐに確認しに行こう」”
「まずいですわね…」
「…サリット、見張り兵の迎撃は私とリーサで引き受ける。君は、この壁に封印された術の解除を!!」
「分かったわ!!レイスも気を付けて!」
サリットに封印の解除を任せた私とリーサは、左右それぞれの壁影に隠れ、その先の様子をうかがう。
左の壁の先の様子をうかがった私だったが、私の目線に敵の影を捉えることはできなかった。
私がリーサの方を見ると、『こちらに来い』と手で合図をよこす彼女の姿が目に入ってきた。リーサも、私の方に敵さんがいないことを理解したのだろう。
私がリーサの元に駆け寄ると、右手で親指を立て、合図で一斉に駆け出すサインを出したので、私はそれに了承した。
そして、間を置くことなく、そのサインを出したリーサを先頭に、私は後れを取ることなく壁の向こう側へと踊り出た。
”ザザザ…スタッ…”
私とリーサの姿を発見した見張り兵2人が、その場で歩を止める。
「お前たち…一体どこから湧いて出た…いや、そんなことはどうでもいい。ここを、ランデス様の館と知っての狼藉か!?」
「…そうだ、と言ったら?」
「口の減らない侵入者め!!」
”シャーーーー”
腰に携えた鞘から、スキアヴォーナを抜き去り、2人の見張り兵は私たちに切っ先を向ける。
”ヒュンヒュンヒュン…”
その準備行動の隙をつき、リーサが星型の小さな武器を見張り兵に向かい投げつけた。
”キン……グサッ……グサッ……”
「グハァ…」
”バタン…”
リーサが投げつけた3つの『手裏剣』という武器のうち、2つが敵の1人に命中し、その場に倒れた。
「おのれ!!やりやがったな!!!」
”ブゥン!!”
”ギィン!!”
もう1人の見張り兵が振りかざしたスキアヴォーナの攻撃を、懐から咄嗟に出した短刀で防いだ私だったが、見張り兵の振りかざした力が思いの外強かったためか、私の体はその力に耐え切れず、離れのすぐ近くに植わっていた大木目がけて飛ばされてしまった。
”ドン!!”
「ウゥ…」
大木に背中を強く打ち付けた私はその場に前かがみとなり、思わず口に当てた手の平は鮮血に染まっていた。
「レイス!!!」
「リーサ、大丈夫だ!!」
そう言ってみたものの、吐血した私の口まわりを見たリーサには効果がなかったようだ。
「よくも………よくも私のレイスを………痛めつけてくださいましたわね!!!!!」
リーサの周囲に覆う『気』が空に向かって動いているのを、忍術を知らない私でも分かる程に、彼女の長い髪の毛が夜空に吸い込まれるかのようになびいている。
「覚悟なさい!!!」
”キィン”
”スタッ”
”ヒュン”
刹那に剣を抜き、その場を蹴って私に攻撃を仕掛けた見張り兵の元まで到達したリーサは、音もなく剣を振りかざし、次の瞬間には見張り兵の上半身と下半身は腰の辺りで真っ二つになっていた。
敵の絶命を確認したリーサは、次の瞬間にはいつものリーサに戻り、動くことのできない私の元へと駆け寄る。
「レイス!!大丈夫ですか!?しっかりしてくださいまし!!」
「リーサ………そんな大袈裟な…」
「大袈裟なんかじゃありません!!吐血しているじゃありませんか!」
「吹き飛ばされた時の打ちどころが悪かったらしい…」
「今すぐ回復を…」
リーサが何かの印を結んだ後、両手を私の両肩にあてると同時に、私とリーサを緑色の優しい光が包み込んだ。
「リーサ、これは…」
「レイス………この術は不得手なものですから、少し静かにしていて下さいまし…」
「…分かった…」
「………ンンンン……ハァァ!!」
しばらくすると、私たちを覆っていた緑色の光が輝度を増し、周囲を緑色に染め上げた。
そして、その光が一瞬にして解かれたかと思うと、私が飛ばされた時に負った体内の傷が癒えたようで、それまで体内を巡っていた違和感はなくなっていた。
「リーサ、今のは忍術なんだよな…」
「はいですの。治癒の術ですわ」
「リーサとは長い付き合いだが………この術を見たのは初めてだ…」
「ええ。この術は適性がないと使えない術で、私には適性があるのですが………どうも苦手で普段は使えませんの…」
「そんな術を………私は無理して使わせてしまったのだな………申し訳ない…」
「謝らないでくださいまし。私の力がレイスの役に立ったのなら、本望ですわ」
「ありがとう、リーサ…」
”キィーーーーン………”
私たちの後方でサリットが術の解除にあたっている壁から、甲高い耳障りな音が発せられる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「サリット!!大丈夫か!?」
「解除の術に集中していたからよく分からなかったけど………そっちも、どうにか片付いたみたいね」
”パァン!!”
まるで両手で拍手をしたような音が小さく木霊すると、それまで壁でしかった離れの壁に入口が出現した。
「うまくいきましたわね、サリット!!」
「ええ!!二人が集中させてくれていたお陰よ」
「まぁ、こちらはこちらで、ちょっと大変ではあったのだが、な」
「一体、何があったの!?」
「それは、シューを交えて、帰りにでも話そう。さぁ、中に入って、情報を掴まなければ!!」
「そうですわね!!」
「???」
こうして私たちは離れの中に入り、ターパの領事アンティムが幽閉されているという砦の情報を掴むと、警報が鳴り止まない館内を後にし、リーサの隠れ家へと戻ったのだった。
「侵入者だ!!!」
”スタッ…”
”ヒュンヒュンヒュン”
”グサッ…カン…グサッ”
”バタン…バタン…”
封印術が施されている壁に向かい強行突破した私たち3人は、案の定、すぐに見張り兵に発見された。
だが、私とリーサの後方を一緒に走っていたサリットがジャンプし短曲剣(マインゴーシュ)を投げつけ、その壁の前にいた見張り兵2名を倒した。
”「…何か、後ろの方で音がしなかったか?」”
壁に到着した私たちの耳に入ったきたのは、離れの反対側にいると思しき見張り兵の声だった。
”「ランデス様がこの離れだけは厳重に守るようにおっしゃっておいでだった。すぐに確認しに行こう」”
「まずいですわね…」
「…サリット、見張り兵の迎撃は私とリーサで引き受ける。君は、この壁に封印された術の解除を!!」
「分かったわ!!レイスも気を付けて!」
サリットに封印の解除を任せた私とリーサは、左右それぞれの壁影に隠れ、その先の様子をうかがう。
左の壁の先の様子をうかがった私だったが、私の目線に敵の影を捉えることはできなかった。
私がリーサの方を見ると、『こちらに来い』と手で合図をよこす彼女の姿が目に入ってきた。リーサも、私の方に敵さんがいないことを理解したのだろう。
私がリーサの元に駆け寄ると、右手で親指を立て、合図で一斉に駆け出すサインを出したので、私はそれに了承した。
そして、間を置くことなく、そのサインを出したリーサを先頭に、私は後れを取ることなく壁の向こう側へと踊り出た。
”ザザザ…スタッ…”
私とリーサの姿を発見した見張り兵2人が、その場で歩を止める。
「お前たち…一体どこから湧いて出た…いや、そんなことはどうでもいい。ここを、ランデス様の館と知っての狼藉か!?」
「…そうだ、と言ったら?」
「口の減らない侵入者め!!」
”シャーーーー”
腰に携えた鞘から、スキアヴォーナを抜き去り、2人の見張り兵は私たちに切っ先を向ける。
”ヒュンヒュンヒュン…”
その準備行動の隙をつき、リーサが星型の小さな武器を見張り兵に向かい投げつけた。
”キン……グサッ……グサッ……”
「グハァ…」
”バタン…”
リーサが投げつけた3つの『手裏剣』という武器のうち、2つが敵の1人に命中し、その場に倒れた。
「おのれ!!やりやがったな!!!」
”ブゥン!!”
”ギィン!!”
もう1人の見張り兵が振りかざしたスキアヴォーナの攻撃を、懐から咄嗟に出した短刀で防いだ私だったが、見張り兵の振りかざした力が思いの外強かったためか、私の体はその力に耐え切れず、離れのすぐ近くに植わっていた大木目がけて飛ばされてしまった。
”ドン!!”
「ウゥ…」
大木に背中を強く打ち付けた私はその場に前かがみとなり、思わず口に当てた手の平は鮮血に染まっていた。
「レイス!!!」
「リーサ、大丈夫だ!!」
そう言ってみたものの、吐血した私の口まわりを見たリーサには効果がなかったようだ。
「よくも………よくも私のレイスを………痛めつけてくださいましたわね!!!!!」
リーサの周囲に覆う『気』が空に向かって動いているのを、忍術を知らない私でも分かる程に、彼女の長い髪の毛が夜空に吸い込まれるかのようになびいている。
「覚悟なさい!!!」
”キィン”
”スタッ”
”ヒュン”
刹那に剣を抜き、その場を蹴って私に攻撃を仕掛けた見張り兵の元まで到達したリーサは、音もなく剣を振りかざし、次の瞬間には見張り兵の上半身と下半身は腰の辺りで真っ二つになっていた。
敵の絶命を確認したリーサは、次の瞬間にはいつものリーサに戻り、動くことのできない私の元へと駆け寄る。
「レイス!!大丈夫ですか!?しっかりしてくださいまし!!」
「リーサ………そんな大袈裟な…」
「大袈裟なんかじゃありません!!吐血しているじゃありませんか!」
「吹き飛ばされた時の打ちどころが悪かったらしい…」
「今すぐ回復を…」
リーサが何かの印を結んだ後、両手を私の両肩にあてると同時に、私とリーサを緑色の優しい光が包み込んだ。
「リーサ、これは…」
「レイス………この術は不得手なものですから、少し静かにしていて下さいまし…」
「…分かった…」
「………ンンンン……ハァァ!!」
しばらくすると、私たちを覆っていた緑色の光が輝度を増し、周囲を緑色に染め上げた。
そして、その光が一瞬にして解かれたかと思うと、私が飛ばされた時に負った体内の傷が癒えたようで、それまで体内を巡っていた違和感はなくなっていた。
「リーサ、今のは忍術なんだよな…」
「はいですの。治癒の術ですわ」
「リーサとは長い付き合いだが………この術を見たのは初めてだ…」
「ええ。この術は適性がないと使えない術で、私には適性があるのですが………どうも苦手で普段は使えませんの…」
「そんな術を………私は無理して使わせてしまったのだな………申し訳ない…」
「謝らないでくださいまし。私の力がレイスの役に立ったのなら、本望ですわ」
「ありがとう、リーサ…」
”キィーーーーン………”
私たちの後方でサリットが術の解除にあたっている壁から、甲高い耳障りな音が発せられる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「サリット!!大丈夫か!?」
「解除の術に集中していたからよく分からなかったけど………そっちも、どうにか片付いたみたいね」
”パァン!!”
まるで両手で拍手をしたような音が小さく木霊すると、それまで壁でしかった離れの壁に入口が出現した。
「うまくいきましたわね、サリット!!」
「ええ!!二人が集中させてくれていたお陰よ」
「まぁ、こちらはこちらで、ちょっと大変ではあったのだが、な」
「一体、何があったの!?」
「それは、シューを交えて、帰りにでも話そう。さぁ、中に入って、情報を掴まなければ!!」
「そうですわね!!」
「???」
こうして私たちは離れの中に入り、ターパの領事アンティムが幽閉されているという砦の情報を掴むと、警報が鳴り止まない館内を後にし、リーサの隠れ家へと戻ったのだった。
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