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Episode8 聖遺物を求めて
第39話 瞬間移動(テレポーテーション)
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アンティムがターパの奪還と放棄を宣言した翌日、俺たちとターパ軍の兵士たちは、再び謁見の間へと集結していた。
昨日、集まった領民に対しても、アンティムは奪還と放棄を宣言した。すると領民たちの代表は、ランデスの元で領民として生活するのは耐えられないので、新生セレスタ王国が樹立されるまでランデスから隠れて過ごすことを申し出たという。
「…さて、私の提案を受け入れてくれた兵の皆よ。いよいよターパを出発する時がきた。皆、準備は良いか!?」
「オオーーーー!!!」
「アルモ殿からの情報によれば、セレスタ軍はランデス率いる公国軍よりも数が少なく、しかもその中にはワイギヤ教軍も駐屯しているそうだ。きっと、陛下とその兵は、今も苦境に立たされているに違いない。セレスタ軍にいち早く合流しワイギヤ教軍を排除すると共に、ランデス軍を駆逐せねばならない!!」
「アンティム様!ここから合戦場まで、どの程度かかるのでしょうか?」
「馬で数日といったところだろうか…」
「ならば、早く出発しなければセレスタ軍が公国軍に敗れてしまうかも知れません」
「その通りだ。皆の者、早速準…」
アンティムが全員に出発準備を指示しようとした、その時…
「アンティムさん!」
「…アルモ殿!?」
話の腰を折ったアルモに、怪訝そうな表情を見せるアンティム。
「ご命令の途中だと思いますが………馬を走らせなくとも、陛下の元へいち早く馳せ参じる方法を、私は知っています」
「なんと!」
「それは本当なのか!?」
「英雄クレスの末裔の言うことだ。間違いあるまい」
アルモの発言に、兵士たちの口から次々と言葉が放たれる。
「アルモ殿!その方法とは、一体………」
「私が修得している、瞬間移動(テレポーテーション)の魔法を使って、ここにいる全員を転送させるのです」
「!!」
アルモの発言に、俺たちは驚きの表情を見せる。
「アルモ…瞬間移動(テレポーテーション)の魔法は、ただでさえ魔力を相当消費するはず。それを、この人数を一度に転送させるなんて………」
「アコード、心配してくれてありがとう!でも、大丈夫!!この近くにあるエプールマウンテンと、大陸中心部の中立地帯の間を、精神感応テレパシーで交信を試みたときも成功したでしょ!?」
「…だから、瞬間移動(テレポーテーション)も問題ないと!?」
「ええ。でも、恐らくこの人数を転送させたら…」
「今日一日、アルモは幕舎で待機…って訳か」
「そうなったら、アコードは私のこと、守ってくれるんでしょ!?」
「!!!」
アルモの言葉に赤面する俺。
「アコード、顔が赤いぞ!!」
「シュー!!ほっとけ!」
「という訳で、私の魔法を使えば、ここにいる全員を、中立地帯まで運ぶことができます!」
「アルモ殿…」
「中立地帯から合戦場までは、馬で1時間もかからないはず。急ぐなら、私たちのことは気にせず、私の魔法で中立地帯まで転送を試みるべきです!!」
「…その提案、ありがたく受け取ることにしよう。アルモ殿、そしてお仲間の皆さん、何から何まで、本当に感謝する」
アンティムが、深々と頭を下げる。
「それでは、転送後にすぐ移動できるよう、外に布陣して下さい。布陣後、全員が手を繋ぎ、私が魔法を発動させれば、一瞬で転送が完了するはずです」
「あいわかった!皆の者、ターパの門前に布陣だ!馬に乗り、ただちに配置についてくれ!」
「「「「はっ!!」」」」
アンティムの号令で、その場にいた全兵士が謁見の間から退出する。
「アルモ殿………よろしく頼む!」
「アンティムさん…お任せください!!」
「それじゃ、俺たちも準備をするとしよう!」
「兵士の皆さんに、遅れをとるわけにはいきませんわ」
数分後、ターパ軍の兵士たちは、各々馬に跨り、ターパの城門前に布陣を終えていた。
アンティムが全員手を繋ぐように号令を発すると、数十秒後にはそれが完了した。
アンティムが兵士長の手を取り、もう片方の手でアルモの手を、俺はアルモのもう片方の手を取り、俺のもう片方の手をシューが…といった具合でその場にいる全員が手と手で繋がれた状態になると…
「瞬間移動(テレポーテーション)!!」
アルモが魔法を発動。その場を眩い光が包み込むと同時に、次の瞬間にはクレスの鎧が安置されていた洞窟近くの中立地帯へと移動していた。
「………せ……いこう………した………わ………よ…ね…?」
”ガクン”
俺とアンティムに手を繋がれたまま、アルモが気を失う。
俺はアンティムにアイコンタクトを取るとアルモの手を放してもらい、アルモを全身で受け止めた。
「…アルモ殿は?」
「アンティムさん、大丈夫です。気を失っただけですよ」
「アルモが魔法を発動して気を失うのは、これが初めてじゃない?」
「ああ。これだけの人数を瞬間移動(テレポーテーション)させたんだ。明日まで魔法を使うことは疎(おろ)か、立ち上がることもままならないだろう。アルモのことは俺に任せて、アンティムさんは早くセレスタ陛下の元へ。シュー達もアンティムさんに同行して、アンティムさんとセレスタ陛下を守ってくれ!」
「分かったわ、アコード」
「アルモが気がついたら、アンティムが礼を言っていたと伝えてくれ」
「分かりました。さぁ、俺の仲間たちと共に、陛下の元へ!!」
「分かった!!では皆の者、私に続け!!!」
「「「「「オオー!!!!」」」」」
こうしてアルモの魔法により中立地帯に移動した俺たちとターパ軍は、窮地に立たされているであろうセレスタ軍との合流を急いだのだった。
昨日、集まった領民に対しても、アンティムは奪還と放棄を宣言した。すると領民たちの代表は、ランデスの元で領民として生活するのは耐えられないので、新生セレスタ王国が樹立されるまでランデスから隠れて過ごすことを申し出たという。
「…さて、私の提案を受け入れてくれた兵の皆よ。いよいよターパを出発する時がきた。皆、準備は良いか!?」
「オオーーーー!!!」
「アルモ殿からの情報によれば、セレスタ軍はランデス率いる公国軍よりも数が少なく、しかもその中にはワイギヤ教軍も駐屯しているそうだ。きっと、陛下とその兵は、今も苦境に立たされているに違いない。セレスタ軍にいち早く合流しワイギヤ教軍を排除すると共に、ランデス軍を駆逐せねばならない!!」
「アンティム様!ここから合戦場まで、どの程度かかるのでしょうか?」
「馬で数日といったところだろうか…」
「ならば、早く出発しなければセレスタ軍が公国軍に敗れてしまうかも知れません」
「その通りだ。皆の者、早速準…」
アンティムが全員に出発準備を指示しようとした、その時…
「アンティムさん!」
「…アルモ殿!?」
話の腰を折ったアルモに、怪訝そうな表情を見せるアンティム。
「ご命令の途中だと思いますが………馬を走らせなくとも、陛下の元へいち早く馳せ参じる方法を、私は知っています」
「なんと!」
「それは本当なのか!?」
「英雄クレスの末裔の言うことだ。間違いあるまい」
アルモの発言に、兵士たちの口から次々と言葉が放たれる。
「アルモ殿!その方法とは、一体………」
「私が修得している、瞬間移動(テレポーテーション)の魔法を使って、ここにいる全員を転送させるのです」
「!!」
アルモの発言に、俺たちは驚きの表情を見せる。
「アルモ…瞬間移動(テレポーテーション)の魔法は、ただでさえ魔力を相当消費するはず。それを、この人数を一度に転送させるなんて………」
「アコード、心配してくれてありがとう!でも、大丈夫!!この近くにあるエプールマウンテンと、大陸中心部の中立地帯の間を、精神感応テレパシーで交信を試みたときも成功したでしょ!?」
「…だから、瞬間移動(テレポーテーション)も問題ないと!?」
「ええ。でも、恐らくこの人数を転送させたら…」
「今日一日、アルモは幕舎で待機…って訳か」
「そうなったら、アコードは私のこと、守ってくれるんでしょ!?」
「!!!」
アルモの言葉に赤面する俺。
「アコード、顔が赤いぞ!!」
「シュー!!ほっとけ!」
「という訳で、私の魔法を使えば、ここにいる全員を、中立地帯まで運ぶことができます!」
「アルモ殿…」
「中立地帯から合戦場までは、馬で1時間もかからないはず。急ぐなら、私たちのことは気にせず、私の魔法で中立地帯まで転送を試みるべきです!!」
「…その提案、ありがたく受け取ることにしよう。アルモ殿、そしてお仲間の皆さん、何から何まで、本当に感謝する」
アンティムが、深々と頭を下げる。
「それでは、転送後にすぐ移動できるよう、外に布陣して下さい。布陣後、全員が手を繋ぎ、私が魔法を発動させれば、一瞬で転送が完了するはずです」
「あいわかった!皆の者、ターパの門前に布陣だ!馬に乗り、ただちに配置についてくれ!」
「「「「はっ!!」」」」
アンティムの号令で、その場にいた全兵士が謁見の間から退出する。
「アルモ殿………よろしく頼む!」
「アンティムさん…お任せください!!」
「それじゃ、俺たちも準備をするとしよう!」
「兵士の皆さんに、遅れをとるわけにはいきませんわ」
数分後、ターパ軍の兵士たちは、各々馬に跨り、ターパの城門前に布陣を終えていた。
アンティムが全員手を繋ぐように号令を発すると、数十秒後にはそれが完了した。
アンティムが兵士長の手を取り、もう片方の手でアルモの手を、俺はアルモのもう片方の手を取り、俺のもう片方の手をシューが…といった具合でその場にいる全員が手と手で繋がれた状態になると…
「瞬間移動(テレポーテーション)!!」
アルモが魔法を発動。その場を眩い光が包み込むと同時に、次の瞬間にはクレスの鎧が安置されていた洞窟近くの中立地帯へと移動していた。
「………せ……いこう………した………わ………よ…ね…?」
”ガクン”
俺とアンティムに手を繋がれたまま、アルモが気を失う。
俺はアンティムにアイコンタクトを取るとアルモの手を放してもらい、アルモを全身で受け止めた。
「…アルモ殿は?」
「アンティムさん、大丈夫です。気を失っただけですよ」
「アルモが魔法を発動して気を失うのは、これが初めてじゃない?」
「ああ。これだけの人数を瞬間移動(テレポーテーション)させたんだ。明日まで魔法を使うことは疎(おろ)か、立ち上がることもままならないだろう。アルモのことは俺に任せて、アンティムさんは早くセレスタ陛下の元へ。シュー達もアンティムさんに同行して、アンティムさんとセレスタ陛下を守ってくれ!」
「分かったわ、アコード」
「アルモが気がついたら、アンティムが礼を言っていたと伝えてくれ」
「分かりました。さぁ、俺の仲間たちと共に、陛下の元へ!!」
「分かった!!では皆の者、私に続け!!!」
「「「「「オオー!!!!」」」」」
こうしてアルモの魔法により中立地帯に移動した俺たちとターパ軍は、窮地に立たされているであろうセレスタ軍との合流を急いだのだった。
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