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SIDE. ミア 想望 5
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「――ミア、ごめんなさい。私の所為で怖い目に」
肩にそっと手が添えられたことで我に返ると、悲しげな表情で目を伏せるレンリの姿が目に入った。
「ち、違いますっ。あれは、ヨン様がっ」
急いで否定したが、名を出すだけで先程の恐怖心が蘇り、ミアは思わず自分の身体を抱き締めた。
震えは収まらなかったが、肩に置かれた手の温かさに心は救われた。
「わ、私達の命は、ヨ、ヨン様と、キビル様の手中にあります」
「え?」
縋るように目の前の華奢な身体に手を伸ばした。
「っお二人の命令に、私達は逆らうことができませんっ」
天使のような《竜の子》は黙って話を聞いてくれた。
「私達は故郷が襲われた際に、魔法が使えるからとここに連れてこられました。私達は皆、戦いたくもないのに戦うことを強要されているのです。……御使い様、どうか、私達を助けてくださいっ」
助けて欲しいのはきっと囚われている彼女も同じだろう。
しかし、願わずにはいられなかった。
「……私にできることがあれば、必ず」
レンリは優しくミアを抱き留めてくれた。
ミアは彼女の腕の中で助けてと繰り返しながら泣き続けた。
どれほどの時間そうしていたのか、いざ泣き止んで冷静になると気まずさが勝ってしまい、逃げるように退出したのはつい先程のことだった。
トボトボと自室に向かう自身の肩に不意にポンと手が置かれ、ミアは弾かれるように振り返った。
そこには、ミアと同じ街から同じ理由で連れてこられた男が立っていた。
「……大丈夫か?」
「キース……」
ミアの泣き腫らした顔に気付いたのか、キースは隈の残る暗い顔を更に歪めてしまった。
同郷且つ同年代である彼とは、境遇に共感できることが多いため、互いに慰め合って過ごすことが多かった。
お互いに根拠のない大丈夫を繰り返し、そうして、少しずつ心は疲弊していった。
キースはついこの間のサラファ襲撃時に利き腕を失ったらしい。
魔法を使えても利き腕を失くしては上手く立ち回れないとの理由で、彼はミアと同様小間使いとして扱われることが多くなったと聞いた。
その際ミアが心配して大丈夫かと尋ねた時も、彼は全く大丈夫そうではない顔で大丈夫だと言い聞かせていた。
「最近、三階の用事を押しつけられていると聞いたから……心配で」
「それは本当。でも、私は大丈夫」
いつもと同じ言葉を繰り返すと、キースはそうかと返事するのみであった。
たとえ大丈夫ではなかったとしても大丈夫と言う。
それが、暗黙の了解だった。
「あ、違うの。本当に大丈夫」
ミアは誤解を解くように続けた。
勿論今日もヨンは怖かったし、死にそうな目にも遭った。
でも、御使い様が傍にいてくれたのだ。
「あのね、あ、でも、これ言っていいのかな」
キースに伝えようとしたが、囚われている彼女のことを話すのはヨンの神経を逆なでするかも知れないと思い当たった。
顔を青ざめさせるミアに、キースはゆっくりと首を振った。
「大丈夫なら、いいんだ」
「……うん、ありがとう。キースにも、いつか教えてあげたい」
そう言うと、キースは少しだけ目を見開いた。
「え、何」
「今、ミア、笑って……」
「……え」
ミアは自分の耳を疑ってしまった。
ここに来てからは、笑うことなんて出来なくなっていた。
キビルのように狂ってしまった者は笑うが、え、まさか自分も。
そう考えて顔からさーっと血の気が引いたが、キースの考えは違うようであった。
「本当に大丈夫そうだな。安心した」
「え、あ、うん。竜神様が、見ていてくれるから」
「竜神様、か。俺は信者じゃないから分かんないけど、でも、それでミアが笑えるなら、よかった」
キースは安心したように、しかし暗い顔はそのままに去って行ってしまった。
ミアは彼にも自分の僅かな希望を分けてあげたいと願った。
肩にそっと手が添えられたことで我に返ると、悲しげな表情で目を伏せるレンリの姿が目に入った。
「ち、違いますっ。あれは、ヨン様がっ」
急いで否定したが、名を出すだけで先程の恐怖心が蘇り、ミアは思わず自分の身体を抱き締めた。
震えは収まらなかったが、肩に置かれた手の温かさに心は救われた。
「わ、私達の命は、ヨ、ヨン様と、キビル様の手中にあります」
「え?」
縋るように目の前の華奢な身体に手を伸ばした。
「っお二人の命令に、私達は逆らうことができませんっ」
天使のような《竜の子》は黙って話を聞いてくれた。
「私達は故郷が襲われた際に、魔法が使えるからとここに連れてこられました。私達は皆、戦いたくもないのに戦うことを強要されているのです。……御使い様、どうか、私達を助けてくださいっ」
助けて欲しいのはきっと囚われている彼女も同じだろう。
しかし、願わずにはいられなかった。
「……私にできることがあれば、必ず」
レンリは優しくミアを抱き留めてくれた。
ミアは彼女の腕の中で助けてと繰り返しながら泣き続けた。
どれほどの時間そうしていたのか、いざ泣き止んで冷静になると気まずさが勝ってしまい、逃げるように退出したのはつい先程のことだった。
トボトボと自室に向かう自身の肩に不意にポンと手が置かれ、ミアは弾かれるように振り返った。
そこには、ミアと同じ街から同じ理由で連れてこられた男が立っていた。
「……大丈夫か?」
「キース……」
ミアの泣き腫らした顔に気付いたのか、キースは隈の残る暗い顔を更に歪めてしまった。
同郷且つ同年代である彼とは、境遇に共感できることが多いため、互いに慰め合って過ごすことが多かった。
お互いに根拠のない大丈夫を繰り返し、そうして、少しずつ心は疲弊していった。
キースはついこの間のサラファ襲撃時に利き腕を失ったらしい。
魔法を使えても利き腕を失くしては上手く立ち回れないとの理由で、彼はミアと同様小間使いとして扱われることが多くなったと聞いた。
その際ミアが心配して大丈夫かと尋ねた時も、彼は全く大丈夫そうではない顔で大丈夫だと言い聞かせていた。
「最近、三階の用事を押しつけられていると聞いたから……心配で」
「それは本当。でも、私は大丈夫」
いつもと同じ言葉を繰り返すと、キースはそうかと返事するのみであった。
たとえ大丈夫ではなかったとしても大丈夫と言う。
それが、暗黙の了解だった。
「あ、違うの。本当に大丈夫」
ミアは誤解を解くように続けた。
勿論今日もヨンは怖かったし、死にそうな目にも遭った。
でも、御使い様が傍にいてくれたのだ。
「あのね、あ、でも、これ言っていいのかな」
キースに伝えようとしたが、囚われている彼女のことを話すのはヨンの神経を逆なでするかも知れないと思い当たった。
顔を青ざめさせるミアに、キースはゆっくりと首を振った。
「大丈夫なら、いいんだ」
「……うん、ありがとう。キースにも、いつか教えてあげたい」
そう言うと、キースは少しだけ目を見開いた。
「え、何」
「今、ミア、笑って……」
「……え」
ミアは自分の耳を疑ってしまった。
ここに来てからは、笑うことなんて出来なくなっていた。
キビルのように狂ってしまった者は笑うが、え、まさか自分も。
そう考えて顔からさーっと血の気が引いたが、キースの考えは違うようであった。
「本当に大丈夫そうだな。安心した」
「え、あ、うん。竜神様が、見ていてくれるから」
「竜神様、か。俺は信者じゃないから分かんないけど、でも、それでミアが笑えるなら、よかった」
キースは安心したように、しかし暗い顔はそのままに去って行ってしまった。
ミアは彼にも自分の僅かな希望を分けてあげたいと願った。
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