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第二章 女達の迷家
女達の迷家 その9
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「はい。確かに」
メガネをくいっと動かして、青柳支部長が頷く。
青柳支部長が持っているタブレットには、今回の報告書が表示されているはずだ。
その言葉にほっと肩の力が抜けた。
「それにしても……縊鬼が母親のほうだったとは……」
こちらの調査不足ですね。と苦笑を浮かべる青柳支部長。
「たぶん、屋敷の主人が湯本の方にずっといたのも、家に……母親のいる場所に帰りたくなかったからだと……」
いやだいやだと泣いていた屋敷の主人の霊を思い出す。
どの時点で母親は跡継ぎを残すことに執着したのだろうか?
その執着は自らが生んだであろう息子を遠ざけることにもつながって、挙句息子は梅毒を患って……。
ひたすら不幸が連鎖したこの事件に……胸が痛くなる。
「……それにしても……どうして主人の部屋で那子くんは雪や主人の霊が視えたのでしょうね?」
葵くんとは引き離されていたのでしょう? と唐突に青柳支部長がそんなことを言い出した。
その顔は妙にニコニコと……というかニヤニヤしている。
何故だ? なんだか嫌な予感がする。
「あぁ、それは那子が……俺の体液を取り込んだからですね」
「……は?」
「なるほど?」
いや待って。今なんて……。
「はぁぁぁぁぁ?!」
「那子、うるさい」
いやでもっ!
「ななななななっ?! 何言いだすんですか?! た、たいえ……きぃ……?! ってなんっ! なんてことを!!」
「あん時しただろ? 舌突っ込んでディープキス」
俺の唾液飲ませたろ? ってさらっと葵さんが何か言ってるけど、沸騰した頭じゃ処理が追い付かない。
「ほぅ。なるほど? 葵くん本人に触れてなくても、葵くんの体液で代用できると?」
「恐らく……。大した時間ではありませんが……」
そう冷静に話を進める葵さんと青柳支部長についていけない。
「なななななな……」
「……那子、動揺し過ぎ」
だ、だって……だってそんな……!
「これが動揺しないでいられますかってのよぉぉぉ!!」
「んだよ那子。……もしかしてお前、男と付き合った……いや誰かと付き合った事……」
「あるかぁぁぁぁぁ!!」
この特異体質で人間関係に苦労しかしてないんだから、そんな色っぽい展開になんてなったことあるわけがないっ!!
「……へぇ」
何故かにやりと笑う葵さん。
どこか嬉しそうに見えるのはなんでだろう?
「ほぉ……なるほど? 葵くんの体液でも那子さんの能力が発揮できるなら……」
二人が身体を交えたらどうなりますかねぇ?
「……は?」
今何とおっしゃいました?
交える? 身体を......交える? それって……つまりは……
「……あぁ、現在はこういうこと言うとコンプライアンス的にまずいんですよね」
聞かなかったふりしてくださいね? ってメガネの奥でウィンクされても……。
人差し指を立ててしぃのポーズ、よくお似合いですね?
「那子、顔真っ赤」
わたしの顔を覗き込んできた葵さんにそう指摘されて……。
「あ、当たり前だぁぁぁぁ!!」
部屋を飛び出したわたしは悪くないと思う……うん。
だから、知らなった。
わたしが部屋を飛び出した後の、二人の会話を。
「うーん、あの世間を斜に構えて見てんのに、擦れてないとか……たまらん」
「おやおや。でも……ずいぶんと前途多難のようですが?」
「そうですかね? まぁ、気長に……いやどうしようかなぁ? 俺から逃げられるのは困るんで、早々に絡めとるかなぁ。アイツ、ああ見えて流されやすいし」
「……それは、那子さんに力があるからですか?」
「……そう……見えますか?」
「……いいえ? まぁ、頑張って捕まえてくださいね」
「もちろんですよ」
そんな不穏な会話をしていたなんて、知らなかったのだ。
第二章 女達の迷家 完
メガネをくいっと動かして、青柳支部長が頷く。
青柳支部長が持っているタブレットには、今回の報告書が表示されているはずだ。
その言葉にほっと肩の力が抜けた。
「それにしても……縊鬼が母親のほうだったとは……」
こちらの調査不足ですね。と苦笑を浮かべる青柳支部長。
「たぶん、屋敷の主人が湯本の方にずっといたのも、家に……母親のいる場所に帰りたくなかったからだと……」
いやだいやだと泣いていた屋敷の主人の霊を思い出す。
どの時点で母親は跡継ぎを残すことに執着したのだろうか?
その執着は自らが生んだであろう息子を遠ざけることにもつながって、挙句息子は梅毒を患って……。
ひたすら不幸が連鎖したこの事件に……胸が痛くなる。
「……それにしても……どうして主人の部屋で那子くんは雪や主人の霊が視えたのでしょうね?」
葵くんとは引き離されていたのでしょう? と唐突に青柳支部長がそんなことを言い出した。
その顔は妙にニコニコと……というかニヤニヤしている。
何故だ? なんだか嫌な予感がする。
「あぁ、それは那子が……俺の体液を取り込んだからですね」
「……は?」
「なるほど?」
いや待って。今なんて……。
「はぁぁぁぁぁ?!」
「那子、うるさい」
いやでもっ!
「ななななななっ?! 何言いだすんですか?! た、たいえ……きぃ……?! ってなんっ! なんてことを!!」
「あん時しただろ? 舌突っ込んでディープキス」
俺の唾液飲ませたろ? ってさらっと葵さんが何か言ってるけど、沸騰した頭じゃ処理が追い付かない。
「ほぅ。なるほど? 葵くん本人に触れてなくても、葵くんの体液で代用できると?」
「恐らく……。大した時間ではありませんが……」
そう冷静に話を進める葵さんと青柳支部長についていけない。
「なななななな……」
「……那子、動揺し過ぎ」
だ、だって……だってそんな……!
「これが動揺しないでいられますかってのよぉぉぉ!!」
「んだよ那子。……もしかしてお前、男と付き合った……いや誰かと付き合った事……」
「あるかぁぁぁぁぁ!!」
この特異体質で人間関係に苦労しかしてないんだから、そんな色っぽい展開になんてなったことあるわけがないっ!!
「……へぇ」
何故かにやりと笑う葵さん。
どこか嬉しそうに見えるのはなんでだろう?
「ほぉ……なるほど? 葵くんの体液でも那子さんの能力が発揮できるなら……」
二人が身体を交えたらどうなりますかねぇ?
「……は?」
今何とおっしゃいました?
交える? 身体を......交える? それって……つまりは……
「……あぁ、現在はこういうこと言うとコンプライアンス的にまずいんですよね」
聞かなかったふりしてくださいね? ってメガネの奥でウィンクされても……。
人差し指を立ててしぃのポーズ、よくお似合いですね?
「那子、顔真っ赤」
わたしの顔を覗き込んできた葵さんにそう指摘されて……。
「あ、当たり前だぁぁぁぁ!!」
部屋を飛び出したわたしは悪くないと思う……うん。
だから、知らなった。
わたしが部屋を飛び出した後の、二人の会話を。
「うーん、あの世間を斜に構えて見てんのに、擦れてないとか……たまらん」
「おやおや。でも……ずいぶんと前途多難のようですが?」
「そうですかね? まぁ、気長に……いやどうしようかなぁ? 俺から逃げられるのは困るんで、早々に絡めとるかなぁ。アイツ、ああ見えて流されやすいし」
「……それは、那子さんに力があるからですか?」
「……そう……見えますか?」
「……いいえ? まぁ、頑張って捕まえてくださいね」
「もちろんですよ」
そんな不穏な会話をしていたなんて、知らなかったのだ。
第二章 女達の迷家 完
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