最凶聖女の地獄指導で覚醒した冴えない社畜、勇者パーティーに放り込まれダンジョン無双し魔王軍に挑む

ワスレナ

文字の大きさ
42 / 46
本編

第38話 四天王の一角、コルヌゴンのゲルミス、起つ

しおりを挟む
 私たちは第四階層を守護する魔物の群れを撃破し、第五階層へと上り詰めていた。

 大聖堂のように高く広がる天井。石造りの柱が並び、そこかしこに悪魔の彫像が睨みを利かせている。


 そこがこの大広間だった。

 石造りの大広間に入った瞬間、空気が凍り付いた。

 玉座に座す四天王コルヌゴン。

 その威厳に満ちた魔闘気から、四天王クラスだと認識できた。

 周囲には影の亀裂が走り、ぞろぞろと悪魔の軍勢が湧き出してくる。

 牙を剥き出しにしたバルバズゥ(猿魔)が五体。

 重甲冑を纏ったハマトゥラ(鎧鬼デヴィル)が三体。

 頭に炎を宿したアケロンの魔騎兵二体。

 さらに、天井近くでは蝙蝠翼を持つスピナゴンが六体、甲高い声で笑いながら舞い降りてくる。

「ふん……俺が相手する前に、まずは我が眷属どもで血を啜ってやろう」

 コルヌゴンの声に応じ、デヴィルの群れが一斉に襲いかかってきた。

「数が多い……! けど、やるしかない!」

 バルドスが盾を構え、前線を受け止める。

 クローディアは左右から迫るバルバズゥを斬り伏せ、イグノールは聖剣の光で敵を押し返す。

「まとめて焼き払うわ!」

 メリエラが両手を掲げ、炎の魔法陣を大広間に展開する。

『フレイム・ストーム』

――業火の嵐が渦巻き、十数体のデヴィルを巻き込み、断末魔の悲鳴を響かせる。

 それでも数で押し寄せる魔たちに、私は無属性魔法で応じた。

「『ガイア・バースト』!」

 床から隆起した石柱が敵の群れを貫き、崩れた破片が弾丸となって周囲を薙ぎ払う。

 範囲ごと吹き飛ばされたデヴィルたちは次々と壁に叩きつけられ、黒い霧となって霧散していった。

「タクト、助かった!」

 バルドスが叫び、さらに突撃する。

 残ったスピナゴンたちは空へ逃げようとしたが、メリエラの氷結魔法《フリーズ・レイン》がそれを許さない。

 氷の矢が雨のように降り注ぎ、翼を貫かれた小悪魔たちは次々と墜落した。


 息を合わせた範囲魔法により、大広間に充満していた悪魔の群れはほとんど殲滅されていた。

 血と煙の匂いの中、私たちは剣を構え直し、玉座を睨む。


「ほう……部下をここまで容易く薙ぎ払うか」

 コルヌゴンが重々しく腰を上げる。

 巨大な角が火花を散らし、背後に黒き魔力の渦が広がった。

「ならば次は――俺様、四天王ゲルミス自らが相手をしてやろう!」

 大広間の床が震え、圧倒的な威圧感が全身を押し潰す。

 四天王との本戦が、今まさに幕を開けようとしていた。


 大広間に、重々しい足音が響く。

 ゲルミスが一歩進むたびに、床石が軋み、空気が圧し潰されるように重くなる。

「さあ――見せてもらおうか、人間の力とやらを」

 その声と同時に、雷鳴のような咆哮。ゲルミスの角から黒紫の魔力が奔流となって放たれ、稲妻が広間を走った。

「くっ……!」

 バルドスが盾を構えて受け止めるが、衝撃は壁をも揺らす。

「バルドス、前を頼む!」

 イグノールが聖剣を掲げ、光の刃を叩き込む。

 クローディアはその隙に素早く横へ回り込み、長剣の剣戟で角の根元を狙う。

「――まだ硬い! 一撃じゃ通らない!」

「ならば、削るだけだ!」

 イグノールの声に応じ、メリエラが後方から火炎弾を連射する。

 爆発が立て続けに起こり、ゲルミスの巨体を覆う鱗が焼け焦げて剥がれていく。

「クローディア、下がれ!」

 私が詠唱を終えると同時に、大地を裂く魔力が広間を震わせた。

 『ストーン・ランス』――石の槍が突き上がり、ゲルミスの脚を拘束する。

「今だ、イグノール!」

「おおおおお!」

 聖剣が閃き、拘束された脚に叩き込まれる。

 ゲルミスの咆哮が轟き、石の柱が粉砕される。

たわむれは終いだ!!」

 ゲルミスが両腕を広げると、黒い波動が爆発し、床を割って衝撃波が走る。

 全員が吹き飛ばされ、壁や柱に叩きつけられた。

「ぐっ……強すぎる……!」

 クローディアが息を荒げる。

 だが、その瞬間。

「下を向くな! 奴も無敵じゃない!」

 イグノールが叫び、立ち上がる。

 聖剣の光がさらに強く輝き、全員の心を奮い立たせる。

「タクト、援護を!」

「任せろ!」

 私は《ガイア・シールド》を展開し、ゲルミスの反撃を相殺する。

 その後ろでメリエラが氷と炎の複合魔法《エレメンタル・バースト》を詠唱する。

 氷柱と炎柱が交互に炸裂してゲルミスを押し戻した。

「今度こそ――!」

 クローディアがイグノールに合わせて飛び込み、魔剣ノクス=エクリプスを抜いて切り裂く。

 聖剣と魔剣の光が交差し、ゲルミスの胸甲をついに割った。


 黒い血飛沫が床に散り、ゲルミスの巨体がぐらりと揺れる。

 だが、まだ終わりではない。玉座の主の目が、灼熱のような怒りを宿して輝いた。

「面白い……ならば全力で葬ってやろう!」

 四天王ゲルミスとの死闘は、ここからが本番だった。


 ゲルミスの咆哮が大広間を震わせる。

 全身から黒炎を噴き上げ、炎と雷を纏った巨体が突進してきた。

「下がれッ!」

 バルドスが盾を突き立て、仲間の前に立つ。

 重圧に膝がめり込みながらも、踏み止まった。

「クローディア!」

「任せなさい!」

 盾で止められた一瞬、クローディアの魔剣が閃き、鱗の隙間を斬り裂く。

 血飛沫が弧を描き、ゲルミスがうめいた。

「今度は私の番よ!」

 メリエラが詠唱を終え、巨大な炎柱が天へと昇る。

 《フレイム・インフェルノ》――灼熱の奔流がゲルミスを包み込み、焦げた鱗を剥ぎ取っていく。

「……なら、俺も行く!」

 私は地を打ち、《ストーン・ランス》を顕現させた。

 石槍が突き上がり、巨躯きょくを足元から貫く。

「ぐぬぅ……!」

 膝を折り、動きを止めたその瞬間。

「イグノール、今だ!」

 全員の声が重なる。

 イグノールは聖剣を掲げ、全身に白光をまとう。

 「ここで終わりだ――!」

 踏み込みと同時に放たれた斬撃は、光そのものとなって一直線にほふった。

 クローディアの斬撃、メリエラの業火炎、そして私の『大地の拘束』。

――仲間の攻撃が一つに繋がり、そのすべてを束ねた最後の一閃がゲルミスの胸甲を割り砕いた。

「バ、バカな……この我が……人間に……!」

 ゲルミスの巨体が震え、次の瞬間、轟音と共に崩れ落ちた。

 黒炎は霧のように消え、圧倒的な威圧感が静かに溶けていく。

 バルドスが盾を下ろし、重い息を吐いた。

「……倒した、のか」

「ええ。みんなで力を合わせたからこそよ」

 メリエラが疲れた笑みを浮かべる。

 イグノールは聖剣を収め、静かにうなずいた。

「……ありがとう。お前たちがいたから、この一撃を振るえた」

 玉座の前に沈むゲルミスの亡骸。

 四天王の一角を討ち果たしたという事実が、私たちの胸に重く刻まれていた。

 黒炎が消え、広間に残されたのは巨躯を横たえるゲルミスの亡骸だった。

 それを前に、メリエラが杖を掲げる。

「このままでは瘴気を残すわ……『フレイム・ピラー』!」

 炎の柱が立ち昇り、死体を包み込む。

 やがて灰となり、風に散って消え去った。

 大広間をおおっていた禍々まがまがしい気配も同時に消え、静寂が戻ってくる。

「……終わったな」

 バルドスが大盾を下ろし、床に腰を下ろす。

 クローディアも剣を収め、軽く肩を叩きながら笑った。

「よく持ちこたえたわね、バルドス」

「お前こそ斬り込みすぎだ……ヒヤヒヤしたぞ」

 そのやり取りに、メリエラがクスリと笑みを漏らす。

「でも、みんながいたから押し切れた。……ありがとう」

 イグノールはそう言って、聖剣アルノールを膝に立てかけ、仲間を見回した。

「俺一人じゃ絶対に勝てなかった。タクトも、魔法で何度も助けてくれたな」

 私はうなずき返す。

「お互い様だよ。誰かが欠けてたら、あそこで終わってたかもしれない」

 みんなで頷きあい、讃えあった。


――戦いでの疲れを癒し、次の戦いに備えるのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...