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第三節 英雄の道 セイル編
第58幕 争いの種をまく者・後編
セイルが魔人と戦っている間、エセルカとくずはもまた、もう一人の魔人と相対していた。
――◇――
「さあて、楽しませてもらうぜ」
カカカ、と笑ったアンヒュルの男の人は曲線を描くシミターを抜いている。
確かあれはナッチャイスの方でよく使われている武器のはず。
あの人はナッチャイスの出なのかな……?
「エセルカ、いい?
タイミングを合わせるわよ!」
「う、うん!」
くずはちゃんの言葉と共に、私は魔法を詠唱する。
初めてのアンヒュルとの戦い……正直言ってすごく怖い。
だって、今までのお遊びのような戦いとは違う本気の殺し合いなんだもの。
それが私の心にすごくのしかかってくる。
でも……やらなきゃ……やらなきゃやられるんだ!
「具現せよ水の魔力よ! しぶきとなりて愚かな敵を阻害せよ【アクアスプラッシュ】!」
眼前には様々な軌道を描いて水が飛び散って、男の人の動きの妨害に務めることに専念して、少しでもくずはちゃんが動けるようにしなきゃ。
私が魔法を放ってすぐにくずはちゃんは刀を両手に構えて駆け出していくのが見えた。
「はん、甘いんだよ!」
男の人は魔方陣を構築して、大きな炎が放たれて……一気に蒸発してしまう。
これが、アンヒュルの魔法である魔方陣。
構築して放つ。これだけで詠唱が全く必要ないなんてちょっとずるいような感じもするけど、ここまでは予定通り。
くずはちゃんはもう、すぐそばにいる――!
「はああっ!」
「読めてるんだよ!」
そのまま一合二合と交えていて、私の方も助力するように剣を構えて突撃する。
私とくずはちゃん、交互に切り替えるように攻撃を加えていって、少しずつだけど優勢になれるよう戦っていった。
「ちっ、しつこい!」
これ以上二人に囲まれる事を嫌った男の人は一度後ろに交代するような姿勢を取ったんだけど、今の動きは命取りになるよ!
くずはちゃんの動きが急激に加速して、一気に男の人の剣を弾いてしまった。
私もこれを最初に見た時はすごく驚いたんだよねぇ……。
くずはちゃんは『雷を自由自在に操る』事が出来るそうで、体と雷を同化させて恐ろしい速度で動くことも出来るって言ってた。
魔法として普通に扱う分にはそんなことないんだけど、体の動きを速めるためにその身に纏う時は、かなりの負担がかかるんだって。
イギランスに行ったときもあまり上手く能力のコントロールすることが出来なかった……って悔やんでたのを、今でも思い出すよ。
『自由自在に操る』割には『コントロール出来ない』なんて矛盾があっておかしいなぁ……なんて思ったけど、使いこなせばっていうのが頭につくんだって。
「なっ……!」
「……何もかもが遅いのよ。あんたの全部がね!」
剣を弾かれ、そのまま素早い動きで体を沈めて、腹部に蹴りを入れてるように見える。
男の人は体をくの字に折り曲げていて……その隙にくずはちゃんは思いっきり彼に電撃を直撃させて動きを鈍らせてくれた。
これなら――。
「エセルカ!」
「うん! 具現せよ炎の魔力! 風と共に爆煙を巻き起こせ【エクスプロージョン】!」
くずはちゃんの声に頷いた私は、男の人に向かって紅くて小さな玉が飛んでいって、当たったと同時に派手に爆発。
すごい音ともにその人も吹き飛んでいって……セイルくんともう一人のアンヒュルの人の中間に落下してしまった。
二人共がまるで時間が止まったみたいに動かなくなって、しばらくして私たちと戦っていた方の男の人が情けない声をあげたかと思うと、はっとなってお互い警戒しているみたい。
「ち、ちっくしょう……」
「……油断しすぎだ。
普段から戦いの基礎をその身に叩き込んでいないから、肝心な時に魔方陣もロクに使えんのだ」
「うるせぇ……!」
「……役目も果たせないままだが、これ以上この場に留まっていても仕方あるまい」
セイルくんと戦っていた人は魔方陣を自分たちの真下に展開して、地面を抉って土や砂を風で巻き上げながら姿を隠してしまって……。
「待て!」
強風と砂で自分たちの姿を隠して……止んだ頃には姿も形もなくなって……思わずちょっと呆然としてしまった。
セイルくんは慌てて追いかけたんだけど……結局追いつけなくて、アンヒュルの二人を逃したんだけど……それでも私には、悔しさより嬉しさのほうがずっと上だった。
「逃げられたわね」
「……ああ、だけど助かった。
あのままだったらかなり危なかったからな」
ほっと一息ついたセイルくんは、本当に感謝するように私たちにお礼を言ってくれたから、なんだかすごくくすぐったかった。
今まで私はセイルくんにも……グレリアくんにも助けられてばっかりで、本当に自分が情けなく思ってたんだ。
だけど、今日私もようやくあの時の自分より前に進めたような実感がある。
それがすごく嬉しくて……自然と頬が緩んでくる。
「そりゃあもちろん、『仲間』だからね」
多分くずはちゃんもおんなじように思ってるんだと思う。
だって、私以上にすごく嬉しそうにしてるから。
「……だな!」
セイルくんもつられるように笑顔になって……皆で改めて成長を実感した――そんな一戦になったんじゃないかなって心底思った。
――
それから数日、万が一アンヒュルの人が戻ってきた場合を考えて、私たちはカナラサに留まって……戻ってこないことを確認してから出発する。
正直、あんまり司くんとは合流したくないんだよね……。
あの人はなんだか嫌な気配が……話してて怖い感じがするの。
それでも私たちでやれることは限られてるし、彼がいてくれれば戦いもずっと楽になる。
そうわかってるんだけど……今から合流した後を考えると自然とため息が漏れてしまって……更に憂鬱な気分になってしまったのでした――。
――◇――
「さあて、楽しませてもらうぜ」
カカカ、と笑ったアンヒュルの男の人は曲線を描くシミターを抜いている。
確かあれはナッチャイスの方でよく使われている武器のはず。
あの人はナッチャイスの出なのかな……?
「エセルカ、いい?
タイミングを合わせるわよ!」
「う、うん!」
くずはちゃんの言葉と共に、私は魔法を詠唱する。
初めてのアンヒュルとの戦い……正直言ってすごく怖い。
だって、今までのお遊びのような戦いとは違う本気の殺し合いなんだもの。
それが私の心にすごくのしかかってくる。
でも……やらなきゃ……やらなきゃやられるんだ!
「具現せよ水の魔力よ! しぶきとなりて愚かな敵を阻害せよ【アクアスプラッシュ】!」
眼前には様々な軌道を描いて水が飛び散って、男の人の動きの妨害に務めることに専念して、少しでもくずはちゃんが動けるようにしなきゃ。
私が魔法を放ってすぐにくずはちゃんは刀を両手に構えて駆け出していくのが見えた。
「はん、甘いんだよ!」
男の人は魔方陣を構築して、大きな炎が放たれて……一気に蒸発してしまう。
これが、アンヒュルの魔法である魔方陣。
構築して放つ。これだけで詠唱が全く必要ないなんてちょっとずるいような感じもするけど、ここまでは予定通り。
くずはちゃんはもう、すぐそばにいる――!
「はああっ!」
「読めてるんだよ!」
そのまま一合二合と交えていて、私の方も助力するように剣を構えて突撃する。
私とくずはちゃん、交互に切り替えるように攻撃を加えていって、少しずつだけど優勢になれるよう戦っていった。
「ちっ、しつこい!」
これ以上二人に囲まれる事を嫌った男の人は一度後ろに交代するような姿勢を取ったんだけど、今の動きは命取りになるよ!
くずはちゃんの動きが急激に加速して、一気に男の人の剣を弾いてしまった。
私もこれを最初に見た時はすごく驚いたんだよねぇ……。
くずはちゃんは『雷を自由自在に操る』事が出来るそうで、体と雷を同化させて恐ろしい速度で動くことも出来るって言ってた。
魔法として普通に扱う分にはそんなことないんだけど、体の動きを速めるためにその身に纏う時は、かなりの負担がかかるんだって。
イギランスに行ったときもあまり上手く能力のコントロールすることが出来なかった……って悔やんでたのを、今でも思い出すよ。
『自由自在に操る』割には『コントロール出来ない』なんて矛盾があっておかしいなぁ……なんて思ったけど、使いこなせばっていうのが頭につくんだって。
「なっ……!」
「……何もかもが遅いのよ。あんたの全部がね!」
剣を弾かれ、そのまま素早い動きで体を沈めて、腹部に蹴りを入れてるように見える。
男の人は体をくの字に折り曲げていて……その隙にくずはちゃんは思いっきり彼に電撃を直撃させて動きを鈍らせてくれた。
これなら――。
「エセルカ!」
「うん! 具現せよ炎の魔力! 風と共に爆煙を巻き起こせ【エクスプロージョン】!」
くずはちゃんの声に頷いた私は、男の人に向かって紅くて小さな玉が飛んでいって、当たったと同時に派手に爆発。
すごい音ともにその人も吹き飛んでいって……セイルくんともう一人のアンヒュルの人の中間に落下してしまった。
二人共がまるで時間が止まったみたいに動かなくなって、しばらくして私たちと戦っていた方の男の人が情けない声をあげたかと思うと、はっとなってお互い警戒しているみたい。
「ち、ちっくしょう……」
「……油断しすぎだ。
普段から戦いの基礎をその身に叩き込んでいないから、肝心な時に魔方陣もロクに使えんのだ」
「うるせぇ……!」
「……役目も果たせないままだが、これ以上この場に留まっていても仕方あるまい」
セイルくんと戦っていた人は魔方陣を自分たちの真下に展開して、地面を抉って土や砂を風で巻き上げながら姿を隠してしまって……。
「待て!」
強風と砂で自分たちの姿を隠して……止んだ頃には姿も形もなくなって……思わずちょっと呆然としてしまった。
セイルくんは慌てて追いかけたんだけど……結局追いつけなくて、アンヒュルの二人を逃したんだけど……それでも私には、悔しさより嬉しさのほうがずっと上だった。
「逃げられたわね」
「……ああ、だけど助かった。
あのままだったらかなり危なかったからな」
ほっと一息ついたセイルくんは、本当に感謝するように私たちにお礼を言ってくれたから、なんだかすごくくすぐったかった。
今まで私はセイルくんにも……グレリアくんにも助けられてばっかりで、本当に自分が情けなく思ってたんだ。
だけど、今日私もようやくあの時の自分より前に進めたような実感がある。
それがすごく嬉しくて……自然と頬が緩んでくる。
「そりゃあもちろん、『仲間』だからね」
多分くずはちゃんもおんなじように思ってるんだと思う。
だって、私以上にすごく嬉しそうにしてるから。
「……だな!」
セイルくんもつられるように笑顔になって……皆で改めて成長を実感した――そんな一戦になったんじゃないかなって心底思った。
――
それから数日、万が一アンヒュルの人が戻ってきた場合を考えて、私たちはカナラサに留まって……戻ってこないことを確認してから出発する。
正直、あんまり司くんとは合流したくないんだよね……。
あの人はなんだか嫌な気配が……話してて怖い感じがするの。
それでも私たちでやれることは限られてるし、彼がいてくれれば戦いもずっと楽になる。
そうわかってるんだけど……今から合流した後を考えると自然とため息が漏れてしまって……更に憂鬱な気分になってしまったのでした――。
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