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第七節 動き出す物語 セイル編
第134幕 声を聞く者
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意識を失った俺が次に目を覚ましたのは、白い空間の中だった。
そこには地面も空もなくて……あるのはただ真っ白な世界だけで、まるで俺一人だけ取り残されたような……世界から切り離されたような気がするほどだった。
自分で『目を覚ました』と思っているのに、ここがまだ『夢の中』であることがはっきりと分かる……そんな不思議な空間だった。
俺は……どうなったんだろう?
くずはを担いで、死にもの狂いで適当な場所を走って……途中で力尽きたことは覚えてる。
一応町に向かうように進んでいったはずなんだけど、意識を失った時はまだ森というかどこかの道だったはずだ。
俺は一体どこにいる? くずははどうなった?
「……ているか?」
「え?」
今、ほんの少しだけ誰かの声が聞こえてきた気がした。
男の……どこか偉大さを感じさせる少し低い声。
キョロキョロと辺りを見回してみたんだけど、一体どこにいるんだろう? こうも白い世界じゃなにをどう探していいかすらわからない。
「き……るか?」
「なんだ? どこにいる?」
声が気になって歩こうとしたんだけど、こんななにもない場所のどこをどう歩いていけばいいのかさえわからない。
「聞こえているか?」
はっきりと聞こえた瞬間、後ろに何かしらの気配を感じて……振り向くと金髪で透き通るような蒼い瞳をしている少年。
いつの間にか俺の後ろにいたこの少年は、やたらと神々しいといえばいいのだろうか……少なくともどこかの王様のよりも威厳があるように見える。
「……どうやら見えてるみたいだな」
「あんたは、一体?」
「その質問には何の意味もないな。
私に名はない。そして……君たちの歴史に私はいないのだから」
どうにも要領を得ない返答を貰ったが、それが余計に怪しさを掻き立てる。
だけどそれを補ってあまりあるほどの存在感といえばいいのだろうか……神秘的な雰囲気を感んじて、素直にその言葉が染み込んでいくのがわかる。
「じゃあ、そのいなくなった人? が俺になんのようなんだ?」
「この時代で、私の声が聞ける者にようやく出会うことが出来た。
だが……君が最後になるかもしれないだろう」
俺の質問には答えず、この少年はまず自分の言い分から先に話し始める。
それに時代とか歴史とか……どうにもずっとこの世界を見続けているような、そんな言い方をしている。
「……最後になる?」
「もうすぐ、君たちも私も、全て飲み込まれてしまうだろう。
世界は彼らの思う通りに動き、歴史は一から創造されることになる」
「彼ら?」
どうもこの少年の言ってることは不明瞭だ……というか俺にはよくわからない。
ただ、なんとなく憂いていることがわかることくらいか。
「そう、異邦の者は力を手に入れ、世界を簒奪する。
既に君たちも、その影響を受けているんだよ」
「……あんたは、何を言っている?」
「言葉通りの意味だ。君は勇者と呼ばれている存在に疑問を持ったことはないかい?
彼らの中には粗暴でとてもではないが、君の思っている高潔ではない者も多かったはずだ。
それなのに、なぜそれらは歴史の中で崇められている?」
少年の質問に、俺は自分の心中が言い当てられてるような気がした。
ヘンリーとかはともかく、カーターやヘルガのような勇者がいたってことは少なくとも昔もそういう勇者がいたはずだ。
それはジパーニグの貴族たちを見てもそう感じる。
特権階級にまで成り上がった彼らは、本当に勇気のある者として困難に打ち勝ってきたのだろうか?
それに……魔方陣を使うのは魔人たちだけだったはずだ。
それなのに、いざ蓋を開けてみれば勇者どころか普通の兵士たちでさえ怪しい行動を取っている。
おまけにあの銃とかいう武器……あんなもの、今まで見たこともなかった。
ジパーニグにいる兵士たちだって普段俺たちが見慣れている武器を持っていたはずだ。
「その異邦の者って奴らが、俺たちになにかしてるって……そういうことか?」
「真実は君の目で確かめるといい。
そして……もし、君が誰かを守りたいと強く望むのならば、その為の力を与えよう」
「……力」
「それを使いこなすかどうか……それは君次第だ。
力とは所詮、使うもの次第でどういうものにもなるのだから」
それだけ言った少年の手のひらからなにか暖かい波動のようなものを感じた。
どこか優しくて……懐かしい感じに包まれていく。
それが収まった時、俺は自分の中に何かが宿ったようなそんな気がした。
頭の中に自分がどんな力を受け取ったのか、そういう知識が流れ込んで……全てが終わると少年の姿はだんだんと薄くなっていく。
「お、おい! ちょっと待ってくれ! まだ聞きたいことが……」
「……残念だが、これ以上はここで君と話すことは出来ないようだ。
だからこそ……人の子、我が子よ。
決して誰かに甘えること無く己の耳で聞き、目を開いて真実を見定めなさい。
それが君の進む歴史となり、新たな一歩となるだろう」
ゆっくりと首を横に振って、少年はそのまま消えてしまって……俺の意識も再び黒く染まっていく。
そしてそのまま白い世界は遠ざかっていって、その不思議な少年との邂逅は終わってしまった……。
そこには地面も空もなくて……あるのはただ真っ白な世界だけで、まるで俺一人だけ取り残されたような……世界から切り離されたような気がするほどだった。
自分で『目を覚ました』と思っているのに、ここがまだ『夢の中』であることがはっきりと分かる……そんな不思議な空間だった。
俺は……どうなったんだろう?
くずはを担いで、死にもの狂いで適当な場所を走って……途中で力尽きたことは覚えてる。
一応町に向かうように進んでいったはずなんだけど、意識を失った時はまだ森というかどこかの道だったはずだ。
俺は一体どこにいる? くずははどうなった?
「……ているか?」
「え?」
今、ほんの少しだけ誰かの声が聞こえてきた気がした。
男の……どこか偉大さを感じさせる少し低い声。
キョロキョロと辺りを見回してみたんだけど、一体どこにいるんだろう? こうも白い世界じゃなにをどう探していいかすらわからない。
「き……るか?」
「なんだ? どこにいる?」
声が気になって歩こうとしたんだけど、こんななにもない場所のどこをどう歩いていけばいいのかさえわからない。
「聞こえているか?」
はっきりと聞こえた瞬間、後ろに何かしらの気配を感じて……振り向くと金髪で透き通るような蒼い瞳をしている少年。
いつの間にか俺の後ろにいたこの少年は、やたらと神々しいといえばいいのだろうか……少なくともどこかの王様のよりも威厳があるように見える。
「……どうやら見えてるみたいだな」
「あんたは、一体?」
「その質問には何の意味もないな。
私に名はない。そして……君たちの歴史に私はいないのだから」
どうにも要領を得ない返答を貰ったが、それが余計に怪しさを掻き立てる。
だけどそれを補ってあまりあるほどの存在感といえばいいのだろうか……神秘的な雰囲気を感んじて、素直にその言葉が染み込んでいくのがわかる。
「じゃあ、そのいなくなった人? が俺になんのようなんだ?」
「この時代で、私の声が聞ける者にようやく出会うことが出来た。
だが……君が最後になるかもしれないだろう」
俺の質問には答えず、この少年はまず自分の言い分から先に話し始める。
それに時代とか歴史とか……どうにもずっとこの世界を見続けているような、そんな言い方をしている。
「……最後になる?」
「もうすぐ、君たちも私も、全て飲み込まれてしまうだろう。
世界は彼らの思う通りに動き、歴史は一から創造されることになる」
「彼ら?」
どうもこの少年の言ってることは不明瞭だ……というか俺にはよくわからない。
ただ、なんとなく憂いていることがわかることくらいか。
「そう、異邦の者は力を手に入れ、世界を簒奪する。
既に君たちも、その影響を受けているんだよ」
「……あんたは、何を言っている?」
「言葉通りの意味だ。君は勇者と呼ばれている存在に疑問を持ったことはないかい?
彼らの中には粗暴でとてもではないが、君の思っている高潔ではない者も多かったはずだ。
それなのに、なぜそれらは歴史の中で崇められている?」
少年の質問に、俺は自分の心中が言い当てられてるような気がした。
ヘンリーとかはともかく、カーターやヘルガのような勇者がいたってことは少なくとも昔もそういう勇者がいたはずだ。
それはジパーニグの貴族たちを見てもそう感じる。
特権階級にまで成り上がった彼らは、本当に勇気のある者として困難に打ち勝ってきたのだろうか?
それに……魔方陣を使うのは魔人たちだけだったはずだ。
それなのに、いざ蓋を開けてみれば勇者どころか普通の兵士たちでさえ怪しい行動を取っている。
おまけにあの銃とかいう武器……あんなもの、今まで見たこともなかった。
ジパーニグにいる兵士たちだって普段俺たちが見慣れている武器を持っていたはずだ。
「その異邦の者って奴らが、俺たちになにかしてるって……そういうことか?」
「真実は君の目で確かめるといい。
そして……もし、君が誰かを守りたいと強く望むのならば、その為の力を与えよう」
「……力」
「それを使いこなすかどうか……それは君次第だ。
力とは所詮、使うもの次第でどういうものにもなるのだから」
それだけ言った少年の手のひらからなにか暖かい波動のようなものを感じた。
どこか優しくて……懐かしい感じに包まれていく。
それが収まった時、俺は自分の中に何かが宿ったようなそんな気がした。
頭の中に自分がどんな力を受け取ったのか、そういう知識が流れ込んで……全てが終わると少年の姿はだんだんと薄くなっていく。
「お、おい! ちょっと待ってくれ! まだ聞きたいことが……」
「……残念だが、これ以上はここで君と話すことは出来ないようだ。
だからこそ……人の子、我が子よ。
決して誰かに甘えること無く己の耳で聞き、目を開いて真実を見定めなさい。
それが君の進む歴史となり、新たな一歩となるだろう」
ゆっくりと首を横に振って、少年はそのまま消えてしまって……俺の意識も再び黒く染まっていく。
そしてそのまま白い世界は遠ざかっていって、その不思議な少年との邂逅は終わってしまった……。
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