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第十三節 銀狼騎士団・始動編
第243幕 ゴーレムとの戦いの後
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なんとかシアロル軍を退けた後、俺たちは近くにある町にまで一度後退し、体勢を整えることにした。
あの場でしばらく様子を見るのも有りだったのだが、ゴーレムのせいで兵士たちも大分疲弊していて、少しでも心休まる場所に移動したほうがいいだろうというシグゼスの配慮だった。
町に戻ってすぐに行われたのは宴。兵士全員が近場の酒場で飲んでは食っての大騒ぎだった。
……本当はもう少ししっかりと警戒したほうが良いのだろうが、先の戦いで散っていった兵士たちへの哀悼の意も含めて、なんて言われたら否定することなんて出来なかった。
「奴らも涙や悲しみに暮れて別れを告げられるより、笑いながら思い出を語ってやったほうが嬉しいだろう。死んだ者が未練を残さずにまっすぐ逝けるようにするのは生きている者の使命だ」
そう言っていたシグゼスの言葉は、妙に納得できるものがあった。
彼自身、遺品を回収していたし、死者を悼む気持ちは俺たちの中でもかなり強い方だろう。
俺は……どうなのかな? この手で数え切れないほど人や魔物を殺めてきたには、シグゼスのような考え方は自力では到底考えもつかなかったろう。
戦うということは死を恐れないということだ。それはつまり死に対して鈍感になるということだ。
顔や性格すらロクに知らないとはいえ、先ほどまで共に戦った者の死を悼むことが出来ないほど、血に濡れてきた現実を突きつけられた気分になる。
……これがもしエセルカやシエラといった、自分がよく知る人物だったらこうは思わないだろう。
我ながら乾いてるなと感じてる時、ふいに誰かに軽く肩を叩かれた。
「飲んでいるか?」
声をする方に顔を向けると、そこにいたのはシグゼスとカッシェの二人だった。
「え――ああ、それなりにな」
「だったらもうちょっと楽しそうにしろよー! いなくなった奴らの分まで飲んで騒いで勝利を喜ぶ。指揮官殿もそう言っていただろー?」
結構酒が入ってるのか、それともこちらが素の状態なのかはわからないが、カッシェは文句を言いながら俺と向かい合うように腰を下ろした。
「誰も彼もが貴様のように騒げるわけではない。そうであろう? グレファよ」
苦笑いしながらカッシェの横に座ったシグゼスの顔もほんのり赤い。彼の方もそれなりに楽しめてるようだ。
「ああ。俺も十分楽しめてるさ。ただ……こういう風にするのは初めてだからな。どうにも、な」
「辛気臭いなー、もうちょっと俺を見習えよな!」
「カッシェさーん! こっちで一緒に飲みませんかー?」
「おう! 今行くぞー!」
大声で笑ってそのまま別の集団に混ざってしまったカッシェは、馬鹿騒ぎをしてるようだった。
「全く、奴は少々羽目を外しすぎだ。酔いが回りすぎて、次の日に後悔するタイプだな」
「記憶が残ってなくてよく思い出せないオチかもな」
「ははっ、そうかもな」
その光景をなんとなく遠巻きに眺めながら、俺とシグゼスは互いに杯を交わした。
「……こうしていると昔を思い出す」
シグゼスは遠巻きにカッシェやロンドを見ながらぽつりと呟いた。
その言葉にはどこか歴史を感じさせる。
「昔はカッシェたちみたいに騒いでたのか?」
「ああ。私も子どもの頃は色々とバカをやった。口にするのも恥ずかしい歴史だがな」
自嘲するように鼻で笑ったシグゼスはゆっくりと酒を飲んでいた。
恥ずかしいと言いながらも、彼はどこか誇らしげな表情している。
「衛兵に捕まった私を助けてくださったのは他でもない、ミルティナ女王陛下だった。悪さばかりをしていた私をあの御方は優しく微笑み、許してくださった。あの時に頂いた言葉は、私の何よりも大切な宝だ」
「それで銀狼騎士団に入った、と?」
「若気の至りが結果的にこの道を歩ませてくれた。あの御方は……十年前から一切変わらない。他の者はなんと言おうが、美しい魂のままだ」
余計なことまで話し続けたシグゼスは、それまで少しずつ飲んでいた酒を一気に飲んでしまって立ち上がった。
「つい自分語りをしてしまったな。私も酔いが回ってきたようだ」
「中々面白かった。貴方の事が少しわかった気がするよ」
「はっはっはっ、貴様も十分に楽しめよ。先の戦で散っていった者たちと飲める最後の酒だ。貴様はあまり思い入れがないであろう。だが、我らと共に駆け抜けた戦友の姿……それを少しでも思い出してくれるならば、彼らも報われるだろう」
そのまま片手を上げて去っていく彼はどこかキザっぽかったが、それは言わないでおく。
最初はただの女王陛下好き……というか、そういう容姿が好みなのかとも思ったのだが、そうではなさそうだ。
……一瞬、エセルカの事が頭に浮かんだけど、一応俺は正常のはずだ。正直彼女には立派な女性として成長してほしいと思っているしな。
それからも宴は続き、俺たちは束の間の安らぎを得ていた。ジパーニグ・アリッカル・シアロルと三つの国が攻めてきたということは他の国も侵攻してくる可能性が十分にある。
だからこその休息だったのだが――それから数日。一度首都へと戻った俺たちは、イギランスが侵攻してきていたという話を聞くことになった。
シアロルの進軍と同時期に行われたそれは、見事に防ぐことが出来たそうだ。
俺たちとは違い、事前にゴーレムの情報を得られたおかげで初手から銀狼騎士団を投入して事なきを得た……という話だったが、一体どうやってそれを知ることが出来たんだろうか……?
あの場でしばらく様子を見るのも有りだったのだが、ゴーレムのせいで兵士たちも大分疲弊していて、少しでも心休まる場所に移動したほうがいいだろうというシグゼスの配慮だった。
町に戻ってすぐに行われたのは宴。兵士全員が近場の酒場で飲んでは食っての大騒ぎだった。
……本当はもう少ししっかりと警戒したほうが良いのだろうが、先の戦いで散っていった兵士たちへの哀悼の意も含めて、なんて言われたら否定することなんて出来なかった。
「奴らも涙や悲しみに暮れて別れを告げられるより、笑いながら思い出を語ってやったほうが嬉しいだろう。死んだ者が未練を残さずにまっすぐ逝けるようにするのは生きている者の使命だ」
そう言っていたシグゼスの言葉は、妙に納得できるものがあった。
彼自身、遺品を回収していたし、死者を悼む気持ちは俺たちの中でもかなり強い方だろう。
俺は……どうなのかな? この手で数え切れないほど人や魔物を殺めてきたには、シグゼスのような考え方は自力では到底考えもつかなかったろう。
戦うということは死を恐れないということだ。それはつまり死に対して鈍感になるということだ。
顔や性格すらロクに知らないとはいえ、先ほどまで共に戦った者の死を悼むことが出来ないほど、血に濡れてきた現実を突きつけられた気分になる。
……これがもしエセルカやシエラといった、自分がよく知る人物だったらこうは思わないだろう。
我ながら乾いてるなと感じてる時、ふいに誰かに軽く肩を叩かれた。
「飲んでいるか?」
声をする方に顔を向けると、そこにいたのはシグゼスとカッシェの二人だった。
「え――ああ、それなりにな」
「だったらもうちょっと楽しそうにしろよー! いなくなった奴らの分まで飲んで騒いで勝利を喜ぶ。指揮官殿もそう言っていただろー?」
結構酒が入ってるのか、それともこちらが素の状態なのかはわからないが、カッシェは文句を言いながら俺と向かい合うように腰を下ろした。
「誰も彼もが貴様のように騒げるわけではない。そうであろう? グレファよ」
苦笑いしながらカッシェの横に座ったシグゼスの顔もほんのり赤い。彼の方もそれなりに楽しめてるようだ。
「ああ。俺も十分楽しめてるさ。ただ……こういう風にするのは初めてだからな。どうにも、な」
「辛気臭いなー、もうちょっと俺を見習えよな!」
「カッシェさーん! こっちで一緒に飲みませんかー?」
「おう! 今行くぞー!」
大声で笑ってそのまま別の集団に混ざってしまったカッシェは、馬鹿騒ぎをしてるようだった。
「全く、奴は少々羽目を外しすぎだ。酔いが回りすぎて、次の日に後悔するタイプだな」
「記憶が残ってなくてよく思い出せないオチかもな」
「ははっ、そうかもな」
その光景をなんとなく遠巻きに眺めながら、俺とシグゼスは互いに杯を交わした。
「……こうしていると昔を思い出す」
シグゼスは遠巻きにカッシェやロンドを見ながらぽつりと呟いた。
その言葉にはどこか歴史を感じさせる。
「昔はカッシェたちみたいに騒いでたのか?」
「ああ。私も子どもの頃は色々とバカをやった。口にするのも恥ずかしい歴史だがな」
自嘲するように鼻で笑ったシグゼスはゆっくりと酒を飲んでいた。
恥ずかしいと言いながらも、彼はどこか誇らしげな表情している。
「衛兵に捕まった私を助けてくださったのは他でもない、ミルティナ女王陛下だった。悪さばかりをしていた私をあの御方は優しく微笑み、許してくださった。あの時に頂いた言葉は、私の何よりも大切な宝だ」
「それで銀狼騎士団に入った、と?」
「若気の至りが結果的にこの道を歩ませてくれた。あの御方は……十年前から一切変わらない。他の者はなんと言おうが、美しい魂のままだ」
余計なことまで話し続けたシグゼスは、それまで少しずつ飲んでいた酒を一気に飲んでしまって立ち上がった。
「つい自分語りをしてしまったな。私も酔いが回ってきたようだ」
「中々面白かった。貴方の事が少しわかった気がするよ」
「はっはっはっ、貴様も十分に楽しめよ。先の戦で散っていった者たちと飲める最後の酒だ。貴様はあまり思い入れがないであろう。だが、我らと共に駆け抜けた戦友の姿……それを少しでも思い出してくれるならば、彼らも報われるだろう」
そのまま片手を上げて去っていく彼はどこかキザっぽかったが、それは言わないでおく。
最初はただの女王陛下好き……というか、そういう容姿が好みなのかとも思ったのだが、そうではなさそうだ。
……一瞬、エセルカの事が頭に浮かんだけど、一応俺は正常のはずだ。正直彼女には立派な女性として成長してほしいと思っているしな。
それからも宴は続き、俺たちは束の間の安らぎを得ていた。ジパーニグ・アリッカル・シアロルと三つの国が攻めてきたということは他の国も侵攻してくる可能性が十分にある。
だからこその休息だったのだが――それから数日。一度首都へと戻った俺たちは、イギランスが侵攻してきていたという話を聞くことになった。
シアロルの進軍と同時期に行われたそれは、見事に防ぐことが出来たそうだ。
俺たちとは違い、事前にゴーレムの情報を得られたおかげで初手から銀狼騎士団を投入して事なきを得た……という話だったが、一体どうやってそれを知ることが出来たんだろうか……?
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