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150・戦いの鼓動
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魔王祭もいよいよ後半に差し掛かり、決闘はどんどん激化していった。それに合わせてフィールドの整備や、戦いの度に決闘官が張っている結界で消耗する魔力の回復を待つ為の時間も増えていく。
せっかくの魔王祭なのだから、もっと決闘官を動員すればいいのに……とも思ったんだけれど、どうやらそう単純なことでもないらしい。
私がハクロとした魔導戦に使う結界具を使える人はいても、魔王祭でガルドラが使っているようなあらゆる致命傷を一度だけ無効化する結界具を使える人は少ないのだとか。
魔導の完全防御と事実改変の違いらしいけれど、少なくとも私が決闘した時に派遣されてきた決闘官の中には使える人はいないらしい。
それだけでもガルドラがかなり高位の決闘官である事がわかる。必然的に決闘委員会の戦力としても数えられる為、魔王祭に派遣する人数に限りが出てくるのだとか。
「ティアちゃん、そろそろ始まるみたいだよ」
隣でリュネーが興奮した声で会場を見ていた。まだ誰も来てないのに、今か今かと待っている彼女には苦笑いしか起こらない。こういう事はあまり好きじゃない子だと思ってたんだけれど……どうやら私の思い違いだったみたいだ。
『お祭り騒ぎの続く魔王祭も、少しずつ終わりが見え始めてきましたねー。あたしも少し寂しいけど、最後まで頑張って実況するから、みんなよろしくねー!』
シューリアの声に観客席から歓声が上がる。彼女の方も相変わらずのようだ。
『今回の決闘は――え? 嘘……』
いつもの調子で今日行われる最初の決闘を確認したシューリアは、大体笑顔を浮かべてる彼女のイメージらしくない驚いた顔を浮かべていた。その様子からするとかなり信じられない内容なんだろう。
『えっと、ガルちゃん、これ本当?』
『当たり前だ。今回の決闘――初戦はアルフ・ジェンドと雪雨 出雲だ』
ガルドラ決闘官の言葉に、周囲にも動揺が走る。アルフは黒竜人族として最強と呼んでもおかしくない実力者。そして雪雨は鬼人族の中でかなり期待されている戦いの化身。その二人のぶつかり合いを見る事ができる。興奮しない方がおかしいというものだろう。
『これ、これは凄いことになったよ! うわー、事実上の決勝戦! これに匹敵するのって、ベルンくんとこの二人の決闘くらいしかないんじゃないかな!?』
シューリアも興奮のあまり、いつもの口調が完全に崩れてしまっていた。それだけこの決闘が熱いって事が伝わってくる。唯一ガルドラだけが普通とあまり変わらない。決闘官というのは、こういう面でも強くないといけないのかも。
『あー、こほん。失礼しました! それでは、早速お二人に入場してもらいましょー!』
軽く咳払いしたシューリアの入場宣言に、二人ともゆっくりと会場の中に入る。そこで目を引いたのは―― 雪雨が背負ってる『金剛覇刀』だった。
「おいあれ……」
「初めて見るな。あんなの持ってたっけ?」
私達の近くで観ていた人達がそんな事を話しているけれど、無理もない。雪雨は魔王祭で戦っている間、一度もあの大刀を使わなかった。
……というより、使う必要がなかった。彼の決闘だけわざと弱い相手を当ててるんじゃないかと思うほど実力差がありすぎたからね。私と決闘してからも鍛錬を重ねていた彼の敵ではなかった。
その分、彼の心には鬱憤が溜まっていたのだろう。上の方の板――確かフォルスはモニターって言っていたっけ――には好戦的な笑顔でギラギラとした殺気を纏わせている彼の姿が映し出されていた。
『へえ、他の決闘の時と違って、随分気力に満ちてるんだね。自信があるっていうのかな。僕と戦えるのが嬉しいってことかな?』
対するアルフの方は、レイアの時と同じように相手を挑発するような言動をしていた。あくまで柔らかく、笑顔を保っているところがレイアの感に障ったのか、イライラと不機嫌なオーラが隣から伝わってくるようだ。
『当たり前だろう。待ちに待った強い奴と戦えるんだ。嬉しくない訳がない』
『そっか。それなら国に帰ったら自慢するといいよ。この僕と戦えた事にね』
『ああ、そりゃあ無理だな。お前程度と戦えたって、自慢にも何にもなりゃしねえ。圧倒的に強くなってから出直してこいよ』
『お互いに舌戦を繰り広げてるけど、大丈夫? まだ決闘は始まってませんよー!』
『ふっ、若いうちは血気盛んでなくてはな』
『ガルちゃん、ちょっとジジくさい……』
アルフと雪雨が激しく火花を散らしている最中に、シューリアとガルドラも別の意味で揉めていた。
「あの二人、仲良さそうだよね」
「そうかな?」
私を間に挟んでリュネーとレイアが話している最中に準備が整ったのだろう。ガルドラが結界具を発動させていた。
周囲を包んでいく結界の中に入ると、今すぐにでも決闘を始めそうな雰囲気があの二人から漂い始める。
『それでは二人とも、死力を尽くせ。決闘……開始!』
弾けるように飛び出したのは雪雨の方で、後から遅れるようにアルフが動き出した。
余程今までの戦いに不満があったのか、一気に解放された雪雨の動きには目を見張るものがある。
これを機に、私と戦って以降の本気の彼をじっくり見せてもらうとしようか。
せっかくの魔王祭なのだから、もっと決闘官を動員すればいいのに……とも思ったんだけれど、どうやらそう単純なことでもないらしい。
私がハクロとした魔導戦に使う結界具を使える人はいても、魔王祭でガルドラが使っているようなあらゆる致命傷を一度だけ無効化する結界具を使える人は少ないのだとか。
魔導の完全防御と事実改変の違いらしいけれど、少なくとも私が決闘した時に派遣されてきた決闘官の中には使える人はいないらしい。
それだけでもガルドラがかなり高位の決闘官である事がわかる。必然的に決闘委員会の戦力としても数えられる為、魔王祭に派遣する人数に限りが出てくるのだとか。
「ティアちゃん、そろそろ始まるみたいだよ」
隣でリュネーが興奮した声で会場を見ていた。まだ誰も来てないのに、今か今かと待っている彼女には苦笑いしか起こらない。こういう事はあまり好きじゃない子だと思ってたんだけれど……どうやら私の思い違いだったみたいだ。
『お祭り騒ぎの続く魔王祭も、少しずつ終わりが見え始めてきましたねー。あたしも少し寂しいけど、最後まで頑張って実況するから、みんなよろしくねー!』
シューリアの声に観客席から歓声が上がる。彼女の方も相変わらずのようだ。
『今回の決闘は――え? 嘘……』
いつもの調子で今日行われる最初の決闘を確認したシューリアは、大体笑顔を浮かべてる彼女のイメージらしくない驚いた顔を浮かべていた。その様子からするとかなり信じられない内容なんだろう。
『えっと、ガルちゃん、これ本当?』
『当たり前だ。今回の決闘――初戦はアルフ・ジェンドと雪雨 出雲だ』
ガルドラ決闘官の言葉に、周囲にも動揺が走る。アルフは黒竜人族として最強と呼んでもおかしくない実力者。そして雪雨は鬼人族の中でかなり期待されている戦いの化身。その二人のぶつかり合いを見る事ができる。興奮しない方がおかしいというものだろう。
『これ、これは凄いことになったよ! うわー、事実上の決勝戦! これに匹敵するのって、ベルンくんとこの二人の決闘くらいしかないんじゃないかな!?』
シューリアも興奮のあまり、いつもの口調が完全に崩れてしまっていた。それだけこの決闘が熱いって事が伝わってくる。唯一ガルドラだけが普通とあまり変わらない。決闘官というのは、こういう面でも強くないといけないのかも。
『あー、こほん。失礼しました! それでは、早速お二人に入場してもらいましょー!』
軽く咳払いしたシューリアの入場宣言に、二人ともゆっくりと会場の中に入る。そこで目を引いたのは―― 雪雨が背負ってる『金剛覇刀』だった。
「おいあれ……」
「初めて見るな。あんなの持ってたっけ?」
私達の近くで観ていた人達がそんな事を話しているけれど、無理もない。雪雨は魔王祭で戦っている間、一度もあの大刀を使わなかった。
……というより、使う必要がなかった。彼の決闘だけわざと弱い相手を当ててるんじゃないかと思うほど実力差がありすぎたからね。私と決闘してからも鍛錬を重ねていた彼の敵ではなかった。
その分、彼の心には鬱憤が溜まっていたのだろう。上の方の板――確かフォルスはモニターって言っていたっけ――には好戦的な笑顔でギラギラとした殺気を纏わせている彼の姿が映し出されていた。
『へえ、他の決闘の時と違って、随分気力に満ちてるんだね。自信があるっていうのかな。僕と戦えるのが嬉しいってことかな?』
対するアルフの方は、レイアの時と同じように相手を挑発するような言動をしていた。あくまで柔らかく、笑顔を保っているところがレイアの感に障ったのか、イライラと不機嫌なオーラが隣から伝わってくるようだ。
『当たり前だろう。待ちに待った強い奴と戦えるんだ。嬉しくない訳がない』
『そっか。それなら国に帰ったら自慢するといいよ。この僕と戦えた事にね』
『ああ、そりゃあ無理だな。お前程度と戦えたって、自慢にも何にもなりゃしねえ。圧倒的に強くなってから出直してこいよ』
『お互いに舌戦を繰り広げてるけど、大丈夫? まだ決闘は始まってませんよー!』
『ふっ、若いうちは血気盛んでなくてはな』
『ガルちゃん、ちょっとジジくさい……』
アルフと雪雨が激しく火花を散らしている最中に、シューリアとガルドラも別の意味で揉めていた。
「あの二人、仲良さそうだよね」
「そうかな?」
私を間に挟んでリュネーとレイアが話している最中に準備が整ったのだろう。ガルドラが結界具を発動させていた。
周囲を包んでいく結界の中に入ると、今すぐにでも決闘を始めそうな雰囲気があの二人から漂い始める。
『それでは二人とも、死力を尽くせ。決闘……開始!』
弾けるように飛び出したのは雪雨の方で、後から遅れるようにアルフが動き出した。
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