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255・子孫達の戦い
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悪魔族の男に、他の連中と同じように【インシネレーション】で焼かれる苦しみを味合わせた後、私は更に先へと進んでいった。
しばらく進むと……兵士達を護衛につけたアルティーナが、イライラとした様子で待っていた。
兵士達の顔を見ると、疲れ切った様子がはっきりと見て取れる。
というか、結構接近しているはずなのに、全然気付いていない。これでは奇襲してくれと言っているようなものだろう。
それほどあの大軍の兵士達を信じているのだろうけど……完全に慢心していると言ってもいい。
そんな事を考えているうちに、私の接近にようやく気付いたアルティーナは、驚愕の表情を浮かべていた。
「エールティア……さん。どうして……」
「決まっているでしょう。全て倒して来たのよ」
まあ、それは流石に嘘なのだけれど、どうせ可能だからそのまま押し切る事にした。
「信じられない……! 色んなところから掻き集めて一万よ!? それが……!」
「私達は聖黒族。初代魔王様の血を引いた種族が、たかだかその程度の戦力でどうにかなると思っていたの? 考えが浅はかね」
「黙りなさい!」
無駄に強気な一喝を浴びせて来たけれど、精一杯声を張り上げているだけの子供にしか見えない。
怒りの混ざった表情で、お飾りの杖を振り回して、私に突きつける。
「兵士達、あの子を捕らえなさい。どんな手を使っても!!」
『はっ!!』
剣を抜いた兵士達が一斉に襲いかかって来た。判断は良いし、一人で向かってくるよりずっとマシだ。
だけど、それだけだ。軽くかわして足下を掬っただけで転がるし、剣を振り切る前に更に距離を詰めて格闘戦の距離まで詰めて、顔面を殴る……そんな感じだ。
正直、魔導を使う必要すら見出せない。
「ちっ……やってくれるわね! 【フレアブラスター】!」
「【カラフルリフレクション】」
驚いたまま、慌てて攻勢を移ったけれど、その程度が防げない道理がない。
必要最低限の魔力で迎撃して、そのまま距離を詰めて至近距離まで迫る。動揺しているアルティーナにはそれだけで十分だったのだけれど――
「させません」
アルティーナの背後から突如現れ、私に斬撃を放つ者の存在がいた。
「……フラウス、と言ったわね」
「覚えていただけているのは光栄です」
短剣を器用に操って、次々と斬撃を放つフラウスが鬱陶しくなり、一旦仕切り直す事にした。
強引に押し通ることも考えたけれど、一応相手は聖黒族だ。警戒するに越したことはないだろう。
アルティーナを守るように立ち塞がるフラウスは、私の様子を伺っているようだった。
見たところ、隙らしい隙はまるで感じられない。かなり訓練を積んでいるのだろう。彼がリュネーやレイア達と出会っていたら……考えるだけでゾッとする。
「フラウス。エールティアさんの動きを止めなさい」
「かしこまりました」
アルティーナの命令で、まっすぐ襲いかかってきたフラウスは、一瞬で体勢を低くして、下から上に斬りあげるように短剣を振るった。
それを最低限の動作で避けると、そのままアルティーナが炎の矢を模した魔導を発動させる。もう一度【カラフルリフレクション】で弾き返そうとすると、今度はフラウスが刃を振るっている。
「なるほど。連携は良いみたいね」
「お褒めに預かり、光栄……です!」
「余所見をしていていいのかしら? 【アイスコール】!」
降り注ぐ氷の雨の中、フラウスは器用に避けながら近づいてくる。確かに連携は上手い。交互に、同時に、時間差でとあらゆる攻撃を仕掛けてくる。
時折フラウスが魔導を混ぜてくるあたり、自分達の動きに慣れさせない為でもあるのだろう。
起点となるのはアルティーナは、フラウスを巻き込まないように魔導に強弱を付けていて、自身に近づけさせないように徹底している。
ここまで上手に魔導を扱うのは、流石聖黒族と言えるだろう。
相手が私じゃなければ、楽に勝つことも出来ただろう。残念だけど、どちらかが潰れるこの決闘に負けてあげる訳にはいかない。
「【プロトンサンダー】」
遠慮なしに放たれた魔導は、その範囲にいるもの全てを蹂躙するかのような雷の光線を解き放つ。
二人は咄嗟に防御系の魔導を発動していたようだけど…….そんなのは無意味だ。
「【エアルヴェ・シュネイス】」
片手で【プロトンサンダー】の発動をコントロールしながら、片手で更に魔導を解き放つ。ひび割れた空から差し込む破滅の光は、全てを白く染め上げる。そこに私以外の例外は存在しない。
音も、色も、存在さえも白に包まれて――そして、そのまま消えていってしまった。
全ての力が集約して、収まったそこには、大きなクレーターしかなくて……アルティーナもフラウスも消し飛んでしまった。
「……自業自得ね。これが、貴女が望んだ結末よ」
散々人を振り回して、あんな決闘状を送りつけた。それだけでも十分怒りが込み上げてくるのに、悪魔族の【偽物変化】であんな真似までしでかしてくれた。
もはや、万死に値すると言っても過言じゃない。
なんにせよ、これで決闘は終わり。ようやく……新しい一歩が踏み出せた。
しばらく進むと……兵士達を護衛につけたアルティーナが、イライラとした様子で待っていた。
兵士達の顔を見ると、疲れ切った様子がはっきりと見て取れる。
というか、結構接近しているはずなのに、全然気付いていない。これでは奇襲してくれと言っているようなものだろう。
それほどあの大軍の兵士達を信じているのだろうけど……完全に慢心していると言ってもいい。
そんな事を考えているうちに、私の接近にようやく気付いたアルティーナは、驚愕の表情を浮かべていた。
「エールティア……さん。どうして……」
「決まっているでしょう。全て倒して来たのよ」
まあ、それは流石に嘘なのだけれど、どうせ可能だからそのまま押し切る事にした。
「信じられない……! 色んなところから掻き集めて一万よ!? それが……!」
「私達は聖黒族。初代魔王様の血を引いた種族が、たかだかその程度の戦力でどうにかなると思っていたの? 考えが浅はかね」
「黙りなさい!」
無駄に強気な一喝を浴びせて来たけれど、精一杯声を張り上げているだけの子供にしか見えない。
怒りの混ざった表情で、お飾りの杖を振り回して、私に突きつける。
「兵士達、あの子を捕らえなさい。どんな手を使っても!!」
『はっ!!』
剣を抜いた兵士達が一斉に襲いかかって来た。判断は良いし、一人で向かってくるよりずっとマシだ。
だけど、それだけだ。軽くかわして足下を掬っただけで転がるし、剣を振り切る前に更に距離を詰めて格闘戦の距離まで詰めて、顔面を殴る……そんな感じだ。
正直、魔導を使う必要すら見出せない。
「ちっ……やってくれるわね! 【フレアブラスター】!」
「【カラフルリフレクション】」
驚いたまま、慌てて攻勢を移ったけれど、その程度が防げない道理がない。
必要最低限の魔力で迎撃して、そのまま距離を詰めて至近距離まで迫る。動揺しているアルティーナにはそれだけで十分だったのだけれど――
「させません」
アルティーナの背後から突如現れ、私に斬撃を放つ者の存在がいた。
「……フラウス、と言ったわね」
「覚えていただけているのは光栄です」
短剣を器用に操って、次々と斬撃を放つフラウスが鬱陶しくなり、一旦仕切り直す事にした。
強引に押し通ることも考えたけれど、一応相手は聖黒族だ。警戒するに越したことはないだろう。
アルティーナを守るように立ち塞がるフラウスは、私の様子を伺っているようだった。
見たところ、隙らしい隙はまるで感じられない。かなり訓練を積んでいるのだろう。彼がリュネーやレイア達と出会っていたら……考えるだけでゾッとする。
「フラウス。エールティアさんの動きを止めなさい」
「かしこまりました」
アルティーナの命令で、まっすぐ襲いかかってきたフラウスは、一瞬で体勢を低くして、下から上に斬りあげるように短剣を振るった。
それを最低限の動作で避けると、そのままアルティーナが炎の矢を模した魔導を発動させる。もう一度【カラフルリフレクション】で弾き返そうとすると、今度はフラウスが刃を振るっている。
「なるほど。連携は良いみたいね」
「お褒めに預かり、光栄……です!」
「余所見をしていていいのかしら? 【アイスコール】!」
降り注ぐ氷の雨の中、フラウスは器用に避けながら近づいてくる。確かに連携は上手い。交互に、同時に、時間差でとあらゆる攻撃を仕掛けてくる。
時折フラウスが魔導を混ぜてくるあたり、自分達の動きに慣れさせない為でもあるのだろう。
起点となるのはアルティーナは、フラウスを巻き込まないように魔導に強弱を付けていて、自身に近づけさせないように徹底している。
ここまで上手に魔導を扱うのは、流石聖黒族と言えるだろう。
相手が私じゃなければ、楽に勝つことも出来ただろう。残念だけど、どちらかが潰れるこの決闘に負けてあげる訳にはいかない。
「【プロトンサンダー】」
遠慮なしに放たれた魔導は、その範囲にいるもの全てを蹂躙するかのような雷の光線を解き放つ。
二人は咄嗟に防御系の魔導を発動していたようだけど…….そんなのは無意味だ。
「【エアルヴェ・シュネイス】」
片手で【プロトンサンダー】の発動をコントロールしながら、片手で更に魔導を解き放つ。ひび割れた空から差し込む破滅の光は、全てを白く染め上げる。そこに私以外の例外は存在しない。
音も、色も、存在さえも白に包まれて――そして、そのまま消えていってしまった。
全ての力が集約して、収まったそこには、大きなクレーターしかなくて……アルティーナもフラウスも消し飛んでしまった。
「……自業自得ね。これが、貴女が望んだ結末よ」
散々人を振り回して、あんな決闘状を送りつけた。それだけでも十分怒りが込み上げてくるのに、悪魔族の【偽物変化】であんな真似までしでかしてくれた。
もはや、万死に値すると言っても過言じゃない。
なんにせよ、これで決闘は終わり。ようやく……新しい一歩が踏み出せた。
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