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324・待ち焦がれし者
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ローランと図書館で話した次の日。最後の決闘に臨む為、闘技場の通路で出番を待っていた。
いよいよ魔王祭の優勝が決まる――。
それを一目見るために、会場は満席な上に人で溢れる程だった。ここまで盛り上がっているのは、私とファリスの決闘だから……というのも少なからず関係あるだろう。
『こんなに人が多いなんて、凄いよねー。去年よりも盛り上がってるんじゃないかなー?』
『去年は決勝をせずにそのまま優勝者が決定したのも要因の一つだろう。勝ち上がった者も、どちらが優勝してもおかしくない猛者達だからな』
『くふふ、ワタシも楽しみにしてますよ。この二人の戦いは見物ですからね』
妙に期待感を高めているけれど、まさか前回の魔王祭の結果が響いてくるとは思ってもみなかった。
あんな事になったのは私が原因でもあるわけだし、なんだか申し訳なくなってくる。
『それでは、いよいよ入場しますよ! エールティア選手とファリス選手です!! どうぞ!!』
呼ばれて、堂々とした立ち居振る舞いで闘技場に入った私とは違い、軽やかなステップを踏んでファリスは来場した。その様子はまるで待ち望んでいた戦いをようやく行える――。
初めて買ってもらった玩具を楽しみにしているような節が見える。
「ふふ、ふふふ、ようやく戦えるんだね。この日をずっと楽しみにしてたよ」
「……ファリス」
彼女には聞きたいことがいっぱいある。ローラン以上に色々な情報をもっているのは、恐らくファリスだけだろう。
……まあ、だからといって簡単に教えてくれるとは思わなかったけれどね。
いつもとは明らかに違った様子で、ファリスは笑顔で軽やかなステップを踏んでいた。楽しそうに踊りながら私の方に視線を向けているところ。
「……随分と機嫌がいいのね」
「ふふ、当然じゃない。ようやく……待ち望んだあなたと戦えるんだもの。凄く、すっごく嬉しいの」
両手をポンと叩いて、嬉しそうにしているファリスは、どれだけこの日を待ち望んでいたか……それが良く伝わってきた。
『……よし、結界の準備は整った。いつでも始められるぞ』
『準備は整いましたね! それでは……魔王祭も最終戦! 最後に笑うのは誰か……しかとその目に焼き付けなさい! 決闘――開始!!』
物凄くノリノリな声と同時に放たれた決闘開始の一言。
それと同時に全身が結界具の効果に包まれるのがわかる。流石ガルドラ決闘官と言うべきだろう。
決闘開始と力強く宣言されたけれど……いざ始まってまず最初にした事は互いの様子を伺う事だった。
『二人共全く動かないけど……どうしたんだろう?』
『実力が近しい者同士、どう攻めるか考えているのだろう。相手がどう動けば、自分は――とな』
ガルドラの言う通り、頭の中でファリスの戦い方を思考して動こうとしている。それは彼女も同じ、ということだろう。
とはいえ、このままでは埒があかない。なら――
『ああっと!? 先に仕掛けたのは、エールティア選手だ!』
ファリスに詰め寄った私は、腹部に突き刺すように拳を放つ。ファリスはそれに合わせて拳で応戦してくる。すかさず続けて拳打を放つのだけれど、その全てに対して同じように拳を放って防いできた。
「ふふ、この程度? 違うよね。まだまだ……戦えるよね! 【ガイストート】!!」
幾つもの黒い刃が襲いかかって来る。ファリスから離れるようにそれを避けると、彼女は続けて【ガイストート】を放ってきた。
「【トキシックスピア】!」
黒い刃を縫うように避けて、魔導を発動させる。毒槍はファリスに向かって突っ込んでいくけれど……彼女は余裕を見せるかのようにそれを避けた。
やはり、単発の魔導ではファリスを捉える事は難しい。
「【フレスシューティ】!」
空中に幾つもの炎の球が出現して、私に向かって降り注いでくる。どうやら、彼女の方も同じ結論に辿り着いたみたいだ。
「【カラフルリフレクション】!」
薄い膜に包まれた私に向かって降り注がれた火の球は、全てファリスに向かって跳ね返される。
嬉しそうにそれを避けつつ私に接近してくるファリス。
「ふふ、楽しいね。あなたもそうでしょう? 【フィロビエント】!」
複数の風の刃が私に向かって放たれる。その魔導も、私は知っている。この程度で容易く崩される私ではない!
「【アイシクルレイン】!」
氷の雨で応戦した私は、同時にファリスに向かって掛ける。
「……【マジカルシュトライヒ】」
魔導に込めた魔力量を隠蔽する魔導。相手の油断を誘い、こちらがより優位に立つための手段。
「【ガシングフレア】」
毒霧が私とファリスの周囲を覆い、次々と爆発を引き起こす。最大火力で放たれたそれは、【マジカルシュトライヒ】によって最弱の威力で放ったと偽装されていた。
「ふふ、甘い。甘いよ。そんなの……お見通しなんだから! 【開け、幽世の門】!!」
私とファリスが足をつけているはずの地面が大きな扉に変わる。ギギギィィ……と軋んだ音を立てて開いた扉からは紫色の蝶が溢れ出し、【ガシングフレア】の炎に触れるとそれを消していく。
私の【マジカルシュトライヒ】なんてお構いなしの強力な魔導――どうやら、下手に小細工をしない方が良さそうだ。
先はまだ長い。戦いは……まだ始まったばかりなのだから。
いよいよ魔王祭の優勝が決まる――。
それを一目見るために、会場は満席な上に人で溢れる程だった。ここまで盛り上がっているのは、私とファリスの決闘だから……というのも少なからず関係あるだろう。
『こんなに人が多いなんて、凄いよねー。去年よりも盛り上がってるんじゃないかなー?』
『去年は決勝をせずにそのまま優勝者が決定したのも要因の一つだろう。勝ち上がった者も、どちらが優勝してもおかしくない猛者達だからな』
『くふふ、ワタシも楽しみにしてますよ。この二人の戦いは見物ですからね』
妙に期待感を高めているけれど、まさか前回の魔王祭の結果が響いてくるとは思ってもみなかった。
あんな事になったのは私が原因でもあるわけだし、なんだか申し訳なくなってくる。
『それでは、いよいよ入場しますよ! エールティア選手とファリス選手です!! どうぞ!!』
呼ばれて、堂々とした立ち居振る舞いで闘技場に入った私とは違い、軽やかなステップを踏んでファリスは来場した。その様子はまるで待ち望んでいた戦いをようやく行える――。
初めて買ってもらった玩具を楽しみにしているような節が見える。
「ふふ、ふふふ、ようやく戦えるんだね。この日をずっと楽しみにしてたよ」
「……ファリス」
彼女には聞きたいことがいっぱいある。ローラン以上に色々な情報をもっているのは、恐らくファリスだけだろう。
……まあ、だからといって簡単に教えてくれるとは思わなかったけれどね。
いつもとは明らかに違った様子で、ファリスは笑顔で軽やかなステップを踏んでいた。楽しそうに踊りながら私の方に視線を向けているところ。
「……随分と機嫌がいいのね」
「ふふ、当然じゃない。ようやく……待ち望んだあなたと戦えるんだもの。凄く、すっごく嬉しいの」
両手をポンと叩いて、嬉しそうにしているファリスは、どれだけこの日を待ち望んでいたか……それが良く伝わってきた。
『……よし、結界の準備は整った。いつでも始められるぞ』
『準備は整いましたね! それでは……魔王祭も最終戦! 最後に笑うのは誰か……しかとその目に焼き付けなさい! 決闘――開始!!』
物凄くノリノリな声と同時に放たれた決闘開始の一言。
それと同時に全身が結界具の効果に包まれるのがわかる。流石ガルドラ決闘官と言うべきだろう。
決闘開始と力強く宣言されたけれど……いざ始まってまず最初にした事は互いの様子を伺う事だった。
『二人共全く動かないけど……どうしたんだろう?』
『実力が近しい者同士、どう攻めるか考えているのだろう。相手がどう動けば、自分は――とな』
ガルドラの言う通り、頭の中でファリスの戦い方を思考して動こうとしている。それは彼女も同じ、ということだろう。
とはいえ、このままでは埒があかない。なら――
『ああっと!? 先に仕掛けたのは、エールティア選手だ!』
ファリスに詰め寄った私は、腹部に突き刺すように拳を放つ。ファリスはそれに合わせて拳で応戦してくる。すかさず続けて拳打を放つのだけれど、その全てに対して同じように拳を放って防いできた。
「ふふ、この程度? 違うよね。まだまだ……戦えるよね! 【ガイストート】!!」
幾つもの黒い刃が襲いかかって来る。ファリスから離れるようにそれを避けると、彼女は続けて【ガイストート】を放ってきた。
「【トキシックスピア】!」
黒い刃を縫うように避けて、魔導を発動させる。毒槍はファリスに向かって突っ込んでいくけれど……彼女は余裕を見せるかのようにそれを避けた。
やはり、単発の魔導ではファリスを捉える事は難しい。
「【フレスシューティ】!」
空中に幾つもの炎の球が出現して、私に向かって降り注いでくる。どうやら、彼女の方も同じ結論に辿り着いたみたいだ。
「【カラフルリフレクション】!」
薄い膜に包まれた私に向かって降り注がれた火の球は、全てファリスに向かって跳ね返される。
嬉しそうにそれを避けつつ私に接近してくるファリス。
「ふふ、楽しいね。あなたもそうでしょう? 【フィロビエント】!」
複数の風の刃が私に向かって放たれる。その魔導も、私は知っている。この程度で容易く崩される私ではない!
「【アイシクルレイン】!」
氷の雨で応戦した私は、同時にファリスに向かって掛ける。
「……【マジカルシュトライヒ】」
魔導に込めた魔力量を隠蔽する魔導。相手の油断を誘い、こちらがより優位に立つための手段。
「【ガシングフレア】」
毒霧が私とファリスの周囲を覆い、次々と爆発を引き起こす。最大火力で放たれたそれは、【マジカルシュトライヒ】によって最弱の威力で放ったと偽装されていた。
「ふふ、甘い。甘いよ。そんなの……お見通しなんだから! 【開け、幽世の門】!!」
私とファリスが足をつけているはずの地面が大きな扉に変わる。ギギギィィ……と軋んだ音を立てて開いた扉からは紫色の蝶が溢れ出し、【ガシングフレア】の炎に触れるとそれを消していく。
私の【マジカルシュトライヒ】なんてお構いなしの強力な魔導――どうやら、下手に小細工をしない方が良さそうだ。
先はまだ長い。戦いは……まだ始まったばかりなのだから。
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