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325・凄まじき攻防
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私の魔導を相殺していく【幽世の門】から溢れ出した紫色の蝶々を見つめる。最初、魔力を吸う性質があるものかと思ったけれど……どうやらあれはそんな類のものじゃなさそうだ。美しさの中に、恐ろしい妖しさを秘めている。寒気がするほどの麗しい光景。『生』を否定するようなそれらは、私の目を捉えて離さない。
「観察してるほどの余裕があるの?」
あまりにも幻想的な光景に目を奪われていた私は、下から聞こえてくるファリスの声に正気を取り戻す。
迫ってきた彼女はいつの間にか剣を抜いていて、振り上げるように斬撃を放ってきた。
恐らく、私の意識が【幽世の門】に向けられている間に造り出した人造命具だろう。
さっきまで彼女は剣すら持っていなかったし、隠せるような大きさじゃない。
白と黒の刃を持つ剣……どこかで見たことがあるそれは、今こうしている間にも少しずつ私に迫ってきていた。
――回避は間に合わない。
「【シルドアームズ】!」
腕を交差させて魔導を放ち、迫りくる刃に備える。
避けるよりも防ぐ方が容易い――その選択は間違いないはず。そう思う私の脳裏に何か恐ろしいものが掠める。
あまりにも警鐘を鳴らしてくる私の直勘。このまま防ぐのは不味いと。だからこそ、更なる対策を講じなければならない。
「【アグレッシブ・スピード】!」
「さあ、魔力を断ちなさい。【フィリンベーニス・ファクティス】!」
斬撃を防いでいた魔力の盾が、ファリスの人造命具の真価を発動するキーワードを口にしたと同時に容易く切断されてしまう。魔導によって速度を強化した私は、辛うじて頬を切っ先が掠める程度で済ませる事が出来た。一か八かだったけれど、なんとか出来たようだ。
まあ、昨日図書館で調べただけでも、初代魔王様との関係性。同じ魔導を使用している事はわかった。そしてローランは似たような人造命具を使っていた。
その全てを考えたら、可能性は十分にあった。だけど、まさか――
「まさか、同じ人造命具を使ってくるなんてね……!」
「あら、ちょっと違うのよ。私のは【ファクティス】。ローランのは【レプリカ】ですもの」
「結局は【フィリンベーニス】でしょう!」
怒鳴りながら懐に潜り込んで掌底を叩きこもうとするのだけれど、隙が少なくて中々足を踏み入れる事が出来ない。それとは対照的に、ファリスはがんがんこちらに攻めてくる。
ローランの時のように防御寄りの戦法ではなく、勢いに任せて攻めてくるタイプのようだ。魔導を斬り捨てる人造命具をもっているから迂闊に魔導を使う訳にもいかないし、拳と剣では攻撃範囲も間合いも違う。
前回のローラン戦のように高威力広範囲の魔導を中心に攻めるのも手なんだけど……。
「【プロトンサンダー】!!」
「ふふっ、【フラムブランシュ】!」
私が放った雷の光線に対して、ファリスは炎の熱線を放ってきた。炎と雷の違いはあれ、似たような魔導がぶつかり合い、光の爆発音を響き渡らせる。
バチバチと音が鳴って破裂するように相殺されると……突っ込んでくるファリスの姿見えた。
やはりお互い無傷な状態か。この調子で行ったら、【エアルヴェ・シュネイス】も彼女の扱う【エンヴェル・スタルシス】で相殺されてしまうだろう。ローランの時と違って、魔力もそれを扱うイメージもしっかりしている。
どちらかに偏っていれば対処のしようがあるけれど……ローランの上位互換と言っても言い過ぎじゃない程高い戦闘能力を秘めている。
剣の扱いも卓越していて、鋭く突いてきたかと思うと、すかさず薙ぎ払い、振り上げ振り下ろす。流れるように放たれる連撃が私の攻め手を許さないと言うかのようだ。
「ほら、ほら! もっと……もっとわたしを楽しませてよ! この程度じゃないでしょう!?」
興奮気味に笑いながら剣を振り回してくるファリスに対し、焦りが募る。攻撃範囲の違いも相まって凄く攻めにくい。避けられない事はないけれど、このままではじり貧だ。
妨害系の魔導も、彼女の攻撃の前にはあまり意味を為さないように思える。強化系の魔導は現時点では効果が薄い。そして……私の要である攻撃魔導は強いものになると相殺され、弱いものは基本的に避けられる。遠距離の魔導戦は悪戯に魔力を消費するだけで、終わりが見える未来が見えない。ならば――
「【ボムズブラスト】!」
私の周囲に魔力の塊が次々と出現して、爆発を発生させていく。爆風がファリスの行動を拒み、接近を許さない。その間に【アグレッシブ・スピード】を発動して、十分に彼女から距離を取る。いざという時の保険の為だ。
煙が視界を遮ってるけれど、晴れる前に彼女は私に向かってくるだろう。彼女の性格は大体読めるからね。
だからこそ、ファリスが襲い掛かってくる前に行動を起こす!
「【人造命剣・ミディナルーネ】」
自らの片割れと呼ぶに相応しい黒い剣が姿を現して、私の手に収まった。この子を呼ぶのは雪風との決闘以来だし、まともな戦いともなれば、それこそいつぶりかわからない。
だけど、問題なく扱える。どれほどの時間が経ったとしても、身体がしっかりと覚えているからだ。
さあ、手の内の一つは晒した。ここからが本当の勝負だ。
「観察してるほどの余裕があるの?」
あまりにも幻想的な光景に目を奪われていた私は、下から聞こえてくるファリスの声に正気を取り戻す。
迫ってきた彼女はいつの間にか剣を抜いていて、振り上げるように斬撃を放ってきた。
恐らく、私の意識が【幽世の門】に向けられている間に造り出した人造命具だろう。
さっきまで彼女は剣すら持っていなかったし、隠せるような大きさじゃない。
白と黒の刃を持つ剣……どこかで見たことがあるそれは、今こうしている間にも少しずつ私に迫ってきていた。
――回避は間に合わない。
「【シルドアームズ】!」
腕を交差させて魔導を放ち、迫りくる刃に備える。
避けるよりも防ぐ方が容易い――その選択は間違いないはず。そう思う私の脳裏に何か恐ろしいものが掠める。
あまりにも警鐘を鳴らしてくる私の直勘。このまま防ぐのは不味いと。だからこそ、更なる対策を講じなければならない。
「【アグレッシブ・スピード】!」
「さあ、魔力を断ちなさい。【フィリンベーニス・ファクティス】!」
斬撃を防いでいた魔力の盾が、ファリスの人造命具の真価を発動するキーワードを口にしたと同時に容易く切断されてしまう。魔導によって速度を強化した私は、辛うじて頬を切っ先が掠める程度で済ませる事が出来た。一か八かだったけれど、なんとか出来たようだ。
まあ、昨日図書館で調べただけでも、初代魔王様との関係性。同じ魔導を使用している事はわかった。そしてローランは似たような人造命具を使っていた。
その全てを考えたら、可能性は十分にあった。だけど、まさか――
「まさか、同じ人造命具を使ってくるなんてね……!」
「あら、ちょっと違うのよ。私のは【ファクティス】。ローランのは【レプリカ】ですもの」
「結局は【フィリンベーニス】でしょう!」
怒鳴りながら懐に潜り込んで掌底を叩きこもうとするのだけれど、隙が少なくて中々足を踏み入れる事が出来ない。それとは対照的に、ファリスはがんがんこちらに攻めてくる。
ローランの時のように防御寄りの戦法ではなく、勢いに任せて攻めてくるタイプのようだ。魔導を斬り捨てる人造命具をもっているから迂闊に魔導を使う訳にもいかないし、拳と剣では攻撃範囲も間合いも違う。
前回のローラン戦のように高威力広範囲の魔導を中心に攻めるのも手なんだけど……。
「【プロトンサンダー】!!」
「ふふっ、【フラムブランシュ】!」
私が放った雷の光線に対して、ファリスは炎の熱線を放ってきた。炎と雷の違いはあれ、似たような魔導がぶつかり合い、光の爆発音を響き渡らせる。
バチバチと音が鳴って破裂するように相殺されると……突っ込んでくるファリスの姿見えた。
やはりお互い無傷な状態か。この調子で行ったら、【エアルヴェ・シュネイス】も彼女の扱う【エンヴェル・スタルシス】で相殺されてしまうだろう。ローランの時と違って、魔力もそれを扱うイメージもしっかりしている。
どちらかに偏っていれば対処のしようがあるけれど……ローランの上位互換と言っても言い過ぎじゃない程高い戦闘能力を秘めている。
剣の扱いも卓越していて、鋭く突いてきたかと思うと、すかさず薙ぎ払い、振り上げ振り下ろす。流れるように放たれる連撃が私の攻め手を許さないと言うかのようだ。
「ほら、ほら! もっと……もっとわたしを楽しませてよ! この程度じゃないでしょう!?」
興奮気味に笑いながら剣を振り回してくるファリスに対し、焦りが募る。攻撃範囲の違いも相まって凄く攻めにくい。避けられない事はないけれど、このままではじり貧だ。
妨害系の魔導も、彼女の攻撃の前にはあまり意味を為さないように思える。強化系の魔導は現時点では効果が薄い。そして……私の要である攻撃魔導は強いものになると相殺され、弱いものは基本的に避けられる。遠距離の魔導戦は悪戯に魔力を消費するだけで、終わりが見える未来が見えない。ならば――
「【ボムズブラスト】!」
私の周囲に魔力の塊が次々と出現して、爆発を発生させていく。爆風がファリスの行動を拒み、接近を許さない。その間に【アグレッシブ・スピード】を発動して、十分に彼女から距離を取る。いざという時の保険の為だ。
煙が視界を遮ってるけれど、晴れる前に彼女は私に向かってくるだろう。彼女の性格は大体読めるからね。
だからこそ、ファリスが襲い掛かってくる前に行動を起こす!
「【人造命剣・ミディナルーネ】」
自らの片割れと呼ぶに相応しい黒い剣が姿を現して、私の手に収まった。この子を呼ぶのは雪風との決闘以来だし、まともな戦いともなれば、それこそいつぶりかわからない。
だけど、問題なく扱える。どれほどの時間が経ったとしても、身体がしっかりと覚えているからだ。
さあ、手の内の一つは晒した。ここからが本当の勝負だ。
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