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397・合流に向けて(ファリスside)
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隠された資料室を見つけてから時間が過ぎていき、合流まで後三日程となった。
その間もこの場所に寝泊まりし、精神が病まない程度に情報収集に勤しんでいた彼女達だったが、そろそろタイムリミットがやってくる。
「明日にはワイバーン発着場に行く事になるけれど……どう? 何か忘れている事ない?」
いよいよ明日。一度マデロームへ帰ろうというそんな日。ようやくエールティアの元に帰ることが出来るとそわそわしている人物がいた。自他共に認めるエールティア大好きっ子の一人、ファリスである。
彼女は自らの愛しい人ともうすぐ再会できるという喜びに包まれ、余計な面倒事が起こって帰国が遅れないように入念に準備していた。
「落ち着け。そんなに忙しなく動かなくても問題ないだろうから」
「とか言って何か忘れてた……じゃ遅いのよ? ティアちゃんは待ってくれるけれど、わたしの心は待てないの!」
ローランの呆れ声も彼女の耳には入っていない。隠し資料室で得た情報を写しながら、他の作業にも口を挟む始末。
「何を言っているのかまるで意味がわからんな」
まるで奇妙な物でも見るような視線を向けるフレルアは、何がそこまで彼女を駆り立てるのか理解できずにいた。
その言葉はファリスの耳に入り、まるで存在を憐れむような瞳を向ける口実を与えてしまう。
「ティアちゃんを知らないなんて哀れね。あの子程強く、気高く、偉大な子は存在しないというのに」
「それ、ティアちゃんが聞くとむず痒く思うだろうからやめた方が良いよ。いくらなんでもそこまでじゃないって」
「いいえ! わたしの言うことに間違いはないの! ティアちゃんこそ、正しく最強の聖黒族なんですもの!」
力強く拳を握りしめて感情のままに力説されると、強者を自負する者からすれば興味が湧いてくるものだ。それもある程度自分に近しい実力を持っているであろう人物からの発言だとすれば、尚更である。
「ほう……そこまで力説する程か……」
「もしかして、興味湧いてきた?」
「多少、な。我も血沸き肉躍る戦いを好む。それほど評価されている者と一戦交えたくなるのも、世の道理というものだろう」
(そんな道理ないと思うんだが……)
元来闘争本能の強い黒竜人族。それにファリスも愛する者に傷つけ傷けられる事を好む性質。ほとんど理解出来ないのはローランくらいなものだった。
「だったら、貴方も一緒にくる? 実際会って確かめてみた方がいいんじゃない?」
「……ほう」
すっと目を細めるフレルアは、今未だ見ぬ強者に思いを馳せた。
(世の中は広い。我をも超える強者がいて不思議ではない。だが……それを乗り越えてこそ、人生と言うもの。強き者を乗り越え、より高みへ昇る。それこそ人生を豊かにしてくれる)
「まさか……本当に一緒にくるのか?」
「それも一興だろう。そこの者が力説する程の女傑ならば、試してみるのもやぶさかではない」
楽しそうに先の未来を夢想するフレルアを後ろからげんなりした視線を向ける者が一人。特に戦いたいという欲求の無いローランだけだった。
(今はそんな事をしている場合じゃないと思うんだけれど……聞き入れてくれるわけないか)
これから先の未来を想像しただけでため息を吐いた。嬉しそうにしているフレルアとは正反対の事が、尚更彼の心に黒い影を落とした。
「ならばこうしてはおれん。早速出かけて真偽を――」
「俺達がいないとエールティア姫が誰かなんてわからないだろう。下手に動いて迷うよりは俺達と一緒に行動した方が確実だぞ」
「ならば疾く準備を終わらせるといい。我がそなた等を送り届けてくれよう」
完全に火が付いたフレルアをどうやって宥めようかと四苦八苦している間、レイアとアルフは着々と準備を進めていた。
「どうやら道中賑やかになりそうね。一緒に行くんだったら……ティアちゃんと戦う事になるんだろうね」
「そうなったら見物ではあるな。聖黒族最強のあの御方と……恐らく黒竜人族の祖先である者の複製体。どちらが上か見たいカードではある」
アルフの返答が意外だったのか、レイアは驚いた表情で彼を見ていた。こういう時、どんなに戦いを好んでも優先するべきことがある。アルフにとって、エールティアが絡む事は正にそういうものだと彼女は思っていたからだ。
「意外かい?」
「う、うん。ティアちゃんが絡むのは反対だと思ってたから……」
「これが本当に危険な事だったら僕も抗議しただろうね。だけど決闘なら無理に命のやり取りをする必要はない。あの方の命に危険がないなら、僕も反対する理由はないよ。それに……君も気になる、だろう?」
「……そうね。私も。貴方の事言えないかも」
互いに笑い合う二人の様子を横目に、うんざりとしているのはファリスだった。
彼女は彼ら二人がデキていると思っている為、また甘ったるい雰囲気になってるなぁ……と少し苛立ちを覚えた。
(わたしも早く、ティアちゃんのところに戻っていっぱい甘えないとね。早く帰れないかなぁ……)
いちゃいちゃしている(とファリスは思っている)二人の姿を見つめながら、遠い場所で同じように帰る支度をしているであろうエールティアを夢想する彼女であった。
その間もこの場所に寝泊まりし、精神が病まない程度に情報収集に勤しんでいた彼女達だったが、そろそろタイムリミットがやってくる。
「明日にはワイバーン発着場に行く事になるけれど……どう? 何か忘れている事ない?」
いよいよ明日。一度マデロームへ帰ろうというそんな日。ようやくエールティアの元に帰ることが出来るとそわそわしている人物がいた。自他共に認めるエールティア大好きっ子の一人、ファリスである。
彼女は自らの愛しい人ともうすぐ再会できるという喜びに包まれ、余計な面倒事が起こって帰国が遅れないように入念に準備していた。
「落ち着け。そんなに忙しなく動かなくても問題ないだろうから」
「とか言って何か忘れてた……じゃ遅いのよ? ティアちゃんは待ってくれるけれど、わたしの心は待てないの!」
ローランの呆れ声も彼女の耳には入っていない。隠し資料室で得た情報を写しながら、他の作業にも口を挟む始末。
「何を言っているのかまるで意味がわからんな」
まるで奇妙な物でも見るような視線を向けるフレルアは、何がそこまで彼女を駆り立てるのか理解できずにいた。
その言葉はファリスの耳に入り、まるで存在を憐れむような瞳を向ける口実を与えてしまう。
「ティアちゃんを知らないなんて哀れね。あの子程強く、気高く、偉大な子は存在しないというのに」
「それ、ティアちゃんが聞くとむず痒く思うだろうからやめた方が良いよ。いくらなんでもそこまでじゃないって」
「いいえ! わたしの言うことに間違いはないの! ティアちゃんこそ、正しく最強の聖黒族なんですもの!」
力強く拳を握りしめて感情のままに力説されると、強者を自負する者からすれば興味が湧いてくるものだ。それもある程度自分に近しい実力を持っているであろう人物からの発言だとすれば、尚更である。
「ほう……そこまで力説する程か……」
「もしかして、興味湧いてきた?」
「多少、な。我も血沸き肉躍る戦いを好む。それほど評価されている者と一戦交えたくなるのも、世の道理というものだろう」
(そんな道理ないと思うんだが……)
元来闘争本能の強い黒竜人族。それにファリスも愛する者に傷つけ傷けられる事を好む性質。ほとんど理解出来ないのはローランくらいなものだった。
「だったら、貴方も一緒にくる? 実際会って確かめてみた方がいいんじゃない?」
「……ほう」
すっと目を細めるフレルアは、今未だ見ぬ強者に思いを馳せた。
(世の中は広い。我をも超える強者がいて不思議ではない。だが……それを乗り越えてこそ、人生と言うもの。強き者を乗り越え、より高みへ昇る。それこそ人生を豊かにしてくれる)
「まさか……本当に一緒にくるのか?」
「それも一興だろう。そこの者が力説する程の女傑ならば、試してみるのもやぶさかではない」
楽しそうに先の未来を夢想するフレルアを後ろからげんなりした視線を向ける者が一人。特に戦いたいという欲求の無いローランだけだった。
(今はそんな事をしている場合じゃないと思うんだけれど……聞き入れてくれるわけないか)
これから先の未来を想像しただけでため息を吐いた。嬉しそうにしているフレルアとは正反対の事が、尚更彼の心に黒い影を落とした。
「ならばこうしてはおれん。早速出かけて真偽を――」
「俺達がいないとエールティア姫が誰かなんてわからないだろう。下手に動いて迷うよりは俺達と一緒に行動した方が確実だぞ」
「ならば疾く準備を終わらせるといい。我がそなた等を送り届けてくれよう」
完全に火が付いたフレルアをどうやって宥めようかと四苦八苦している間、レイアとアルフは着々と準備を進めていた。
「どうやら道中賑やかになりそうね。一緒に行くんだったら……ティアちゃんと戦う事になるんだろうね」
「そうなったら見物ではあるな。聖黒族最強のあの御方と……恐らく黒竜人族の祖先である者の複製体。どちらが上か見たいカードではある」
アルフの返答が意外だったのか、レイアは驚いた表情で彼を見ていた。こういう時、どんなに戦いを好んでも優先するべきことがある。アルフにとって、エールティアが絡む事は正にそういうものだと彼女は思っていたからだ。
「意外かい?」
「う、うん。ティアちゃんが絡むのは反対だと思ってたから……」
「これが本当に危険な事だったら僕も抗議しただろうね。だけど決闘なら無理に命のやり取りをする必要はない。あの方の命に危険がないなら、僕も反対する理由はないよ。それに……君も気になる、だろう?」
「……そうね。私も。貴方の事言えないかも」
互いに笑い合う二人の様子を横目に、うんざりとしているのはファリスだった。
彼女は彼ら二人がデキていると思っている為、また甘ったるい雰囲気になってるなぁ……と少し苛立ちを覚えた。
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