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472・今までと違った場所
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食糧の調達を終えた二人を迎えた次の日。今度はジュールを鳥車に残して、私達は最初の拠点へと足を踏み入れる事にした。
「大丈夫? 疲れてない?」
「これくらい平気だよ。それより、もうすぐ着くんじゃないかな」
ファリスと私は互いの事を気にしながらかなりの速度を出して走っている。流石にラントルオ並みの速さは出せないけれど、そもそも拠点がザインドの近場だから無理にラントルオを使わなくても問題なく行けるというわけだ。
流れる風景を視線に捉えながら辿り着いた拠点は、今まで訪れたどことも違っていた。
まず、見た目的には軍事用の拠点のそれ。でも今までいた見張りの姿が一切ない。少しだけボロになっている部分もあって、パッと見は放棄されている場所のように思える。
「……もう誰もいない?」
現にファリスの方はそう捉えてしまっていた。とりあえず【サーチホスティリティ】を展開しておこう。最近はもっぱらこの魔導のお世話になっているような気がするけど……何かあるよりは余程マシだろう。
視覚化された地図には動物の点が多い。その中で微妙に赤い点が数個程存在している。これは恐らく、何かに――というか私達に警戒しているということだ。じゃなかったら薄い赤点があること自体おかしい。つまりっここは既に放棄されているように見せかけているだけ、という事だろう。
なんでそこまでしているのかは知らないけれど、まあ先に進んでいけばわかるはずだ。
「一応人がいるみたいだし、中に入ってみましょうか」
「ええ……こんなところに誰かいるの?」
うげーって感じの顔をしているファリスには悪いけど、こればかりは事実だ。
肯定するように強気の視線を向けると、彼女も仕方ない……とでも言うかのような表情で頷いていた。
改めて拠点を見てみる。多少ボロいそこは扉もなんだか微妙に外れている。普通に開けるより壊した方が早そうなくらいだ。
あまり音を立てないようにと思って扉に手を掛けてみるけれど、少し力を込めてもあまり動かない。錆び付いた鉄が擦れる独特の音だけが響いた。
やっぱり思いっきりやった方が良いかな? なんて思っていると、後ろの方から炎の球が飛んできた。爆風に巻き込まれるのを嫌った私が飛び退ると同時に扉に着弾して、燃える以前に爆発と同時に吹き飛んでしまった。
「……ファァァリィィスゥゥ?」
「えへへ、ティアちゃんなら避けてくれると思ったからさ。ね、大丈夫だったでしょ」
突然炎の魔導を放ったことを悪びれる事もなく、むしろ若干得意げにしているファリスを見ていると、怒る気もなくなってしまう。
「……はあ、次からは事前に言ってから使ってちょうだい。もう少しで当たるところだったんだから」
「えへ、ごめんなさーい」
軽い謝罪にため息が出そうになる。これが彼女の平常だから仕方ないと思う事にしよう。
跡形もなくなった扉の奥を見ると、そこには暗い闇が広がっていて、明かりは一切見当たらない。
「……本当に誰かいるのかな?」
「多分ね。とりあえず入ってみましょう」
私も【サーチホスティリティ】がなければいるなんて確証は出来なかっただろう。中に入っても少しほこりっぽい空気がまともに掃除されていない事を教えてくれている。
「ファリス、明かりはよろしくね」
「はーい」
町の方で購入したらしい油の代わりに魔力で火が灯るランタンを使用したファリス。一瞬激しい炎が上がったところを見ると、魔力の操作を誤ったみたいだ。そのまま耐え切れないで砕けるんじゃないかと思ってしまうのも仕方のない事だろう。結論から言うと、流石にそれは考えすぎだった。
すぐに小さな炎に調整されたから大丈夫なようで、ファリスはこっそり安堵の息を吐いている。
「……使う前にちゃんとコントロールできるようにならないとね」
「大丈夫だよ。二回目はないから」
自信満々にしているけれど、一体なんでそんな風に言えるんだろう? ファリスは転生前のローランの記憶を持っているから、そこからくるのかもしれない。
ともかく、しっかりとランタンの明かりがともっている間に動くべきだ。
一応私は暗視魔導を発動しているからそれほど影響はないのだが、ファリスは覚えていないから必然的にランタンに頼る事になるだろう。その性質の関係で絶えず魔力を流す以上、ちょっとした感情の揺らぎでついつい流しすぎて魔石が破裂……なんてことになったら面倒な事この上ない。
――
あまり驚くことのないように慎重に歩みを進める私達。【サーチホスティリティ】で敵になりうる『なにか』の情報はあるのに、肝心のそれが全く見当たらない。
それなりに長い探索をしているからか、ファリスも若干退屈そうになっている。
もしかしたら些細な事でこんな表示になっているのかな? なんて自分のイメージで発動している魔導を疑いそうになるほどだ。
「んー……何もないね」
ファリスの飽きているような声が響いても何の――
「……あれ?」
ちょうど訪れた一室の何の変哲もない崩れかけている壁。だけどその下に何か埋まっているように見える。かなり大量の瓦礫だから私の力では何ともならないだろう。
……仕方がない。あまり物音は立てたくないけど、魔導を使わないとどうする事も出来ない。こうなったら覚悟を決めてやってみましょうか。
「大丈夫? 疲れてない?」
「これくらい平気だよ。それより、もうすぐ着くんじゃないかな」
ファリスと私は互いの事を気にしながらかなりの速度を出して走っている。流石にラントルオ並みの速さは出せないけれど、そもそも拠点がザインドの近場だから無理にラントルオを使わなくても問題なく行けるというわけだ。
流れる風景を視線に捉えながら辿り着いた拠点は、今まで訪れたどことも違っていた。
まず、見た目的には軍事用の拠点のそれ。でも今までいた見張りの姿が一切ない。少しだけボロになっている部分もあって、パッと見は放棄されている場所のように思える。
「……もう誰もいない?」
現にファリスの方はそう捉えてしまっていた。とりあえず【サーチホスティリティ】を展開しておこう。最近はもっぱらこの魔導のお世話になっているような気がするけど……何かあるよりは余程マシだろう。
視覚化された地図には動物の点が多い。その中で微妙に赤い点が数個程存在している。これは恐らく、何かに――というか私達に警戒しているということだ。じゃなかったら薄い赤点があること自体おかしい。つまりっここは既に放棄されているように見せかけているだけ、という事だろう。
なんでそこまでしているのかは知らないけれど、まあ先に進んでいけばわかるはずだ。
「一応人がいるみたいだし、中に入ってみましょうか」
「ええ……こんなところに誰かいるの?」
うげーって感じの顔をしているファリスには悪いけど、こればかりは事実だ。
肯定するように強気の視線を向けると、彼女も仕方ない……とでも言うかのような表情で頷いていた。
改めて拠点を見てみる。多少ボロいそこは扉もなんだか微妙に外れている。普通に開けるより壊した方が早そうなくらいだ。
あまり音を立てないようにと思って扉に手を掛けてみるけれど、少し力を込めてもあまり動かない。錆び付いた鉄が擦れる独特の音だけが響いた。
やっぱり思いっきりやった方が良いかな? なんて思っていると、後ろの方から炎の球が飛んできた。爆風に巻き込まれるのを嫌った私が飛び退ると同時に扉に着弾して、燃える以前に爆発と同時に吹き飛んでしまった。
「……ファァァリィィスゥゥ?」
「えへへ、ティアちゃんなら避けてくれると思ったからさ。ね、大丈夫だったでしょ」
突然炎の魔導を放ったことを悪びれる事もなく、むしろ若干得意げにしているファリスを見ていると、怒る気もなくなってしまう。
「……はあ、次からは事前に言ってから使ってちょうだい。もう少しで当たるところだったんだから」
「えへ、ごめんなさーい」
軽い謝罪にため息が出そうになる。これが彼女の平常だから仕方ないと思う事にしよう。
跡形もなくなった扉の奥を見ると、そこには暗い闇が広がっていて、明かりは一切見当たらない。
「……本当に誰かいるのかな?」
「多分ね。とりあえず入ってみましょう」
私も【サーチホスティリティ】がなければいるなんて確証は出来なかっただろう。中に入っても少しほこりっぽい空気がまともに掃除されていない事を教えてくれている。
「ファリス、明かりはよろしくね」
「はーい」
町の方で購入したらしい油の代わりに魔力で火が灯るランタンを使用したファリス。一瞬激しい炎が上がったところを見ると、魔力の操作を誤ったみたいだ。そのまま耐え切れないで砕けるんじゃないかと思ってしまうのも仕方のない事だろう。結論から言うと、流石にそれは考えすぎだった。
すぐに小さな炎に調整されたから大丈夫なようで、ファリスはこっそり安堵の息を吐いている。
「……使う前にちゃんとコントロールできるようにならないとね」
「大丈夫だよ。二回目はないから」
自信満々にしているけれど、一体なんでそんな風に言えるんだろう? ファリスは転生前のローランの記憶を持っているから、そこからくるのかもしれない。
ともかく、しっかりとランタンの明かりがともっている間に動くべきだ。
一応私は暗視魔導を発動しているからそれほど影響はないのだが、ファリスは覚えていないから必然的にランタンに頼る事になるだろう。その性質の関係で絶えず魔力を流す以上、ちょっとした感情の揺らぎでついつい流しすぎて魔石が破裂……なんてことになったら面倒な事この上ない。
――
あまり驚くことのないように慎重に歩みを進める私達。【サーチホスティリティ】で敵になりうる『なにか』の情報はあるのに、肝心のそれが全く見当たらない。
それなりに長い探索をしているからか、ファリスも若干退屈そうになっている。
もしかしたら些細な事でこんな表示になっているのかな? なんて自分のイメージで発動している魔導を疑いそうになるほどだ。
「んー……何もないね」
ファリスの飽きているような声が響いても何の――
「……あれ?」
ちょうど訪れた一室の何の変哲もない崩れかけている壁。だけどその下に何か埋まっているように見える。かなり大量の瓦礫だから私の力では何ともならないだろう。
……仕方がない。あまり物音は立てたくないけど、魔導を使わないとどうする事も出来ない。こうなったら覚悟を決めてやってみましょうか。
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