転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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498・新たな出発

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 ファリスの了承を得た私は、早速次の日にお父様に報告する事にした。
 短期間に何度も出入りするものだから、すっかり顔を覚えられてしまった私は、門兵に軽い挨拶を交わす程度になっていた。

 慣れた感じで会話をした私は、そのまま執務室に向かう。ノックの後に静かに入ると、お父様は片手で頭を押さえて悩んでいた。

「お父様、失礼します」
「……! あ、ああ」

 ようやく私に気付いたのか、顔をこちらに向けて返事をしてくれた。それでもその顔が晴れることはなく、曇る一方だ。

「どうしました?」
「いや……」

 一度言いかけて頭を振ったお父様は、覚悟を決めた顔をした。

「実は、他の国にもグロウゴレムが出たな。情報共有を急いでいる状況なのだ。セントラルの国々にも出現しており、かなり手を焼いているようだ。シルケット以外からは救援要請はないが、魔導を主体に戦っている種族は非常に苦戦を強いられているようだ」

 具体的には妖精族とエルフ族と猫人族だろう。クーティノスはあの物理防御の高い兵器とは違って周囲に影響を与える。
 やりようがあるあれらに比べたら、かなり苦戦を強いられてしまうのだろう。

「シルケットは大丈夫なのでしょうか……?」

 あそこには私の友人のリュネーがいる。流石にセントラルの学園に通っているベルンは戻っているはずだし、援軍が到着するまでは問題ないと思いたい。

「かなり深刻な状況だ。辛うじてドラグニカからベルン王子を戻したようだが……恐らくシルケットを制圧した後、このティリアースの足掛かりにしようとしているのだろう。他の国よりも圧倒的に侵略速度が速い。相当な戦力が投入されていると見て間違いない」
「他の……エルフ族の国の方は?」
「セントラルのラスタパはそこまで損害を受けていないそうだ。その代わり、ダークエルフ族の攻撃が激しいらしい」

 お父様の言葉に私は疑問を抱く。あまり被害がないのにダークエルフ族の攻撃が激しいというのはどうにも理解出来ない。普通は被害も大きくなるはずだ。

「……エールティア。国樹についてはどこまで知っている?」
「え? えっと、かなりの広範囲の気候を安定させて、農業や酪農に関連する仕事が行いやすくなるとか――」

 一応覚えている事は可能な限り口にしているつもりなんだけど、お父様の顔はどうにも微妙だ。頭をあれこれと思考させる。昔何かで読んだはずだ。確か流し読みみたいな感じだった。それを思い出せばいいのに、中々頭に降り立ってこない。結局最後は降参するように小さく両手を挙げてしまった。

「これは三年になってから教わる事だから仕方がない、か。国樹は天候を始めとした様々な事に影響を及ぼしている。もちろん、畜産や農作物に良い影響を与える事が多いが……それとは別にダークエルフ族に対して絶大な効果を発揮する結界としての役割も担っている」

 それは……どうだろう。知らなかったわけじゃないと思う。頭の中に入ってない時点で覚えてはいないんだけどね。

「エールティア。お前は次期女王としてもう少し国の事を調べておきなさい。例え教わる前の事柄でも、自国の事なのだから頭に入れておきなさい」
「……わかりました」

 この点に対しては反省すべきことだろう。打開策を見つけ出すことが私の仕事でもある。館の中には様々な本があったのだし、調べようと思ったら出来た事だ。

 しゅんとなっている私の頭にぽんと手を乗せて優しく撫でてくる。あまり私と変わらない背丈だけど、少しゴツゴツしている手のひらが今まで生きてきた歴史を教えてくれる。

「そう悲しい顔をするな。確かに厳しい言葉だろうが、お前ならば出来る。それにいざとなった時は私達を頼ればいい。そうして前に進む事は決して悪い事ではないのだから」
「……はい」

 しばらくお父様に撫でられ続けた私の心は少しだけ暖かくなっていた。強い言葉を言われるけれど、やっぱり私のことを心配してくれている――そんな心配りが伝わってきた。

「この戦争がいつ終わるかはわからない。だが、お前が女王としてこの国を治める前に必ず終わらせてみせる。可能な限り最善の状態で引き継がせるのも今を担っている大人の役目なのだからな」

 優しく微笑んでくれるお父様は頼りがいのあるオーラを滲みだしていた。

「ありがとうございます」
「いいや、お前が頑張っているのだから、少しは私達も、な。しばらくはリティアでゆっくりと休んでいるといい。これから先は更なる激戦になるだろうからな」

 それからはファリスをシルケットへと向かわせる用意が出来ている。彼女ならグロウゴレムに対抗できるという話にシフトしていって、しばらく討論して今後発生するであろう課題を煮詰めていった。結構長い時間話していたのに気付いたお父様が下がっていいと言われたので少し名残惜しい形で執務室を後にした。お父様にもまだやるべきことが残っているだろうし、これ以上邪魔をするわけにはいかない。今は他の領地でも奮闘している。既に結構のんびりと休んでいる気がするけど、今までが働きすぎたのだと割り切る事にした。
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