転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

文字の大きさ
498 / 676

498・新たな出発

しおりを挟む
 ファリスの了承を得た私は、早速次の日にお父様に報告する事にした。
 短期間に何度も出入りするものだから、すっかり顔を覚えられてしまった私は、門兵に軽い挨拶を交わす程度になっていた。

 慣れた感じで会話をした私は、そのまま執務室に向かう。ノックの後に静かに入ると、お父様は片手で頭を押さえて悩んでいた。

「お父様、失礼します」
「……! あ、ああ」

 ようやく私に気付いたのか、顔をこちらに向けて返事をしてくれた。それでもその顔が晴れることはなく、曇る一方だ。

「どうしました?」
「いや……」

 一度言いかけて頭を振ったお父様は、覚悟を決めた顔をした。

「実は、他の国にもグロウゴレムが出たな。情報共有を急いでいる状況なのだ。セントラルの国々にも出現しており、かなり手を焼いているようだ。シルケット以外からは救援要請はないが、魔導を主体に戦っている種族は非常に苦戦を強いられているようだ」

 具体的には妖精族とエルフ族と猫人族だろう。クーティノスはあの物理防御の高い兵器とは違って周囲に影響を与える。
 やりようがあるあれらに比べたら、かなり苦戦を強いられてしまうのだろう。

「シルケットは大丈夫なのでしょうか……?」

 あそこには私の友人のリュネーがいる。流石にセントラルの学園に通っているベルンは戻っているはずだし、援軍が到着するまでは問題ないと思いたい。

「かなり深刻な状況だ。辛うじてドラグニカからベルン王子を戻したようだが……恐らくシルケットを制圧した後、このティリアースの足掛かりにしようとしているのだろう。他の国よりも圧倒的に侵略速度が速い。相当な戦力が投入されていると見て間違いない」
「他の……エルフ族の国の方は?」
「セントラルのラスタパはそこまで損害を受けていないそうだ。その代わり、ダークエルフ族の攻撃が激しいらしい」

 お父様の言葉に私は疑問を抱く。あまり被害がないのにダークエルフ族の攻撃が激しいというのはどうにも理解出来ない。普通は被害も大きくなるはずだ。

「……エールティア。国樹についてはどこまで知っている?」
「え? えっと、かなりの広範囲の気候を安定させて、農業や酪農に関連する仕事が行いやすくなるとか――」

 一応覚えている事は可能な限り口にしているつもりなんだけど、お父様の顔はどうにも微妙だ。頭をあれこれと思考させる。昔何かで読んだはずだ。確か流し読みみたいな感じだった。それを思い出せばいいのに、中々頭に降り立ってこない。結局最後は降参するように小さく両手を挙げてしまった。

「これは三年になってから教わる事だから仕方がない、か。国樹は天候を始めとした様々な事に影響を及ぼしている。もちろん、畜産や農作物に良い影響を与える事が多いが……それとは別にダークエルフ族に対して絶大な効果を発揮する結界としての役割も担っている」

 それは……どうだろう。知らなかったわけじゃないと思う。頭の中に入ってない時点で覚えてはいないんだけどね。

「エールティア。お前は次期女王としてもう少し国の事を調べておきなさい。例え教わる前の事柄でも、自国の事なのだから頭に入れておきなさい」
「……わかりました」

 この点に対しては反省すべきことだろう。打開策を見つけ出すことが私の仕事でもある。館の中には様々な本があったのだし、調べようと思ったら出来た事だ。

 しゅんとなっている私の頭にぽんと手を乗せて優しく撫でてくる。あまり私と変わらない背丈だけど、少しゴツゴツしている手のひらが今まで生きてきた歴史を教えてくれる。

「そう悲しい顔をするな。確かに厳しい言葉だろうが、お前ならば出来る。それにいざとなった時は私達を頼ればいい。そうして前に進む事は決して悪い事ではないのだから」
「……はい」

 しばらくお父様に撫でられ続けた私の心は少しだけ暖かくなっていた。強い言葉を言われるけれど、やっぱり私のことを心配してくれている――そんな心配りが伝わってきた。

「この戦争がいつ終わるかはわからない。だが、お前が女王としてこの国を治める前に必ず終わらせてみせる。可能な限り最善の状態で引き継がせるのも今を担っている大人の役目なのだからな」

 優しく微笑んでくれるお父様は頼りがいのあるオーラを滲みだしていた。

「ありがとうございます」
「いいや、お前が頑張っているのだから、少しは私達も、な。しばらくはリティアでゆっくりと休んでいるといい。これから先は更なる激戦になるだろうからな」

 それからはファリスをシルケットへと向かわせる用意が出来ている。彼女ならグロウゴレムに対抗できるという話にシフトしていって、しばらく討論して今後発生するであろう課題を煮詰めていった。結構長い時間話していたのに気付いたお父様が下がっていいと言われたので少し名残惜しい形で執務室を後にした。お父様にもまだやるべきことが残っているだろうし、これ以上邪魔をするわけにはいかない。今は他の領地でも奮闘している。既に結構のんびりと休んでいる気がするけど、今までが働きすぎたのだと割り切る事にした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

処理中です...