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507・町への帰還(ファリスside)
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撤退を続けていた軍は一旦休息を取って町への進行を緩やかに行った。敗色濃厚で全滅も視野に入っていたのが一転。ファリスの加勢によって勝利を収める事が出来た。本来であれば悠々と凱旋出来るほどの圧倒的な勝利だったが、それもファリス一人にもたらされたこと。彼女がいなければ屍を晒していたであろう事を考えると、素直に喜べず意気消沈した行進が続くのも無理のない話だった。
しかし、それも町の門が見えてきた辺りで喜びへと変わっていく。成り行きはどうあったとはいえ、彼らは生きて帰り、勝利を収めた。その事実に変わりはなかった。
少しずつ生き延びた実感が温かみを帯びて広がっていき、気付けば涙する者もいた。猫人族が感極まって喜びのあまりにゃーにゃーと泣いている姿は明確に人の姿形をしている魔人族のそれとはまた違ったように見える事だろう。
門の番をしていた兵士からシルケット軍が涙しながらもしっかりとした足取りで戻ってくる姿が見えたのだろう。彼らの存在を迎え入れるように重々しい扉は開き、兵士達が列を成して道を作る。そこにはルォーグの姿も確認でき、ファリスは自然と苦笑いを浮かべる。
「ベルン王子様、おかえりなさいませにゃ」
町の扉の前に立っていたシャニルは深々と頭を下げてベルンを迎え入れる。その事にベルンは若干の悲しさを覚えた。
賢猫の中でも最も力を持っているシャニルが援軍に来たファリス達の足止めをしていた事は紛う事なき事実なのだから。
「帰ったにゃー。色々聞かないといけないけど……今はボクも兵士達も疲れているのにゃー。休めるところまで案内してもらっても、いいかにゃ?」
「もちろんですにゃ。ささやかですが、彼らが十分に休息出来る場所も確保しておりますにゃ。ベルン様も今日はゆっくりと休まれますように……」
見下ろすような冷たい視線。それを一身に受けても尚、シャニルは平然としていた。むしろそれこそが当然。お咎めなしで済むことの方がおかしいのだと言うかのような堂々とした態度であった。
一見、開き直っているかのように見えるが、本当のところどうなのか知っているのはシャニルしかいないだろう。
「みんな、聞いたかにゃー? しばらくはルドールに滞在してしっかりと英気を養って欲しいのにゃー。戦いはまだまだ続く。それでもシルケットを……この国に住むみんなの家族を守る為に頑張ってもらいたいのにゃー」
兵士達の歓声を受けながら、ベルンはシャニルと後ろで待機していた女性の猫人族の在んないを受けよう……としたところで一旦振り返ってファリスのところに歩み寄る。
「明日にでも詳しい話を聞かせてもらいたいんだけど……いいかにゃー?」
「うん。いいよ」
到底王族に話す言葉遣いではないのだが、それを気にするものは誰もいない。ベルンと共にいた兵士達は彼女の事を女神のようにも思っていたし、そもそも圧倒的な強者だからそんな口を聞く気も起きなかった。
シャニルと一緒に彼女達を迎え入れた側は、シャニルの一件で慣れていたのか相変わらずヒヤヒヤとしていたが、特に口を出すこともなく見守っていた。
「良かったにゃー。それではまた明日。お昼ごろに食事でもしながら話をしようにゃー」
軽い感じで手を振ってシャニル達の後ろを歩くベルンは、最初に出会った時のような疲れ切った表情は既になくなり、普段の調子を取り戻していた。
兵士達も案内に来た町を守っている警備兵の一部に連れられ、残ったのはルォーグとファリス。
「お疲れ様です」
「うん。ちょっと疲れたかな」
あれだけの軍勢を殲滅しておいて『ちょっと疲れた』程度で済む辺り、彼女の強さが窺い知れる。以前も十分に力を持っていたが、ファリスと戦い、ジュールを弟子として鍛え上げている中で自分の能力の再確認した結果だった。聖黒族としての強さを身に付けつつあるファリスにとって、一部を除けばなんの制限もない環境での戦闘で負けることなど考えもしなかった。
「そっちはどうだった?」
「ええ、多少問題はありましたが……なんとかなりましたよ。今日はこのまま宿に戻って身体を休めてください」
一瞬嫌だと返しそうになったファリスだったが、視線に圧を感じたからか黙って頷いてしまった。普段の彼女だったらあまり興味なさげに返していただろうが、それをさせないだけの負い目もあったせいだろう。少なくとも彼が言うように『多少』で済んだ問題ではなかった事。これ以上何もしないように宿でじっとしていろという意味が込められていた事には気付いていた。
彼視点で意外にも素直に頷いたおかげか多少表情が和らいだが、それでもその場から微動だにせず、ファリスが動くのを待っていた。
(……これは退く気はないみたいね。仕方ないか。抜け出したのは事実だし、今回は大人しくしておこう)
一応自分のしたことの重大さを理解していたファリスは、町をうろうろすることなく与えられた宿に戻っていった。その時もきちんと帰るのを見届けるまでルォーグが付き添っていたのは言わずもがなである。
しかし、それも町の門が見えてきた辺りで喜びへと変わっていく。成り行きはどうあったとはいえ、彼らは生きて帰り、勝利を収めた。その事実に変わりはなかった。
少しずつ生き延びた実感が温かみを帯びて広がっていき、気付けば涙する者もいた。猫人族が感極まって喜びのあまりにゃーにゃーと泣いている姿は明確に人の姿形をしている魔人族のそれとはまた違ったように見える事だろう。
門の番をしていた兵士からシルケット軍が涙しながらもしっかりとした足取りで戻ってくる姿が見えたのだろう。彼らの存在を迎え入れるように重々しい扉は開き、兵士達が列を成して道を作る。そこにはルォーグの姿も確認でき、ファリスは自然と苦笑いを浮かべる。
「ベルン王子様、おかえりなさいませにゃ」
町の扉の前に立っていたシャニルは深々と頭を下げてベルンを迎え入れる。その事にベルンは若干の悲しさを覚えた。
賢猫の中でも最も力を持っているシャニルが援軍に来たファリス達の足止めをしていた事は紛う事なき事実なのだから。
「帰ったにゃー。色々聞かないといけないけど……今はボクも兵士達も疲れているのにゃー。休めるところまで案内してもらっても、いいかにゃ?」
「もちろんですにゃ。ささやかですが、彼らが十分に休息出来る場所も確保しておりますにゃ。ベルン様も今日はゆっくりと休まれますように……」
見下ろすような冷たい視線。それを一身に受けても尚、シャニルは平然としていた。むしろそれこそが当然。お咎めなしで済むことの方がおかしいのだと言うかのような堂々とした態度であった。
一見、開き直っているかのように見えるが、本当のところどうなのか知っているのはシャニルしかいないだろう。
「みんな、聞いたかにゃー? しばらくはルドールに滞在してしっかりと英気を養って欲しいのにゃー。戦いはまだまだ続く。それでもシルケットを……この国に住むみんなの家族を守る為に頑張ってもらいたいのにゃー」
兵士達の歓声を受けながら、ベルンはシャニルと後ろで待機していた女性の猫人族の在んないを受けよう……としたところで一旦振り返ってファリスのところに歩み寄る。
「明日にでも詳しい話を聞かせてもらいたいんだけど……いいかにゃー?」
「うん。いいよ」
到底王族に話す言葉遣いではないのだが、それを気にするものは誰もいない。ベルンと共にいた兵士達は彼女の事を女神のようにも思っていたし、そもそも圧倒的な強者だからそんな口を聞く気も起きなかった。
シャニルと一緒に彼女達を迎え入れた側は、シャニルの一件で慣れていたのか相変わらずヒヤヒヤとしていたが、特に口を出すこともなく見守っていた。
「良かったにゃー。それではまた明日。お昼ごろに食事でもしながら話をしようにゃー」
軽い感じで手を振ってシャニル達の後ろを歩くベルンは、最初に出会った時のような疲れ切った表情は既になくなり、普段の調子を取り戻していた。
兵士達も案内に来た町を守っている警備兵の一部に連れられ、残ったのはルォーグとファリス。
「お疲れ様です」
「うん。ちょっと疲れたかな」
あれだけの軍勢を殲滅しておいて『ちょっと疲れた』程度で済む辺り、彼女の強さが窺い知れる。以前も十分に力を持っていたが、ファリスと戦い、ジュールを弟子として鍛え上げている中で自分の能力の再確認した結果だった。聖黒族としての強さを身に付けつつあるファリスにとって、一部を除けばなんの制限もない環境での戦闘で負けることなど考えもしなかった。
「そっちはどうだった?」
「ええ、多少問題はありましたが……なんとかなりましたよ。今日はこのまま宿に戻って身体を休めてください」
一瞬嫌だと返しそうになったファリスだったが、視線に圧を感じたからか黙って頷いてしまった。普段の彼女だったらあまり興味なさげに返していただろうが、それをさせないだけの負い目もあったせいだろう。少なくとも彼が言うように『多少』で済んだ問題ではなかった事。これ以上何もしないように宿でじっとしていろという意味が込められていた事には気付いていた。
彼視点で意外にも素直に頷いたおかげか多少表情が和らいだが、それでもその場から微動だにせず、ファリスが動くのを待っていた。
(……これは退く気はないみたいね。仕方ないか。抜け出したのは事実だし、今回は大人しくしておこう)
一応自分のしたことの重大さを理解していたファリスは、町をうろうろすることなく与えられた宿に戻っていった。その時もきちんと帰るのを見届けるまでルォーグが付き添っていたのは言わずもがなである。
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