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511・勝利の美酒(ファリスside)
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シルケットのダークエルフ族を殲滅するまで援軍として戦う事になったファリスは、目覚ましい戦果を次々と上げていった。
エールティアと共に戦った時よりも明らかに地力の上がった彼女の実力は、既にダークエルフ族の兵器程度では相手にすらならなかった。
相応の人数を送ってきているつもりでも、魔導によって一気に破壊されれば意味がない。
魔力を妨害するフィールドを持つクーティノスも、その範囲外から特大の魔導で粉々にしてしまえば何ら問題はない。
厄介な敵をファリスに任せることができたシルケット軍は破竹の勢いで進軍し、拠点としているルドールへと凱旋する。
これを面白く思わないのは純潔派だ。町の長であるシャニルに町の中で暴れて国民を巻き添えにすると脅しをかけても、既にベルンがこの都市に入った以上は無意味だった。
いくら賢猫と呼ばれる存在でも、王子の意見を容易く却下出来るほどの権限は与えられていない。
もちろん通常の業務は全てはシャニルが行い、ベルンはそれに口を出すことはできない。そこの線ははっきりと引いてあり、互いに極力邪魔にならないように対応していた。
それが上手く回り、徐々に純血派は勢いを落としていった。結果として治安が回復し、周辺の村や町も安全が確保されつつあるおかげで商人の動きが活発になっていった。
それに喜ぶのはファリス。今は町の中を散策している最中だった。
連日続く戦闘のお陰で疲れた身体は、雑多な人混みに紛れ、片手には切り落としの肉を香辛料で炒め、パンに詰め込んだものを持っており、食べるときは落とさないように両手で持って口に運んでいた。
若干ぱさついたパンが肉の汁で緩和され、口の中の水分を吸い上げられずに済む。
(随分に賑やかになってきたね)
少し前までは多少の活気はあっても、住民たちの顔はどこか元気がない様子だった。それが解消され、心の底から笑っているのがファリスにはわかった。
もちろん、良いことばかりではない。陰に入れば悪いことをしている者もいるだろう。しかしそれはファリスには知った事ではなかった。
そういうのを取り締まるのはここの警備隊の役目であり、彼女は戦いに出て勝利を収めてくる。それだけで十分なのだと認識していたからだ。
悪く言えば戦争屋。しかしファリスはそれで納得していたし、ここでは自分達は客人のような扱いなのだと認識していた。
もそもそとパンを口に収めながら、楽しそうな喧騒を過ぎていく彼女を遠目に見たら、まるで自分は蚊帳の外だとでも振る舞っているように見えるだろう。
実際誰かと会って話す事もないし、そういう人物もいない。エールティアの友達であるリュネーもファリスは会ったことがないし、全く知らない。エールティア本人に興味はあっても、彼女の交友関係には一切興味のないファリスにとって、邪魔にさえならなければそれすらもどうでも良かった。
ダークエルフ族の尖兵になっていた頃にあちこちと行き来をしただけの彼女には友と呼べるようなものの必要性を疑問視すらする程だ。
ここのところは同じ初代魔王の血痕から採取されたもので造られたローランとは違うところだろう。彼は絆や仲間を大切にしたいと考えているし、守るものがあればその分だけ力を発揮する。戦わないならそれでもいいと考えている彼と全く真逆の彼女は、まるで対となって産み出されたかのようでもあった。
「……何をしているのですか?」
そんな人とのコミュニケーションを好まない彼女に話しかけてくる存在。ジュールやローランのいないここでは間違いなくたった一人しかいなかった。
「散歩」
「……そうですか。その割にはあまり楽しそうではないようですが」
苦笑いで近づくルォーグはそれなりに大きな袋を抱えていた。中からは食欲をそそる匂いが漂って来ており、様々な食べ物が入っている事は間違いなかった。
「そっちは随分楽しんでいるみたいね」
「彼らからすれば、私達は友好国の頼れる援軍ですからね。私達が来て以降、連戦連勝で勢いが止まりませんから」
「気が抜けているって事ね」
確かに勝利は続いている。ファリスよりも強い存在がいない以上、一方的に叩きつぶすことが出来るから被害だってそう多くない。むしろ戦争だと考えたら相当少ないくらいだ。
「一般人に気を引き締めろっていうのも難しい話でしょう。彼らは戦う術を知らないのですから」
「戦う事を知らないって、そんなの問題外よ。そんな風に浮かれているから気付かないのよ。ここが戦場になった時、自分の身は自分じゃないと守れないって事をね」
「そんな力のない人たちを守る事こそが私達の役目でしょう?」
ファリスにとって見当違いも甚だしい。思わず吐いた深いため息を理解できないルォーグは、首を傾げていた。
「わたし達は敵を殺すのが仕事。それ以外はこの国の人達に任せれば良いの。自分達の仕事を履き違えないで」
「しかし、それは――」
何か言おうとしていたルォーグの言葉に耳を傾ける事なく、ファリスはさっさとその場を去ってしまった。後に残されたルォーグは、何とも言えない表情で言葉を途中で切り、ファリスを見送るしか出来なかった……。
エールティアと共に戦った時よりも明らかに地力の上がった彼女の実力は、既にダークエルフ族の兵器程度では相手にすらならなかった。
相応の人数を送ってきているつもりでも、魔導によって一気に破壊されれば意味がない。
魔力を妨害するフィールドを持つクーティノスも、その範囲外から特大の魔導で粉々にしてしまえば何ら問題はない。
厄介な敵をファリスに任せることができたシルケット軍は破竹の勢いで進軍し、拠点としているルドールへと凱旋する。
これを面白く思わないのは純潔派だ。町の長であるシャニルに町の中で暴れて国民を巻き添えにすると脅しをかけても、既にベルンがこの都市に入った以上は無意味だった。
いくら賢猫と呼ばれる存在でも、王子の意見を容易く却下出来るほどの権限は与えられていない。
もちろん通常の業務は全てはシャニルが行い、ベルンはそれに口を出すことはできない。そこの線ははっきりと引いてあり、互いに極力邪魔にならないように対応していた。
それが上手く回り、徐々に純血派は勢いを落としていった。結果として治安が回復し、周辺の村や町も安全が確保されつつあるおかげで商人の動きが活発になっていった。
それに喜ぶのはファリス。今は町の中を散策している最中だった。
連日続く戦闘のお陰で疲れた身体は、雑多な人混みに紛れ、片手には切り落としの肉を香辛料で炒め、パンに詰め込んだものを持っており、食べるときは落とさないように両手で持って口に運んでいた。
若干ぱさついたパンが肉の汁で緩和され、口の中の水分を吸い上げられずに済む。
(随分に賑やかになってきたね)
少し前までは多少の活気はあっても、住民たちの顔はどこか元気がない様子だった。それが解消され、心の底から笑っているのがファリスにはわかった。
もちろん、良いことばかりではない。陰に入れば悪いことをしている者もいるだろう。しかしそれはファリスには知った事ではなかった。
そういうのを取り締まるのはここの警備隊の役目であり、彼女は戦いに出て勝利を収めてくる。それだけで十分なのだと認識していたからだ。
悪く言えば戦争屋。しかしファリスはそれで納得していたし、ここでは自分達は客人のような扱いなのだと認識していた。
もそもそとパンを口に収めながら、楽しそうな喧騒を過ぎていく彼女を遠目に見たら、まるで自分は蚊帳の外だとでも振る舞っているように見えるだろう。
実際誰かと会って話す事もないし、そういう人物もいない。エールティアの友達であるリュネーもファリスは会ったことがないし、全く知らない。エールティア本人に興味はあっても、彼女の交友関係には一切興味のないファリスにとって、邪魔にさえならなければそれすらもどうでも良かった。
ダークエルフ族の尖兵になっていた頃にあちこちと行き来をしただけの彼女には友と呼べるようなものの必要性を疑問視すらする程だ。
ここのところは同じ初代魔王の血痕から採取されたもので造られたローランとは違うところだろう。彼は絆や仲間を大切にしたいと考えているし、守るものがあればその分だけ力を発揮する。戦わないならそれでもいいと考えている彼と全く真逆の彼女は、まるで対となって産み出されたかのようでもあった。
「……何をしているのですか?」
そんな人とのコミュニケーションを好まない彼女に話しかけてくる存在。ジュールやローランのいないここでは間違いなくたった一人しかいなかった。
「散歩」
「……そうですか。その割にはあまり楽しそうではないようですが」
苦笑いで近づくルォーグはそれなりに大きな袋を抱えていた。中からは食欲をそそる匂いが漂って来ており、様々な食べ物が入っている事は間違いなかった。
「そっちは随分楽しんでいるみたいね」
「彼らからすれば、私達は友好国の頼れる援軍ですからね。私達が来て以降、連戦連勝で勢いが止まりませんから」
「気が抜けているって事ね」
確かに勝利は続いている。ファリスよりも強い存在がいない以上、一方的に叩きつぶすことが出来るから被害だってそう多くない。むしろ戦争だと考えたら相当少ないくらいだ。
「一般人に気を引き締めろっていうのも難しい話でしょう。彼らは戦う術を知らないのですから」
「戦う事を知らないって、そんなの問題外よ。そんな風に浮かれているから気付かないのよ。ここが戦場になった時、自分の身は自分じゃないと守れないって事をね」
「そんな力のない人たちを守る事こそが私達の役目でしょう?」
ファリスにとって見当違いも甚だしい。思わず吐いた深いため息を理解できないルォーグは、首を傾げていた。
「わたし達は敵を殺すのが仕事。それ以外はこの国の人達に任せれば良いの。自分達の仕事を履き違えないで」
「しかし、それは――」
何か言おうとしていたルォーグの言葉に耳を傾ける事なく、ファリスはさっさとその場を去ってしまった。後に残されたルォーグは、何とも言えない表情で言葉を途中で切り、ファリスを見送るしか出来なかった……。
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