転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

文字の大きさ
512 / 676

512・異変(ファリスside)

しおりを挟む
 勝利を収め続け、次々と戦場を制していく一方。ルドールでは奇妙な香炉こうろが回収され続けていた。
 シャニルの腹心であるハトル以外にも偶々置いてあるのを見つけたファリスの手によって破壊されるといった事例もあり、事なきを得ていた。

 以前訪れた町がこの香炉こうろの力で幻を見せられていた事もあり、発見したファリスはすぐさまベルン及びシャニルへの情報提供をおこなった。そのおかげか、現在のルドールでは路上に置かれている香炉こうろは許可が降りていないものは壊すか回収するようになっていた。
 それと同時にダークエルフ族の潜伏先を探す為、シャニルの部隊が町全体を捜索する事になり、現在は結果待ちの状態だった。
 そして、ここに来て香炉こうろを受け取っていた者が純血派の一員である事も判明し、上層部の空気は一変する。

 そこで嬉々としたのがシャニルとベルンだった。シャニルは今まで散々脅迫され、したくもないことをさせられていた。
 ベルンに当たっては彼自身が魔人族との混血あり、この戦争が終わり次第王太子に任命される予定の人物だ。彼や彼の妹達は幾度となく危険な目に遭ったし、今もなお目の敵にされている。ベルンの目的の一つに彼らの根絶が含まれている以上、ここで見せた彼らの尻尾を確実に掴むために互いに探りを入れていく――。

 そんな急展開を見せているシルケットの内情とは別に、ファリス自身はいつも通りだった。
 各地で起こっているダークエルフ族の攻撃や拠点制圧に尽力していた。

 連勝が続いたおかげで兵士達の士気はあがり、今までは低下を防ぎ国で一体となり戦っていることを理解してもらうためという目的で陣頭に立っていたベルンだったが、凄まじい勢いでダークエルフ族を撃破している現状。純血派を一掃する機会が狙えることもあり、今はルドールの町で機会を窺っていた。それも相まってファリスに何かを言える人物は更にいなくなる。
 結果的に戦場の女神のように扱われている彼女は次々と戦果を叩き出し、それに追従しようとする者も現れ始めた。

(これは……不味い事になるかもしれません)

 そんな状況を危惧きぐしているのはルォーグを含めると少数存在した。現在の勝利がファリスによってもたらされている事は彼も重々承知している。被害なく勝てるのであれば、それが理想で間違いない。彼女はそれを示し続けているのだから。
 だが、だからこそ危険なのである。もし、彼女に何かあれば? 彼女が軍のフォローに向かえないときは? その時のことを考えれば考えるほど悪い方向へと傾いていく。

 今の軍はファリスがいなくなればあっという間に瓦解がかいしてしまうだろう。それだけ彼女に依存している事になるだが……それを表立って口にする者は誰もいなかった。
 現時点でも女神のように崇めている者もいる中、そんなことを何の考えもなく口に出せばどうなるか……それすら思いつかない間抜けはここにはいなかったという訳だ。

 ファリス自身は肯定も否定もしない。『あなたがそう思ってるならそれでいい。だけどその考えをわたしに押し付けないで』。つまるところこれでしかないのだ。彼女は自分の認めた者以外の意見に耳を傾ける事は少ない。完全にない訳ではないが、今のままでは聞き入れてもらえる事はほぼないだろう。

 結局のところ現状維持。しかし、それもずっと続けるわけにもいかない。どうする事もできない。結果、不満が募る。少数派のそれでも膨れ上がれば周囲に伝達する可能性がある。しかも下手をすればいとも容易く爆発する。
 どうする事もできずに悶々もんもんとした感情を抑え込んでいたルォーグに転機が訪れる。

「前方、敵拠点発見! 索敵班の報告通り、ダークエルフ族の防衛隊がいるようです!」

 先鋒を務めていた魔人族の男性の配下と思える男がファリス達に片膝をついて話しかけてきた。
 少し前の報告でダークエルフ族の拠点が厳重に防衛されているのは知っていた。
 しかし、彼らが考えている防衛とは若干違った様子。明らかに必要以上に警戒しているからだ。まるで大切なものを守っていますと大げさにアピールしているかのように。

 これに色めき立つのはファリスに戦果を持っていかれ、あまり活躍する事が出来ない一部の猫人族や魔人族の兵士達。命は大事だが、戦で功績を挙げて名を上げるのも彼らにとっては大切な行為だからだ。

「……どうされますか?」

 しかし、いくら名声や地位を得られたとしても、肝心の命がなければ意味がない。誰もが最初の犠牲者にはなりたくないのだ。だからこそ、一歩を踏むことが出来ずに立ち止まる事となってしまった。
 結局様子見ばかりをしている兵士達を眺めながら、ファリスはふとある出来事を思い出していた。以前もこうやって厳重な拠点を攻略した事を。
 あの時はかなりの敵を自分に引きつけていたが、途中で強力な兵器によって一掃されてしまった。その事実がファリスの判断を鈍らせる。

「……ひとまずここから少し離れたところに陣を敷いて待機。監視を怠らずにね」

 それでも何も決断しないという事は出来ないから、最終的に選んだのはとりあえずもう少し様子を見てから決める――という消極的な手段だった。しかし現状では案外悪くはない一手。後回しにする行為だとしても、情報を手に入れてから選択するという選択もまた重要だからだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...